静岡県出身。旧姓は足立。本名は土子登代子(つちこ とよこ)。銀行家・経済学者の土子金四郎(3-1-26-13)の甥にあたる土子猛(同墓)に嫁ぐ。
静岡英和女学校卒業。雑誌「少女の友」(実業之日本社)の編集者として活動。1947(S22)中村妙子が売り込みに来た際に、活字ではなく、口から耳へと伝わっていった“話し言葉”に心おどり、その才を見出し、『マクサの子どもたち』の翻訳連載を支えた。『マクサの子どもたち』の単行本の序文を中村妙子の母の妹(叔母)でキリスト教婦人運動家の植村環(1-1-1-8)がつとめた。なお環の父(妙子の祖父)はキリスト教伝道者の植村正久(1-1-1-8)である。
中村妙子の2年にもわたる連載を終え「少女の友」の編集部を辞して、出版社「こまどり書苑」を創立した。その後、自身も「岸なみ」のペンネームで児童文学作家、翻訳家として活躍した。
翻訳家としての処女作は、'50ジョン・ラスキン原作『黄金の川の王さま』、ピョートル・イエルショーフ原作『せむしの子馬』。原作をもとに子ども向けに翻訳した作品は好評を博し、'51バウム原作『オズの魔法つかい』、'54アメリア・ハッチソン・スターリング原作『王女ナスカ』、'55ルイザ・メイ・オルコット原作『ライラック咲く家』、'58ジェーン・ラドロウ・ドレイク・アボット原作(編著 岡野謙二)『サーカスの少女』、'58ジュヌヴィエーヴ・フォックス原作『山の少女アン』、'59シュトルム原作(編著 下高原千歳)『人形つかいのポーレ』、'60アボット原作(編著 松田穰絵)『レビッツ家のひみつ』、'61アボット原作『幸福の家』、'64ハリエット・ビーチャー・ストー原作『アンクル・トム物語』、'65バーネット原作『小公子』などがある。また、『シェークスピア名作集』や『世界むかし話 世界民話集』などの翻訳書も刊行している。
児童文学作家としても多くの絵本を手掛けており、処女作は、'56『石の花』。'57『伊豆の民話』所収の「たぬきの糸車」は、'77より光村図書の小学校1年国語教科書に掲載され続けている。他に、女性でノーベル賞を受賞した『キュリー夫人』('59)、目や耳が不自由でも精力的に活動された『ヘレン・ケラー』('64)、黒人差別を受けながらも歌手として活動したマリアン・アンダーソン('71)、『心をうつ話・いじん物語 1〜3年』('72-'74)などの幼年伝記本や、『おにのよめさん』('69)、『世界のほらふき話』('71)、『おに・てんぐばなし』('72)、『ふしぎばなし』('73)など、民話の収集や再話もたくさん手がけた。老衰のため103歳で逝去。