アイツも入社、日本科学未来館で見た未来

巨人とピエロと蘭

ここで展示されたロボットは、それぞれの研究者がロボットについて思うミームを形にしたものであるという。何れもロボットのインターフェイスはどのようなものになるのかを探求していて、それだけロボットのデザインがヒトとの関わりを大きく決定付ける重要な要素である事を強く感じさせる。
それぞれの人の感じ方を求めるものだとも思われるので、本当はコメント抜きで紹介した方が良いのだろうけど、どうにも逆に不親切ではと思ってしまう心理が邪魔をしているようなのでご容赦を。どうか写真を先に見て何かを感じ取ってから読んでね。動画じゃ無いから訳分っかんないものあるだろうけど・・・。

Cyclops 睥睨する巨人
ゆらゆらと頼り無さそうな細身の巨人。この巨人の前に照らし出された3つのスポットライトの中で動作をすると、空気圧で動作する人工筋肉で覆われた脊髄をゆったりと動かしこちらに視線を向けてくる。知能を持たないこのロボットの意義はその視線にこそある。
人は不思議と視線に敏感である。全然視界に無いところから投げ掛けられた視線であっても、それに気付くという経験は誰にでもあるだろう。
ではロボットのような機械に持たせる眼とはどのような心理的効果を人にもたらすのか?
このロボットの場合は自分を見つめられた時、その動作にある種の知性を感じさせる。その眼とその揺らぎを持ったで事で生命体の持つ神秘性を醸し出しているのかもしれない。
眼とは知性の鏡とも言われる。眼の持つ意味。その形と機能と心を考えさせる存在である。

Cyclops

P-noir 黒いピエロ
宇宙船に乗ったピノキオ。
それがデザイナーのイメージという事だが、ロボットとピエロという結び付きは、昨今のロボットブームをある種皮肉ったモチーフでは無いかと感じてしまった。
このピエロは観客がオルゴールに見立てた装置を持って振る事で観客達に踊りを披露し和ませようとする。その動きは観客の動き次第で多彩に変化を見せるのだが、いつしか色んな動きを見てみようという人の思いが、逆にピエロに踊らされているようにも見えてしまうのがより一層その思いを強くする。
ここにミームから生まれたヒトの複製たるロボットとヒトとのある種の逆転現象が生じている事に不安を感じてしまう人もいる事だろう。
しかし、それもまたロボットがミームとしてもたらす立派な役割なのだと製作者は言うのだろう。

P-noir

Orchisoid オーキソイド
これがロボット?と思われるのも無理は無い。
野生種の蘭を表す"Orchis"から作られたこの名称は、文字通り蘭をその母体に据え、それが発する信号をPDAが記録している。本体下面には車輪が付き無軌道に周囲を徘徊しているが、それはこの蘭の意思というものではなく、むしろ通常移動手段を持たない蘭がこうして移動という新しい機能を得た状況下でどのような信号を発するのか、それこそ何を思うのかを調べているのだ。それは未来の人工空間への適応を探る事に繋がるという。
蘭は最も人に愛され、最も品種改良を多く受けている植物の一つであり、また植物の中で最も長い遺伝子を持つものであるらしい。それがこうした対象になった理由かどうかははっきりと分からないが、人が蘭を愛でる傍らで何を思うのか、そして自由な移動手段を得たとしたらどう行動するのか、今は想像もつかない。

Orchisoid

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