その日はクリスマスイヴだった。
夜が明け、一日の始まりを鳥達が喜んでいた。
レンガで造られた大きな家。
庭には緑や赤で飾り付けられた大きなもみの木。
その家の玄関から髪が長くて端整な顔立ちの女性が出て来た。
ポストを開け、新聞を取り、再び家に戻ろうとした。
その時、雪で白く染まった地面の上にある黒い物がふと目に入った。
彼女は不思議そうにその黒い物体を覗き込んだ。
黒い物体の近くに一通の手紙が落ちていた。
彼女はそれを手に取り、開封し、読んでみた。
恋人からの手紙だった。
手紙の所々に赤く滲んだ箇所があった。
手紙は後から後から落ちてくる雫によって濡れて、更に文字が滲んでいった。
彼女が手紙の最後の一文を読み終えた時、とっさに黒い物体の方を見た。
彼女はしゃがみ込み、黒い物体の上に覆い被さっている雪を白くて華奢な掌で払い除けた。
それは、黒猫だった。
熱い雫が黒猫の上に落ちた。
彼女は、もみの木の近くに穴を掘った。
そして、もう動かない黒猫を穴の底へ横たえて、静かに土を被せた。
更にその上から十字架を挿した。
彼女は涙を流しながら両手を組み、安らかに眠るよう祈った。
涙はずっとずっと止まらなかった。
そして、彼女は十字架にその黒猫の名にアルファベットを一つ加えて書いてやった。
十字架には、
聖なる騎士 ここに眠る
と書いてあった。
Fin.
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