農業風景の日常詩
あぜみち・16
   

9/7付
 小さい秋、小さい秋・・・はいづこに。天然クーラーの炎天下での仕事は「つらい」の一言につきる。でもそのつらさが生きている証なのかも。
 でもこの頃少し陽足が短くなってきた。たしかに地球は公転している以上、来ない秋はないはず。辛抱、辛抱、その秋が来て時々見せてくれる夕暮れのすばらしい天然ショーも見られる。絵心のない私でも、これは描いておきたいと思うことも。そんなイメージを頭に入れて休むとしよう。そんな夢を見るかも。
 しかし、これを思うと簡単に眠れなくなる。多数の国民が、必死で暮らしを支えているのに、そんなことはそっちのけ、どこについたら我が身が安泰か、それが目立つ。民主党代表選挙だ。
でも休まないと明日が・・・。
では又。
(国母)


9/14付
 寄せ刈りをする私の背にジリジリと"夏"の太陽。足元は、暑さのため先日まで水をかけ流したため、地下足袋がズブリと泥の中へ。全身汗まみれ。平年より2週間も早い稲刈りです。
 地球温暖化の影響とも言われていますが、猛暑と大雨で、今年の穫れ高を心配しています。もう一つ心配なのが米価です。個別補償政策でもFTA(自由貿易協定)でも、大企業の指示通り推進する環境づくり。加えて市場丸投げでは米価暴落は止まりません。再生産可能な農産物の価格補償制度は必至なのに、作れば作るほど赤字では、収穫の喜びも半減です。
 素直に実りの秋を喜びたい為には、消費者の皆さんと手をたずさえ合って進む以外に道はない、と思っています。
(猪鼻)


9/23付
 連日の猛暑と干ばつも一段落、適当な雨も降り、今迄発芽できなかった人参が、遅ればせながら一斉に芽を出しました。
ただ播種してから余りにも日数が経ちすぎているため、収量は期待できそうにありません。
 種苗会社の話では、埼玉県や千葉県でも発芽不良の畑が多いとのこと。この秋他の野菜も含めて、当分高値は続きそうです。
(塚原)


9/28付
 ある日突然涼しくなり、秋がやってきました。思ってみればお盆を過ぎてからもずーっと35℃前後の暑さと日照り続き、それが一気に長袖を着ても寒くて、上着までひっぱり出して着ています。
 ここ4〜5年、エレベーターに乗ったような急激な気温変化が多いと思っていましたが、この先どんな天候になるのでしょうか。大きく変る天候に順応して、より収穫量を多く、品質も良く作物を生産するのは大変なことになりそうです。
 お役所の言う事はとてもあてにならぬものと思っていましたが、天候までもとなると、何を信じてよいやら。自分でも言い切れないし、これといった宗教を持たぬ私に、神と言えるはずもなく─。
家族が健康で元気なことがたのみの綱でしょうか。
 食べることは大事です。元気なお米や野菜をたくさん食べて下さいね。
(五月女)


10/4付
 大規模営農集団の中心的役割を担うBさんの奥さんから少し前電話が。
御主人が最近どうも落ち込んでるみたいで、家族ともあまり口もきかない。稲刈りの最中でこの忙しいのに困っています。と。
そのワケは大体の見当はついているので、わたしは即座に「あんたも一緒に落ち込んで、悩んだらいかが、それがいいよ。ただ御主人に"頑張れ"は禁物、今年の米の状況では落ち込んで困っているのはあんたたちだけぢゃないよ、オレんちもそうだし全国の農家はみんな怒って困って落ち込んでるよ。ただなぜそうなってしまったのか考えてみて、その中一区切りついたら行ってみるから詳しい話はその時にでも」
「わかりました忙しい時にありがとうございます」
彼女の声が少しはずんでいるようだった。
 真夏のような秋の昼下がり、稲刈り最中の一本の電話でした。
では又。
(国母)


10/13付
 雨と暑さの中、稲刈りも先週無事終りました。やっぱり新米の味は別格です。暑さも心配しましたが、最後まで水管理等、手を抜かず栽培に力を尽くした結果と思います。
おいしいお米をお届けできることは幸福です。
 サァ次はネギ畑です。全国的に野菜の不調が伝えられていますが、我が家もご多分にもれず、生育が遅れ、うね上げ作業もきょうやっと出来るようになりました。早く持ち直して、と願うばかり。 雨上がりの土の香りを感じながら。
 春まで作業は続きます。赤とんぼの群れに紛れ込んで・・・。
(猪鼻)


10/19付
 秋ナスのうまい時期ですが、ナスは漬物は勿論、煮ても焼いてもよく、生でもいけます。しょうゆをつけて丸のままかじると甘みがあり、酒やビールのつまみにもなり、江戸時代にもナスの食べ方として「さしみ」で食べていた、という記録もあり、意外なうまさがあります。ただ、食べ過ぎると生のナスは体を冷やす作用があり、出産に悪い影響が出る恐れがあるので「秋ナスは嫁に食わすな」ということわざが生まれたそうです。
これから値段が安くなる秋ナスを大いに食べてください。
(塚原)


10/26付
 山からは紅葉の便りも届き、秋も本番です。
 ことしの秋は、米作りにとっては気分の晴れない日が続いています。夏の暑さで米の品質が悪くなったり、価格が下がったりでがっかりです。米を作って暮らしていける時代は終ったようです。2年先、5年先の田んぼはどうなっているのでしょう。米は確かに余っているかも知れないけれど、田んぼの持つ保水力、自然環境の維持、これを考えるお役人はいないのでしょうか。エコも大切かも知れませんが、もっと身近な田んぼの大切さも忘れてはならないものです。
 おいしいお米をつくるために努力する人の心と、それを食べる喜びを味わう人の心を無駄にしない農政はいつできるのでしょうか。
(五月女)


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