中国二億五千万年、驚異の大恐竜博

恐竜群居

巨大恐竜の佇む空間を抜けると、更に巨大に拓けた空間に多数の化石が群居する場所へ抜けた。
「恐竜研究区」と題されたその空間にはジュラ紀から白亜紀後期まで幅広い、そして地域もあらゆるところから集められた化石が所狭しと並べられていた。その多くはティランノサウルス、トリケラトプス、ステゴサウルスはじめ結構馴染み深いものの全身骨格も多いのだが、ここではそれら定番の全身骨格は敢えて外して恐竜の生態にまつわるものを主体に紹介する。

[5-1]は足跡の化石の一例だが、これらは恐竜の活動状況を推し量る数少ない痕跡の一つである。推測できる事として歩行速度や集団か単独かの構成単位、獲物を追う際の習性等があるが、いずれの場合も特定に至るのは難しい。はっきりさせる事のできた例として恐竜の尾について、尾を引き摺って歩いていた痕跡が無い事から、尾は浮かせてバランスをとるスタビライザーのような役割を担っていた事等が挙げられる。
因みに写真右のものは後期ジュラ紀の中国陝西省で発見された獣脚類のものらしいが、内股で歩いた様子が伺える珍しい例である。

[5-2]はその一つ一つが30cm以上もある巨大な卵で後期白亜紀の獣脚類のものあると推定される。中国河南省の発見になるのだが、驚かされるのはこの河南省から発見される卵の化石の量は実に世界の90%以上といわれ、にも関わらず成体の発見例が少ないという稀有な場所である事だ。その為どれを親とする卵かの判別も難しいらしい。またその異常な出土状況から恐竜の大量絶滅と結び付ける事もあるが、年代が若干古い為大勢は否定的だ。

[5-3]は中国遼寧省で発見されたトリケラトプス等角竜の一種、前期白亜紀の"プシッタコサウルス"の親子?の化石とされるもの。この化石が珍しいのは1体の成体に対し、幼体は少なくとも34体が確認されているという点である。卵の巣でも一箇所で20個を超える例は稀で、まだ骨がしっかりとしていない状況とはいえこれだけ多くの孵化後の幼体が1体の成体(雄か雌か、また真の親子関係かは不明)の元で育てられていたかもしれないという事実は、卵を産んだら親子の関係はそれまでと思われていた従来の考え方に揺らぎを与えるものだった。また最近の別の恐竜の発見例では、卵に覆い被さるような状態で発見されているものもあり、恐竜が鳥の様に卵を温めていたという事も確認されている。

[5-4]は別にこの状態で発見された訳ではないが、恐竜の交尾の状況を推測したものとして展示されていた。しかし交尾の状況を示すものの発見例は無く、あくまで現生の鳥類やワニから予測したもの。まあコトの最中にお亡くなりになって化石として発見されてしまっては恐竜だってこっぱずかしいものでしょうな。
標本は後期白亜紀アメリカ・ユタ州で発見されたもの。

[5-1]鳥脚類(左)と獣脚類の足跡


[5-2]獣脚類の卵


[5-3]プシッタコサウルスの群れ


[5-4]テスケロサウルス交尾中?

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