日本茶の産地

 それでは今回は、茶産地についてお話します。


「はーい!」


 お茶は日本のどこで、作られているでしょう?


「んーとりあえず、埼玉だよねえ……。あとは静岡?」


 実はですねえ、東北の北部と北海道を除いた、
ほぼすべての都道府県で作られている
のです。


「うっそお!」


 もちろん、場所によって規模は違いますけどね。
生産量の多い順にならべると、1位・静岡、2位・鹿児島、3位・三重です。
特に静岡と九州全般が、めちゃくちゃ多いですね。


「すごいねえ……。でもなんで九州で多いの?」


 気候が暖かくて、お茶が栽培しやすいからです。
お茶の木はもともと、亜熱帯植物なので、寒いとよく育たないのです。


「ああ、だから北海道とかでは作ってないんだ」


 そのとおりです。
でも育つからといって、岩手や宮城では寒すぎてお茶で生計を立ててはいけません。
お茶で生計を立てていけるのは、新潟→栃木→茨城を結んだ線くらいまでです。


「とにかく、あったかい所のほうが、お茶は育つのね」


 しかしまあ、暖かすぎてもいけません。
人間と同じで、暖かすぎの気候で甘やかされて育ったお茶は、ぜんぜんおいしくないのです。
ある程度冷涼な気候であることが、味に深みを生むのです。


「じゃあ寒いほうがいいのね!」


 寒すぎると、今度は葉っぱがつかなくなって、下手すると1番茶しか採れません。
暖かいほうが3番茶、4番茶まで採れますから、収量は増えます。


「1番茶? 3番茶?」


 ああ、言い忘れてました(^^;
お茶の木はとても生命力が強いので、たとえ新芽を採ってしまっても、
また次々と新しい芽が出てくる
のです。


「ふーん、なんだかアシタバみたい。それで1番茶って?」


 1年を通して、5月初旬に採るのが1番茶です。
6月下旬に採るのが2番茶。8月中旬に採るのが3番茶、秋口に採るのが4番茶です。
まあ、4番茶……下手すると5番茶は「秋冬番茶」とも呼びますけど。


「5回も採れるの!?」


 スゴイでしょ?
しかし、5回採ることができるのは、九州のような暖かいところだけです。
静岡でも3番茶までしか採ることはできません。埼玉では2番茶までです。

 ……まあ、最近は静岡でも2番茶までしか作らないところが多いのですけど。


「なんで静岡は2番茶までしか採らないの?」


 それは、3番茶、4番茶まで採ってしまうと、茶の木が弱って
翌年の1番茶の質が落ちてしまうからです。お茶の木にとっては、1番茶摘採のみがベストなのです。
また近年、茶工場で使う重油の価格が上がってしまって、安値しかつかない2番茶以降の茶は、
作れば作るほど赤字、という状況も生まれています。


「でも1番茶はそんなに大切なの?」


 超大切です!
お茶屋さんの収入のほとんどは、1番茶によってまかなわれています。
それから、やっぱり1番茶が、1番おいしいのです。


「ほんとに〜? あまり変わらないんじゃないの?」


 変わりますよ。
2番茶飲んでみます? ……はい。


「ごくごく……うーん……香ばしくっておいしいね!」


 はい、じゃあ1番茶。


「ごくごく……うん、ちょっと苦いけど、味が濃くておいしいね!」


 かなり違うでしょう?
2番茶は、前回お話した「硬葉(こわば)」が多くなってしまうので、どうしても味のグレードは落ちてしまうのです。
また青臭さを消すために、かなり火香(香ばしさ)をつけなければいけません。

 市場取引される2番茶の価格は、1番茶の半分にしかなりません。
3番茶、4番茶はさらに低くなります。


「待って。じゃあ九州とかも2番茶までにしたほうがいいんじゃないの?」


 ほんとうは、そうです。
しかし「3番茶、4番茶でもいいから、とにかくお茶がほしい!」という人がたくさんいるのです。


「えー誰?」


 ペットボトルのお茶を作ってる、清涼飲料水メーカーです。
1番茶は高いので、ペットボトルのお茶に使われるのはすべて、2番茶、3番茶、4番茶です。


「え、そーなの!? ペットボトルのおいしいのに?」


 それは、香料とかビタミンCとかを入れているからです。中国緑茶も輸入して使っているようです。


「そーだったの? なんだかがっかり」


 しかし私自身も、ペットボトルのお茶は飲みますからねぇ……。
私もあれはあれで好きです。

 ……どうでもいいですけど、なんだか茶産地の話からずいぶんそれてしまいました。


「ああ、そういえば。……ところで、産地によってお茶はやっぱり違うの?」


 結論を申し上げれば、そう大差はありません
日本全国、どこでもほぼ同じ製法で、煎茶を作っていますので。


「そーなの? ○○産のお茶はおいしい、とかないの?」


 私は、産地にこだわるより、お茶屋さん、つまりお店にこだわったほうがよいと思います。


「お店単位〜?」


 お茶は嗜好品ですから、自分が「おいしい!」と思ったお店で買うのが1番なのです。
事実、お店によって、仕上げの「火入れ焙煎」の仕方が違います。
また、扱っているお茶も「浅蒸し煎茶」か「深蒸し煎茶」かで違います。

 この焙煎による「火香」と「蒸し度」を見て、自分の好みのお茶を出してくれる
お茶屋さんを見つけるのが、まあ究極なのではないでしょうか。


「なるほど。でもえーっと……蒸し度ってなんだっけ?」


 それじゃあ、次回は
「お茶の製造工程」についてお話しましょう。


「ういっす!」



1:お茶の起源
2:お茶の種類
3:日本茶の産地
4:製造工程
5:お茶のおいしい淹れ方
6:保存方法


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