誕生の時、未来は今

産官学それぞれにそれぞれ

メガステージを後にし、この後は個別のブースをじっくり見聞。
毎度の事ながら全てを取り上げる事は難しいので、ネタ的なものが多いのも毎度の事。

SONY
やはり最初はSONYに行っときましょう。
エンターテインメントロボットを掲げるSONYは今年もやっぱり舞台仕立て。昨年同様、事前にチケット(整理券)を入手し観劇。まずはAIBOによるミュージカル。と言っても多様な動きができる訳ではないので専ら声優さんの声が全ての手掛かり。しかも話はまあベタなものなので「AIBOめっさ可愛い!」とかいう人でないと面白いとは思えないのが悲しい所か。
次に登場したのは本命のSDR−4XII。
名前が"II"となり外見上の変化もそれ程無い様に見えるが、それは既に昨年の段階でボディの完成度が相当の域に達していた証拠。その分中身は更なる進化を幾つか示し、それを披露してくれた。
一つは挙動の面であるが、従来二足歩行ロボット開発の方向性として「如何に倒れずに歩くか」という課題があったが、今回のSDRは「倒れた場合如何にダメージを少なくするか」という方向へと進化させている。人間は自分の力を上回る負荷がかかり倒れてしまった時は、最小限の衝撃で済むよう受身の姿勢をとる。今回のSDRにはある程度の力に対しては押されても倒れないよう踏ん張る能力も持ちつつも、その限界を超えた場合は体を丸めたり腕を広げたりする事で、人間と同様状況に応じた受身をとる事ができるようになった。そして勿論その後は自分で立ち上がる事もできる。
二つ目は認識能力。昨年も人の顔を見分ける機能についてのデモンストレーションがあったが(生憎自分の観た回では失敗続きだったけど)、今年は更に磨きを掛け、騒がしい場所で後ろから声を掛けても振り返ってその声の主を捜し当てたり、日々会話を繰り返す事でその相手の興味等を徐々に覚え、それに応じた話題の会話ができるようになるという。短時間のデモの中ではそれを実際に確認できる事は無いが、少なくとも昨年よりは顔認識や色識別等の能力は失敗してなかったな。
他にも背中の取っ手を掴んで抱え上げると全身の力を抜いて猫のように体をだらんとさせたり、優しくしてくれる人の事はきちんと覚えていたり、ほっとくと勝手に踊りたくなる本能が備わってたりしているらしい。うーん育て方によっては良い子にも手のかかる子にもなってしまいそうだ。新たな教育問題の勃発が懸念されますな。


今年も派手に行くわよ!

見て!片足でリボン回してる私の姿を見て!!


NEDO 新エネルギー・産業技術総合開発機構
NEDOについて耳慣れないかもしれないので簡単に補足すると、将来有望だけど民間や大学だけでは実現が難しい技術に対して、計画のコーディネートをしたり公的資金でのバックアップをしたりする独立行政法人だ。この組織の支援によるロボットも多数登場してきているが、個々の成果の背景にはそうした複数の企業・団体の名前が横断的に関わってくる。
既に紹介したHRP−2も、全体仕様設計をNEDO、製作を川田工業、腕部を安川電機、視覚部をNEDOと清水建設が担当している複合的な産物だ。
このブースではHRP−2の他に"HRP−1S"による建設機械の遠隔操作のデモが実演されていた。写真では少々分かり辛いが、このロボットの本体はHONDAのP3を用いてカスタマイズされていて、尚且つ作業現場は埃や雨天下等精密機械には厳しい環境の為、それを保護する為に特殊な作業着を着せてある。デモでは人間が入るには危険な場所へ普段人間が使用している重機をそのまま使えるようロボットを搭乗させ、遠隔で人間が操作するという事を想定したものを見せていた。汎用性の高い人型ロボットならではの、ある意味最も現実的な利用方法だ。


HRP−1S

板を立てかけるHRP−2


その他メーカー系
メーカー系のものは認識技術等のソフトウェア的要素が(SONYやHONDA等の先行企業も含めて)まだまだ発展段階だが、家庭用のものならすぐにでも販売可能かと思わせるものが多数見えてきた。表立って参加を表明してきた企業も随分増えたものだ。

東芝の"ApliAlpha"はロボット情報家電という位置付けの小型球体ロボット。
家電との融合・サポートが主な能力で、NECのPaPeRoに近いかな。燃料電池を動力としたモデルも参考として展示されていた。

三洋電機の"FLATTHRU"は家庭用お手伝いロボット。
食器など10Kg程度の荷物を運ぶ事ができる。特徴は「倒立振子」による姿勢制御を施した二輪での移動方式。二輪というと不安定そうだが、その機能により安定したバランス感覚を持っている。


東芝 ApliAlpha

三洋電機 FLATTHRU


その他大学系
大学の出展も相変わらず盛んだ。企業と違って目的もデザインも大胆。

なかなかごっつい多脚型ロボットは千葉大学の地雷探知ロボット"COMET−III"。
前方にある2本のアーム(写真はお尻から撮影)で地雷を検地する。ガソリンで4〜5時間の稼動が可能。地雷の除去って危険な上ホントに途方も無い時間かかるらしいから、こんなロボットの実現も急がれる。それ以前に紛争を無くす方が新たな悲劇を食い止める近道なんだろうけど。

メカロボで御馴染みかどうかは知らないが、日本文理大学の空とぶロボット、通称"霧隠才蔵"。
水蒸気を勢いよく噴射して5秒程度の飛行?が可能だが、現地では鉄柵の中をプシューーっと轟音を上げて飛び上がる雄姿を披露していた。
<ブース内説明書き「試作目的」より>
「人間の近づけない火災等の災害現場に急行し、空から人命の救助を行う救助ロボット。
 但し、当面はエンターテインメント・ロボットを目指す」・・・正直だなあ。


千葉大学 COMET−III

日本文理大学 霧隠才蔵

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