前田の算数

前 田 の 算 数  実 践 事 例
1年「かたちづくり」
色板たったの4枚で −同じ形?違う形?−

1、全体計画



 第1次 かたち王国をつくろう …2時間
   色板、数え棒、ジオボードで、形をつくって遊ぶ

 第2次 色板たったの?枚で  …4時間
   色板1枚をいろいろな向きから観察する
   色板2枚で形をつくる
   色板4枚でいろんな形をつくる …【本時】


2、授業の実際
 ※新指導要領では1年生の内容に移行したが、
   本実践を行ったのは、2年生の6月。


第2次 第1時(60分)
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(1)色いた たったの1まいで 
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@ 回すと変身するよ

子どもたちは、第1次において色板を好きなだけ使って、形づくりを楽しんできた。




色板

数え棒

ジオボード

第2次の導入では、そんな子どもたちに
「こんなことはできるかな…」と言いながら『色いた たったの □ まいで形をつくろう』
と板書してみせた。
子どもたちは「何枚でつくるの?」「10枚?」「5枚?」「まさか1枚ってことはないよね」と口々につぶやき、新しい課題に不安と期待が入りまじった様子であった。
「その、まさかです」そう言って
『色いた たったの 1 まいで形をつくろう』
と板書してみせた。
子どもたちは「ええっ!」と驚き「1枚でどうやってつくるの?」とざわめきだした。
しかし、そのうちに勘の鋭い子が「そうだ。1枚でも向きを変えれば変身できるよ」と発言した。どうやら、課題の意図を察したようである。

1枚の色板で出来る形は1つだが、回すといろんなものに見える。
何人かに前に出てきてもらい、色板を操作しながら「こう回すと○○に見えるよ」と例を示してもらった。
その後、各自ノートに色板1枚をいろんな向きで写し取って絵にしていった。

      

この活動を通して、子どもたちには、
「@身の回りから三角形を見いだすこと」
「A回すという操作を意識しておこなうこと」
「B様々な向きの三角形を同じ形としてとらえること」
をねらった。


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(2)色いた たったの2まいで 
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@ 色板2枚で3種類の形ができたよ
次に、『色いた たったの 2 まいで』と板書し「どんな形がつくれるかな」と問いかけた。
同じ長さのところをぴったりと合わせることが約束である。

色板2枚だと3種類の形が作れる。
できた形をいろんな向きでノートに写し取って絵にしていった。


ドリル

ダイヤ

さなぎ

ここで作った3種類の形は、今後の学習にも生かされていく。
それぞれの形にクラスで共通の呼び名をつけると便利である。
そこで、多数決をとり、3つの形にそれぞれ「ドリル」「ダイヤ」「さなぎ」という呼び名をつけた。


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(3)色いた たったの4まいで −シルエットクイズ− 
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@ カクカクのところを見たよ

「次はね…」と言って『色いた たったの 4 まいで』と板書すると、
子どもたちは早速色板を4枚出して形を作り始めた。
「こんなのできた」「こんなのもできた」という声があがった。

そこに「こんな形はできるかな」と4枚の色板でつくったシルエットを提示した。


シルエットクイズ@

よーいドンッのかけ声で、シルエットクイズを始めた。
早くできあがる子もいれば、うまくつくれない子もいた。
そこで、早くつくれた子に、どうやったらうまくつくれたのかを教えてもらうことにした。
ある子どもは「カクカクのところを見たら、うまくつくれたよ」と発言した。
「カクカクのところって、かどのことだね」と他の子が言葉をつけ加えた。



かどに着目することは、誰もが何気なくやっているであろう。
しかし、それをこうして言葉に表して価値づけていくことが大切なのである。


A ドリルとダイヤって見たよ

また、ある子どもは、色板2枚で形をつくった時の学習を生かして
「私はドリルとダイヤって見たよ」と発言した。
これは、1つの形を2つの基本図形の合成ととらえる見方である。

それを聞いた別の子が「線をひくと分かりやすいよ」と続いた。
いわゆる補助線のことである。
補助線をひくことで、漠然ととらえていた形の特徴が、明確になる。
「見えない線が見えてきたね」と大いに褒めた。




Bいろんな分け方があるね

こうして、シルエットクイズのポイントをつかんだところで、シルエットクイズの第2問を提示した。


シルエットクイズA

早速作り始めようする子どもたちであったが、そこに一旦停止をかけた。
活動前に操作の見通しをもたせることも大切だと考えたからである。
先程の子どもたちの発言をもとに
「このかどなら色板のここの部分がきそうだね」
「線をひいて2つに分けると、ドリルとドリルになるね」
と確認していった。



こうして、じっくりとシルエットを観察させた上で、よーいドンッとつくり始めた。
前回よりも素早く出来る子が増えてきた。

そこで「さっき出てきた他にも、何かうまくつくるためのヒントはあったかな」と尋ねた。
ある子どもが、「私はドリルとドリルじゃなくて、ダイヤと色板2枚って見たよ」と発言した。
その発言を受けて「だったら、さなぎと色板2枚とも見られるよ」と他の子が続いた。
1つの形を様々な見方で見ているのである。


うまくつくるためのヒントはあったかを尋ねた際、本当は
「さっきの形から1枚だけずらすと、はやくできたよ」
という発言が出てきてほしかったのだが、なかなか出てこなかった。
そこで
「先生は、こんな分け方で見たよ。前の形と比べてごらん」と
次のような形を提示した。



すると
「あ、1枚だけ動かせばよかったんだ」
とある子どもが声をあげた。
その子に前へ出て操作してもらい、その操作をみんなで追体験した。



子どもたちは
「なるほど、そっか」と感心し、
続いてシルエットクイズ第3問を行った際には、
1枚だけを動かして形をつくっていった。


シルエットクイズB



こうしてシルエットクイズをする中で、子どもたちは
「1つの形を複数の基本図形の合成と見る見方」
を身につけていった。


第2次 第2時(30分)

C ずらして回して、もっといろんな形ができそう

こうして、色板をずらす、回すという操作をする中で、
「もっといろんな形ができそうだよ」という声が高まっていった。
そこで、いろんな形をつくり、シルエットクイズを友達と出し合う場を設けた。
ここでは、同じ長さのところを、ぴったりと合わせることを約束にした。
「ぴったりあわせる」という約束については、例を示しながら、丁寧に確認した。


やくそく 同じながさのところを、ぴったりあわせる




子どもたちは、色板4枚でできる様々な形を発見し、シルエットに写し取っていった。
操作する中で、色板2枚で形を作って合わせたり、
色板3枚で形を作ってもう1枚を回したりする姿が見られた。

第2次 第3時
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(1)色いた たったの4まいで −いくつできるかな− 
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@ 何種類できるの?

シルエットクイズを出し合った後、
「どんな形ができましたか」と尋ねると
「山の形ができたよ」「ビックさなぎができたよ」「ビックダイヤができたよ」
と子どもたちはうれしそうに報告した。
それらのシルエットの形をみんなでつくってみた。
つくる中で、
「『山の形』を1枚変えると『ビックさなぎ』になるよ」
「『ビックさなぎ』は、『さなぎ』+『さなぎ』でもできるし、『ドリル』+『ドリル』でもできるよ」
「『ビックさなぎ』を2枚まとめてずらすと『ビックダイヤ』になるよ」
など面白い発言がどんどん出てきた。
様々な視点から、形をとらえていったのである。

いろんな形ができたよ
「ダイヤ」と「さなぎ」で
山の形になるよ
「山の形」を1枚回すと
「ビックさなぎ」になるよ
「さなぎ」と「さなぎ」で
「ビックさなぎ」になるよ
「ダイヤ」と「ダイヤ」でも
「ビックさなぎ」になるよ
「ビックさなぎ」から2枚一緒に回すと
「ビックダイヤ」になるよ

さらに「こんな形もできるよ」「あんな形もできるよ」という声が続く。
どうやら、たった4枚でいろいろな形がつくれそうである。
一体、何種類の形ができるだろうか。グループごとに、調べてみることにした。

<やくそく>

・同じながさをぴったりあわせてつくる

・ちがう形をつくる

・グループごとに、できるだけたくさんの形をつくる


色板3枚で形をつくり、残りの1枚をいろんな所にいろんな向きでつけていく子や、色板2枚ずつで形をつくり、それを組み合わせて形をつくる子など、子どもたちは様々な工夫をしながら、形をつくっていった。

そのうち、グループの中から、
「あれ、それ僕がつくった形と、同じ形だよ」
という声が聞こえてきだした。

そうした声があがり始めたところで、話し合いの場を設けた。

あれ?それ僕のと一緒だよ

A 同じじゃないの?

まずは、つくった形をどんどん発表してもらった。
「こんな形ができたよ」と子どもが発表する度に「大発見だね」と大げさに驚いてみせた。
「こんな形ができたよ」「大発見だね」というやりとりを繰り返す中で、必ず子どもたちが「あれ?」と思う場面が出てくると考えたからである。

「あれ?」は、ある子が『パックン』という形を紹介した時に訪れた。
「大発見だね。新しい形、『パックン』の登場だ!」
と驚いてみせたところ、他の子どもたちから、
「え!?でも、前に出た形と同じだよ」
という声があがったのである。

     
パックン ビル


「『パックン』は前に出てきた『ビル』の形の向きをかえただけだよ」
と子どもたちは言う。
確かにまわしてみると、『パックン』は『ビル』ぴったり重なった。

パックンはビルと同じだよ


回すとぴったり重なるよ

B 回さなくても分かるよ。だって…

回して重ねることで、同じであることは証明された。しかし、教師としては、同じ形だと分かるだけで終わりにしたくはない。同じ形であることを言葉で説明することで、形の特徴に目を向けてほしいと考えた。
そこで、
「どうして、回す前から、回せば重なるってことが分かったの?」
と子どもたちに尋ねた。

ある子は
「だって、首を横に傾けて見たら、同じ形に見えたよ」
と発言した。見る向きを変えるだけで同じに見えるのだから、形自体は同じだという考えである。
また、ある子は
「だって、どちらも『さなぎ』と『ドリル』でできているよ」
と発言した。2つの形に分解して形をとらえた見方である。
別のある子は
「どちらもかどの数が6個だよ」と発言した。頂点の数に着目した見方である。
その他にも
「穴の空いてるの部分の形が同じだよ」
「口の幅が同じだよ」
といった考えが出てきた。「穴の空いてる部分」「口の幅」とはどういう意味なのか、前に出て説明してもらった。前に出た子が、下の図のように補助線を入れた。



この補助線を入れることで、それまで複雑な形に見えた『パックン』が、シンプルな六角形としてとらえられる。
「ここにも見えない線が見えてきたね」
と大いに褒めた。

これまで、子どもたちは『さなぎ』と『ドリル』に分けるなど、形の中に補助線を引いてきた。ところが、ここでは形の外に補助線を引いている。こうした図形のとらえかたを体験しておくことが、第5学年で高さが外にある三角形や平行四辺形の面積を求める際の素地となる。



同じ形であることを説明する中で、子どもたちからは、頂点の数や辺の長さなど、形の特徴に関する言葉がたくさん出てきた。言葉で表すことで、子どもたちが何気なくとらえていた形の見方が、価値づいていったのである。

だって、どっちも
「さなぎ」と「ドリル」だよ



だって、どっちも
かどが6個だよ



だって、どっちも
口の幅が同じだよ





 C 「はかま」と「きつね」は同じだけど、「ロケット」は…

こうして、子どもたちの中に「同じ形かどうか」という問題意識が高まったところで、2つの形を提示して「これとこれは同じかな」と子どもたちに問い掛けた。グループ活動の際に、いくつかのグループで、同じかどうかが話題になっていた『きつね』と『はかま』の2つである。



子どもたちは「同じ形だよ」と答え、
「だって、半分にすると分かるよ。どちらも『さなぎ』と『さなぎ』でできてるよ」
「だって、かどの数も同じだよ。どちらも6個だよ」
などと、説明していった。『パックン』と『ビル』を比べた時のことを生かして、形の特徴に着目していったのである。

 ここで、さらに詳しく形の特徴を観察してほしいと思い、「だったら、これも同じ形かな」と言って、『ロケット』の形を提示した。『ロケット』は、『きつね』や『はかま』に似ているが、少し違う形である。「何だか違う気がするよ」と子どもたちはつぶやいた。



そこで
「先生は同じに見えるよ。だって、『ロケット』も、『きつね』や『はかま』と一緒で、かどの数が6個だし、『さなぎ』と『さなぎ』でできてるよ」
と言い、子どもたちの考えを揺さぶった。


  
「ロケット」も、かどが6個だし
「さなぎ」と「さなぎ」でできてるよ


「でも、やっぱり違うよ…」と、子どもたちは説明を始めた。
 ある子は、下の図のような補助線をひき、
「だって、ここに線をひくと『きつね』や『はかま』は短いけど、『ロケット』は長いよ」
と説明した。
「『きつね』や『はかま』と『ロケット』は、開いてるところの幅が違うよ」
と他の子が続いた。横の長さに着目して、形をとらえているのである。


  
 違うよ。だって、横幅が違うよ。

ある子は
「2つに分けると、確かにどっちも『さなぎ』と『さなぎ』になるけど、真ん中を見れば、違いが分かるよ」
と発言した。
『きつね』や『はかま』は、真ん中に『ダイヤ』があるけど、『ロケット』は真ん中に『ドリル』があると言うのである。これは、別の分け方で、形をとらえているのである。


  
違うよ。だって、真ん中の形が違うよ。


ある子は、
「『さなぎ』と『さなぎ』でも、くっつき方が違うよ。『さなぎ』の長い方同士を合わせると、『きつね』や『はかま』になって、短い方同士をあわせと『ロケット』になるよ」
と発言した。辺の長さに着目して、形をとらえているのである。


  
「さなぎ」と「さなぎ」でも、くっつき方が違うよ

説明する中で、子どもたちは「横幅」「形の組み合わせ方」「辺の長さ」に着目していった。これは、『きつね』と『はかま』だけを比較していた時には出てこなかった発想である。『ロケット』の形と比較することで、『きつね』と『はかま』の形の特徴が、より明確にとらえていったのである。

同じであることを証明するは、子どもたちにとって難しい。違うということを証明するには、反例を1つ挙げればよいが、同じであることを証明するには、全ての条件が一致していることを説明しなければならないからである。ここでは、子どもたちが『きつね』と『はかま』が同じであることを説明する際に、同じではない『ロケット』の形を提示した。そうすることで、子どもたちは「『きつね』と『はかま』は〜だけど、『ロケット』は〜だよ」と、説明がしやすくなったのである。


第2次 第3時
D 鏡に映すと…

『ぱっくん』や『きつね』について話し合う中で、次のことが分かった。


・向きが変わっても、形そのものは同じ。

・「かどの数」「へりの長さ」を観察したり、「線」をひいていくつかの形に分けて観察すると、同じ形かどうかが分かる。


このことについて子どもたちと確認した後、新たに2つの形を提示した。ぱっと見ただけでは同じかどうかの判断が難しい形である。子どもたちは、この2つの形に、『工場』と『トイレ』と命名した。


  

これも同じと言えるかな?

『工場』と『トイレ』が同じかどうか尋ねると、「同じ」という子が8名ほどで、残りの大多数は「違う」に手を挙げた。しかし、どちらも自信なさげで、明確な根拠は持っていない様子であった。そこで、子どもたちに色板を使って考える時間を与えることにした。

色板を回しながら考える中で、しばらくすると子どもたちの中から、
「あ、そうか…!」「あれ、でも…?」
というつぶやきが聞こえだした。そこで、みんなの考えや迷いを発表し合う場を設けた。

まず、最初は「違う形」だという子の発言を聞いた。
「だって、いくら回しても、ぴったりにはならないよ」と言う。実際に、黒板上で『トイレ』回してみた。確かに、ぴったり同じ形にはならない。

回している最中に「そこで、止めて」という声が挙がった。
「この向きが、1番似ている向きだよ。『工場』と『トイレ』は、鏡みたいになっている」というのである。
この発言に、納得した様子の子もいれば、きょとんとしている子もいた。そこで、
「鏡ってどういう意味か分かりますか」
と、子どもたちに尋ねた。一人の子が前に出て
「こことここが鏡になっていて…」と対応する頂点を指さしながら、説明してくれた。
「つまり、まったく反対になっているんだよ」
と他の子が続いた。
さらに、別の子が前に出てきて、
「同じ形ではないけど、こういうふうに合わせれば、ぴったり重なるよ。」
と言いながら、『トイレ』を裏返して『工場』にぴったりと合わせてみせた。

子どもたちは「反対だから同じとは言えないよ」「反対でも形は同じだよ」と意見が分かれて議論になった。どうやら、「同じ形」だという子、「違う形」だという子、双方共に、『工場』と『トイレ』が線対称の関係になっていることには気付いている様子であった。このまま「同じ」か「違う」かを議論していても、話は平行線を辿るだけである。そこで、
「実は、これ、同じ形といっていいんですよ」
と教師の方から答えを示し、その上で、
「どうして同じと言ってよいのか」
その理由について考えさせることにした。

「裏返すとぴったり重なるから同じ形」「反対になってるけど、形自体は同じだから、同じ形」と、子どもたちは説明していった。また、「どちらも、『さなぎ』と『ドリル』でできている」「どちらも、かどの数が5つ」と、形の特徴に目を向けて、同じだという理由を述べる子も出てきた。

こうして、子どもたちは、「同じ形」と言っていい理由について、言葉で説明していった。しかし、本当に腑に落ちるためには、「向きが変わっても、形そのものは同じ」ということを、3次元の空間でとらえる必要があるように感じた。そこで、『工場』の形を黒板から外し、教室の中央に持って行った。中央に持って行くと、表から見える人は『工場』の形に見える。裏から見える人は『トイレ』の形に見える。見る人の向きによって、『工場』にも『トイレ』にも見えるのである。子どもたちは、見る向きが違うだけで、形そのものは同じであることを視覚的に納得していった。






そこで止めて





鏡になってるよ




裏返すとぴったり重なるよ

E いくつできるかな

 実をいうと、「4枚の色板で何種類の形ができるか」という課題は、そもそも条件不足の課題だったのである。なぜなら、「同じ形」という言葉についての定義をしないまま、「ちがう形」をできるだけたくさん作ろうとしている課題だからである。あえて条件不足の課題で活動することで、子どもたちが「同じ形」の定義をつくり上げていくことをねらったのである。
 さて、ここまでで、次のことが明らかになった。


 ・回すと重なる形は同じ形と見ること

 ・裏返すと重なる形は同じ形と見ること


ここで、話を元に戻し、4枚の色板で何種類できるかについて、もう一度考えていくことにした。
「今までに紹介された形と、違う形を発見した人はいますか」
そう問い掛けると、子どもたちは、自分が作った形と今まで紹介された形と見比べ始めた。
「今までに紹介された形と違う形かどうか、迷ってる形があれば、それも発表してくださいね。みんなで考えていきましょう」
そうアドバイスすると、どんどん手を挙げる子が増えていった。

子どもたちは次々に自分のつくった形を発表していった。
形が発表されるごとに、今まで紹介された形と違うかどうか、みんなで確かめていった。
子どもたちは
「回すと、〜の形になるから駄目だよ」
「裏返すと、〜の形になるから駄目だよ」
「回しても裏返しても、ぴったり重なる形がないから、これは違う形だね。」
と言いながら、同じかどうかを確かめていった。
子どもたちは、確かめながら、「回す」「裏返す」という操作を存分に行った。また、それらの操作を言葉で表すことで「回す」「裏返す」という操作を意識することができた。

こうしてみんなで確かめ合って調べた結果、
色板たったの4枚で、なんと14種類もの形ができることが分かった。




14種類の形
3、おわりに

今回の実践には、とりたてて斬新なアイディアがあったわけではない。シルエットクイズをしたり、同じ形かどうかを調べたりする活動は、よく行われている算数的活動である。
今回の実践で大切にしたのは、それらの活動を『ねらい』を明確にして行ったことである。

「形づくり」の単元については、これまでに何度か教育自習生さんの授業を見る機会があった。教育自習生さんの授業の中には、シルエットクイズを解き、答えが分かったら終わりという授業や、同じ形かどうかを考えて、回せば重なることが分かったら終わりといういう授業を、時々見かける。
せっかく面白い教材を用いながら、惜しいなと感じるのは、『ねらい』と『手立て』とを混同していることである。

本来、シルエットクイズの答えが分かることや、同じ形かどうかが分かること自体は、『ねらい』ではない。シルエットクイズをしたり、同じ形かを考えたりする活動は、あくまでも、形の特徴をとらえるための『手立て』である。そうした活動を行う中で、辺、角、頂点といった、平面図形の構成要素に着目することこそが『ねらい』なのである。
ただ単に形を見せて
「どんな特徴がありますか」
と問いかけられても、子どもたちは答えられない。
しかし、シルエットクイズをしたり、同じ形かどうかを見比べたりする中で、子どもたちは形の特徴に着目していくのである。

分かって終わりにするのではなく、分かるにいたった子どもの形のとらえかたを、言葉で表し、価値づけていくことこそが大切だと思うのである。

指導案(PDF)

前田の算数TOP