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海上保安庁のS-76Cは、過去にも事故で失われている。
函館航空基地所属のMH733(JA6733)は、1998年(平成10年)2月20日、北海道亀田郡恵山町の恵山岬南東20nm(約37km)の沖合いで、巡視船PM73"びほろ"(函館海上保安部所属)の甲板を使った夜間ホイスト訓練に、航空機B200 "MA816"(千歳航空基地所属)と共に参加していた。
この訓練は、約6ktで航走中の巡視船の甲板に対し、初めにB200の投下した照明弾の元でホイスト作業を行い、次に照明弾の支援を受けないで暗闇下で同作業を行うというものだった。
照明弾の元、3名の降下員に対して訓練を行い、続いて3名の巡視船所属潜水士に対して訓練を行った。
初めの訓練終了後、機長は周囲の視界が不明瞭であると感じ、また船のローリングやヨーイングが激しくなったと感じたため、18時25分頃、以降の訓練の中止を申言した。
函館基地に帰投するため、巡視船の照明の元で甲板上の3名の降下員を揚収し、巡視船の左舷から上昇離脱した。
その後、低空で不可解なコースを取って大きく旋回し、18時39分頃、巡視船びほろの船首に接触、続いて右舷側に激突して海面に墜落した。
この機体には機長と副操縦士のほか、5名の搭乗員がいたが、両パイロットを含む4名が負傷(1名重傷、3名軽傷)、他3名が意識不明となり、搬送先の病院で死亡するという痛ましい事故となった。死亡した3名の内2名は溺死、1名は低体温で、海上保安庁においては以降、着水した機体からの脱出訓練により力を注ぐこととなった。
墜落した機体は仰向けの状態でしばらく漂流後水没、接触された巡視船には、船首部に2箇所の破孔が生じ、船首部・舷側に多数の擦過痕が残った。
事故原因は、機体に異常が見られないこと、また機長らの証言により、機長の空間識失調によるものと報告されている。
海上保安庁はこれまでに述べ5機のS-76C/C+を導入しており、 これで2機が失われ、損耗率は40%である。
また国内では他に1機が失われており、インシデントレベル以上の事故は3件になる。
アメリカNTSB(国家運輸安全局)管轄では、1978年からの27年間で、インシデントレベル以上のS-76に関する事故は49件発生し、42人が死亡している。
大部分は人為的要因だが、エンジントラブルとの関連については筆者が目下調査中。
最後に、以上のレポートは海上保安庁、シコルスキー社に対して誹謗中傷を行うものではなく、あくまでも客観的な事実のみを述べていて、悪意を含んだものではないことをご了承ください。