農業風景の日常詩
あぜみち・19
   

3/1付
 庭の梅が咲いて、寒々しかった風景が少しずつ春にむかって動き出しています。
人々も冬眠からさめるように、畑の野菜の種をまいたり、トラクターで田んぼを耕したりしています。
 暖かいと心がふっくら豊かになった感じがします。上着を一枚ぬぐだけでも体が軽くなって、あれこれスムーズに仕事ができる気がします。
 こうやって季節が変わっていくのはいいですね。枯れたような枝から日毎にふくらむ木の芽を見ていると、パワーをもらえる気がします。
(早乙女)


3/8付
 過日、映画「稲の旋律」を見た。
ひきこもりの一人の若い女性が、ふとした心の動きのまま訪れた千葉のとある田んぼで、年が少し進んだコメ作りの青年と出会い、その米作りを手伝いながら少しずつ心を開き、やがて人間性をすっかり取り戻し、家族ともども成長していく展開に。
"田んぼでの米作り"その自然の営みの中に、そのもつ力がよく表現されていた。
帰り道コンビニでお茶を買ってふと夜空を見上げると、この季節には珍しく澄みきっていて、オリオン座が西空の方に輝き、天空も季節が確かに進んでいるようです。
(国母)


3/15付
 始めに、今回東北関東大震災で被害にあわれたすべての人達に深くお見舞い申し上げます。
 人生の中でかつてない恐怖を感じた大地震でしたが、我家では倉庫の窓ガラスが割れ、物が棚から落ちる程度で、大きな被害もなく済みました。東北を始め、大地震、大津波、原発の被災地の惨状に、本当に心が痛みます。
 これから田植えの準備だったのでしょう、きれいに耕された整然と並ぶ田んぼが無残に呑み込まれた様は、同じ百姓として、無念さを感じます。それよりも人命がどれ程うばわれたのかと思うと涙を禁じ得ません。一日も早い復興を願うばかりです。
 今は何でもできることがあれば力を尽くしたい!
(猪鼻)


3/25付
 地震発生から10日目にして、心配していた放射性物質が、栃木県産のホーレン草等からも検出されたとの報道に驚くと同時に、強い憤りを覚えています。今度の件に関しては、生産者には全く責任がなく、被害者にもかかわらず、今後風評被害が拡大し、他の農産物にも波及するような事態になれば、農家にとっては死活問題となります。
 当産直センターも現在、東北方面への出荷が全くできない状況が続いていて、非常に苦労していますので、お客様の皆様の一層のご理解とご支援をお願いいたします。
(塚原)


3/29付
 3月11日以降寒い日が続いて、春が止まっているような気分です。毎日報道される情報は、どんどん悪い方に向かっているような気がします。
4月になれば、稲の種をまいて田植えの準備をしなくてはいけないのに――。確かな情報がほしいです。
 家もあり、暖かい布団で寝られるだけで幸せだと思うべきですが、言いようのない不安をかかえて暮らすのはストレスがたまる一方です。この状態がどの位続くのかわかりません。少し心を休ませて戦うパワーをためなくては――。
 甲子園球児の選手宣誓に「人は仲間にささえられることで大きな困難をのりこえられる」とありました。そうですよね、仲間はたくさんいます。ゆっくり歩き始めましょう。
(五月女)


4/5付
 「こんな時選挙なんかかまっていられるか!後にしてくれ!!」
受話器にガンガンひびく怒声。「ま、ま、忙しいのはわかる。オレんちも瓦のかけらのかたづけはまだ残ってる。でもこんな時こそ出来ることから。復興の土台をつくる大事な選挙だよ。つづけてたのむよ・・・。でないと3万を越すだろう帰らぬ方々、故郷を追われ異郷で暮らす不自由な毎日を送る人々にも申し訳たたないべー・・・。」ながながと訴えた。しばし間をおいて、「わかった、この前たのんだ妹夫婦にも言っておくよ。ところでお前もオレより四つも上の老体だ、気を付けてや。」「ありがとさん」いつもの彼にもどっていたのが嬉しかった。
では又。
(国母)


4/12付
 県北にも桜の花がやっとほころびはじめ、春爛漫の中、いつも通り田を耕し種子を播く。こんな"フツー"の農作業が今年は重たい。一ヶ月前の未曾有の大震災にあわれた被災地に思いをはせる。また、人災と言うべき福島原発の事故は世界中に「原発ノー」の世論を広めました。近県の私たち農、漁業者も震撼させられています。産直の仲間も野菜の出荷停止で経済的打撃を被り、毎日、放射能の数値を確認し、不安の中、農作業の手も滞りがち。先が見えないのが不安です。
なのに県議選に当選したすべての議員はこの事態に対し、一言も言わないとはどういう事か、怒り心頭とはこのことです。
 2月に播いたネギの若苗は太陽にむかってまっすぐ生きています。あきらめず前へ。
きょうは快晴の中、稲の種まきをしています。
(猪鼻)


4/19付
 今回の地震や津波で自然の脅威をイヤという程見せつけられましたが、見事に咲いた桜や菜の花で人の心を癒したり、我々の食糧を提供してくれているのも自然。そんな自然と常に共存しながら生活している農家にとって全く「想定外」だったのが原発事故。この人間が作り出した物によって人間が苦しめられるという理不尽さ。一日も早く安心して農作業を生産できるようにしてもらいたい。
(塚原)


4/30付
 若葉の輝き、いつもの春です。これがどんなにありがたいことか、今年ほど実感したことはありません。
朝目が覚めて、いつもの日常が始まるのはあたりまえ、と思っていてはいけなかったのですね。
 近代化とかいって、電気にすべて頼るような事は、人間らしい豊かな暮しをするために必用な事ではなかったようです。
 大きく時代は動きました。本当の人間らしい豊かさを求めていくべきなのでしょうね。流れに逆らうことはできないかも知れないけれど、心の奥に宝物を持つつもりでいたら豊かな気分になれるかなー。
 さて、何が私の宝物になるのでしょうね。
(五月女)


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