辻　佐保子

　愛知県出身。旧姓は後藤。夫は作家の辻邦生（同墓）。義父は薩摩琵琶奏者の辻靖剛（同墓）。佐保子の母方の叔父はフランス文学者・演劇評論家の鈴木力衛(1911.5.1-1973.6.14)。1953(S28)東京大学卒業と同年、同大学の先輩の辻邦生（同墓）と結婚した。結婚の仲人はフランス文学者の渡辺一夫。
　1950(S25)愛知県立女子専門学校英文科卒業。'53東京大学文学部美術史科卒業。'57東京大学大学院人文科学研究科修士課程美術史学専攻修了。恩師は美術史学者で中世ロマネスク美術の研究家の吉川逸治。同.10よりフランス政府給費留学生としてパリ大学高等学術研究所に留学。A.グラバアルに師事。'61.10 パリ大学で博士号取得。同.12 帰国した。
　'63処女作『人間 動物 文様 ロマネスク美術とその周辺』を刊行。'66.4から同.12まで再びフランス政府給費留学生としてフランスに渡った。この時の様子をまとめた『ビザンチン美術への旅』を刊行。
　'71.11 名古屋大学文学部助教授となり、'77.5 教授に就任した。'82『古典世界からキリスト教世界へ 舗床モザイクをめぐる試論』を刊行し、サントリー学芸賞受賞。'87 『中世絵画を読む』を出した。
　'89(H1)お茶の水女子大学文教育学部教授に転身。'90『天使の舞いおりるところ』、'93『ビザンティン美術の表象世界』、'95『中世写本の彩飾と插絵 言葉と画像の研究』を出した。
　'95 イタリア政府より国家功労賞カヴァリエーレ・ウフィツィアーレ（上級騎士勲位章）を受賞。'96.3 停年退官となり、名古屋大学と、お茶の水女子大学より名誉教授。以後、国立西洋美術館評議員などを務めた。
　2003『ローマサンタ・サビーナ教会木彫扉の研究』を刊行、翌年地中海学会賞受賞。西洋美術史研究者として、初期・中世のキリスト教美術研究において多大な功績を残したことで、2003 フランス政府より教育功労章オフィシエを受章した。
　『ロマネスク美術』『ビザンチン美術』『ゴシック美術』『キリスト教美術の誕生』『ユニティニアヌス黄金時代』『ロマネスク彫刻』などの翻訳や、新約聖書などのキリスト教美術に関する彩飾写本などの日本語版監修など多数世に紹介した。
　その他、1999 夫の辻邦生を亡くしてからは、2002『辻邦生のために』、2008『たえず書く人−辻邦生と暮らして』を刊行した。2001クリスマスに東京都港区高輪の自宅で逝去。享年81歳。2012.3.25 東京會館にてお別れ会が催された。

＜辻佐保子先生略歴・業績目録＞
＜「辻邦生展記念講演」辻佐保子＞

＊墓石正面「辻家之墓」、裏面は墓誌となっており、辻靖剛の父の辻直記(M39.6.9歿・享年45才)辻保順医院院長（6代目）から刻みが始まり、母の久子(S12.8.30歿・72才）が続く。その後、三郎(M41.6.9歿・享年13才）、守彌(T11.7.12歿・享年3才：靖剛の長男）、春生(S3.12.25歿・享年6才：靖剛の次男）、三枝子(S3.1.18歿・享年2才：：靖剛の娘）と早死した子どもたちが続き、靖剛（三寿吉）の刻みとなる。戒名は徹心院絃道靖壽居士。辰典(S23.8.13歿・19才）、純二(S24.7.25歿・当才）、希四郎(S61.9.12歿・86才）、靖剛の妻のキミ(M34-S61.12.1歿・85才：慈雲院禅室浄君大姉：鹿児島県の医者 湯田吉太郎の娘）、鞠子(H1.6.7歿・85才）が刻む。
　墓所の右側にも墓誌が建ち、「従四位 勲三等瑞寶章」と玉井龍象、妻の玉井禮子(1929-2013.10.28)。禮子は靖剛の娘であり邦生の妹。夫で小説家の辻邦生、佐保子が続いて刻む。邦生のみ戒名があり禅林院文覚邦生居士と刻む。

＊辻邦生が辻家の家系を探訪し書いた『銀杏散りやまず』によると、辻家の本籍地は山梨県東八代郡春日居町国府（笛吹市）で代々春日居村国府の医家。生家は本居宣長門下の辻保順守瓶（もりかめ）が開いた辻保順医院（安永2）が起源。5代目までは漢方医、6代目（辻直記）は1893(M26)医師法改正に伴い西洋医学を修め医師免許を得る。7代目、8代目は台湾台中で開業したが、1945(S20)終戦により山梨に引き揚げ、山梨にして8代目、9代目が辻保順医院を継いだ。
　辻家の墓は本籍地の山梨県春日居町国府の大中院にあるが、辻靖剛の母の久子の遺言により多磨霊園に靖剛が建てた。

辻　靖剛、 辻　邦生、 玉井龍象