【アニメ】
機動戦士ガンダムSEEDデスティニー 31話〜35話(TBS)
シンが目立つ時と言うのは、人としてどうかと思うことが多いような気がする。あることに気づくまでは、わざとでしゃばらせているのでは、なんて思ったりしていた。そうこうしているうちに、彼の暴走が誰にも止められなくなってきた。シンを指導するはずだったアスランは、自分のことで精一杯。となると、グラディス艦長しか彼を再教育してもらえなくなる。しかし、シンの行動は想定の範囲外で、とてもではないが予想することなんて不可能だった。その上、シンの裁定で処罰が不問になったことで、シンの傍若無人さに拍車が掛かってしまった。
それが最近になってだが、実はレイ・ザ・バレルがシンを影で操っていたということに、ようやく気がついた。レイは目立たない存在であるが、要所でシンに適確な助言やサポートをやっている。恐らく、レイがシンを監視しつつ、折を見てミネルバの情報をデュランダル議長に送っているのだろう。議長の実質的な影武者、それがレイの真の役割ではないか。シンを心配する素振りをしているのも、実は議長に対して疑惑を抱いてないかどうかを、つぶさに観察していたのだとしたら・・・。そう考えると、レイは思ってた以上に曲者なキャラかもしれない。
そう言えば、キラとシンとの戦いの時も、キラの癖(相手のコックピットを狙わない)をレイが冷静に分析したからこそ、辛くもシンが勝てたといっても過言ではない。それにしても、キラは覚醒していたのだろうか。少し前までのキラとシンの実力差はどうだったかというと、共に覚醒した状態で戦ったことはないので、本当のところよくは判らない。とはいえ、いくらキラに対抗する決定的な情報を得ていたとはいえ、これ程の短時間でシンの力がそんな急に伸びたことが、俄かに信じられない。となると、あの時キラは覚醒してなかったということか。その割にキラの目は、戦闘前から覚醒した時の色になっていたのだが、果たしてどうなんだろう。
ふと疑問に思うことがある。世界を平和に、なんて叫ばれて久しいが、一体全体どういった状態のことを指しているというのだろうか。武力による争いを無くせば良いというが、力に対抗する為に用意された刃で戦争を終結させたとしても、必ずや新たな火種を生むことになろう。
理想の平和とはどういうことなのか。一切の争いや揉め事が禁止され、全ての人間が皆平等で、誰もが幸せに暮らしていける社会、ということだろうか。なんだかいろいろと矛盾が孕んでいて、そこに胡散臭さを感じてしまう。願い(それが平和であったとしても)というものは、誰かが叶えば、その時点で報われずに不幸になる人も出るのが世の常。誰もが納得のいく世の中なんて、とてもではないが、実現は不可能のように思えてならない。出来もしないことについて、あれこれ考えを巡らせても意味がない。それより、もっと現実的に実現可能な社会システムの構築が急務であろう。デュランダル議長の言わんとすることは判るが、そもそもの着地点が間違っていては、いつまで経っても戦争の呪縛からは逃れられない。
ジブリールを始めとするロゴスの取った行為は、確かに許されるものではない。だからロゴスを潰してしまえばいい、というのも、まあ、当然の流れではある。例えそれが、デュランダル議長自らが手を下した訳でなくてもだ。だがしかし、グラディス艦長がそうであるように、何かが不自然なようにも感じる。こうなることが、得体の知れない偶発的な結果ではなく、人為的に巧妙に仕組まれたものだとしたら・・・。それをある程度把握しているからこそ、アスランはデュランダル議長に疑惑の眼差しを向けたのだと思う。対照的に、シンは議長が裏で行っていることをまるで知らないから、あんなにも心から喜べるのだと思う。今のシンの状態では、現状のアークエンジェルと同様、ミネルバも事が片付いたら闇に葬られてしまうかも、なんてことは努々思わないだろう。ただ、今回のことで懐疑的な仕草を見せるグラディスが、思わぬ機転を利かせて生き延びる為の手を打つ、なんてこともあるやもしれない。
今後のポイントは、果たしてデュランダル議長は裏工作に関与していたのか否か。もしそうだと仮定して、その情報がいつ誰の手に渡るかが鍵となろう。今のところ、議長は完璧に人々の心を掌握しているが、いつどこでボロがでないとも限らない。それは、議長自身でなくても、ミーアかもしれないし、他の何者かもしれない。もし、そういう展開になったとしたら、世界は大混乱に陥り、再びナチュラルとコーディネーターによる骨肉の争いへ、という非常に面白いことになることを大いに期待したい。