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●ニューヨーク〜シカゴ〜ロサンゼルス3泊4日
マジソン・スクエアーガーデンの裏にペンシルバニア駅はあります。入り口は東京駅や大阪駅のような、いかにも鉄道の駅という雰囲気はありません。どちらかといえば、普通のビルの入り口といった感じです。ビルに入るとアナウンスの音と、人の話し声がやや響き、駅といった雰囲気になります。入り口からまっすぐ進むと総合案内所、チケット売り場があります。
総合案内所で、予約したチケットの受け取りに来たというと、まっすぐ進んでチケット売り場に行きなさいというので、チケット売り場に進みました。アメリカは飛行機の国なので、鉄道は空いているのだろう、と思っていましたが、これが大間違い。チケット売り場には長蛇の列です。
時間がちょうどお昼を過ぎた頃ということもあり、開いている窓口が少ないため、チケット購入者が並んでいたのです。時間がたつにつれ、窓口が開いてくるのですが、それでも1時間ほど掛かってしまいました。インターネットで申し込んだ予約番号を伝えるとすぐにチケットが発券されました。
荷物番をしていた家内のところに戻ると、洗面所に行きたいというので、荷物番を交代しました。その待っているとき、Amtrakの女性職員が近づいてきて、
「どこまで行くの?」
「シカゴからロサンゼルスへ」
と伝えると、
「きっと素敵な旅になるわよ。私はまだシカゴまでしか行ったことがないけど」
とアメリカ人らしい反応を見せてくれました。そして、「チケットを見せてくれる」
というので、購入したばかりのチケットを見ると、
「あら、寝台車じゃないの。寝台車は一等車なので、この先のラウンジが使えるわよ。簡単なスナックや飲み物が用意してあるから、出発までの時間、こんなところにいないで、ラウンジに行っていなさい。係員が、列車の出発時刻になったら案内してくれるから安心よ」
と教えてくれました。
彼女と話している間に家内が戻ってきましたので、早速ラウンジに移動しました。ラウンジに入ると受付があり、乗車券のチェックがあります。ペンシルバニア駅のラウンジは利用客も少なく、私たち夫婦を入れて、8組ぐらいの人しかいませんでした。
コーヒーやコーラなどの飲み物、クッキーやナッツなどはセルフサービスですが、自由に摂ることができます。昼食がまだでしたので、ホットドッグとサンドイッチを購入し、簡単なランチをそのラウンジで摂ることにしました。
●定刻通りにシカゴに向け出発
私たちが利用する列車は「Lake Shore
Limited」と呼ばれる特急列車で、ニューヨーク出発は午後4時35分です。4時頃だったでしょうか、ラウンジの中に「Lake Shore
Limited」利用のクマガイさん(私の耳にはクマジャイとしか聞こえませんが)、列車の出発時間になったので、ラウンジカウンターまで来るように、とアナウンスが流れました。
荷物が多かったので、事前に赤帽(ポーター)を頼んでおいたのですが、ポーターさんもカウンター前で私たちを待っていてくれました。ポーターにチケットを見せると、
「OK」
と一言。
彼の後に付いていくと、ホームに案内され、客車の前で待ち受けている車掌さんに私たちを紹介してくれました。車掌さんは、私たちを車両に案内し、シャワー設備や食事、フリーのドリンクやサービスについて説明してくれます。さらに、ベッドメイクが必要なら声をかけてくれればすぐにセットアップするとのことでした。
コンパートメントタイプの寝台車(Sleepers)利用の人はそれほど多くなく、7割は空いていました。
列車に乗り込み最初に驚いたことは、コンパートメントの中にトイレがあるということです。夫婦とはいえ、排尿や排便の姿を見せるというのは何とも気恥ずかしいものですが、これも経験と....。ただし、大も小も座ってやりましたが(尾籠な話でごめんなさい)。
とにもかくにも、部屋に落ち着き、しばらくすると静かに列車が走り始めました。地下ですので、外の明るさが分からないため、走り出したときには、何となく夜と感じていたのですが、地下をでるとまだ外は明るいのです。そうです、時間はまだ5時前ですのでさらに2時間ほどは景色を楽しめそうです。
部屋に落ち着いて最初にしたことは、喫煙ラウンジの場所探しです。Amtrakも禁煙が進み、列車に1カ所、喫煙ラウンジが設けられているだけです。喫煙コーナーは、私たちの車両から3つほど前の車両にありました。アクリルの透明なしきりでしっかりと囲われた場所が喫煙場所ですが、強力な換気扇の音がゴーゴーしています。私たちが行くとすでに先客がいました。椅子に座り車窓を眺めていますと、ハドソン川にだんだん夕日が沈んでいくのが見えます。川といっても、場所によっては対岸がかなり離れていますので、湖のように感じることがあります。川に写り込む緑、沈む夕日の赤が絶妙なコントラストを見せてくれます。夏ならでは風景でした。
ニューヨークを出た列車は、ハドソン川を左手に見ながら北上します。夕食の時間が来たので、食堂車に移動し、夕食をとります。寝台車の利用者は、料金の中に食事代も含まれているので、メニューの中から好きなものを選ぶことができます。私は鳥肉を家内は魚を選びました。結構いける味です。コーチと呼ばれる普通車の利用者は、食事代が含まれていませんので、10ドルから15ドル取られることになります。食事が終わり、一休みしていると、「Albany-Rensselaer,
NY」という駅に到着します。
ニューヨークから2時間半ほどのところですが、ここでBostonから来る列車が連結されます。到着から出発まで45分ほどありますので、列車の外に出てみました。大きなターミナル駅を時刻表から想像していたのですが、ターミナル駅というより、田舎のちょっと大きな駅、という印象でした。
●シャワーを浴び、就寝
食事も終わり、部屋に戻りました。乗車の時教えてもらったシャワールームで利用者がいないことを確認し、シャワーを浴びることにしました。トータルで1畳ほどのスペースがシャワールームとなっていて、半分がシャワーを浴びるスペースです。バスタオルは用意されていますが、シャンプーや石鹸はありません。着替えとシャンプー、石鹸を持ってシャワー室に向かいます。シャワールームには、
「ここはみなさんが利用されるスペースです。次の人のために、清潔に保ってください」
という貼り紙がありました。
設備は列車の中ですので、ホテルと同じクラスを求めることはできませんが、夏の旅行ではシャワーが何よりのごちそうです。シャワーを浴び、さっぱりしてコンパートメントに戻りました。私の後家内がシャワーを浴びに行きましたので、ベッドを作ることにします。ベッドは、上下になっていて、下側のベッドは向かい合った椅子を引っ張り、背もたれを倒してベッドにします。上側のベッドは天井から引っ張り出す形になっています。操作は簡単で、下ベッド用のマットレスを上ベッドから下ろすだけです。1〜2分程度でベッドが完成しました。
この列車が「Lake Shore Limited」と呼ばれるのは、「Buffalo-Depew, NY」から「Toledo,
OH」までの間、アメリカ五大湖の一つ、エリー湖の南側を走ることから来ています。Buffaloの到着時間は夜中の1時30分過ぎですので、「Cleveland」までは景色を楽しむことができませんが、「Cleveland」近くになると夜が明けてきますので、ここからしばらくは湖の景色を楽しむことができます。
もっとも、湖というより、東海道線が静岡で海岸線を走りますが、風景は、それに近いものがあります。唯一の違いは、湖岸にほとんど人家がない、ということでしょうか。向こう岸が見えませんので、湖ではなく、日本人から見れば海に近い風景です。しばらく風景を眺めていると朝食になります。
夕食も朝食も予約が必要です。時間と人数を予約するだけですが、予約時間に食堂車に行きますと、席がセットアップされています。私たちは二人組でしたの、必ず、別のカップルと一緒になります。無言で食事をするといったことは皆無で、からなずどちらかから話を始めます。夕食も、朝食も同じ質問から始まりました。
「どこから来たの?どこへ行くの?」
です。
私たちが
「シカゴ経由でロサンゼルスまで」
というと、楽しそうだね、素敵な旅行だね...
といった返事が返ってきます。ここから先は、それぞれの旅行のこと、家庭のことなどに話が進み、食事が始まってから終わるまで、1時間30分から2時間近くが掛かってしまいます。
一人ユニークな男性に会いました。最初の夕食の時席が一緒だった人です。年は40歳ぐらいでしょうか。おきまりの質問から始まりました。姪御さんの出産のお祝いにカリフォルニアまで行くのだそうです。
「奥様は?」
「家内は一足先に飛行機で行きました」
「ご一緒じゃなかったのですか?」
「私、実は飛行機嫌いなんです」
とのことです。Amtrakを利用している人たちの理由はいろいろのようですが、結構この
「飛行機が嫌い」
という理由の人を見かけました。
車と飛行機の国、アメリカと思っていたのですが、結構列車を利用する人が多いのです。費用と時間を考えると飛行機の方が圧倒的に効率的と思うのですが、どうもそれだけで移動手段を選んでいる人ばかりではないことを知って、何となく安心しました。
この男性とは結局、シカゴで乗り換えた列車でも一緒で、ロサンゼルスの少し手前で降りていきました。
●11:35定刻通りシカゴ到着
朝食が終わり、ベッドの片付けを終わると、一息つく間もなく、シカゴに到着になります。車窓からシカゴの町並みが見えてきました。列車は定刻通り11:35分に、シカゴユニオンに到着です。
シカゴといえば、そう、「アンタッチャブル」で一躍有名になりましたね。アンタッチャブルの舞台は、禁酒法時代のアメリカです。犯罪王アル・カポネが君臨していたその時代に、彼と対決するひとりの男が現れます。財務省捜査官エリオット・ネスですが、彼は仲間を集め、アル・カポネを追い詰めていきます。もともとがTVシリーズとして放映されていたものです。このTVシリーズを見ていた私としては、ブライアン・デ・パルマが1987年にリメイクしたものより好きです。
しかし、ケビン・コスナー / ショーン・コネリー / チャールズ・マーティン・スミス / アンディ・ガルシア /
ロバート・デ・ニーロといった個性派が出演している映画版もお勧めですが。もうひとつシカゴで有名なものといえば、ブルズでしょう。以前仕事でシカゴに来たとき著名なバスケット選手が経営するカフェに行ったことがあります。残念ながら私はバスケットにあまり興味がないものですから、著名なバスケット選手が経営しているカフェにいっても、その価値が分からず、知人に頼まれてマグカップを購入するためにそのカフェにいっただけですが、結構日本からのお客さんも来ていました。
もう一つシカゴでは個人的な思い出があります。やはり仕事でシカゴに来たときのことです。土曜日の夜にシカゴに入って、日曜の朝、新聞を読んでいると、「シカゴ市長杯開催(サッカー大会)」という記事が目に付きました。冒頭お話ししたように、サッカーに興味を持つ私としては、是非見に行こうと、会場までTAXIを飛ばしました。町から10Kmほど湖沿いに北上したところに、大きな公園がありますが、そこが会場になっています。6歳くらいから15歳くらいまでのジュニアカップが開催されていました。応援の親御さんも熱心で、自分の子どもを叱咤激励する姿は、日本もアメリカも大きな違いはありませんでした。
この大会は、後援がペプシコーラで、会場の至る所に、クーラーが置かれ、その中にある飲み物は無料で提供されていました。私がゲームを見ていると大会関係者の人に話しかけられました。
「お子さんが出場しているのですか?」
「いいえ、日本で少年サッカーの指導者をしているので....」
「本部にちょっと来ませんか」
ということで、本部に連れて行かれました。
本部で話をし、私が審判資格を持っていることを話すと、
「じゃ、審判やってください」
「用具を持っていませんので...」
「全部ありますので...」
ということになり、審判をやることになりました。
すべての大会というのではないようですが、スポンサーが付いた大会で審判デビューする人たちには、審判服と用具が支給されるとのことでした。こんなこともシカゴの町にくると思い出されます。
シカゴのユニオン駅はニューヨークのペンシルバニア駅に比べ利用者が多く、大変混雑していました。私たちは、ここで乗り換え、Southwest
Chiefでロサンゼルスに向かいます。Southwest
Chiefの出発時刻は午後3:15分です。ちょっと時間がありますので、荷物を預け、街に出ることにしました。
シカゴのユニオン駅にも、ペンシルバニア駅同様、ファーストクラスの旅客用ラウンジが用意されていましたが、通勤列車並みの混雑で、駅の外に出ることにしました。駅を出て道の向こうに目をやると、なんと「Route66」の見慣れた標識が目に飛び込んできました。
駅の周りを散歩しましたが、軽めの昼食を摂り、駅に戻ることにしました。ニューヨークの駅に比べ、シカゴの方が鉄道の駅らしい雰囲気を持っていました。
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