○『銀河旋律』『広くてすてきな宇宙じゃないか』大阪初日の感想。(長文!)

    大阪梅田・シアタードラマシティで、4/14〜21の公演。
 
    いつものように、初日に駆けつけました。6時5分すぎくらいに劇場に着いた
   のですが……いやぁ、すごい人でした。ドラマシティの入り口前はかなり広々と
   しているのですが、そこに人がどっちゃり……って変な表現だな。とにかく沢山。
   チケットの売れ行きが平日は、特に14・15・19・20日のあたりはよくないって話
   を聞いてましたからね。それなのに前売券持ってる人の列は長く、電話予約や当
   日券の人の列も同じくらい長く、でびっくりしたのです。まぁ時期的に直前まで
   予定が分からなかった人も多いでしょうし、なんたってキャラメルの「代表作」、
   「原点」だし。観たいという人は潜在的にも多くて不思議じゃない。私自身も好
   きな作品ですから、客席がいっぱいになるのは嬉しいし。
 
    今回はいつも春公演時にやっている「リクエスト大会」はなしで、開場時間も
   普段の1時間前ではなく30分前、ついでに加藤さんの「前説」もなくて、開演前
   にあるのは15分間の「ミニトーク」。加藤さんと役者さん数名がグッズの宣伝を
   したり開演前の注意をしたり。まぁ中身はほとんど「前説」ですが。
    これは、今回は2本立てなので1本目が終わったらすぐに2本目のための舞台
   転換をしなければならず、それに30分くらいかかる。さらにお客全員が2本両方
   を観るわけではないから、人の入れ替えも結構激しい。そんなこんなで、どちら
   か一方だけのお客に対しても不公平がない形の「ミニトーク」に統一されたので
   はないかと。憶測ですが。
 
    初日は『銀河旋律』『広くてすてきな宇宙じゃないか』の順に上演。
    2作品の間には時間的なつながりがあって、『広くてすてきな宇宙じゃないか』
   が『銀河旋律』の15年後という設定なので、流れの面ではこの順序で観る方が分
   かりやすいし落ち着く。まぁ私はビデオで何回も観ているので順番なんかどうで
   もいいと言われればそうなのですが……でもやっぱり私もこの順序の方が自然な
   気がするんだよな。
 
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    まず『銀河旋律』。
    あらすじは別ページを観ていただくとしまして……キャラメル作品としては、
   かなりストレートなラブストーリー。そのストレートさは初期作品ならではだし、
   ハーフタイム作品ならではでもあります。普段の半分の長さの時間の中で全てが
   起こりそして収束していく……展開は速いです。慣れない人はついていきにくい
   かも知れません。でも慣れると、その速さがたまらなくなったりして。ドキドキ
   が中断される間が少ないですからね。
 
    初日(14日)現在、主役の西川さんの喉がちょっと不調の様子。少々かすれて
   います。うーん、西川さんは両方に出てるからなぁ。しかもどちらも重要な役ど
   ころだし。そりゃ喉もたいへんだ。『銀河旋律』は主役なのでやはり台詞が多く
   て、時々どうしても台詞に力がこめきれないでいました。ご本人は当然すごく必
   死なのですが喉がついていかないようで……しんどいだろうなぁ。おまけに大阪
   公演は休演日がないし……すこしでも喉が良くなることを願うばかり。
    西川さんの役である「柿本」、恋人を取り戻したいのは分かるけどやっぱりわ
   がままなキャラでもあるよなぁ、とずっと思っていました。でも初日観てみて、
   そんなこともないんじゃないかと思い直しました。過去に戻って、「ヨシノ」の
   気丈だけど寂し気な振る舞いを見た時の「柿本」の逡巡するような様子に「あっ」
   と思ったのです。「柿本」は彼なりに今の「はるか」のことも「ヨシノ」のこと
   も考えて悩んでいる、それでも「はるか」を好きだという気持ちが忘れられなく
   て、文字どおり全てを捨てる覚悟で彼女を取り戻そうとしているのだと…………
    ハーフタイムだから話運びが速いのであって、もしこれが2時間ものだったら、
   「柿本」はもっと葛藤して悩んだのだろうなぁと思います。
 
    「はるか」はヒロインとしてはそれほど存在感が強い人物ではないですね。
    でもメインを演じる大森さんはキレイですね (*^^*)
    今日思ったのですが、大森さんはダンスもキレイ。長く習った人の技術的な美
   しさというより、自然のうつくしさがある感じ。
    観る方としては、もっと「はるか」の精神的な動きも知りたいなと思います。
   一番それが見られるのは3度目の歴史改変の後の電話のシーン。「サルマル」と
   出会って結婚したことで、「サルマル」の気持ちも理解してしまった「はるか」。
   「柿本」との過去は忘れていないけれど、今の現実には存在しないものになって
   しまった…………今ある現実を選び取らなければならない気持ち。電話を切る直
   前の、台詞を言う笑顔が、とても痛い。
 
    「サルマル」は…………どうなんでしょうねぇ(苦笑)
    やっぱり「はるか」と同じく彼の精神的感情的動きももっと見たい。
    彼の「はるか」を好きだと思う気持ちもやっぱり純粋なんだと思う。純粋すぎ
   て、向かう方向が間違ってしまったのかな。
 
    ある意味では「ヨシノ」が一番の被害者かも知れないですね (^^;
    必要とした人が去っていくのを結局見ていることしかできなくて。
 
    その他…………
    女子高生3人組。やかましすぎるきらいはあるけど面白い。この作品のムード
   メーカー的存在かな。
    「アリマ」。坂口さんの経験から考えると、この役になったのはどうしてかな
   と思います。『広くてすてきな宇宙じゃないか』とのストーリー合わせのため?
   可愛らしいんですけどね。
    「ヤマノウエ」。ひさしぶりの篠田さん。篠田さんがなにかリアクションをす
   るたびに客席からは笑いが……そういうキャラクターが定着してしまった模様。
   私も篠田さんの「独特の濃さ」は好きなので一緒に笑ってしまっていますが (^^;
 
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    次に『広くてすてきな宇宙じゃないか』。
    東京のところでも書いたのですが、どちらの作品が好きかと聞かれれば、私は
   こっちだと答えますね。……どうやら私は家族ものに弱い傾向にあるようです。
   そういえば『カレッジ・オブ・ザ・ウィンド』、『ハックルベリーにさよならを』
   『さよならノーチラス号』、かなり好きな作品は全部家族ものだな。他の作品で
   も、出てくる家族はだいたい好きだし。
 
    東京で観た時に、92年版に比べて納得のいかないところがいくつかありました。
    「おばあちゃん」の台詞への気持ちのこめ方。
    「おばあちゃん」が飛ぶラストシーン。
    前者は、なんか今回は気持ちが後半になるほど感じ取りにくくて。特にクライ
   マックス、一番好きな長ゼリフのところ。
    後者は、前回に比べて上がっていくスピードが速い気がして。もっと「ふわっ」
   という感じにしてほしいなぁと。
 
    それらが大阪公演ではどうなっているのかとても気になっていました。
    ラストシーンに関しては、加藤さんの速報ページの日記で「東京よりも美しく
   なっている」という話を知り、期待してました。
    …………ほぼ期待通りでした。(^^)
    ドラマシティはシアターアプルより天井が高いそうです。高い分、上に到達す
   るまでの時間がかかるのか、見る限り、アプル時よりもゆっくりで、しかも上に
   到達する直前にすこし前へ出るようになっていました。92年再演時のフライング
   がまさにそういう感じで、その時ほどゆっくりでも前へ出ていたわけでもないの
   ですが、アプル時の「ただ上に上がるだけ」のフライングとは違って、余韻の感
   じられるものに変わっていました。
 
    大森さんの「おばあちゃん」は存在そのものが絶品ですね。可愛いの。
    すごく子供たちを愛していて、子供たちのために一生懸命で。
    顔も性格も亡くなったお母さんにそっくりな誰かが家に来たら、子供はすごく
   辛いだろうと思う。でも「おばあちゃん」は、そっくりなのはお母さんのことを
   忘れさせないためだと言う。忘れてしまわずに、そして前へと歩き出せるように、
   自分がいるのだと。…………なんかすごいなぁ。
    「おばあちゃん」の笑顔がいいんですよね。愛情いっぱいの笑顔。素敵すぎ。
    …………でもやっぱりクライマックスの長ゼリフは今回も納得いかなかった。
   なぜ? …………たしかにバッテリーがほとんど空っぽで、エネルギーが不足し
   ている状態であるのは分かる。…………でもここの台詞は、もっと力を込めた状
   態で言っていいのではないか。いや、言ってほしいところなんだ。…………そん
   なふうに私は感じてるのかな、きっと。
 
    「クリコ」はとても優しい子なのだと思う。
    同級生の「カツラ」に対して突き放すような言い方をしながらも手を差し伸べ
   る行動を取るし、自分に協力してくれる「ヒジカタ」の正体を知った時には彼を
   止めようとしているし。
    だからこそ、「おばあちゃん」を好きになってもし「おばあちゃん」が壊れた
   りしたら……お母さんと同じようにいなくなってしまったら、また悲しい思いを
   しなければいけないことが耐えられなかった。だから好きになってしまう前に自
   分で壊してしまおうとした。…………でも「おばあちゃん」は壊れなかった。東
   京中の電気を全て消してしまっても。…………その時やっと、「クリコ」の心に
   も本当の春が来たのだ。もう一度、誰かを好きになれるようになった。
    ……それにしても、いまだに違和感なく「クリコ」を演じられる石川さんは、
   いろんな意味ですごいですな。(^^;
 
    電力ターミナルを破壊していくシーンは観ていてせつない。
    自分がまだ動けるか確かめている「ヒジカタ」の姿とか、「クリコ」の意地を
   張る言葉の裏側の気持ちとか、そばで見ている「カツラ」の不安とか、もうとに
   かくいろんなことを考えてしまう。特にクライマックスのU2の曲は大好きで、
   余計にせつなさが増しますね…………
    ついでに、ラストシーンの曲も好き。大好き。音楽がかかった瞬間から、もう
   「うわぁ」って気持ちになります。
 
    「カシオ」は台詞も出番も多いけど実はそんなに話の中心的なところは担って
   いない……という言い方は語弊があるかな。要は「ストーリーテラー」なんです
   よね。実際に話を動かすのは別の登場人物なわけで。初演(90年)・再演では上
   川さんがやってらしたこの役を、今回は南塚さんが。「少年」という点でも今回
   のキャストでは一番南塚さんがはまってると思いましたが、実力的にもできない
   ことはない、と私は考えてました。初舞台の『レインディア・エクスプレス』で
   結構難しい役をやっておられましたから。個人的にもその時の南塚さんはいけて
   ると思ってますし。ある意味上川さんよりも「少年」としての雰囲気が出てます。
 
    「スギエ」は「クリコ」よりも早く「おばあちゃん」の存在を認めている……
   けど、彼女には彼女なりの「おばあちゃん」に対するこだわり、反発する気持ち
   があった。それはやはり「おばあちゃん」が亡くなったお母さんにそっくりだと
   いうところに起因している。そのことを「おばあちゃん」にぶつける心の中には、
   これまで長女としてがんばらなくちゃいけない、しっかりしなくちゃいけないと
   思い続けてきた気持ちが、「おばあちゃん」の存在で崩れそうになっていて、で
   もそれを自覚したくない思いが渦巻いているのではないかと思う。長女だからこ
   そ、人一倍誰かに寄りかかりたくなることもあっただろう。「おばあちゃん」に
   対してはそれが許される、……でも失う時がまたきっと辛い。「スギエ」にも、
   「クリコ」が感じていたのと同じ気持ちが心の底にきっとあった。大事な存在を
   失った悲しみと、その悲しみをもう二度と経験したくないという思いが。「おば
   あちゃん」は自分たちがこれからの人生を前へと進んでいけるように、その手助
   けをするために来てくれたのだ。それに気づいた時、やっと「おばあちゃん」に
   対して本当に素直になれたのではないだろうか。
 
    「ヒジカタ」。彼の絶望はものすごく深かった。人間を助けるためのアンドロ
   イドが、結局は人間を助けることなどできないと思ってしまうまでに。…………
   アンドロイドは死なないから死んでいく人間の悲しみが分からない。それはそう
   かも知れない。でも死んでいく人間に立ち会う時、「ヒジカタ」ならきっと何か
   を感じていたはず……それはきっと「悲しみ」と呼べるものだと思う。
    「クリコ」を最終的に救ったのは「おばあちゃん」だけど、「ヒジカタ」がい
   なければ、電力ターミナルの破壊を始めなければ、「クリコ」が「おばあちゃん」
   に心を開くきっかけはいつまでも来なかったかも知れない。「ヒジカタ」も間接
   的に「クリコ」の心を救ったと言えるだろう。そのことに「ヒジカタ」は気づい
   ただろうか。事件の後、彼は何を考えて生きていただろう。聞いてみたい。
    初演・再演ともに近江谷さんだったので、近江谷さんのイメージが強い役では
   あります。でも私は今回の大内さん「ヒジカタ」も好きです。しぐさや行動が細
   かくなっていて。
 
    えーと、その他。
    「柿本」はこの世界ではお父さんで40すぎ。微妙に髪を白髪にしていたりして、
   やっぱり細かい (^^) 年月が経ってだいぶ中身が丸くなったような感も。
    「アリマ」。15年の間にお天気お姉さんからキャスターに昇格している……と
   いう設定らしい。この作品で坂口さんが演じるのはまぁいいとして……うーん。
   今回は坂口さんの見せ場は少ないのですね。次に期待。
    「オオクボ」。ダンスの得意な岡内さんのパフォーマンスが見物?(笑)
    「カツラ」。浅岡さん、ようやくシングルキャスト。そのせいかどうか、かな
   り気合い入ってるような。楽しい小学生になっています。
    「サカモト」……はかつて自分のやった役でもあるので個人的に複雑だったり
   して(苦笑)(……おいといて。)清水さん……はまだまだ地道な路線ですね。
   もともと立場的に見せ場のつくれない役ではあります。やっぱり次に期待。
 
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    …………………………うえ〜、長くなりすぎ! まさかここまでいくとは。  
    最後まで読んでくださったあなた、心からどうもありがとうございます。
    でもこれだけ書くと未練(?)がなくていいかも(そーゆー問題じゃない?)
 
    ……それでも、書きたいことがまたできたら書き足しますね〜(……自爆)
                                 (99.4.14)
 
                            →大阪楽日の話を読む
 


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