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いのした きよし

井下 清

いのした きよし

1884.7.25(明治17)〜 1973.8.8(昭和48)

明治・大正・昭和期の公園設計者、多磨霊園設計者

埋葬場所: 8区 1種 18側 18番

 京都府聖護院村出身。陸軍軍医の井下気一・要子(同墓)の長男として生まれる。 1894(M27)父が没し、母は10歳の清を連れて弟の家に一時身を寄せ、産婆の資格を取得した後、二人で暮らす。醸造学を学ぶため蔵前高等工業学校へ入るが、東京高等農学校に転校し、1905卒業後、東京市役所公園課に奉職。
 井の頭公園をつくりあげる最初のころから、日産厚生園を併合して玉川上水の南側に公園をひろげる計画まで携わり、井の頭池の水源「お茶の水」を今の石造の井側に造るなど公園の設計を指導した。 「自然文化園」完成まで養育院付属井の頭学校あと地を引き続き、武蔵野博物館、祖先の村、孔雀園などの造成も携わった。 全国の植樹祭や緑化推進協議会の会長として、東京都の文化財保護委員会の専門委員、渋沢栄一発起の白河楽翁公顕彰会、鳥居龍蔵博士の「武蔵野会」の創立以来、戦後の武蔵野文化協会再発足から死去するまで、井之頭池中心の郷土文化の柱であった。
 '23(T12)二代目公園課長に就任し、同年、かねてより建設に携わっていた、わが国初の公園墓地の多磨墓地を誕生させた。 1903林学博士の白澤保美からドイツのハンピエツナーによる風景墓地の研究発表を贈られ公園墓地の研究の動機とし、日本での公園墓地研究を最も早く始めたドクトル本郷高徳の援助を受け、また、仏・伊・米等の外国都市よりも資料を収集し研究に従事。 結果、'18(T7)わが国古来の習俗、国民感情を基本とし、欧米(主としてドイツ)の墓地の形態と制度を取り入れた新墓地建設の成案を得た。 '19東京市は墓地予定地を市外多磨村に定め、新墓地の計画案を、同年12月に内務省に提出し、'20.8東京都市計画事業多磨共葬墓地として決定し、同年12月14日内閣の許可を受け、ここに正式決定をみるに至った。
 当時の墓地の広さは30万坪。当時東京市長に後藤新平が新市長に就任したばかりで、その助役に永田秀次郎、池田宏、前田多門が任命。 総額8億円の経費をもって東京市を大改造しようとした。この計画の16項中の第12番目に大小公園及び広場類の建設及改良費として2000万円、第13番目に、葬式場、納骨堂及墓地火葬場の新設費として1600万円とうたわれていた。 この時期は、第一次大戦参加による大正の好景気を迎え、市の財政は潤っていた。多磨霊園建設はこの好況での財源で作られた。 '21用地の買収が完了し、'22工事着手、'23.4.20開園し、共用開始。初年度の使用者は578人と少なかったが、同年9月に起こった関東大震災での被災寺院の寺院専属区画の設置、東郷平八郎の国葬による埋葬で人気が高まった。
 関東大震災後の帝都復興事業で復興小学校に併設された52の東京市立公園を設計築造する。 この頃、大塚公園も井下のもとで、市公園課の直営工事として施工され、'28(S3)開園した。'46.3.31定年により40年7ヶ月の長きにわたり勤務した東京市を退職し、翌月より東京農業大学の教授となって、東京農大の復興の学園づくりに尽力した。 '63藍綬褒章、'64勲三等瑞宝章。主な著書に『建墓の研究』など。享年89歳。

<多摩の人物史(武蔵野郷土史刊行会)>
<「多磨霊園」村越知世>
<井下清先生業績録 前島康彦など>


墓所

*墓石は和型「井下家之墓」。左右に墓誌があり、左の墓誌に刻む。戒名は園林院殿慈雨日浄大居士。墓石は昭和十三年六月十六日青山墓地より改葬。なお、同墓には孫で心理学者・慶應義塾大学名誉教授の井下理も眠る。

*考古学者の鳥居龍蔵とは武蔵野会等で関係深く、鳥居龍蔵の死去二年後に自らの手で設計担当した多磨霊園の碑石形像区域に鳥居龍蔵記念碑を建立した。

*「東京都多磨霊園案内」パンフレットでの著名人墓所の紹介での肩書は『行政ランドスケーププランナー』と表記されている。「ランドスケープ・プランニング」とは都市や地域、地方広域圏、国土保全に至る規模のプランニング・計画策定行為のことであり、環境都市計画などで用いられる用語である。

*多磨霊園の生みの親である井下清が日本初の公園墓地構想に着手した際に、外国の公園墓地研究を最も早く始めていた師匠の本郷高徳(14-2-34)に相談をしており、本郷は多磨墓地設計のアドバイザーとして援助している。

*2023(R5)多磨霊園は開園100周年を迎えた。



第318回 2023年 多磨霊園は開園100周年
多磨霊園生みの親 井下清 お墓ツアー 多磨墓地開園秘話


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