CSで先に東京初日を観てストーリーは知ってましたし、その時は 体調が悪かったこともあって「もうひとつかな……」と感じましたが、 生を観て良かったと思います。というか、初見が生だったらちょっと 最近には珍しいぐらいにはまっていたかも知れません。それぐらい、 今回生で観た時の舞台の雰囲気が好きでした。 大内さんの役がここ2年の中では結構良かったこと、文字通り体を 張っていた西川さんのギャグ(笑)、坂口さんの「ミセス・ワトソン」 (やっぱり坂口さんは個性的な脇キャラが似合いますね)。 捨てられない秘めた思い、「恭一」の孤独を支える「家族」の思い。 好きだったポイントを挙げるならこのへんでしょうか。 あ、篠田さんのお父さんと、久々の青山さんもよかったです。前者 は定番化しちゃってるのが「どうだろうなー」ですけど (^^; 音楽もわりと良かったです。舞台で聴くと少々シーンに合わない・ うるさく思えるのもあったんですが、CDではそんなに気になりませ んでした(あまり今までのキャラメルオリジナル音楽っぽくなかった のが良かったかも。CD聴いてると全然別のアーティストのアルバム という感じがしましたから)。……ある意味、気に入った曲を大音量 で聴きたくて、当日券で2度目を観に行ったとも言えます(苦笑) 逆に気になったのは、借金の問題とか……5億だか10億だかの借金 が保険金(保険に入ってたとしてですが)で払いきれたとは思えない し。法律の詳しいことは知りませんけど、心中事件の後その件はどう なったんだとやっぱり思ってしまう。 佐藤さんの役が『ミスター・ムーンライト』時並みに情けない感じ がしたのも、なんか勿体無い。まぁああいう男の人って現実にもいる でしょうけどねー。 岡田さつきさんが珍しく悪役側に回ってましたが……うーんなんか 中途半端。どうせなら、客演の平野くんじさんの「山名」並みに徹底 させた方が良かったかも。今までなら笑えてた小技の数々も、最近は ちょっとうっとうしい気もするし……下手ではない(むしろ上手いと 思う)んですけど、回数が多いんですよね……時として悪目立ちして るようにも見えて。 中村亮子さんの「唯」……あの役は一応ヒロインなのでしょうけど、 この物語だけを考えれば、「ミセス・ワトソン」の方が役割が重いし キャラクターも立っていると感じます。ダブルヒロインと言えばそう 言えなくもないですが……でもちょっと魅力に欠けていた印象です、 個人的には。「恭一」や「健成」が彼女を好きになった理由の「想像」 はつくけど、実感として分かりにくい……といいますか。この物語の 後、「恭一」と「唯」のその後は暗示させつつも観た人にお任せ、と いう感じですが……感情的にはうまくいけばいいなと思う反面、客観 的な考えでは、家族があっさり認めちゃっていいのかなぁ?とも (^^; あるきっかけから、自分の人生の時間を一年ごとに、しかも不規則 に、精神だけが跳んでしまうようになった「恭一」。何年先か(もし くは前か)、時には何十年先へ(前へ)行くのか分からない。現実的 な苦労は当然大きいだろうけど、内面的な苦労は多分もっと計り知れ ない。……理解して支えてくれる相手が「家族」だったのは本当に、 彼にとってのせめてもの幸運だったと思う。 タイムトラベルの物語で、お約束のように問題になるのが「タイム パラドックス」。……正確な意味は確認してないんですが。要は過去 や未来の行った先の時間で、人や事柄に影響を与えてはいけないって いうのが、タイムトラベルものの「鉄則」らしいんですけど……でも これって、自分が生きてた時間に戻ることが前提になってるからこそ の「鉄則」という気もします。さらにつっこんで考えてみれば、もし 「運命」があるとするなら、タイムトラベルをした先で何に出会い何 が起こるかも「決まっている」ということも言えるわけだし。「運命」 は関係ないとすれば、それはそれで「お約束」の意味は薄れてくるし。 どちらにしても、行った先の時間で生きていかなければならないの だとしたら、影響がどうのこうのと言ってられなくなるのは確かでは ないでしょうかね。一定期間ならともかく、ずーっと誰とも会わずに 何にも触れずに過ごすことはできないんだし。「恭一」はどうしたっ て「普通の時間」には戻れないんだから、なおさら。……諦めや絶望 がつきまとうだろうし、その心情は本人以外は完全には分からない。 だけど、生きている以上、一生懸命生きてみるしかないのも事実だと 思う。未来を知ってるか知らないか、はずいぶん違うように思えるけ ど、本当は紙一重なだけの問題かも知れない。何がきっかけで未来が 変わるか分からないのは、どちらにしても同じなのだろうから。 また1年先にはどの年へ行くか分からない、そういう不安を抱えな がらだから、実際には凄く難しいことでしょうけど。……でも、自分 の人生と言えるものを少しでも、生きていってほしいと思いました。 (02.4.29)