偏在化する電脳社会、WPCEXPO2003

新しい製品(モノ)より新しい技術(コト)

さて、前フリをしておいて何だがユビキタスの事は取り敢えず置いといて、個人的興味の話題から。
このEXPOへ来るのは間も無く市場に出回る新製品をちょっと先取りできるという目的もあるが、自分的にはまだ製品化が先の新技術の展示がある事も楽しみの一つとしている。
その最大の対象がディスプレイパネルの新表示方式である。
最近のPCはノートは元よりデスクトップであっても液晶パネルを中心とした薄型ディスプレイがすっかり定着。その流れは通常のテレビ用途にまで広がりを見せつつある。価格的優位すら失いつつあるCRT(ブラウン管)はすっかりスミに追いやられ、店舗によってはPCコーナーで扱う事すらなくなったところもある程である。
しかし、いくら液晶の技術が進んだといってもまだまだCRTに及ばない点がある。最も重要な点としては、発色の自然さと応答速度である。これらは写真等の色味を確認する場合、そして動画をスムーズに再現する場合において非常に重要な要素となるのだが、今出回っている液晶モニターはまだCRTに取って代わるといえる程のレベルには達していない。輝度や発色を優先すれば応答速度が、応答速度を優先すれば色数が制限されてしまうのである。
説明は省くが、他にも解像度の自由な可変表示能力や、耐用年数(時間?)の長さもCRTには及ばないところだ。
薄型であれば、PDP(プラズマ)がこれに代われるものとはならないのかといえば、あれはやはり大型・高級用途でPC用としては今のところ不適当だし、実際そうした向けの小型の製品が出る様子も見受けられない。

そこで自分が現在PC用ディスプレイとして期待しているのが"有機EL"という技術である。細かい技術的な事は所詮上手く説明できる人間ではないので省略するが、参考出展しているものの感想を一言でいえば「とにかくキレイ」である。僅か数mmの板状に載ったその映像は、輝度・発色はもとより応答速度においてもCRTに全く引けを取らない鮮やかさがある。液晶特有の残像ももちろん無く、そして何よりその微細さは驚異的である。出展のパネルのサイズはせいぜい2〜4インチ程度のものなのだが、これにジャギィが殆ど見て取れないのである。普通小さいモニターであれば尚、1ドット当たりのパネル全体の面積比が大きくなる為気になってしまうものだが、それを殆ど感じさせないのだ。正に究極的な薄型表示媒体である。昨年も展示してあったのを見て感動し、その事をこのサイトでも紹介したが、やっぱり今回も感動してしまった。

しかしこの技術もまだまだ課題が多いのである。デジカメや携帯電話の表示パネルとしては既に製品化、もしくは年末にかけてという事で採用されている技術ではあるが、PC用途のディスプレイとしては製品化は当面先なのである。その問題は決して少なくなく、また容易な解決は出来なさそうで、幾つか列挙すればまず大型化が難しい事(現在1枚パネルとしては17インチ程度まで試作されているらしい)、寿命が短い事(現在の液晶のようやく5分の1程度)、消費電力が大きい事(具体的な数値は不明だが、モバイル用途としては致命的だろう)等が挙げられる。
因みに展示をしていた東芝ブースの方にちょっと尋ねてみると、PC用としては2005年くらいに製品化ではないかという事だけど・・・。
あー、待てない。はっ、早く製品化すれ!(←ちょっとせっかちになってる)

さて、他の新技術もちょっと注目しておこう。と、いってももう実用化しているものもあるけど。
まず表示媒体という事では"3D表示パネル"があった。一定の距離と角度から見ると表示対象物が立体的に見えるのは確かだが、コンテンツがまだどうにもパッとしない。既に一部携帯電話なんかでも採用されているけど、自分で撮影したものなんかをその対象に出来るという段階には無いし、どう利用すれば良いのか今後のアイデアが待たれる。
次に"燃料電池"パソコンも数社試作品を展示していた。これはどうなんだろう。車もそうだけど、触媒物質の補充をどうするかがまだよく分からないのでその利便性がイマイチ。ただ、実現すれば一週間くらい充電知らずで持ち歩けるらしいから、今よりもっと気楽にノートPCを外に出す人が増えるかもしれない。ただし、この辺メーカーによりかなり差があるようだ。5時間とか表記しているとこもあったし。少なくとも充電時間が存在しなくなるのは魅力的かも。こちらの技術もまだ2〜3年はかかるみたいね。

NEC燃料電池PC製試作品
NEC製 燃料電池PC試作品
東芝製燃料電池PC試作品
東芝製 燃料電池PC試作品

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