前田の算数

富山大学 「数学教育論」の講義より
算数の楽しさって何?②  「ははあん」「なるほど」が生まれる授業を!

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2、「ははあん」「なるほど」が生まれる授業を!
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「あれ」「どうして」に続いて、もう1つ、素敵なつぶやきを紹介します。
それは、「ははあん」「なるほど」っていうつぶやきです。
「ものごとが新しい角度から見えてきた時」
「見えなかった世界が見えてきた時」
「自分の見方・考え方が広がった時」、
そんな楽しさから生まれるつぶやきが「ははあん」「なるほど」です。

いくつか例をあげて問題を出しますから、小学生になったつもりで解いてみてください。


① 見方・考え方が広がった時、「ははあん」「なるほど」が生まれる

【実践例 2つの三角形は合同?合同じゃない?】


これは、坪田耕三先生の講演会で聞いて、自分自身「ははあん」「なるほど」と思った問題です。

  
  

【問題】
 この2つの三角形、合同でしょうか。
 それとも、合同ではないでしょうか。



2つの三角形は合同か否か、みなさんも考えてみてください。
サインとか、コサインとか、恋サインとか、
コカインとか、フセインとか…、
そんな難しいこと考えちゃ駄目ですよ(笑)
小学生になったつもりで気軽に考えてみてくださいね。

さて…、合同だと思う人? 合同ではないと思う人?

実は、私は答えが分からなかったんです。
しかし、小学生の発想ってやわらかいですね。
ある子どもが、「鏡に映すと答えが分かるよ」って言ったんだそうです。

鏡に映すとどうなるのか、かき加えてみますね。




どうです。
みなさんが、「ははあん」「なるほど」っていうまで、
意地になって付け加えていきますよ(笑)




どうです。
そう、Aは正三角形になるんですね。
正三角形は、3つの辺の長さが等しいので、どの辺も6㎝。

つまり、合同ではないんですね。


三角形を鏡に映して見てみることで、見えなかった世界が見えてきたんです。
新しい角度からものごとを見つめることで、見方・考え方が広がったんです。
どうです。
こういう感覚って、何だか気持ちよくないですか。


【実践例 算数クイズ】

授業だけでなく、テストの余った時間など、ちょっとした時間なんかに、
「ははあん」「なるほど」と思えるような算数クイズを出してあげるのもいいですね。
これから出すクイズは、私自身、子どもの頃
「ははあん」「なるほど」って思ったクイズです。
みなさんも考えてみてください。

【問題】
池に蓮が植えてあります。




この蓮は、次の日になると、2倍の大きさになります。
その次の日はまたその2倍、そのまた次の日はそのまた2倍…と大きくなります。


  
 1日目                 2日目              3日目


30日で、ちょうど池全体を埋め尽くします。
さて、この蓮を2つ植えたとすると、何日で池が埋め尽くされるでしょうか。



私は、蓮の大きさを1とすると、
2日目に2、3日目に4、4日目に8…って、考えていったんです。
最後には、とてつもない計算になりますよね。
やってみますか?めまいがしますよ(笑)

答えを聞いて、びっくりしました。
なんと29日なんです。
聞いてみれば、何てことないですね。
1つだけ植えた時の、29日目の様子を想像してみればいいんです。
ちょうど池が半分埋まっているはずです。
ですから、2本なら29日で池全体が埋まるんです。


   1本なら29日目で半分


この答えを聞いた時、私は「ははあん」「なるほど」って思いました。
1日目から順に数えていった私にとっては、逆転の発想だったんです。
どうです、「ははあん」「なるほど」って、気持ちいいでしょ。


続いても、私自身、子どもの頃「ははあん」「なるほど」って思ったクイズです。

【問題】
 100チームがトーナメント戦をします。
 試合数は、何試合になりますか。



トーナメント戦ってご存知ですよね。
こんな階段みたいなやつです。
(と言いながら、8チームのトーナメント表を板書)
例えば、8チームなら…、
1回戦が4試合、
2回戦が2試合、
決勝戦が1試合で、
合計7試合ですね。

高校野球なんかに使われているのが、トーナメント戦です。
全国47都道府県から高校球児たちが、夢と希望を胸に、甲子園にやってきます。
しかし、勝負の世界は残酷ですから、負けたチームは、涙を流し、甲子園の土を拾って、田舎に帰ることになるのです。

話を戻して、問題の答えですが、99試合です。
1試合するごとに1チームずつ、田舎に帰っていくわけですから、
99試合すれば、99チームが消えて、優勝の1チームが残るわけなんです。
「ははあん」「なるほど」でしょ。

実は私、1回戦は何試合で、2回戦は何試合で…って、計算していったんです。
とてつもなく複雑でしょ。

答えは、99試合。
1試合するごとに1チームずつ消えていくのだから、
99試合すれば、99チームが消えて、優勝の1チームが残るわけなんです。
この答えを聞いた時、「ははあん」「なるほど」って思いました。

ものごとが新しい角度から見えてきた時、
見えなかった世界が見えてきた時、
自分の見方・考え方が広がった時、
そんな時、算数って楽しいんです。


②「ははあん」「なるほど」が、「だったら…」を生み出す

【実践例 毒りんごゲームの必勝法】

続いては、ゲームをしましょう。
名付けて、毒リンゴゲームです。
ルールは、次の通りです。


  【ルール】

 13個のりんごの中に、1つだけ毒りんごがある。

  ・1人、1個~3個ずつりんごを取っていく。
  ・交代で、りんごを取っていく。
  ・毒りんごを取った人の負け。

        


どんなゲームか、試しにやってみましょう。
(1人出てきてもらって…)
では、あなたからどうぞ。

1個か2個か3個、取ってください。
はい、次は私が取りますね。
(そうしてゲームを進めていき…、ついに残るりんごは、毒りんごが1つ!)

どうしました。もう、迷う必要はありませんよ。
それを取るしかないんですから(笑)
教室でも、必ずいるんです。
ここで悪あがきする子って…(笑)

さあ、ルールは分かりましたか。
では、隣の人と2人ずつペアになって、毒りんごゲームをやってみましょう。
紙に、白丸を12個と黒丸を1個書いて、対戦してみてください。

ゲームをしてみて、どうでした?
きっと、ただ闇雲にゲームをしていた人はいないはずです。
きっと、ゲームをしながら
「勝つにはどうすればいいんだろう…」と、
必勝法を考えていたのではないでしょうか。

子どもたちは、大抵、次のように思考します。
まず「最後に5個残したら、僕の勝ちだ」と考えるんです。
そして次に、「最後に5個残すには、その前に…」って考えていくんです。
みなさんの中にも、そう考えた人、いませんか。

実は、最初の私の板書の仕方がいけなかったんですね。
わざと意地悪して、おはじきをあんなぐちゃぐちゃに置いていったんです。
本当は、小学生とやる時には、
こんな風に整理して、置いていくと分かりやすんです。



「ははあん」っていうつぶやきが聞こえましたよね。
そういう仕掛けです。
合わせて4になるように取っていったんですね。

このゲームは、「あまりのあるわり算」の学習を終えた後に、
発展問題として扱うと面白いと思います。
13を4が3つと1と見る見方。
13という数の見方が広がるんです。
数の感覚が豊かになるんです。


さて、私がこんな話をしている時に、
ごそごそとノートに何かを書いている人がいますね。

教室では、そんな子どもを叱ってはいけないんです。
それは、「だったら…」って考えている子なんです。

教師としては、こんなゲームをした後に、
「だったら…」なんていうつぶやきが聞こえてきたら、嬉しいんです。

「だったら、13じゃなくて、17や21でも、このゲームはできるよ」
そんな、つぶやきが生まれたら嬉しいですね。
つまり、□×4+1のりんごなら、このゲームはできるんです。
これは、17を4×3+1、21を4×4+1と見る見方です。

或いは「だったら、14や15や16なら先手が勝つぞ」
そんな、つぶやきが生まれたら嬉しいですね。
つまり、14なら先手が1個、15なら先手が2個とれば、いいんです。
13の後手と同じことになりますから。
これは、14を4×3+2、15を4×3+3と見る見方です。

また「だったら、1人1~2個取るのなら…。1人1~4個取るのなら…」
そんな、つぶやきも嬉しいですね。
つまり2個までなら、□×3+1、4個までなら□×5+1個のりんごで、
このゲームはできるんです。

「ははあん」「なるほど」は、「だったら…」を生み出すんです。



「あれ」「どうして」って驚いて、
「ははあん」「なるほど」って感動して、
「だったら…」って発展させる。
こんな算数って楽しくありませんか。


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