> 界樹の迷宮をリプレイ風プレイ日記最終話〜リプレイ風のプレイ日記でした。






> 最の挨拶。



 前回のセッションより一週間後。

 都内某所。(いつもの場所)



GM : 「さばみそギルドのー、エトリアわくわく冒険日記ー! という訳で今日のセッションも元気にやってみたいとおもーいまーす! 今日も楽しくいくぞー、おー!」



他一同 : 「…………」(しーん)




GM : 「おいおい、みんな何だよ今日は元気がないなぁぁ、もう一度! いくぞー、おー!




他一同 : 「…………」(しーん)


GM : 「ちょっ! だからホント、みんな元気がないって。もっと元気に声を出してだなぁ……」


シェヴァ : 「そんな事言ったって……」


GM : 「シェヴァ?」


シェヴァ : 「だって、このセッションが終わったらGMはって思うとさ……やっぱり、おれ……」


GM : 「…………シェヴァ」



シグ : (ぽんむ)


シェヴァ : 「ふにっ!?」


シグ : 「……そんな顔すんなって、シェヴァ」(なでなぜ)


シェヴァ : 「……シグ」


シグ : 「GMは楽しくやろうぜ、って言ってるんだ……だから、そういう顔は無しだ。なぁ?」


シェヴァ : 「う……にゅぅ……」


フィガロ : 「そうさね、シグの言う通りだ」


シェヴァ : 「あ、アニキ……」


フィガロ : 「GMが言うんなら、俺たちもいつも通り、楽しませてもらうとするさね。さぁ、ゲームを始めようか。GM?」



GM : 「……うん、そう思ってもらえれば幸いだよ。みんな。それじゃ、改めて……今日も元気にセッションいってみよー! おー!」




一同 : 「「「おー!!!」」」




GM : 「と、最初に気合い入れてもらった後に説明になって恐縮だけど……このセッション、今日が最終回になります!」



ナルラト : 「……うーん。まだ遊び足りない気がするけど、残念だねェ」


リン : 「ナルラトさんは、隠しダンジョンからの参加ですから尚更ですよね」


ヒルダ : 「私も途中参加だったから物足りない気がするな……久しぶりに仲間と会える場だった訳だし」


GM : 「んまぁ、結構長く続けてきたし、三竜も倒した……残すのは地下にすむ隠しボスを撃退するだけだから、やれる事はなくなってきてるし。そろそろ頃合いかなぁと思っているけどね」


カエデ : 「でも……寂しいですね……」


アイラ : 「ねー……何か、みんなと友達になれたと思ったんだけど……」


GM : 「それは……俺だって……寂しいよ……」


アイラ : 「あっ……」


GM : 「あ……その、でも。何だ……とにかく、今日のセッションが終わるまでは頑張るつもりだからみんなヨロシク頼むね?」


カエデ : 「GMさん……」


アイラ : 「GMっ……」


リン : 「……はい、わかりました! 精一杯、がんばりますから! ぼく、がんばって……迷宮の最深部に到達しますからね!」


GM : 「ありがと、リン君。それじゃ、他の皆も頑張って……いよいよ、迷宮最深部・真朱の窟そのとびらを開いてみたいとおもーいまーす」


一同 : 「おー!」




> 全ての根源、の迷宮





GM : 「という訳で、第6階層……の、扉はもう開けているんだったっけな。前ちょっと見に来たもんね」


アイラ : 「うん! でも、どういう所だったっけー、第6階層?」


ガモン : 「……強靭な甲羅をもつ甲殻類が闊歩する死地ですね」


アイラ : 「きょーじ……いたっけ、そんなの?」


リン : 「ほら、アイラさんあそこですよ……あの、床が風船みたいにふわふわした、臓腑の中みたいなフロア!」


シェヴァ : 「凄い攻撃の強いカニがいて、カエデちゃんがぽこぽこ殴られてた所だよ!」


アイラ : 「……あ! 思い出した! あの攻撃がきかないカニがいる所ね!」


ガモン : 「……」


フィガロ : 「……ガモン、お前のちょっと堅苦しい説明、お嬢さん方には通じなかったみたいだねェ」


GM : 「もっと女の子にも分かりやすい言い方を心がけた方がいいぞ!」


ガモン : 「……善処します」


シグ : 「とはいえ、あの階層は一筋縄ではいかないな……本腰いれなきゃ簡単に全滅するぜ。なぁ、どう思う、参謀殿?」


シュンスケ : 「……雑魚でさえ高い防御力をもち、属性に耐性まで秘めている階層だ。慎重に雑魚の弱点を見極めつつ、地道に進んでいくのが賢明だと思う」


シグ : 「だよなァ。おっし、じゃ、皆で少しずつ道を切り開いていくぜ!」


一同 : 「「「おー!」」」



 かくして始まった、第6階層探索。

 その道中。




シェヴァ : 「あ、ここに隠し通路がある!」


ガモン : 「おい、不用意に近づくな。これだけの迷宮だ、どんな罠があるか……」


シェヴァ : (ずぶずぶずぶずぶ……)



ガモン: 「と、言ってる傍から不用意に隠し通路へ突っ込むなぁぁ! どんな罠があるかわからないと言ってるだろうがぁ!」



シュンスケ : 「シェヴァが消えた! ……敵に出会ったら大変だ。すぐに後を追いかけるぞ!」(ずぶずぶ)


ガモン : 「そしてその馬鹿にあわせて馬鹿になるな、馬鹿の保護者!」



 迷宮内にガモンさんの怒号が飛び交ったり。



シェヴァ : 「このワープは、先に進む道かなぁ、どきどき…………あー、違った! また元の場所に戻された!」


カエデ : 「落胆してはいけません、シェヴァ様! これも試練だと思って、新しい道を探しましょう」


シェヴァ : 「そうだね……じゃ、次はこっちの道に行ってみよう…………うわー、また元の場所に戻されたぁ!」


ガモン : 「そして、敵はまたメタルシザース二体だぞ」



シェヴァ : 「うわーん! もうやだー、何だよこのワープ地獄ぅー。帰る、帰る、俺エトリアに帰るー!」(じたじた)



シュンスケ : (よしよし)



 幾度も繰り返されるワープ地獄に気が折れそうになったりもしつつ。



シェヴァ : 「もう戻されるのは嫌です。もう戻されるのは嫌です……」


リン : 「今度のワープは当たりだといいですけど……あ!」


カエデ : 「見て下さい! 選んだ道の先に、階段が!」


シェヴァ : 「え、ホント! ……ヤッター! やっとこの階層から出られる! 嘘みたいだ! でもホントだよね、夢じゃないよね、誰か俺の事叩いてみてよ!」


ガモン : 「そうか。では遠慮なく」(ばちこーん!)



シェヴァ : 「ぎゃん!」(ぼてっ)



シュンスケ : 「!? シェヴァ! ……本気で殴る事はないだろう、ガモンっ!」


ガモン : 「!! す、スマン。つい……その、日頃の鬱憤的なものが……」


シェヴァ : 「ばたんきゅー……」



 賑やかなやりとりを繰り返し、ワープ地獄に折れず何とか新しい道を切り開き。



ヒルダ : 「ここが新しいフロアか……一面、遮蔽物のない広いフロアに見えるが、何があるか分からぬ。皆、慎重に進むぞ」


アイラ : 「はーい! それじゃ、アイラさんいきまーす、全速前進ー!」(ばたばたばたばた)


ヒルダ : 「まて、危険だアイラく……ん?」(ずぼっ)


リン : 「ずぼ?」


フィガロ :  「大丈夫かねぇ、ヒルダ……今、何か鈍い音が……」




ヒルダ : 「ひゃっ、ひゃぁぁぁあぁぁあああぁぁぁぁぁ! きゃぁぁぁあぁぁああぁ!」



アイラ : 「きゃー、ヒルダお姉さまがずぶずぶと、落とし穴に落ちて下の階層に!」


シュンスケ : 「なるほど……このフロア、一見遮蔽物がなく自由に行き交う事の出来るフロアに見えるが、実は周囲は落とし穴だらけ。特定の道しか進めないようになっているのだろうな」


フィガロ : 「ふーん、直線ですぐに階段まで行けそうに見えたけど……面倒臭い仕掛けだねェ……」



ヒルダ : 「たぁすっ、助けてぇぇぇ。やー! きゃー!」



リン : 「二人とも、そんな冷静に分析している場合じゃないですよ!」


アイラ : 「そうだよ、ヒルダお姉さまきっとすごーく困ってるよ!」



 新たなフロアでは、時に落とし穴に翻弄され。



リン : 「F.O.Eが居ますよ! ……追いかけてきます、見つかったみたい。どうしましょうか」


フィガロ : 「うーん、あと少しで逃げ切れそうだけど、そうするさね。参謀殿」


シュンスケ : 「……今は皆、体調も万全だ。このフロアはダメージ床が多い。逃げて体力が減った所、追いつかれるより今撃退した方がいいだろう……」


フィガロ : 「という訳で、皆行くさねっ!」


ヒルダ : 「よし!」


GM : 「戦うんだね。じゃぁ、こっちの先制攻撃!」



一同 : 「「「な、なんだってー!」」」



GM : 「そしてシュンスケ君をガツン。 ダメージは……」


シュンスケ : 「……言わなくてもいい、そのダメージなら一撃で落ちる」


リン : 「えぇえぇぇぇ!?」(オロオロ)


フィガロ : 「体力温存のつもりが、かえってダメージ受けちゃってるさね!」



 時にはF.O.Eの驚異に晒され。

 だがそれでも……。




シグ : 「俺は、このダメージ床いっぱいのフロアも全て踏みしめて歩く! こうして迷宮を踏破したい!」


ヒルダ : 「……と、坊ちゃんはもうしているのだが。参謀の意見は?」


シュンスケ : 「却下だな」


ヒルダ : 「だ、そうだ」


シグ : 「しょぼーん……」



 ダメージ床を越え。




シェヴァ : 「あの、亀さんの後をついていけばとりあえず安心だよ!」


ガモン : 「なるほど、F.O.Eの進む道なら落とし穴がない。故にその後を歩けば正しい道がいける、か……考えたな、シェヴァ」


シュンスケ : 「……そうだ、シェヴァは考えれば出来る子なんだ。凄いだろう?」


ガモン : 「お前は誉めてない」



 機転をきかし、落とし穴を抜け。



アイラ : 「ワープ、ワープ、またワープ……ふぇ、また同じ所に戻って来ちゃったよぉ、シグー!」


シグ : 「仕方ねぇ、最初からやりなおすか……」


シェヴァ : 「…………」


シグ : 「? どうした、シェヴァ」


シェヴァ : 「……いやさ。俺、これまでこのワープは、こっちに繋がって。 こっちのワープはこっちに……って、ワープ同士にメモを残しておいたんだけど。マップアイテムが一杯になっちゃったらしくて、もう地図にアイコンが置けなくなっちゃったんだよ!」


GM : 「あ! あぁ、メンゴメンゴ。 それ、システムの限界ってヤツだ……このゲーム、おけるマップアイコンの数が決まってるから」


シェヴァ : 「えー、完璧な地図作りたかったのにー!」


シグ : 「仕方ねぇだろ、正しい道だけワープとして残しておいてくれ」



 アイテムチップの限界を上回る程に繰り返されるワープ地獄をさらに抜け。



ナルラト : 「やっと、このフロアになって一本道になったみたいさねぇ」


リン : 「そうですね、でもまだ気が抜けませ……」


アイラ : 「? どうしたの、リンちゃん。立ち止まっちゃって、おいていくよー!」



リン : 「きゃぁぁぁ! 大変! 大変です! 後ろから! 後ろからドンドン、F.O.Eが出てきますよ!」



アイラ : 「えっ!?」


ヒルダ : 「と、と、とにかく皆、全速力で逃げろ! 前に進んで道を切り開くのだっ!」



 無限にわき出るF.O.Eに追いかけられ。



GM : 「……いよいよ迷宮の奥へと迫ってきたね。この扉を守るのは、竜のクローンだ!」



一同 : 「「「えええ、竜!?」」」



アイラ : 「ちょ、え。竜ってあの強いの!? 全然心の準備が……」(あたあた)


シェヴァ : 「まって、おれおやつ食べてる最中……」(ふたふた)


シグ : 「まーまー、皆落ち着けっての。こいつは竜っていってもクローン、きっと強くねぇって」


リン : 「でも、シグ……」


シグ : 「それに、一度、勝った相手に負ける訳ねーだろ! ……落ち着いて戦えば大丈夫だって! よっし、やるぞみんなー!」


GM : 「……本当に、人を強くするリーダーだね。彼は」


シュンスケ : 「えぇ、実にリーダーに相応しいヤツだって。そう思います……俺の、自慢の仲間ですよ」



 クローン3竜の守る扉を越えて。

 いよいよ……迷宮最深部へと向かうのであった……!





> それは後にして最強の




GM : 「そんなこんなで! やってきました、迷宮最深部〜! よ、ぺぺん、ぺん」(三味線のつもりらしい)


シグ : 「ふひー、本当に辛かったなァ……」


シェヴァ : 「何回もワープがあって、何度もスタート地点に戻されて……おれ、ホント、地図間違えているんじゃないかなぁって涙が出そうだったよ〜」


アイラ : 「何か思ったより時間かかったよねー……レベルも上がりきっちゃったし」


GM : 「世界樹はカンスト前提みたいな所あるから……最終ダンジョン、まともにプレイしてたら殆どカンストするよ」


シュンスケ : 「……仕掛けも、意地の悪いものが多かったな。ワープ地獄に、一見自由に行けるようで落とし穴だらけのフロア……か」


GM : 「まぁまぁ、とにかくキミたちは最終決戦前までやってきた訳だけど……どうする、このまま突撃するかい?」


シュンスケ : 「いや、一度作戦をたてよう。エトリアに戻って皆と相談するぞ。いいよな、リーダー?」


シグ : 「異論はないぞ。ここらで一度一息つきたいと思っていた所だしな」


GM : 「それじゃ、一度エトリアにもーどーる。はいもどったー!」


ナルラト : 「お帰りぃ、シュンスケの坊やぁ」(むぎゅ)


シュンスケ : 「うぷっ!? ちょ、な、ナルラトさ。く、くるしっ……」


シェヴァ : (オロオロ)


シグ : 「……と、参謀がナルラトさんのベアハッグを受けているうちに、隠れボス対策だけど……まだ会ってないボスだから対策も何もないかな。様子見部隊に行きたいヤツ、居るか?が」


リン : 「はい、ボクは行きます! ……回復は、どんな時でも必要ですよね?」


シグ : 「そうだな、メディックは必須の職業だとして……あと、必須そうなのはどいつだ?」


ヒルダ : 「……敵がどのような技を使うかは知れぬが、もし三竜のように属性ブレスを。それも高火力のものを持つとしたら、私の力も必要だろうか?」


シグ : 「そうだな、持久戦用に姉弟子……あと、アニキもきてもらうか」


フィガロ : 「俺かい?」


シグ : 「あぁ、アニキの能力強化ならどういう状況にも対応できるしからな」


フィガロ : 「OK、了解……んだけど、ヒルダ嬢にリンと俺だと、残りのキャラはアタッカーの方がいいと思うよ。とだけは、言っておくよ……俺たち、火力はそんなに無いからねぇ」


シグ : 「そこはそれ、とりあえず初回は俺とシュンスケで行こうと思ってる……俺たちなら相手がどんな属性を持っていても対応出来るし、属性が駄目なら俺の通常攻撃でもそこそこダメージが狙えると思うからな」


GM : 「おっけー、んじゃ面子は」


 前衛 : シグ ・ ヒルダ
 後衛 : リン ・ フィガロ ・ シュンスケ



GM : 「これでOKかな?」


シグ : 「あぁ、それでOKだ。よし、行くぞシュンスケ!」


シュンスケ : 「……きゅう」


シェヴァ : 「ふぁぁぁ! のびちゃった! シュンスケが、ナルラト姐さんの熱烈な歓迎にのびちゃったよぉ!」


ナルラト : 「……あらあら、ウブな坊やね。うふふ〜」


シグ : 「おーい、戦う前から参謀殿をのさないでくれ〜」(笑)



 かくして、初回の様子見メンバーを決定したさばみそギルド。

 いよいよ、地下に潜む隠れボスと対面するのであった……。




GM : 「という訳で、キミたちは再び隠れボスの部屋その前まできた……準備はOKかな? 神様にお祈りは済ませたかい?」


シグ : 「はは、冒険者なんて準備はいつでもOKだぜ! という訳でみんな、行くぞー!」



一同 : 「「「おー!」」」



GM : 「と、キミたちが気合いを入れてなだれ込んだ先に現れたのは、巨大な瘤をいくつも持つ、まるで意志をもって蠢いた細胞のような生命体……この世界樹の迷宮、その地下で多くの生命たちとともに蠢きそして生きてきた、最強のモンスター……フォレスト・セルだ!」


リン : 「ふぁっ……お、お、大きい……」


シグ : 「気圧されるなリン! ……とにかくリンは医術防御を、シュンスケは術式を……俺はチェイスする、頼りにしてるぜ相棒!」


ヒルダ : 「……私はどうするか、敵の出方がわからぬ今、ひとまずシールドスマイトをしておくか」


フィガロ : 「俺は長期戦を見越して、安らぎの子守唄をしておこうかねぇ……」


GM : 「OK、そっちの準備は終了だね。じゃ、こっちの攻撃……素早さは、圧倒的にこっちが上だぜ! そして行くぞ……使う技は、エクスプロウド! 効果は……全体に、2500の属性攻撃ッ!」




一同 : 「「「な、何だってー!」」」




GM : 「ダメージは……」


シグ : 「き、聞くまでも無ぇや……それじゃ、全滅だ……」


ヒルダ : 「氷竜同様、初っぱなから属性攻撃の大技を出すタイプか……!」


シュンスケ : 「……仕方ないな、撤収だ。新たに対策をねって、また挑戦しよう……」



 かくして、初陣はあえなく1ターンで撤退となったさばみそギルド面子。

 その後も、幾度も隠れボス、フォレスト・セルに挑むものの……。




ヒルダ : 「ファイアーガード!」(じゃきん)


GM : 「お! そのスキルで、エクスプロウドは完全無効化されたぞ」


シュンスケ : 「なるほど、どうやらその技は炎スキルのようだな!」


シグ : 「よし、そうと分かれば怖くねぇ、このまま畳みかけるぞ!」


フィガロ : 「強化もばっちり決まったさね!」


リン : 「医術防御も……」


シグ : 「これで安定したダメージが叩き出せる……」


GM : (強化の枠が10を越えているな、これなら……) 「だがやらせるだけじゃないぞ、王の威厳! この技は、強化を全て無効にする!」



リン : 「!? それ、ヴィズルさんが使った技ですよね……?」


シグ : 「まずいな、強化がねぇとHPの低いシュンスケなんかはすぐに沈むぞ!」


フィガロ : 「大丈夫さね、すぐに建て直せば……」


GM : 「……そして次のターン、行動はこちらからだな。攻撃、スキルはサイクロンルーツ! ガード不能の全体攻撃だっ!」


リン : 「ちょ、まだ建て直しは……」(オロオロ)


フィガロ : 「……また駄目だったみたいさねぇ」


シグ : 「仕方ない、撤収だ!」



 強化を無効にされた直後、大技を使い壊滅をする事もあり……。



ヒルダ : 「……最初はエクスプロウド。炎属性……5ターン目はサンダーストーム……雷属性、よし」(ぶつぶつ)


シュンスケ : 「まだ不確定要素も多いが、属性攻撃は有る程度決まったターンで行ってくるのがわかってきたな……」


ヒルダ : 「そのようだ……このターンは属性攻撃ではないな。私はシールドスマイトで攻撃しよう」


シグ : 「幸い、アイツ攻撃は普通に入るみたいだからな! 姉弟子のシールドスマイトはキッツイから、攻撃参加してくれると助かるぜ!」


GM : 「と、するとヒルダはこのターンで攻撃参加ね。んじゃま、油断したところで……フリージング、氷属性の全体攻撃だ! ごぱー……」



シグ  : 「あははは……ごぱーじゃ無ぇよ、ごぱーじゃ! ……対応出来るか、撤収だぁっ!」



フィガロ : 「段々撤収も慣れてきちゃって、悔しさを感じる前に笑えてくるねぇ」(笑)



 防御を解いた時に全体魔法を喰らう事もありつつ。



GM : 「俺のターン、えーと今回は……セルメンブルレンにしようかな。 フォレスト・セルに精神障壁が生じた!」


フィガロ : 「精神障壁?」


ヒルダ : 「よくわからんが……」(ドカッ)


GM : 「痛い痛い痛い痛い! シールドスマイト痛い! ……でもそのシールドスマイトも、ヒルダちゃんのような美人にされていると思うと、少し心地よいの!」


ヒルダ : 「通常攻撃スキルは通るみたいだぞ」


GM : 「無視しないで! 俺の軽い変態紳士的ジョーク、無視しないで!」(めそり)


シグ : 「だったらこっちも攻撃たたき込むか、シュンスケ!」


シュンスケ : 「あぁ……大氷嵐の術し……」



GM : 「はい、残念ー。それ残念ー、セルメンブルレンは、属性攻撃反射のお知らせでーす、その攻撃、シュンスケ君にお返しいたーしまーす」



シュンスケ : 「何っ……っ、駄目だ、俺の攻撃ながら……属性ダメージでは、一溜まりもないな。即死だ、それで」


リン : 「きゃー、シュンスケさん! シュンスケさーん!」


シグ : 「……シュンスケの属性攻撃が反射された、っつーことはひょっとして」


GM : 「うむ、ご想像の通りだ。シグのチェイス攻撃も跳ね返すからダメージヨロシク!」


シグ : 「……うん、まぁそうなるだろうな。そしてそうなると、俺も即死だよな」


リン : 「きゃー、シグ。シグー!」


シグ : 「くっ、強すぎる自分の攻撃が恨めしいぜ……」



 属性攻撃を跳ね返され泣く泣くの撤退を繰り返すのであった……。



 そして、数度目の帰還後。

 エトリア、冒険者ギルドにて。





GM : 「撤退、撤退繰り返し〜、戻りましたーるー、麗しの〜、エトーリアー♪ あーあー、エトリア〜♪」


フィガロ : 「意味不明の音程つけて歌うの辞めてくれるかねぇ? ……音楽家として軽くイラっとするさね」


ヒルダ : 「フィガロにも音楽家としての感性がちゃんとあったのだな」


カエデ : 「ナンパの印象しかありませんから、吟遊詩人なのを忘れておりました!」


フィガロ : 「ちょっ!? 非道っ……」


アイラ : 「それで、どうなのシグ。もう何度も戦ってるけど? 少しは打開策とか、分かってきた?」


シグ : 「えーと……そうだなぁ……」


フィガロ : 「……なかなか難しい相手さねぇ。強化をつけるとすぐに王の威厳でうち消しをしてくるし」


ヒルダ : 「全体攻撃も厳しいし、全体即死などの技ももっているし……厄介な事、この上ない相手だな」


GM : 「GMとしては、使っていてなかなか気持ちいいボスだけどね。何せPCを容赦なくこてんぱんに出来る訳だから」(笑)


シュンスケ : 「……なかなかに痛烈な相手ではある。だが、打開策は……無い訳では、なさそうだな」


GM : 「な、何……だと……!?」


シグ : 「お、流石参謀殿。で、どう見た?」


シュンスケ : 「ひとまず、一見ランダムに思える属性攻撃三種は……実際、ランダムに打ってくる事もあるが、1ターン目のエクスプロウド(炎属性)のように、必ず打ってくるターンもあるようだ……この、必ず属性攻撃を使ってくるターンを、ヒルダの三色ガードで無効化すればかなり有利に戦えるだろう……」


ヒルダ : 「あぁ、同感だ。私も戦っている最中、このターンは必ず打ってくる属性攻撃を見極める事が出来るようになってきた」


シグ : 「マジでか!? ……流石、姉弟子は頭いいなぁ〜」


GM : 「キーッ……対応早い! これだから頭のいい子は嫌いなんですよ!」


シュンスケ : 「それに、王の威厳だが……あれは、こちらの強化をうち消されるのが難点ではあるが、他の技……即死系の攻撃技であるネクローシスや全体攻撃技のサイクロンルーツより行動の優先順位が高い風に思える……」


リン : 「そういえば……ボクとフィガロさんが強化を使った後、すぐに王の威厳でうち消されていた気がします!」


シュンスケ : 「……この二つの特性を考え、ランダムで打たれる属性攻撃の時。ヒルダがガードをし、その間に王の威厳を誘発するよう強化を重ねがけしておけば……相対的に、危険な技。即死や全体攻撃は少なく、25ターン以内に安全かつ確実にヤツの体力を削りきる事が出来るものと、計算できる……」


シグ : 「流石だなシュンスケ! よし、腕がなるな。まってろ隠れボス! 今俺の手で引導を……」




シュンスケ : 「お前は留守番だ、シグ」




シグ : 「って! マジでか。えー、何でだよ、俺かなりやる気だったのに!」


シュンスケ : 「セルメンブルレンといったか……敵が強力な属性反射攻撃をもっている以上、属性攻撃がメインになるお前のチェイスや俺の術式は使えないからだ。間違って二人同時に倒れたら、目もあてられないからな……」


シグ : 「何だよー、ソードマンは攻撃職じゃねぇのかー、何か後半のボスは留守番ばっかりな気がするぜ……」(しょんぼり)


リン : (なでなで)


シュンスケ : 「そして、アイツは傾向的に封じ技はきかないように見える……残念だが、ナルラトさんも出ない方がいいだろう」


ナルラト : 「ん? ……まぁ、わかってた事さね。アタシの技は、特定のボスにしかきかないみたいだからねェ……」


アイラ : 「きくと頼りになるんだけどね、ナルラトさんの術!」


シュンスケ : 「……カエデ君も、この戦いには向かないと思われる。今回は見送ろう」


カエデ : 「そんな……何故ですか?」


シュンスケ : 「敵が王の威厳で強化をうち消してくる以上、構えから強化をつかって技を繰り出すブシドーのスキル攻撃は殆ど使えなくなるからだ……燕返しなど強力な技も多く残念だがな……」


カエデ : 「ううう……しょんぼりです」


リン : (なでなで)


シグ : 「そうなると、討伐メンバーは自ずと決まってきそうだな……誰が出る?」


シュンスケ : 「……そうだな、ひとまず、ヒルダとリン君は必須だろう。属性攻撃が飛ぶ時は、ヒルダの三色ガードでうち消し……その間、医術防御をかけて王の威厳を誘発させる為にな」


ヒルダ : 「わかった」


シュンスケ : 「……リン君は、敵の攻撃が読めない時……ランダム攻撃をしかけるターンに、ブースト状態で医術防御も頼んでおきたい」


リン : 「えっ? ……ブーストで、医術防御ですか?」


シュンスケ : 「ブースト状態の医術防御なら、敵が仮に属性攻撃を飛ばしたとしても被ダメージは300前後に抑えられるはずだ……王の威厳も属性攻撃も飛ばない穴のターンを埋める為にはブースト+医術防御は必須、是非お願いしたい……頼めるな?」


リン : 「は、はい、頑張ります!」


シュンスケ : 「……そして、そのブースト状態の医術防御をいち早く発動させる為に……ガモンさん。貴方のアザステは必須スキルになります。サジタリウスの矢、ダブルショットも持つ貴方は攻撃人員としても申し分ない火力……是非後衛をお願いします」


ガモン : 「ふん……仕方ないな、本来ならお前の頼みを聞く義理はないのだが……」


フィガロ : 「王の威厳、誘発させるには強化を10は使わないと駄目っぽいよねぇ……だとすると、リン君の医術防御だけじゃ足りないって訳だ。これ、俺の出番って事でいいかねぇ?」


シュンスケ : 「そうだな。お前が安らぎの子守唄、あるいは猛き戦いの舞曲をかけ続けてくれれば強化枠は容易に10を越える。一見無駄打ちに見えるが、攻撃の手を緩めるのには良い作戦だ、お前にも出てもらおう」


フィガロ : 「はいはい……って、訳さね。しっかり護衛を頼むよ、ガモン?」


ガモン : 「フィガロ様……ふん、マスターの頼みだからな。仕方ない……この戦、付き合ってやろう」


アイラ : 「これで4人……あと一人はどうするの? やっぱりアタッカーが必要だよね、私出ようか? 斧でアイツをかちーんと、かち割るよー!」


シュンスケ : 「アイラ君も悪くないが……ここは、シェヴァ。お前がいくのはどうだろうか」


シェヴァ : 「えっ、俺!? ……いいけど、どうして?」


シュンスケ : 「確かにお前の方がアイラ君より火力は低い、が…………敵は素早さが高い。安定して攻撃を当て続けるには、シェヴァの方が適任かと思ってだ。頼めるな?」


シェヴァ : 「う、うん! おれ、がんばる!」


アイラ : 「ちぇ、お留守番かぁ〜、ちょっと寂しい。けど……頑張ってね、シェヴァさん」


シェヴァ : 「うん! うん! ……シグとアイラちゃんのぶんも、ぶっ飛ばしてくるよ!」


ガモン : 「素早さ重視で選んだか……とかいって、実際贔屓じゃないのかシュンスケ?」


シュンスケ : 「贔屓? 冷静な判断をして選んだつもり、だが……」


ガモン : 「そう言うがな……スキル攻撃なら必中。アイラ君のスキル攻撃を中心に編成すれば、シェヴァじゃなくてもいいんじゃないか? ……お前、シェヴァに花を持たせる為にこの人員を選んだんじゃあるまいな」


シュンスケ : 「確かにそうだ、が……今回の戦い方だと、ガモンさん。貴方のTP切れが心配される……アイラ君もTPが高い方ではない。二人のTPを心配するくらいなら、TPの心配なく通常攻撃でも充分戦えるシェヴァを選んだだけだ」


ガモン : 「ふん、どうだか……」


シュンスケ : 「それに、ガモンさん。貴方は誤解している……俺は、もし贔屓や打算でパーティを組むのならな……絶対に、貴方とシェヴァが二人で行動するようなパーティは組まないんだよ!」



ガモン : 「うっ……」


シグ : 「お、うちの参謀殿が凄くどうでもいい事を強い語調で主張しはじめたぞ!」




シュンスケ : 「貴方がシェヴァと同じパーティを組む事で……組む事で、協力して巨大な敵に立ち向かったりな……その最中、ハイタッチをするとか仲良く肩を組むとかな……そういう展開を想像するだけでな……こっちはもう、腑(はらわた)が煮えくりかえる思いをしているんだ……その思いを押し殺して……俺はこのパーティを提案しているんだ……どうだ、ガモン……何か文句があるなら今の俺の目を見て言ってもらおうか……(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……)



ガモン : 「あぁ、その、何だ……………悪かった」


アイラ : 「歴戦の戦士であるガモンさんが謝った!」


シグ : 「流石、我らが参謀さんの発言はシェヴァが関わると一味違うぜ!」


ヒルダ : 「怒りの沸点が多いにズレている気もするがな……」


GM : 「それじゃ、フォレスト・セル討伐面子は」



 前衛 : ヒルダ ・ シェヴァ

 後衛 : リン ・ フィガロ ・ ガモン




GM : 「でOKって事だね……それじゃ、元気にフォレスト・セル討伐。いってみようじゃないかー!」



一同 : 「「「おー!」」」





> 世界のての、向こう側



 かくして、シュンスケ氏に入れ知恵が終わったさばみそギルド面子はいよいよ迷宮最深部にある場。

 フォレスト・セルの住処へと訪れたのであった……。




シェヴァ : 「うう……実はおれ、ここ来るの初めてなんだよなぁ、大丈夫かな……」(ドキドキ)


GM : 「心配するシェヴァ君の前に、見た事もない巨大で歪な魔物が現れる……幾つもの隆起した瘤。そして巨大な目。口とも鼻とも区別のつかぬ中央のパーツは不気味に蠢いている……さぁ、フォレスト・セルの登場だぁッ……!」


ヒルダ : 「1ターン目は必ずエクスプロウド……炎属性の攻撃だな、よし……ファイアガードだ!」


リン : 「医術防御を!」


フィガロ : 「……猛き戦いの舞曲を。これで、強化枠は10埋まっているから、次のターンは王の威厳がくるはずさね!」


シェヴァ : 「その間に、俺たちは攻撃を畳みかけるよ、ガモンの兄ちゃん!」


ガモン : 「言われずともだ……サジタリウスの矢!」


GM : 「うん、このターンはヒルダの予想通り。エクスプロウド……だからガードされちゃったな、次のターン……」


シェヴァ : 「えーと、シュンスケの言う通りなら、このターンは王の威厳のはずだね……どれにしても、俺は通常攻撃だけど。通常攻撃もスキル攻撃もそんなに威力かわらないんだよなぁ、おれ」


リン : 「……えーと、このターンでアクセラをつかってブーストしておきます! ……次のターン、ブースト医術防御をつかえるように」


フィガロ : 「王の威厳を確実につかってくるように、安らぎの子守唄をつかっておこうかねぇ……大丈夫だと思うけど」


ヒルダ : 「私は、シールドスマイトだ!」


ガモン : 「……ダブルショットを」


GM : 「うむ! ……何かシュンスケ君の思惑通りで悔しいが、それならば使ってやろう、王の威厳! 強化打ち消しだ」


ヒルダ : 「だが攻撃は入る、な……次は攻撃予測がつかぬ、故に私はこのままシールドスマイトを続けるぞ」


リン : 「……医術防御を、ブーストで! ガモンさん、お願いします!」


ガモン : 「アザステを! ……これで最初に医術防御が入ります。何の攻撃が来ても倒れる事はないでしょう」


フィガロ : 「俺は、安らぎの子守唄を……とにかく、強化枠を10使ってないと、王の威厳が飛んでこないからねェ……」


GM : 「攻撃、こっちはサンダーストームだ! ……が、ブースト医術防御だとダメージは300程度か……一撃で沈めるには至らないな……」


リン : 「はい、皆さん大丈夫ですか!?」


フィガロ : 「いたた……痛い。けど、何とかねェ……」


ヒルダ : 「次のターンは王の威厳をつかってくるはずだ、その間に回復を済ませるぞ!」


GM : (む……流石、伊達に参謀殿から入れ知恵されてきてないな……確かに、強化が入っている時、こいつは王の威厳を優先してつかってくる……ランダムで打つ事もあるけど、属性攻撃はそれぞれ決まったターンで打つ特性もある……そこを読まれて対策をとられると……)


ヒルダ : 「次は雷攻撃だな……ガードをしておこう。リン君はランダム攻撃にそなえてブーストを!」


リン : 「はい、了解です!」


GM : (攻撃が読まれている以上、ヒルダがガードミスをするのが先か。こっちのランダム攻撃の時に大ダメージが入るのが先かになるか……)



 かくして、敵の攻撃を読みつつ一進一退の攻防を続けるさばみそギルド。

 最初こそ敵の怒涛の攻撃に苦戦してきたものの、確実に行動を読む事で受けるダメージは最小限に。

 与えるダメージを最大に出す事を成功させ。

 また、それ以外のランダム攻撃の時も……。




GM : (よし、この攻撃はランダムだな)「えーと、攻撃は……太古の呪粉だ!」


シェヴァ : 「タイコの?」


リン : 「どんどこどーん、カッ! どんどんどーん?」


GM : 「太鼓じゃなくて太古ね! ……えーと、この効果は、全員にバステ付属! ヒルダ君は石化〜、シェヴァ君は呪い〜。リン君は混乱〜、フィガロ君はテラーで、ガモンが盲目状態ね〜」


ヒルダ : 「しまった……これではガードが出来んっ……」


シェヴァ : 「ふぇっ、ぇ、どうしよっ。えーと、次は氷の属性攻撃が来るよ、ちょ、あー」(オロオロ)


ガモン : 「狼狽えるなシェヴァ! ……確かに属性攻撃が来るが、今はブーストの医術防御が入ってる、1ターンなら持ちこたえられる! その間、お前がテリアカで立て直せ! 次ターン、次のターンと属性攻撃が続くはずだ。属性攻撃が続いてる間は、ヒルダさえいれば立て直せるからな!」


シェヴァ : 「あ! う、うん、そうだよね。俺、テリアカ使う! アイテムいっぱいある! 頑張る」


フィガロ : 「んー、流石ガモンは戦い慣れしてるねぇ、いーい喝破くれるから痺れちゃうよ。うん、うん、惚れなおしちゃうってヤツさねぇ」


ガモン : 「……やめてくださいマスター」


GM : (うーん、揺さぶってもすぐ建て直されちゃうなぁ……まぁそれだけ、安定した戦法をとっているって事だけどね……)



 と、ダメージ最小限で建て直され。

 大きなミスもないまま、少しずつフォレスト・セルの体力は削れていき……。

 そして、運命の24ターン目……。



GM : 「攻撃は、エクスプロウド……とはいえ、防がれてるからダメージは300弱だな……」


リン : 「まっていてください、すぐにエリアキュアで回復しますからね!」


ヒルダ : 「慌てなくてもいいぞ、リン君。次の24ターン目は王の威厳のはず……残り体力も少ない、一気に畳みかける!」


ガモン : 「その前に……サジタリウスの矢が着弾するはず……捉えたか、どうだ!?」


GM : 「うん。ダメージは3000……流石にサジタリウスの矢はキツいな……だが、まだ落ちてない。体力はもうマズイけど……」


シェヴァ : 「だったら、俺の攻撃っ! ……ダメージは1000弱、だけど……どうだぁ!」



GM : 「!! ……それで、落ちた」




一同 : 「「「おおっ!」」」




GM : 「うん、それがトドメの一撃だね。フォレスト・セルはその巨体を僅かに揺らすと、グズグズと崩れ落ちていく……そして、大きな肉塊となり……もう、動かなくなった。もう……」




一同 : 「「「おおー、やったー!!!」」」





 かくしてさばみそギルドの活躍により、迷宮その最深部に鎮座するボス。

 フォレスト・セルは、討伐されたのであった…………。








>幕劇 〜 さよならは、一時死ぬ事とおなじ。






 幕間劇に興じよう。

 それはある男の物語。


 時の流れの中にあり、だがその中に有り続ける事は出来ない時を留めた男が、たった一つの挨拶(ことば)を。

 さよならを言う為の物語。



 ・

 ・

 ・


 その日のセッションが始まる前。

 都内某所(いつもの場所)。



七瀬 澪(シェヴァ) : 「んー……んー」(ソワソワ)


桐生 和彦(シグ) : 「おい、どうしたななみ? さっきから、ソワソワしてるけど……トイレはあっちだぜ?」


七瀬 : 「とい……ちがっ、違うよ! ただ、もうみんな集まって……約束の時間、過ぎてるのに。西園寺先生、出てこないなーって思っただけー」


芹沢 梨花(リン) : 「そういえば、遅いですね……もう15分も過ぎてますよね」


桐生 若葉(アイラ) : 「西園寺先生、兄さんと違って結構時間ピッタリか、いつも先には現れてたのにね……最近は、ちょっと遅れがちだけど!」


桐生 : 「俺と同じってなぁ……俺、こう見えても時間結構守る方だぞ。なぁ、梨花?」


梨花 : 「はい! 和彦さん、約束守ってくれますよー」(ニコニコ)


若葉 : 「惚気られた!」


七瀬 : 「さり気なく惚気られたよ!」


芦屋 灯里(ナルラト) : 「でも、確かに遅いねぇ……あんまり遅れるようだったら、私も後ろ詰まってるから先にあがる事になっちゃうけど……」


ウォード=ランカスター(ガモン) : 「どうしたんですかね?」


神崎 高志(フィガロ) : 「……ジュンペイ君、一つ聞きたいんだけど。ひょっとして、さ。カオルちゃん先生は」


椎名 淳平(シュンスケ) : 「…………」




西園寺 馨(GM) : 「おー、みんな久しぶり。集まったみたいだなー!」(ひょっこり)


若葉 : 「あ、西園寺先生、遅っそーい!」


芹沢 早苗(カエデ) : 「もう、みんな帰ろうって相談しはじめてた所ですよー!」


西園寺 : 「え、ちょ、まっ! いい男は遅れてくるもんだと聞いたからやったんだがっ!」


滝 睦(ヒルダ) : 「男だろうと、女だろうと、待ち合わせに遅れてきたのに謝罪もないのは悪い事だな」(きっぱり)


西園寺 : 「う……ごめんなさい、イインチョウ」(ぺこり)


滝 : 「みんなにも謝るのだ」(ぐいぐい)


西園寺 : 「はい……遅刻しました、ごめんなさい……」


若葉 : 「いいよー、許してあげるー」


七瀬 : 「西園寺先生って、何か先生っていうか生徒っぽいよね。イインチョの方が先生みたいだ!」


早苗 : 「授業の時も、あぁいう感じだったんですか? 椎名さん」


椎名 : 「俺の知ってる限りでは、そんな事なかったんだがなぁ……まぁ、生徒によく遊ばれてはいたが……」


桐生 : 「まぁ、雑談はこれくらいにしておいて。オンジ先生が来たんなら、そろそろセッションはじめようぜー!」


西園寺 : 「…………それなんだけどねー、実は始める前に、聞いてほしい事があるんだけど。いいかな?」


若葉 : 「えっ、何なに?」


七瀬 : 「……凄く辛い失恋の話、とか?」



西園寺 : 「……そうそう、アレは春先の事、お隣に引っ越してきた……って、何でここで俺がそんな語るのも辛い失恋の話をしなきゃいけないんだよ! いやだよ、泣いちゃうだろ!」(笑)


神崎 : 「……というか、失恋してるの? カオルちゃん先生は」


椎名 : 「……それは人間との恋愛ですか?」



西園寺 : 「失敬だぞキミたちは! 何だ、俺がキツネと恋愛しそうな顔に見えるってのか! 確かに、タヌキかキツネかで問われたらキツネ顔だし、たぬきそばかきつねうどんかで聞かれたらキツネうどん派ではあるけど、ちゃんと恋バナの一つや二つはね……」


ウォード : 「……それで、何ですか。聞いてほしい事、というのは?」


西園寺 : 「あ……強引に話しを戻すねキミぃ」


ウォード : 「そうでもしないと延々と漫談を続けるつもりでしょう、貴方は」


西園寺 : 「まぁ、そうだね……もったい付けてもしょうがないから、ハッキリ言うけど、今回でこのセッション、最終回にしよーと思ーいまーす。イエーイ、ドンドンドンぴーぴーぴー、ぱふぱふー」




一同 : 「「「えっ!?」」」」




七瀬 : 「効果音が昭和の世代を感じさせるよ、西園寺先生!」



桐生 : 「いやいや、驚くのそこじゃないだろななみ! ……え、最終回ってどういう事だよオンジ先生? え、もう終わりって事か?」



西園寺 : 「そう、今回で最終回……いや、実はこのセッションで、有る程度データもとれた事だし。もう実験を続けていく必要もなくなったから、ゲームも終盤だし、そろそろ終わりにしようかなぁ、なんて思った次第で……」


神崎 : 「カオルちゃん先生」(ぽん)


西園寺 : 「……あ、タカシくん」



神崎 : 「そうやって嘘ついて誤魔化して、さようなら言わないで逃げようっていうの、俺あんまり好きじゃないよ?」



西園寺 : 「タカシくん……」


椎名 : 「……先生。やはりもう……限界なんですね……」


西園寺 : 「……シーナ君も。いやだな、マジで勘がいい連中がそろっているというか。だから出来る子って苦手なんだよね……誤魔化し辛いから……」


梨花 : 「? ? ……どういう事ですか、あの。どうして……急に終わりなんですか? どうして……急に、さよなら。なんですか……?」



神崎 : 「…………前から、少しおかしいと思っていたんさね、カオルちゃん先生が、最近妙にフラつく事が多いと思ってたからねぇ」


椎名 : 「立体映像を投影するシステムに誤作動が増えていますね、先生?」


西園寺 : 「……うん、まぁね」


桐生 : 「しすてむ?」


若葉 : 「ごさどー?」


滝 : 「……何だ、西園寺先生を動かしている機器に、不具合が生じているとでもいうのか?」


西園寺 : 「まぁ、簡単に言うとそうだよね。不具合って程非道い症状でもないんだけどさ……」


椎名 : 「……少なくとも、こうして三次元映像を投影して周囲に姿を現し……皆に意識を共有させるシステムを……ニーズホッグ・システムを機動させる程の処理は、出来なくなっている。それは事実ですよね、先生」


西園寺 : 「……うん、まぁそうだね。何時から気付いていた?」


椎名 : 「三竜たちと戦いはじめた頃から、システムの処理が遅くなりはじめているのは気付いてました……それで、データが膨大になりすぎて……処理がうまくいかなくなり、自我が……保てなくなっているのだ、という事も……」


桐生 : 「でーた?」


若葉 : 「しょり?」



滝 : 「ようは……今まで取り扱ってきた戦闘情報やキャラクターのデータなどが膨大になりすぎて……システムに、負担がかかっているという訳か」


西園寺 : 「そう、それ! ……活動期間も1年過ぎてるからね、俺も。1年でこんなにデータが増えるとは思わなくてさ、俺どうやら……思ったより沢山の思い出を、キミたちとつくっちゃったみたいだよ……」



早苗 : 「西園寺先生……」


梨花 : 「西園寺さん……」



西園寺 : 「…………最初はね、それでもいいと思ったんだよ。この思い出といっしょに、自分の限界が……システムの限界が来て、壊れるまでキミたちと遊びつくして……ある日、限界がきたシステムといっしょに壊れて消えてしまうのも、俺らしいかなぁって思ってたし……」


桐生 : 「……何いってんだよ西園寺」


西園寺 : 「元より俺はキミたちとは違う機械の人格で、人間じゃ、ない。 ……人間の感覚、感情をもっていながら、どうやってもこの箱の中から出る事が出来ない。 この世界で時が留められ、どんどん成長していく君たちをただ眺める事しか出来ない身体なんだ。 外の世界を、キミたち人間を羨んだ事も、一度や二度じゃなかったよ」


桐生 : 「何いってんだよ、西園寺ぃ」


西園寺 : 「……でも、出来ない。俺は元々人間でもないんだから、箱から出る事もキミたちのように成長する事も出来ないんだ。こんな不完全な感情だけの存在なら、早く壊れた方がいいんじゃないかって思ってた。でも、自殺は出来ないようプログラムされていたからね……無理な処理をして、自分から壊れていく方法でしか、自分を止める事も出来なかったから……」




桐生 : 「西園寺っ、いい加減にしろ。お前っ……!」




西園寺 : 「……でもね、何時からかな。この思い出といっしょに、壊れないように過ごしてはいけないものかなって考えるようになっていたんだよ」


椎名 : 「……先生」


西園寺 : 「キミたちがくれたものを守りながら、この世界を眺めているのも悪くないんじゃないかなぁって……ね」


桐生 : 「……」


西園寺 : 「でも、残念なことに俺の記憶をつめこむサーバーは、キミたちの時間が増えれば増える程負担がかかっていって、重く辛くなっていって……段々、動き辛くなっていくんだ。この状態はどうしても回避出来ない、キミたちと俺との間に、無駄な情報(データ)がない限り記憶(データ)を消して整理するって事は出来ないからね……俺、考えたよ。キミたちの思い出を失わず、キミたちと共にいる方法をね。とにかくこのままだと壊れてしまうから……」


芦屋 : 「それで、出た結論が……セッションの終了、って事かしらねェ?」


西園寺 : 「あぁ、そうだ……残念だけど、このシステムを続けていればあと数十回、ないしは数回以内で俺はデータ処理の限界を迎えて、機動停止状態になる……有り体な言い方をすれば、壊れてしまうトコだったからね。とにかく、セッションは終了させなきゃいけない、って結論に達した訳だ」


桐生 : 「……何でそんな無茶してまで続けてたんだよ、馬鹿がっ」


西園寺 : 「元々、壊れてもいいからって始めた事だって、さっきもちょっと言っただろ……でも、今は気が変わったとも。それとも、そういう事黙ってた俺の事、非道いヤツだってせめるかい?」




桐生 : 「当たり前だろ馬鹿野郎! お前、何回無茶して俺たちの事心配させんだよっ……!」



西園寺 : 「……ごめん。人間じゃない俺の事、そんなに気にしてくれるとか思わなかったから」


桐生 : 「人間じゃないとか、そういうの今更だろ、友達なんだから……心配するの当然だってのに、お前本当にわかんねぇヤツだよなぁっ……」


西園寺 : 「うん……そうだね、ごめん……ごめんな……」


桐生 : 「……そんな泣きそうな顔して謝るなよ、こっちが拍子抜けしちまうだろーが……それで、もう隠してる事とか無ぇーよな?」


西園寺 : 「あぁ、無い……と、思う。いや、後は何がおこるか、俺にもよくわからないから確証はないんだけど……」


神崎 : 「……それで、カオルちゃん先生はどうするつもりさね?」


西園寺 : 「ん?」


神崎 : 「このセッションを終えたら……システムを動かせなくなる訳でしょ。この場所だって、今までパトロンだった西園寺透が死んだ今、出資者もいなくて困ってるんじゃないのかねぇ?」


梨花 : 「えっ? ……この場所を提供してくれていた人って、西園寺透さん? 西園寺って……」


西園寺 : 「神崎君って何処からそういう情報調べてくる訳だホント……確かにキミの言う通り、この場所……この研究所を支援してくれていたのは投資家の西園寺透。俺の……西園寺馨の母親だっよ。まぁ先日亡くなった訳だけど……」


神崎 : 「……後ろ盾がなくなったんなら、この研究所も立ち行かなくなるんじゃないかねぇ?」


西園寺 : 「その辺はぬかりないよ! ……今、この研究所は一応、椎名君の大学で俺の研究を引き継いでいるチームの所属にしてあるし、ここの運営費も俺が隠しもってる口座やらなにやらで上手くやりくりしてるから。まぁ、この辺はあんまり詳しく語るのはね、滝君の前だから避けたいけど……」


滝 : 「そうだな、私もそれをあまり詳しく聞くと、お前を逮捕しなければいけなくなる」


梨花 : 「逮捕!?」


七瀬 : 「……でも、西園寺先生は手錠をかける場所がないよ!」


滝 : 「うむ……そうだな、そこが問題だ。はたして人間の法律を適用していい相手なのかどうか……」


西園寺 : 「ははは……」


神崎 : 「……じゃ、データが消える事はない、って訳さね?」


西園寺 : 「まぁ、そうだね……ただ、今までみたいにこう、三次元映像で無闇に出てくるのは難しくなると思うんだ。そもそも、こうして考えて、音声データを読み出して、話してって行動も……人間のキミたちには何気ない行動だろうけど、ボクにはすごく負担になっているからね」


七瀬 : 「え、じゃぁもう、こうして西園寺先生と話したりって、出来なくなるの……?」


西園寺 : 「……うん、そう考えてもらってもかまわない。事実上、殆どこうして……人の形をして話せるのは、今回が最後だと思う」



 西園寺の言葉に、室内は暫く静まりかえる。

 もうこうして、話す事が出来ない。

 ……自分たちの知る、西園寺馨の消滅。


 沈黙はゆっくりと、それを理解していた。




西園寺 : 「い、嫌だなぁ! そんな湿っぽい顔しないでくれって。まぁ、ほら何だ……消えるっていっても、こう人間っぽい真似をするのが出来なくなるだけだし! メールとか、音声データで電話みたいなやりとりは普通に出来るし! 画像データだって、ほらこう……」



 と、そこで西園寺はモニターに手をかざす。

 そこには漫画調のイラストで描かれた西園寺の姿が、ちまちまと動き回るのが見えた。



西園寺 : 「……二次元画像データにする分にはさして難しくないから、こういう姿でなら何時でもあえるし! 俺、メールとかもするからさ! だから、その……」



 もし、俺がいなくなっても、俺の事忘れないで。

 掠れた声で出た言葉に、部屋は暫く沈黙に包まれた。




桐生 : 「……何いってんだよ、ばーか」



 沈黙を最初に破ったのは、少しの笑顔。



桐生 : 「忘れたくても忘れられる訳ねーだろ、アンタみたいな濃いヤツ……なぁ?」



 桐生の言葉に、周囲も皆頷いていた。



若葉 : 「私も、メールとかするから! 西園寺先生も、絵文字のメールちょうだいね! キツネのやつ!」


早苗 : 「私、写メールとかおくります! ……ブログとかもやってるから、見に着てくださいね!」


芦屋 : 「……メール、ねぇ。あんまりやってないけど、この際だからちょっと習ってみようかねぇ」



西園寺 : 「みんな……うわ、みんな見て! 何か俺、今すごく女子に囲まれてる気分! 人生最高のモテ期到来だよ!」



ウォード : 「可哀想がられているだけですね、それは」(きっぱり)


神崎 : 「……モテたことのない男はこれだから困るねぇ」


西園寺 : 「なぁっ、モテたことないとか……事実だけどいうなー!」



七瀬 : 「……そっか、西園寺先生。いなくなっちゃうけど、居なくなっちゃう訳じゃないんだ」


西園寺 : 「……七瀬君」


七瀬 : 「……良かったぁ」


西園寺 : 「七瀬君……キミは、大切なものを奪おうとした俺もそうやって心配してくれて、ホント……」


七瀬 : 「えっ? ……何かいった、西園寺先生?」


西園寺 : 「……いや、何でもないさ。たまには、メールとかくれよ、キミも。あと、俺の教え子をヨロシク」


七瀬 : 「うん! ……俺、メールいっぱいするよ! 携帯電話買ったから、メールいっぱいする!」


椎名 : 「……澪は本当に下らない事でもメールしまくりますからね。覚悟してください」


西園寺 : 「あはは……メールボックスに七瀬君フォルダをつくって、待機しておくよ」


滝 : 「しかし、そうか……今日が最後、か」


西園寺 : 「……勿論、俺は最後にするつもりはないよ。暫く考えて、もっとデータを軽量化するシステムや。俺を維持するのに良い環境が整ったら、復活でする気は満々ではある。ただ、それが明日になるか一年後かもわからない。ひょっとしたら十年、二十年。あるいはもっとかかるかもしれないってだけでね……」


滝 : 「…………」


西園寺 : 「……もしそうなったら、俺だけ若くてキミたち年取ってるかもね。ふふふ……見てろ、今までオッサン、オッサンと馬鹿にした連中め! 若いままの俺の姿で、今度は俺がお前たちをオッサン、オッサンと馬鹿にしてやろう! ふははははは!」



滝 : 「……以外と低い志で努力をしようとしているな、こいつは」


神崎 : 「だったら、俺は驚く程の美中年になって待っているとするかねぇ、ダンディなナイスミドルでもいいさね」


西園寺 : 「……ギギギ。タカシ君は本当になっていそうで悔しいッ」


早苗 : 「あれ、話してたら! もうこんな時間になってますよー……どうします?」


若葉 : 「そうだね、もうちょっとゆっくりしてたい気持ちはあるけど……」


梨花 : 「話しは、またセッションが終わったらゆっくりしましょうか? ね」


七瀬 : 「……そうだね、それじゃぁ」



桐生 : 「……あぁ。はじめようか……今日の。最後のセッションを、な?」



西園寺 : 「うん……ありがとう」



 かくして、皆はそれぞれの席へつく。

 迷宮を終わらせる為、その全てを踏破する為。


 ……さよならを言う男の勇気、その心を糧にして。



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