『My Belle』ネタばれ感想。

 
    ここでは「ネタばれ有り感想」を語りたいと思います。
    まだ観てなくてネタばれ嫌いな方は、この先は読まないで下さい(念のため)。
 
 
    元女優・立原冴子(坂口理恵)は夫と離婚、一人娘のみちる(中村亮子)と共に
   新潟から東京の実家へと戻ってきた。これを機会に女優に復帰しようとする冴子だ
   が、受けたオーディションはすべて不合格。最後の頼みと脚本家の兄・修造(西川
   浩幸)の家へ行くと、たまたま修造が劇団プロデューサーの五木(岡田達也)を連
   れて帰ってくる。ところがふとしたことから、みちるが五木のプロデュースする芝
   居『小さな貴婦人たち』への出演を頼まれる。冴子や修造の妻・夕佳(岡田さつき)
   は最初反対するが、芝居嫌いなはずのみちるが何故か話を受けたことで出演が決定
   する。
    稽古初日、顔合わせの日。演出家の城山(大内厚雄)が提案する方法に役者たち
   は戸惑い気味。みちるは自分のペースを崩すことを好まず、冴子は気が気でない。
   それでもなんとか、稽古は進んでいくのだが…………
 
 
    坂口さん演じる「冴子」と中村亮子さん演じる「みちる」が、新潟の駅で電車を
   待つシーンがオープニング。そそっかしい母と頭が良くて(小学6年生にしてIQ
   198)大人びた娘の性格が分かりやすい。
    後ろでは他の登場人物が思い思いに電車待ちの時間を過ごしている。2回目から
   は、誰が何をしているのかに結構注目していました。「冴子」が切符の在り処を忘
   れて騒ぐところでは、ウォークマンを聴いている人はヘッドホンを外して騒ぎを見
   ていたりしました (^_^)
 
    このシーンの次がダンス。テーマソングの『goodbye and good luck』がBGM。
    これ、ものすごく意外でした。
    ちょっと予想しなくもなかったのですが……ダンスシーンの曲=テーマソングと
   いうこともキャラメルではわりとあるから。でも「聞かせる」系の曲だしなー、と
   思ってて、「違うだろう」と結論づけていたのです。それが全然逆でしたから……
    でも。すっごいよかったんです!
    もともとダンスシーンはほぼ無条件に好きなのですが、今回のは、終わってほし
   くないくらい気に入ったダンスでした。「あーこういうのもありなのかー」という
   感じで、とっても新鮮でした。
 
    今回の舞台は、ネタばれ無し感想にも書きましたが、好みに左右されるところが
   大きいと思います。「舞台を創っていく過程」がストーリーの主部ですから、その
   「過程」が、人によっては興味のないものだったり分かりにくかったり、あるいは
   「本当の芝居創りはこんなに甘くない!」と思うものだったりするでしょう。
    ま、興味云々はともかくとして、「本当の芝居創りは……」とかいうのは、個人
   的には変な感想だと思いますけど。だってキャラメルは13年も「本当の芝居創り」
   をしている「劇団」ですよ。「本当の芝居創り」が甘くなんかないってこと、十分
   すぎるほど分かってるに決まってます。そういう感想を言う人はきっと「リアルな
   ものほど良いもの」みたいな認識を持っているのかも知れない。でもリアルだから
   いいとは限らないんじゃないでしょうかね。キャラメルの芝居の方向は「エンター
   テイメント」なんだし。
 
    それはそれとして。
    初日以降、数回観に行きましたが、私自身にとっては「観れば観るほど好きにな
   れる」作品でした。
 
    今まで話だけで知っていたキャラメルの稽古方法や演劇に対する姿勢が垣間見ら
   れて、演劇をやっていた私には興味深かったです(やっているからこそ楽しめない、
   という人もいますけど)。
 
   「冴子」と「みちる」の母娘は可愛かった。「冴子」のキャラが今までのアコース
   ティックシアターのヒロインのものと似ている、とか「みちる」が小学生に見えに
   くい、とかの意見もありますが、お互いがお互いを好きな気持ちがだんだんと見え
   てきて、私はけっこう気に入ってます。
 
    今回、「おぉ」と一番思ったのが、大内さん。同期の細見さんや南塚さんと比べ
   て、もうひとつ見せ場がないというか地位を獲得していないというか、そんな感じ
   がしていたのですが、今回の「城山」で「ようやくカッコよくなれた」んじゃない
   かな、と思います。
 
    タイトルにもなっている「Belle」は、「城山」が「冴子」に対する気持ちを初
   めて言う時に使われているのですが、私がいくつか納得いかないところの一つが、
   ここでした。
    外国ではどうか知りませんけど、日本で「Belle」って言葉ははっきり言って一
   般的ではないじゃないですか。そんな言葉を「説明なし」でいきなり使ったら、な
   んだか「無理矢理」って感じが…………どうせならもっと大事に扱ってもらいたか
   ったなぁ、と。
    知り合いの意見で「そんなことを、「Belle」と思っている人の娘に言うのか?」
   というのがありましたが、聞いてみて「あ、それもそうだな」と思いました。同時
   に、納得のいかなかった理由がさらに明確になりました。「みちる」に、どうして
   「冴子」に厳しくするのか? と問い詰められて仕方なく言う、といった設定なん
   ですけど、…………言いませんよねぇ、普通。適当にお茶を濁してごまかす、方が
   当たり前だよな。あそこで告白しちゃったことで「な〜んだ、それでかぁ」という、
   一種「しらけた」気持ちが多かれ少なかれ生まれちゃうから、せっかくいいキャラ
   クター作りしているのに、もったいないですね。
 
    今回は、元惑星ピスタチオの平和堂ミラノさんが、「田嶋ミラノ」と名前を変え
   て、客演されています。客演決定が早くなかったわりには出演頻度の多い役です。
   「しおり」というTVや映画で人気のある女優で、舞台は『小さな貴婦人たち』が
   初めて、という役どころ。私はピスタチオ時代のミラノさんがどんな役をやってい
   たかよく知らないのですが(なにせ1作品しか観てないし)、「もっと高慢な性格
   の方がよかった」みたいな意見をちょこちょこ聞きますね〜。私は今の感じでも、
   演出家に対して反抗的なところが見えていいかなぁと思うんですけど。
    来年5月に上演予定の「ネビュラプロデュースVol.2」に、今度は脚本家として
   の協力もなさるとのこと。ミラノさん脚本作品は観たことがないので、たのしみ。
 
    夏・秋と文字どおり休みなしで頑張られた西川さん。今回の「修造」は脇キャラ
   で、大好きな人にとっては物足りないかも知れない。でも人が言うほど出番が少な
   くはないし、たくさん笑わせてくださるし、西川さんご自身も生き生きしていて、
   おいしい役どころだと私は思います。基本的に、西川さんは脇役の時の方が生き生
   きしているとか……遊べるからでしょうか。
 
    「修造」の奥さんで「冴子」の高校時代からの親友でもある「夕佳」。岡田さつ
   きさん、夏に続けての奥さん役。「奥さん」というよりは「友達」のカラーが強い
   かな。西川さんとこういう形で組むのはめずらしいですね。
 
    笑わせてくれるキャラ、としては岡田達也さん演じる「五木」と近江谷さん演じ
   る舞台監督「早乙女」ですね〜。岡田達也さんは夏が「もうひとつ」な感じだった
   ので、今回のが余計によくはまって見えます。近江谷さんは……もう言うまでもな
   いというか。「近江谷さんだなぁ」って感じです、ほんと(←知ってる人じゃなき
   ゃ分からんて!)「早乙女」との二人シーンがある制作助手「野坂」を演じる清水
   さんは、きっと大変だったんじゃないでしょうか……いろんな意味で。カーテンコ
   ールも非常に笑えます(あ、これは役とは関係ないか)。それでもきちんと締める
   ところは締めている。さすがベテランですね。
                                 (98.11.27)
 
 
 


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