アイツも入社、日本科学未来館で見た未来

ミームって何よ?

生命体を形作る情報は、"遺伝子"(gene)によって幾重もの複製・進化を繰り返し、引き継がれて来た。ヒトもまた多くの生命体の例に漏れず進化し続け、且つ繁栄している。
しかし、英国のリチャード・ドーキンスは、ヒトの今日あるは何も生物学的な遺伝情報のみをおいてあるのでは無く、過去の人々が残してきた文化・文明についても継承・進歩させて来た因子があると仮説し、その因子を示す言葉として文化的遺伝子="ミーム"(meme)という言葉を生み出した。身体的特徴のように先天的要素を伝えるのがジーンであるなら、思想や文化など後天的要素を伝えるのがミームであるとし、ヒトはこれら遺伝子の乗り物であるという考えを彼は示した。

ここでミームとは具体的に何なのか?と問われればヒトの作り出したあらゆる物がその対象となる訳だが、原初的な物からいえばそれは習慣・宗教・神話が挙げられる。これらはおそらく口伝形式から始まり、その後文字や絵により世代を経ても形として残す術を得る。その過程で習慣は技術へ、宗教は学問へ、神話は物語へと高度に発展し相互に融和し合い、それらを伝える媒体も書物、フィルム、そしてインターネットというところにまで広がりを見せている。これらミームによって他者に引き渡されていく情報は、遺伝子のそれがそうであるように必ずしも単なる複製として伝わる訳では無い。それは例えば製品としての書籍物は確かにどれも同じ物を大量に販売しているかもしれないが、それを受け取る一人一人の感じ方は必ずしも一様ではなく、解釈の仕方次第ではそれこそ突然変異のように姿を変える事もある。それが生物の種の多様性を生み出したように思想・文化の多様性を生み出しているのだと考えれば、成程この言葉の出てきた経緯も理解できるものである。

さて、話を今回のイベント「ロボット・ミーム展」に移してその意味を考えた時、ロボットも間違い無くヒトの生み出した物"ミーム"であるはずである。そしてロボットはミームの中から生まれたヒトの複製でもある(他方、クローンというミーム生まれの複製もあるだろうが・・・)。ドーキンスの言葉「ヒトは遺伝子の乗り物」という立場を考えた場合、ミームは何故乗り物たるヒトの複製をわざわざ作らせたのか、という奇妙な疑問をこの展示会は投げかけている。ロボットがヒトの文化を伝える能力を持つようになった時、ヒトとロボットの関わりはどう変化をしていくのだろうか。
この展示会に解答は無い。しかし、そうした探求を始める良い機会を与えてくれているのではないだろうか。

Future Robot Factory

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