お茶の種類

 では次に、お茶の種類についてお話します。


「はーい」


 
さいこちゃんは、「○○茶」とつくものを、
どれくらい知っているかな?


「そうねえ、紅茶とか烏龍茶とか……あと麦茶? そば茶もそうかな」


 いいですね。前項の最後でも触れましたけど、
紅茶と烏龍茶、そして緑茶は、すべて「お茶の葉」を使って作られています。
でも、麦茶やそば茶は、「お茶の葉」を使って作っていない、名ばかりのお茶です。

 ……ここでは、ちゃんと「お茶の葉」で作られているお茶についてお話します。


「うーん、でもほんとうに、同じ葉っぱからできてるの? うさんくさいなぁ……」


 だからほんとうですって。原料となるお茶の木の「品種」の違いはありますけどね。
しかしそれは、お米で言えば「ささにしき」と「こしひかり」の差です。


「……なんで違う品種で作るの?」


 それは、紅茶用の品種で緑茶を作ってもおいしくないからです。
逆に緑茶用品種で作った紅茶も、あまり飲めたものじゃないですよ。ちょっと飲んでみます?

 まずは「紅茶品種で作った緑茶」。


「ごくごく……んぐっ! ちょ、超苦いっ……! まずっ! ぺっぺっ!!」


 でしょ? じゃあ次に……


「あっ、もういいから、次の話!」


 そう? 残念。……まあ紅茶、烏龍茶、緑茶の原料は、
品種の差こそあれ、みんな同じお茶の葉だってことです。


「でもみんな同じ原料なんだったら、どうしてあんなに色も味も違うの?」


 それは、作り方が違うからです。


「作り方が違う?」


 簡単に言うと、紅茶はお茶の葉を発酵させてから作るお茶です。
逆に緑茶は、まったく発酵させずに作ります。
烏龍茶は半分だけ発酵させてから作ります。


「発酵って……腐らせてるの!?」


 いえいえ(^^) 厳密に言うと、「発酵」ではなく「酸化」ですね。
お茶の葉は採ってしばらく置いておくと、葉っぱの中の酸化酵素によって
だんだん茶色くなっていき、同時にバラのようなよい香り(萎凋香(いちょうか))がするようになるのです。


「たしかに紅茶はいい香りがするもんね」


 この「香り出し」の発酵をする紅茶と烏龍茶は、香りを楽しむお茶と言えます。
逆に香りを出させない緑茶は、味を楽しむお茶と言えるでしょう。


「ふーん」





日本茶の種類

 さて、今度は緑茶――中でも日本茶について詳しく見ていきましょう(^^)


「緑茶と日本茶は違うの?」


 同じですよ。ただ緑茶自体は中国でも作っていますからね。
日本に限ったモノについてお話しようと、そういうわけです。


「なるほどー」


 では日本茶の種類ですけど、とりあえず一番多いものは「煎茶」です。
「お茶」と聞いて、まずイメージにあがるものは、まちがいなくこの「煎茶」。
 グレードによって「上級煎茶(1,000〜3,000円かそれ以上)」、
「並級煎茶(500〜800円以上)」、「下級煎茶(300円以下)」
と言い分けたりもします。


「じゃあほかには何があるの?」


 まず高級なものが「玉露」、「抹茶」、「かぶせ茶」。
安いものが「番茶」、「ほうじ茶」。特殊なものが「釜炒り茶」。

 といったところかな。


「あれ? 「深蒸し煎茶」とか「浅蒸し煎茶」とかは?」


 それらは、お茶の葉を蒸す時間が長いか短いかの差だけですから、
あとあとの「製茶工程」のところで詳しく説明します。


「うん、よく分からないけど、よろしくー」


 ではまず「玉露」。さいこちゃんは、玉露を飲んだことあるかな?


「ないでーす!」


 じゃあ百聞は一見にしかず。
とりあえず飲んでみましょう。…………はい、どうぞ。


「え? こんなオチョコみたいにちっちゃい湯のみで飲むの!?」


 味が濃密なので、これくらいが適量なのです。
たくさん飲むと、おなかを壊しますよ〜。


「どれどれ……うわ、すっごい味!」


 でしょう? それがアミノ酸の味――「旨味(うまみ)」です。
お茶は高級になればなるほど、この旨味が多いのですけど、玉露のそれは桁違い。
とんでもなく濃密です。


「なんか、青海苔みたいな香りがするよ?」


 それは「かぶせ香(か)」といって、
玉露、抹茶、かぶせ茶といった、旨味の強いお茶にだけある香りです。おいしいでしょ?


「ん〜……たしかにおいしいけど、ちょっと濃い〜……」


 まあ、ふつうの煎茶の感覚で飲むと、
これら玉露、抹茶、かぶせ茶は、味が濃密すぎますね。私は好きなのですけど。


「これはまた、煎茶とは、お茶の葉の品種が違うの?」


 いえ、同じ緑茶用品種のお茶の木です。
……が、この玉露、抹茶、かぶせ茶は育て方が違うのです。


「育て方?」


 玉露、抹茶、かぶせ茶のお茶畑は、
葉っぱを収穫する1週間〜3週間前から、お茶の木に覆いをかぶせて、
葉っぱに太陽の光が届かないようにするのです。


「えー! そ、それでどうなるの!?」


 そうすると、お茶の木はほとんど光合成ができなくなるので、
まず葉緑素が増えて、緑色が濃くなります
 それから、根っこに冬の間蓄積された栄養分でやりくりするために、
葉っぱに大量のアミノ酸(旨味の成分)が送られるのです。

 そういった葉っぱで作ったお茶が、玉露であり抹茶であり、かぶせ茶です。


「うはー、そんな苦労を……」


 じゃあ、次に安い「番茶」と「ほうじ茶」。


「これはどうして安いの?」


 それは原料の葉っぱが、荒っぽいからです。
専門用語だと「硬葉(こわば)」と言います。


「硬葉だと安いのね」


 そうです。ちなみに、やわらか〜い若芽のことは「みる芽」と言います。
高級茶はみる芽で作られ、下級茶は硬葉で作られます。


「ふーん、そーなんだ」


 硬葉で作ったお茶は、とっても青臭くて、旨味もなくて、そのままではどうしようもないのです。
そこで、製茶工程の最後の「火入れ焙煎」で葉っぱを強〜〜〜く、強〜〜〜くあぶって、
味よりも「火香(ひか)」を際立たせたのが、「番茶」です。

 「ほうじ茶」はもう、お茶の色が茶色くなるまで、超超超強火で
「火入れ焙煎」したお茶です。こちらも、「火香」を楽しむもので、味はあまりしません。


「香りを楽しむって、なんだか紅茶や烏龍茶に似てるね」


 いいところに気がつきましたね! まさにそのとおりです。
日本茶においては、味の強いものが高級茶、香りの強いものが下級茶ということです。


「あたしは、ほうじ茶を冷やして飲むのが好きだけど……」


 ああ、あれはおいしいですよね。
じゃあ最後、「釜炒り茶」。


「それはどういうお茶なの?」


 ふつうの日本茶を作るときは、まず最初に「葉っぱを蒸す」ところから始めます。


「ふんふん」


 ところがこの釜炒り茶は、最初に釜で葉っぱを炒るところから始めるのです。
ちなみに釜というのは、フライパンみたいなものです。


「それで何が違ってくるの?」


 とりあえず飲んでみてください。…………はいどうぞ。


「ごくごく……あっ、なにこれ。香ばしくて、すっごくやさしい感じ!」


 なかなかいいでしょ? これは「釜香(かまか)」といって、釜炒り茶特有の香りなのです。

 釜炒り茶は日本では九州の一部で作られているだけで、珍しいものなのですけど、
中国や台湾では、むしろこの釜炒りのほうが主流なのです。


「どうして日本で釜炒りは主流じゃないの?」


 日本人は釜炒りより蒸し製のお茶のほうが好みだ、というのがあります。
あと釜炒り茶は、均一に同じような味に仕上げづらいという点もあります。

 つまり、「あれ? なんだか前に買ったお茶と味が違うぞ?」と
いうことがよく起こってしまうので、売りづらいのですよね。


「あーなるほどねえ……ちょっと残念」


 それじゃあ、次回は「お茶の産地」について
お勉強しましょう(^^)


「はーい!」



1:お茶の起源
2:お茶の種類
3:日本茶の産地
4:製造工程
5:お茶のおいしい淹れ方
6:保存方法


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