前田の算数

前 田 の 算 数  実 践 事 例
1年「かたちづくり」
「感覚を豊かにする」って、どういうこと?

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(1)子どもに身につけたい力を明確にもつ
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色板を使っての形づくり。
子どもたちにとっては楽しい活動なのだが、ともすれば、ただ漫然と形をつくって遊ぶだけの造形活動に終わってしまいがちである。
この学習における1番の難しさは、ずばり、「ねらいを明確にもつ」ことにある。

学習指導要領には「図形についての理解の基礎となる経験を豊かにする」と記載されている。
しかし「基礎となる経験」って、一体どういうことなのだろうか。
「豊かにする」ってどうすることなのだろうか。
何だか漠然とした言葉である。
指導書を読むと「素地を養う」「図形に親しむ」「感覚を豊かにする」「経験を豊かにする」といった言葉が出てくる。
「素地」って何?「感覚」って何?「親しむ」ってどうすること?…といった疑問がわいてくる。

では、この学習で「子どもに身につけるべき力」とは、一体どんな力なのだろうか。私は、次のように解釈している。

@ものの形を認める

「ものの形を認める」とは、身の回りにある具体物の中から、色や向きなどを捨象して形のみに着目し、「さんかく」「しかく」などの基本図形を見つけることである。
また「しかくとさんかくで、魚の形」などと、基本図形の合成としてとらえることである。


さらには、ある形を「ましかく1個とさんかく2個」「さなぎみたいなしかくが2個」と見るなど、1つの基本図形の中に複数の基本図形を見つけることである。
形の中に見えない線(補助線)が見えてくるということである。


A形の特徴をとらえる

「形の特徴をとらえる」とは、平面の構成要素である「」「」「頂点」に着目して形状の概形をとらえることである。
へりの長さや角の大きさを合わせて形を敷き詰めたり、かどの個数や形、へりの長さに着目して、できた形を観察することである。

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(2)場の設定や活動の条件を工夫する
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単元の本質を見極め、ねらいが明確になったら、次に、ねらいに向かうための手立てを講じなければならない。教師が「形の特徴をとらえましょう」と言ったからといって、子どもが形の特徴をとらえられるわけではない。形の特徴に目がいくような場の設定を工夫することが必要である。


@同じ形かどうか観察する

本実践では、「同じかどうかを観察する」という算数的活動を仕組む。2つの形を比較して、同じ形かどうかを判断することは、形の特徴をとらえるために効果的な算数的活動である。
子どもたちは、同じかどうかを比較する中で、辺、角、頂点といった平面図形の構成要素に目を向けていく。

 まずは、直角二等辺三角形の色板を4枚使って、いろんな形をつくる。


「こんな形つくったよ」「あんな形つくったよ」と、つくった形を発表し合う中で、必ず「あれ、それ僕がつくった形と、同じ形だよ」という問題が浮かび上がってくる。



問題になった形を取り上げて、同じか違うか問いかける。
同じかどうか形を観察する中で、子どもたちは無意識のうちに「辺」「角」「頂点」に着目して形状の概形をとらえていく。
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(3)子どもが何気なく行った操作や見方を、言葉で表し価値づける
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2つの形を見比べる中で「回すとぴったり重なるから同じ形だよ」という意見が出てくるであろう。
実際に回していないのに、回せばぴったり重なると分かる背景には、どんな思考があるのだろうか。
きっと、子どもたちは、無意識のうちに「辺」「角」「頂点」に着目して形状の概形をとらえ、「回すとぴったり重なりそうだぞ」と感じているはずである。
こうした考えの背景を言葉で表すことで価値づけていきたい。

@「回せばぴったり」を、回さず言葉で説明させる

ここでは、回すとぴったり重なることを、実際に回さずに説明させる。
「どうして、回す前から、回せば重なるってことが分かったの?」
と子どもたちに尋ねるのである。
子どもたちは、言葉を使って説明する中で、
「だって、どっちもかどが6個だよ」
などと、辺や角や頂点といった形の構成要素に着目していく。

A見えない線が見えるようにする

説明に際しては、武器となる既習経験をもたせたい。
前の時間には、色板2枚での形づくりを行い、できた形に名前をつけておく。



それを生かして、
「『きつね』も『はかま』も『さなぎ』の形が2つ合わさってできてるよ」
といった説明を期待する。



これは、1つの形の中に複数の基本図形を見つける形のとらえ方である。

B同じでない形と比較する

同じ形であることを証明するのは難しい。
違うということを証明するには、反例を1つ挙げればよいが、同じであることを証明するには、全ての条件が一致していることを説明しなければならないからである。

そこで、似ているが同じではない形『ロケット』を提示し
「これも同じかな」と問いかける。




そうすることで、
「『きつね』や『はかま』は〜だけど、『ロケット』は〜だよ」
と、説明がしやすくなる。
『ロケット』と比較することで、『きつね』と『はかま』だけを比較していたのでは、見えてこない形の特徴が見えてくるのである。


低学年「図形指導」のポイント

低学年「図形指導」のポイントをまとめると、次の3つである。

 @ ねらいを明確にもつこと

 A 場の設定や条件を工夫する

 B 言葉で表し、価値づける


まず、ねらいを明確にもち、そのための“場の設定”や“活動の条件”を工夫する。
そして、活動の中で出てきた子どもの何気ない操作を、
言葉で表し価値づけていく。



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