巨骨は語る、世界最大の恐竜博2002
ハウ発掘地 〜懐古反証〜
フルCGのオープニング映像で来場者を恐竜の世界に誘うと、最初のコーナー「ハウ発掘地」へと導かれる。そこで待ち受けていたのは、ジュラ紀の恐竜の定番中の定番、"アロサウルス"と"ステゴサウルス"だ。しかし、ここに展示されているそれらは、こんなに定番の恐竜でありながら自分の幼い頃見知った姿とは違っていた。いや、今となってはもちろん承知している事なのだが、自分がこれらを最初に知った1970年代と現在とではこれらの骨格の組み方等が随分違っているのだ。
アロサウルス
ステゴサウルス
下図は一般的な獣脚類[図A]と竜脚類[図B]についての復元イメージを、1970年代と現代の比較として拙いながら表現してみたものだ。
アロサウルスもこの分類に入る図Aの獣脚類は、昔のイメージはいわゆる怪獣そのもので、背筋を伸ばし、尻尾を引き摺るような姿勢で表現されていた。架空の生物なんで不適当かもしれないけど、この変化って「ゴジラ」を例に取ると分かり易いかな。お馴染みの立ち姿の日本版ゴジラが昔、前傾姿勢のハリウッド版ゴジラが今の解釈といったところか。このイメージの変化には、こうした骨格の解釈の変遷がまともに影響しているようだね。また、この辺の事は後に紹介する恐竜が現在の爬虫類よりは鳥類に進化していったのではないかという過程の根拠ともなってくる。
一方図Bの竜脚類についてだが、こちらも以前の爬虫類的解釈とは異なる部分が幾つかある。
まず獣脚類同様尻尾を引き摺るような解釈は無くなっている。これは首と背中の部分とセットで考える必要があるのだが、この種の恐竜はその巨大な体を支える為に背中に太い筋肉を持ち、その前後に伸びた首と尾を引っ張り上げるような形でバランスを取っている。構造的には、会場でも紹介されていたが、レインボーブリッジ等に代表される吊橋型の大型橋脚を想像して頂くと理解し易い。橋全体を支える為の高く伸びた橋脚部分が恐竜の背中と考えて頂ければその姿に類似性を見出せるだろう。尻尾はバランスを取る為の役割が大きいと考えれば、やはり引き摺るような事は考え難いところ。この辺は獣脚類も一緒。
また、脚の着き方も大きく変化していて、昔はワニ等の爬虫類同様、体の横に膝が突き出て膝から下が地面に垂直に伸びるように描かれていたが、これではこの巨体を支えるのは難しい事等から、現在の象等に近い、脚の付け根から地面へ真下に伸びるような形に解釈されるようになった。上記写真のステゴサウルスは分類上剣竜類ではあるが、他の四足歩行型の恐竜のほとんどが同じような解釈の変更を見ている。
それからこれは図で表せるところではないが、恐竜は恒温動物ではないかという事がいわれる事もあった。それ以前は現代の爬虫類同様変温動物で、気温の変化によって体温を保つ事のできないものとされていた訳だが、これについてはやはり変温動物であったろうといのが大勢らしい。大型化した恐竜は体積に比して表面積が少なくなる事で体温を下げ難くしているのではないかというのだ。後述する"羽毛恐竜"は逆に恒温性を獲得する事で小型化へ進むという事になるらしいが。
以上、ここ20〜30年の解釈の違いを簡単に振り返ってみたが、こうした解釈の変化も最終決着かどうかはもちろん誰にも分からない。恐竜という大枠での解釈は随分解決してきたといえるかもしれないが、個々の種については決定打の少ない種の方が多いかもしれない。何しろ完全骨格が発掘される例は稀で、今後の発掘によっては未発見部分が以前の解釈を覆す事もあるだろう。実際、これだけ有名なステゴサウルスも、背ビレの付き方について決着したのはごく最近という事らしいしね。