> 界樹の迷宮をリプレイ風プレイ日記として記したばっかりなんだよ、この長い世界樹道をよ!






> おさしぶりのセッションでして。



 前回のセッションから数十日後。

 仮想世界のエトリアにて……。



GM : 「お久しぶりでーっす」



他一同 : 「「「おひさしぶりでーっす!」」」



GM : 「……いやぁ、何か本当に皆と会うのは久しぶりな気がするよね。えーと、半月ぶりくらいかなぁ」


シェヴァ : 「うん、そうかもしれないねー」


シグ : 「以前より面子も増えたから、なかなか皆で集まる時間がなくてな……」


シュンスケ : 「俺も引っ越しなど、最近バタバタしていたからな」


シェヴァ : 「おれも、荷物シュンスケ(の中の人)の家から運んだりしていたから、思ったより忙しかったからねー」


アイラ : 「シェヴァさん(の中の人)、もう、シュンスケさん(の中の人)の家から全部荷物運び出しちゃったの?」


シェヴァ : 「うん。もうシュンスケ(の中の人)も引っ越しちゃったから、前の家誰もいないよ。新しい住所、教えるね」


アイラ : 「うん! えーと、フィガロお兄さま(の中の人)の家に住み込みで働いているんだっけ?」


シェヴァ : 「うん。だから、アカリ姐さん(の中の人)とかの家をしってれば、その住所といっしょだけど……」


アイラ : 「考えてみれば、シェヴァさんの家って、シェヴァさんとガモンさんと……フィガロお兄さまが住んでるとか、すごい男所帯だよねぇ」


シグ : 「だよなぁ。面子だけ聞いてると、すげぇ濃いし」


アイラ : 「ねぇ。しかも女性がアカリ姐さんだけって……これだけの男面子を一つの家で世話しているのって、フィガロ兄さまの家以外だったらあとは相撲部屋くらいしかないんじゃないのかなぁ?」



GM : 「相撲部屋!? その発想はなかった!



フィガロ : 「そうなると、うちで出す食事はこれから『ちゃんこ』って呼ばなきゃ駄目かねぇ」(笑)


ヒルダ : 「……引っ越しが終わった、となると、シュンスケ(の中の人)は、また学生に戻ったんだな?」


シュンスケ : 「あぁ……この年齢でまた学生に戻るというのは自分でも違和感があるがな……」


カエデ : 「私も一学年あがりましたから! シュンスケさん(の中の人)と私、同じ学生さんですね! わー……学生同志、仲良くしましょうー」


シュンスケ : 「そうだな、改めてヨロシク頼む……」


カエデ : 「えへへー……」



GM : 「う〜む……皆それぞれ自分の道に! じゃないが……やはり皆、色々と忙しいんだなぁ……」(しみじみ)


ナルラト : 「そうさねぇ……旦那みたいに毎日寄る辺もなくプラプラしている方が、世間では珍しいからねェ……」


GM : 「よ、寄る辺なくってなんだ! こ、こう見えても俺だって案外と忙しいんだからなッ……」


ガモン : 「……へぇ。それは初耳です。具体的には、どのようにお忙しいのですか?


GM : 「え?」


ガモン : 「ですから、具体的には……? いえ、失礼承知で申し上げますが、GM様はあまりお忙しそうには見えませんもので……」


GM : 「失礼承知とはいったが本当に失礼だなキミはっ! いや、俺だってほんと忙しいよ。例えば、そうだな……例えば……」


ガモン : 「……例えば?」



GM : 「しまぱんの、似合いそうなグラビアアイドルについて真剣に世論をまとめたり、だな……」



シグ : 「何を真剣に考えているのかと思えば、ぱんつかよ!」


フィガロ : 「本当、安定と信頼のぱんつGMっぷりだねェ……」


リン : 「……不潔です、もー!」


ヒルダ : 「よし。では、パンツの変態は横に置いて置いて、これまでの冒険のおさらいと行くか?」



一同 : 「「「はーい!」」」



GM : 「ちょ、パンツの変態って……いや、別にぱんつの事を真剣に考えるのは変態行為ではないぞ。むしろぱんつは比較的聖域であり、サンクチュアリだからなぁ……というか、GMの俺を差し置いておさらいとかちょっと悲しいんですけど、諸君! 冒険者諸君ー!?」



ヒルダ : 「……とりあえず、前回までに赤竜、青竜は撃破しているのだが」


シェヴァ : 「あぁ、そっか。どっちの討伐にもいたの、ヒルダちゃんだけだったもんね〜」


シグ : 「この調子だと竜はもう一匹いそうだなぁ。とはいえ、まだそれらしい影は現れていない、か……」


シュンスケ : 「第三の竜を探す前に、まずはその手がかりから探さないとな」



GM : 「って、本当にコッチを無視して話を進めるのどうかと思うんですけど、もしもしー! もしもーし!」(泣)


アイラ : 「だって、GM話に混ぜるとふざけた話するだけで全く進まないんだもん」(笑)


GM : 「がびーん!」


カエデ : 「……日頃の行いが悪すぎですわ、GM様?」


GM : 「めそめそ……」


フィガロ : 「まぁまぁ、安定と信頼のいじられキャラになれたんだ、と思って前向きに捉えるさね!」(ぽんぽん)



GM : 「それに、前向きに捉えられる要素何処にもないよ! 全くもー!」




> 雷の影。



 そんなこんなでやんわりと、GMの事をスルーしつつも前回までのおさらいを。

 前々回、および前回のセッションにいなかった人物にも分かるよう説明しつつ今回の行動方針を決めるさばみそギルド面子たち……。




シェヴァ : 「ワイバーンさんを追い払って、赤い竜が出てきて……」


リン : 「地下の、氷り付けの腕をもってきて……青い竜さんが出てきましたから……」


ヒルダ : 「以前、金鹿の酒場より受けた依頼……『地下でアンクを集めてほしい』というあの依頼をこなせば、また別の竜が現れる可能性が高いだろうな」


シグ : 「その依頼、まだこなしてなかったっけか?」


ナルラト : 「アタシがまだ来たばっかりの頃、チョロっと集めてきた記憶はあるけど……」


ガモン : 「全部は集めておりませんでしたね、まずはその探索に行きますか。マスター?」


フィガロ : 「そうさねぇ……ま、まだ第6階層の探索もたぁぷり残ってるし、その辺はリーダーにお任せするさね。ねぇ、リーダー?」


シグ : 「うーん、俺としてはそのアンク集めでちゃんと竜が出るかどうかは見届けたいからなぁ……まず、第5階層のアンク探しとしゃれ込もうか。シェヴァ、アンクの場所はわかるか?」


シェヴァ : 「うん! おれ、ちゃんと前探索した時に、何処に何があるのかメモっておいたから、地図の場所を探せば、全部ちゃんと見つかると思うよ! ……地図見るのに自信がない、ってならおれも付いていくけど……」


リン : 「あと二つくらいですよね、見つけてないアンク……」


シグ : 「第5階層の敵ならもうそう、苦戦する事もねぇだろうから……新人キャラの育成もかねて、新キャラメインで行ってくるか?」


ナルラト :  「そうなると、アタシの出番かねェ……アタシの能力は縛り系がメインだから、育てても皆みたいにボス戦で活躍出来る訳でもないのが心苦しいけど……」


シェヴァ : 「でも、ナルラトねーちゃんが縛りカスメやってくれると、おれすっごく嬉しい! すっごく助かる! 俺の縛りスキルと違って、ねーちゃんの縛りスキルは相手にダメージ与えないから……三点縛りがレアドロップ条件の相手でも、うっかり倒しちゃう事ないもんね!」


ナルラト : 「まぁ……シェヴァちゃんが喜んでくれるなら、アタシも縛りカスメのやりがいがあるってもんだけどねぇ?」(ニコニコ)


シグ : 「OK、じゃぁまだナルラト姐さんは戦闘慣れしてないから……補助に、リン。姐さんの事頼んだぜ?」


リン : 「……はい、頑張ります!」


カエデ : 「お姉ちゃん……あ、姉上が行くなら私もいきます! 私も新人ですし……」


シグ : 「了解……あとのメンバーは、と……」


シェヴァ : 「あれ、女の人ばっかりになるのかな? だったら、おれ、地図係でついていこうか? 一応、この中ではベテランだし……護衛メンバーも一人くらい、必要だよね?」


リン : 「そうですねっ。ボク、あんまり地図見るの得意じゃないし。ね、カエデちゃん?」


カエデ : 「あっ……はい。シェヴァ様がいてくれるなら、心強いです!」


シェヴァ : 「おっけー、カエデちゃんにそう言われると何か嬉しいな。おれ、頑張るからね!」


カエデ : 「よろしくおねがいしまーす!」(ペコリ)


シグ : 「よし、前衛がこれで、シェヴァとカエデ……後衛がリンに、ナルラト姐さん……後は……」


シュンスケ : 「……後衛、残りの一人は俺だな。よし、行くか」


シグ : 「そうだな…………って、ちょっとまてシュンスケ! 何でおまえ行く気になってんだよ!?」


シュンスケ : 「? 駄目か?」


シグ : 「……いや、駄目ではねぇけどよ……新人育成の予定だったら、むしろガモンさんの方がいいかなーとか思ってたからさ……」


シュンスケ : 「第五階層では、物理攻撃の効きにくいアーマービーストが出るからな。属性攻撃の出来る俺がいた方が効率がいいだろう」


シグ : 「ん? あぁ、まぁそれもそうだな……」


フィガロ : 「俺たち、第5階層でシュンスケくんがいなくて随分苦労したからねェ……」


シュンスケ : 「それに……シェヴァが出るなら俺が出ないといけないもんな?」



シグ : 「そうだよな、いけないもんな………………って、いやいやいや、その理屈はおかしいだろ!?」


ガモン : 「……チェイス攻撃のあるシグ様とお前が組む事ならまだしも、絡め手が得意のダークハンターであるシェヴァと、属性攻撃一辺倒のアルケミストであるお前が組む理由も必然性もないだろう?」


シグ : 「確かに、戦闘の相性だけいえば、ダークハンターはむしろカースメーカーと組むべきだろうし。アルケミストもTP切れを考慮してバードと組むか、チェイス攻撃をふまえて、剣系のソードマンと組むのが普通だと思うけどよ……」


アイラ : 「いいじゃないですかー、ガモンさん! 戦闘の効率だけが、相性じゃないんですよー!」


リン : 「そうですよ、効率だけが全てじゃないんですよー! ねー!」


シグ : 「……と、一部の熱烈な指示もあるし。シュンスケ、シェヴァだけじゃなく皆の事は頼んだぜ」


シュンスケ : 「あ、あぁ……任せろ」



 そんなこんなで、久しぶりの第5階層探索は。


前衛 : カエデ(サムライ) ・ シェヴァ(ダクハン)

後衛 : リン(メディック) ・ ナルラト(カスメ) ・ シュンスケ(アルケ)


 の面子で挑む事となる。

 その道中……。




GM : 「さぁ、出たぞ出たぞ、攻撃力がさほどでもないアーマービーストだ!」


カエデ : 「攻撃力がさほどでもないのでしたら、私の敵ではありません! お覚悟!」(ずんばらりん)


シェヴァ : 「あ、駄目だよカエデちゃん! そいつを文面通りの敵に捉えちゃ……!」


アーマービースト : (かっちーん)


カエデ : (がっちぃ〜ん)「ふぁっ!? ……ううう、不覚です。腕が、ジンジン痺れますぅ」


GM : 「そして華麗にアーマービーストの反撃! そーれカッキーン!」


カエデ : 「ひゃぁぁぁ! 痛い、痛いです何これ本当に痛いですよぉぉ!」(めそり)


シュンスケ : 「やれやれ……今術式を組んで片づけるから少し待っていてくれ……」


カエデ : 「はい……うう、姉上ー」


リン : (なでなで)



 相変わらず、猛威をふるうアーマービーストやら。



ナルラト : 「何か花びらみたいなモンスターが現れたよ?」


シェヴァ : 「破滅の花びらだな! よし、何かされる前に攻撃……!」


GM : 「攻撃! される前に……こっちだって攻撃だ、さぁ眠れ眠れの眠れる吐息〜」(はぁぁぁ)


シェヴァ : 「ん、駄目だー。今日はおれ、眠たい日。おやすみなさーい」(ばた)


ナルラト : 「シェヴァちゃっ……もう、仕方ないねェ。毒は毒をもって……じゃないけど、眠りが得意な敵にはこっちも、眠りで対抗しようかねぇ……!」


GM : 「……あ、この敵。全員に眠り攻撃だから、ナルラト? 抵抗は?」


ナルラト : 「……ん、どうやらねむらされるのはアタシの方だったね。お休み……」(ばた)


シュンスケ : 「ナルラトさん!? ……仕方ない、術式で一気に」


GM : 「だぁから、シュンスケ。この敵、全員に眠り攻撃だからね? 抵抗は?」


シュンスケ : 「……自慢じゃないがそんな運、持ち合わせてないからな。寝る!」


GM : 「こうして誰もいなくなったのだった……」


リン : 「いなくなってませんよ! 皆さん、リフレッシュです!」


 猛威を振るう破滅の花びらやら。



GM : 「よーし、次の敵は。バーストウーズが2体!」


カエデ : 「刀のサビにしてさし上げます!」(ジャキン)


シェヴァ : 「よっしゃ、カエデちゃんが頑張るなら俺も頑張るよ! さぁ、後に続いてシュンスケ!」


シュンスケ : 「……」


シェヴァ : 「……シュンスケ?」



ナルラト : 「きゃぁぁぁ、いやぁぁん、こわい。こわぁいさねぇぇ、シュンスケくぅぅん!」(すりすり)


シュンスケ : 「ちょ、あんまりくっつかないでください、ナルラトさっ……危ないですから! じゅ、術式が……その……」(オロオロ)


ナルラト : 「でもぉ、アタシ怖いさねぇ。ねぇ、シュンスケくぅん」(べったり)


シュンスケ : 「あー、ナルラトさっ……」


シェヴァ : 「な、何やってんだよー、シュンスケ! シュンスケのばかー! えろすー!」


シュンスケ : 「なぁっ!? ちが、誤解……誤解だ、誤解!」


 ……ナルラトさんの特技:翻弄に嫉妬が猛威をふるったりしつつ。



シェヴァ : 「……予定だとここに、アンクがあるはずだけど」


カエデ : 「えーと……あ、ありましたわ! シェヴァ様、はい」


ナルラト : 「これで、無事に5つそろったようさね……さぁ、凱旋しようかねぇ!」


他一同 : 「「「おー!」」」


 何とか無事に目的の物体。

 古のアンクとやらの回収に、成功したのだった……。





> 遠きの呼び声




シェヴァ : 「ただいま〜」


カエデ : 「依頼通り、地下におちていたアンクを拾ってきましたよ!」(じゃらじゃら)


シグ : 「おー、お疲れさん!」


ヒルダ : 「……これで新たな竜の気配が現れればいいのだが」


シグ : 「出るだろ? 今までの竜だって依頼をこなしたら現れた訳だし……」


GM : 「と、新たなモンスターの気配を期待している皆には申し訳ないんだけど、実はもう一仕事してもらわないといけないんだなぁ〜」


シグ : 「なん……!?」


シェヴァ : 「……だと!?」


GM : 「そんな、鰤市(仮名)みたいな驚き方しないでくれたまえよ。(笑) えーと、キミたちが依頼を終えると、金鹿の酒場にいる女主人が申し訳なさそうに話しかけてくるね。 『みんな、ありがとう……それで、このアンクについてだけど。執政院で調べていて、新しい事がわかったの』


シェヴァ : 「新しい事?」


GM : 「(金鹿の酒場女主人)『そう、実は……』 あぁ、もう女キャラ演じるのめんどくさいなァ。普通に喋っていい?」 


シェヴァ : 「えーっ、何いってるんだよGM! 駄目だよ、金鹿の酒場の、女主人だよっ! 未亡人っぽくて泣きぼくろのおねぇさんだよ! 駄目だよ、GMが唯一綺麗に見えるキャラじゃないかー、だめだめだめ、ちゃんと演じないと、他のプレイヤーが許してもおれが許さないよー!」 (じたじた)


シュンスケ : 「……かまわん、GM。普通に喋ってくれ」(むぎゅ)


シェヴァ : (ぐえ)


GM : (笑)「じゃ、参謀の許可がおりたから普通に喋るけど、まぁ、つまりこの拾ってきたアンク。解析したら、どうやら古代の装置を動かす部品だったらしくてな……恐らく、ココを動かす部品だーって場所は分かっているから、そこに向かってちょっとこの部品試しにいれてきてくれよ、って事らしい」


ヒルダ : 「つまり、この部品をその装置とやらの所で使えばいいんだな……場所は何処だ?」


GM : 「第五階層の……ココ」 (とマップに印をつける)


シグ : 「つまり、またお使いか……どうする?」


シュンスケ : 「面倒だが……地図を見る限りだと、さして遠い所でもないな。ナルラトさんやカエデの育成もかねて、今と同じ面子でサッサと回ってくるか……俺がいれば第5階層巡りも苦ではないからな」


シグ : 「そうだな、頼む」


ナルラト : 「あぁん、流石シュンスケ君さね。頼りになるねェ……」(むぎゅ)


シュンスケ : 「ちょ! ややや、やめてくださいナルラトさっ……!」


ナルラト : 「うふふ……照れちゃって可愛いねぇ、ホント……食べちゃいたいさね!」


シュンスケ : 「ちょ、あのっ……ナルラトさ……」


シェヴァ : 「あ! ナルラト姐ちゃん、だめー! もー、だめー、誰かなんかいってー! ナルラト姐ちゃんしかってー!」(オロオロオロ)


シグ : 「……まぁ、痴話喧嘩が激しくなる前に、帰ってきてくれよ、シュンスケ」(笑)



 そんなこんなで、再度同じ面子での第5階層巡り。

 相変わらず、アーマービーストの攻撃力は猛威を振るっているものの。




シュンスケ : 「大爆炎の術式!」


GM : 「む……やはりアーマービーストは炎に弱い。これでー、ぜんぶー、やっつけられたー! くそー!」


カエデ : 「ありがとうございます、シュンスケさん!」


シュンスケ : 「あぁ……」


ナルラト : 「流石シュンスケ君さね!」(むぎゅ)


シュンスケ : 「ちょっ! だ、だからやめてくださっ、ナルラトさ……」


シェヴァ : 「む〜……」(じとー)


シュンスケ : 「シェヴァもそんな目で俺を見るな、コラ!」



 シュンスケの術式も猛威を振るい、特に苦戦する事なく迷宮の奥へ。

 無事に、目的の「アンクを作動させる機械」の前へ赴き。




カエデ : 「……ありました! コレじゃないですか? えーと、何処に装置をはめればいいんでしょうかね?」


リン : 「ここのくぼみですかね? ……慎重にいきましょうね、罠かもしれませんし」


カエデ : 「何かボタンみたいなのも、ありますわ。姉上!」


シェヴァ : 「そーれポチっとな!」(ぽち)


リン : 「きゃぁぁ、シェヴァさんが勝手にボタンを押しましたよぉぉ!」(あせあせ)


カエデ : 「だ、だ、大丈夫なんですかシェヴァさまー!」


シュンスケ : 「こ、壊してないだろうな!?」


GM  : (笑)「大丈夫だよ。キミたちがその装置をはめると、目の前にぼんやりと映像が浮かんでくる……どうやらそこは、かつて世界樹の王が鎮座していた玉座。だがそこには、今はまったく別の異質な影が蠢いている……」


シュンスケ : 「世界樹の王……地下25階か」


カエデ : 「そこに、竜が潜んでいるんですね!」


GM : 「うむ、そういう事だ! キミはこの蠢く影と対峙してもしなくてもいい!」


シェヴァ : 「よし、依頼終了! たぶんこれで、竜と戦えるようになると思うから金鹿の主人に報告してこよう!」


ナルラト : 「居場所さえつかめれば、もう用はないからねェ」


GM : 「ううう……確かにそうだろうけど、もう少し驚いたりしてくれないと、やりがいがないぞー、諸君ー」


シュンスケ : 「もう、出るとわかっている相手にはさほどサプライズは期待出来ないものだぞ、マスター」


GM : 「しょぼぼぼーん……!」


 こうして、無事。

 新たな竜の影を、掴むのだった……。




> 竜の



 帰還の術式後、エトリアの冒険者ギルドにて……。



シュンスケ : (かくかくしかじか)「……という訳で、第5階層奥に、ドラゴンらしい影が現れたんだが」


シグ : 「第五階層か! 腕がなるな……」


アイラ : 「第5階層の奥っていうと、第6階層の階段があった部屋かなぁ?」


リン : 「そうみたいですね、あの玉座の所に現れたみたいです」


ヒルダ : 「……移動は今までで一番楽そうだな、第6階層にあるワープをつかって、すぐ階段を上ればいいのだから」


シェヴァ : 「そうだね、青竜みたいにぐねぐね、うろうろ地下の道を歩いたりしなくていいから、楽っちゃ楽かもね」


シグ : 「だが近場にいる、ってだけあり、移動が楽なだけあってスゲェ強いかもしれねぇなぁ…………わりと近場にいる赤竜にも俺たち大分苦戦したし、ここは注意深く戦闘メンバーを練ろうぜ!」



一同 : 「「「おー!!!」」」



 ……と、そんなこんなでメンバー選出開始。



ガモン : 「そうですね、きっとブレスを撃つでしょうから……ヒルダ様は外せないかと思います」


ヒルダ : 「あぁ、任せておけ……きっと皆を、私が守ろう」(シャキン)


アイラ : 「私、あばれたーい! 久しぶりに斧で大暴れしたーい! うずうずうずー!」


シグ : 「お前は以前に散々暴れただろ、次は俺の番だ!」


アイラ : 「暴れさせないなら、シグ相手でもいいー、えいー!」(ぶんぶん)


シグ : 「うわぁ、やめろー、アイラー! うわー!」



 ……そんな厳粛な話し合いの後。



シグ : 「姉弟子は外せない、フィガロもTP対策にいれておきたい……となると……」



前衛 : ヒルダ(パラ子) ・ アイラ(斧ソド子)


後衛 : リン(メディ子) ・ ガモン(緑レン) ・ フィガロ(鳥)



シグ : 「このへんが打倒か……」


シュンスケ : 「そうだな、アタッカーもあるし安定はしていると思うぞ」



アイラ : 「やったー、アイラさん戦えるー!」


シグ : 「本当は俺が行きたかったんだがなぁ〜……俺のスキルはどうしても、シュンスケがいないと発動しねぇし……何をつかってくるかわからない相手だ、アザステレンジャーが居た方がいいだろ、って事で今回は俺とシュンスケは休む事にした、頼むぞ、アイラ!」


アイラ : 「まかせて! 炎属性の斧ももってるし、とっとと倒してくる!」


シグ : 「おう! ……無理すんなよ、一応、女の子なんだからな」(なで)


アイラ : 「……ふぇっ!?」


シグ : (なでなで)「気を付けてこいよ?」


アイラ : 「ふぇ、ふぇっ!? ……も、もー、何するのよシグー! アイラさん子供じゃないんだからねー! もー、ばか。ばかー!」


シグ : 「励ましたら怒られた……何でだ!?」



シェヴァ : (アイラちゃん、普段シグに冷遇されているのにたまに優しくされたから、狼狽えているんだ……)


ナルラト : (そんな乙女心に気付かない鈍感君だねェ……まぁその直向きな所、嫌いじゃないけど。ねぇ?)



 と、安定だと思しきメンバーを選出。

 いよいよ、竜の元へと赴くのだった……。




ヒルダ : 「……地下25階なら、すぐに迎えるな」


アイラ : 「そうだね、さっさといっちゃおう!」


GM : 「了解、それじゃサクサクと階段を昇り、キミたちはかつて世界樹の王が鎮座した場所へと赴く……かつての主はいまはなく、ただ枯れた大樹がひっそりと佇むのみだ」


フィガロ : 「と、言われても俺はあんまり実感ないんだよねェ……何せ世界樹の王とやらは、はっきりと対峙してないからね」


ヒルダ : 「……それを言われてみれば私もだな。ただ大きいのをチラりと見ただけだ」


ナルラト : 「って、急に立ち止まったりして。どうしたんだい、ヒルダちゃん?」


ガモン : 「……私もです」


GM : 「何だと!? ……そうか、この面子は後期パーティ中心。ガモン君に至ってはそもそも世界樹の王を知らないのかー。まぁ、とにかくラスボスがいた場所、その場所に今度は別の生き物がいる」


フィガロ : 「へぇ、どんな奴さね?」


GM : 「見た目はただの黒い丸だ」(笑)


フィガロ : 「いやいや、それはもう知ってるさね!」


アイラ : 「世界樹の迷宮、イベントボス以外はみんなただの丸だからねー」


ヒルダ : 「黒い丸という事は、逃げられないF.O.Eという事だな……」


GM : 「そうだね。まぁ、もったいぶって外見を言わないでおいても、どうせキミたちは突撃する訳だからバラしちゃうけど、コイツはというよりという字が似合いそうな、ニョロニョローっとした長い龍だ。えーと、ドラゴ○ボールに出る神龍に近いかんじ」


ガモン : 「しぇんろん?」


アイラ : 「ドラゴンっていうより、辰ってかんじの奴だね!」


GM : 「そうそう、西洋の竜じゃなくて中華な感じの方の。そいつは、金色の身体を輝かせて、すでに主のないその部屋を悠然と占拠している……さぁ、どうする?」


ヒルダ : 「どうもこうも……戦うしかないな、いざ、勝負!」


GM : 「その意気や良し! ……ヒルダの号令が響き、キミたちは悠然とその巨大な影に立ち向かう……雷鳴と共に現る者だ!」


フィガロ : 「相変わらず詩的で冗長な名前だねぇ……」


ヒルダ : 「だがそのおかげで、どの属性を持っているか分かりやすくて助かるな……私はショックガードに徹する。アイラ君、ガモン、悪いが攻撃は任せた!」


ガモン : 「仰せの通りに!」


アイラ : 「まかせて、ヒルダお姉さま!」


リン : 「ボクは、医術防御を!」


フィガロ : 「俺は……さて、何してようかねェ。前の奴(青竜)みたいにこっちの攻撃をノーカンにするような技をつかわれると面倒だけど……ま、普通に安らぎの子守唄でも歌っておくかねェ……」


GM : 「ういうい……こっちは、今回は出会い頭でサンダーブレス! とはいっても、ヒルダがいるからこりゃ無効だよなぁ」


ヒルダ : 「よし!」


アイラ : 「アイラさんはガンガン打ち込むぞー! てぇい……通常攻撃! 炎属性の斧が手に入ってから通常攻撃のが強いのだー!」


ガモン : 「サジタリウスの矢を!」


リン : 「医術防御!」


フィガロ : 「安らぎの子守唄を歌わせてもらうさね!」


GM : 「で、1ターン目終了か……」


ヒルダ : 「次も私はショックガードに徹する、皆、攻撃は頼んだぞ!」


ガモン : 「任せてください!」


アイラ : 「らじゃー、りょうかぁ〜い!」


GM : (むむ……こっちも積極的に攻撃を仕掛けて、竜の恐ろしさを誇示したい所だが……安らぎの子守唄に医術防御と、全体強化が重ねてかかっているなぁ、となると……)


アイラ : 「GM、こっちの行動は終わってるよー!」


GM : 「あぁ、そうか……だったらこっちの行動は呪われし遠吠え!


ヒルダ : 「呪わ……何だ?」


GM : 「呪われし遠吠えの効果は……キミたちにかかっている全体強化、その強化を3つ全て吹き飛ばす!



一同 : 「「「えーーー!」」」



フィガロ : 「何さね、またかけ直さないといけないなんて、面倒だねェ……」


リン : 「ボクも、また医術防御かけなおさないと……」(あせあせ)


フィガロ : 「……どうせ、強化が無効になるならわざわざかけないで、アイテムだけで凌ぐ方が得策かねぇ?」


ヒルダ : 「…………」


フィガロ : 「ん、どうしたんさね、ヒルダ? しょっぱい顔して……」


ヒルダ : 「いや……今の特殊能力、ひょっとして……あぁ、だがただの憶測にしかすぎないし、気にしないでくれ」


フィガロ : 「そんな止め方は気になるさね! ……何だい、気になる事でもあったのかねぇ?」


ヒルダ : 「いや……今までのボス、その行動パターンは概ねシュンスケから聞いているのだが……傾向的に、弱体化をつかう輩は『全体の強化枠が幾つか馬ったら発動』する事が多い……場合によっては、このままリン君とフィガロで強化をかけつづければ……」


フィガロ : 「かけつづければ?」


ヒルダ : 「あるいは、あの竜は今の特殊攻撃……呪われし遠吠えを、使い続けるかもしれないと。そう思ってな」


アイラ : 「えっ、本当!? だとしたら私たち、あの竜をボコりまくれるよ!」


ヒルダ : 「憶測の域はでないがな……」


フィガロ : 「憶測でも試してみる価値はあるさね、じゃぁ俺は安らぎの子守唄を……」(ボロンボロン♪)


リン : 「ボクは医術防御を続けます!」


GM : (……!?)


ヒルダ : 「……どちらにしても、私はショックガードを続けるしかない。攻撃は皆、頼んだぞ?」


アイラ&ガモン : 「は〜い!」「了解です」


GM : (うおおお、くそ、シュンスケ君に入れ知恵されてきたとか……そうだ、確かにそうだ! 黄竜は複数回全体強化がかかっていると、呪いの遠吠えを頻発するキャラなんだよぉぉ……)



 かくして、行動パターンをいきなりヒルダに看破された黄竜。



フィガロ : 「安らぎの子守唄!」


リン : 「医術防御です!」


GM : 「…………呪いの遠吠え」


アイラ : 「よっしゃー、呪いの遠吠えをつかっているうちにヌッコヌコにしてやるぞー! 斧参上!」(ずんばらり)


ガモン : 「射抜く!」(しゅばっ)


GM : 「………………しくしくしく」





フィガロ : 「次のターンだね? 再度、安らぎの子守唄さね!」


リン : 「医術防御ですっ!」


GM : 「…………呪いの遠吠え」


アイラ : 「よーし、また集中攻撃だー!」(ずんぼろり)


ガモン : 「御意!」(しゅびばっ)


GM : 「………………めそめそめそ」



 …………と、いった調子ですっかり 「全体強化」 → 「呪いの遠吠え」 → アタッカー二人でボコる。

 のパターンに陥ってしまい。

 まれに、「呪いの遠吠え」が発動しなかった時でも。




GM : 「よし、このターンは通常攻撃だな……攻撃は……フィガロに攻撃! ダメージは……!」


フィガロ : 「……ぐっ!?」


アイラ : 「きゃぁ、大丈夫フィガロお兄さま!?」


フィガロ : 「…………はは、まぁ大事ないねぇ、かすり傷さね!」


ヒルダ : 「フィガロはHPブーストをふりきっているから、無駄に撃たれ強いからな……」


フィガロ : 「はは……」


リン : 「エリアキュア2です! 一気に回復しますから、大丈夫ですよ皆さん!」


GM : (シクシクシク……)



 といった調子で、素早くメディックが回復にまわるのでこちらも致命傷にはならず。

 頼みのブレス攻撃も……。



GM : 「サンダーブレス! さぁ皆恐れろ竜のブレスだ!」


ヒルダ : 「竜のブレスなど恐れるに足らん! 皆さがっていてくれ、ショックガード!」


GM : (…………くすん)



 と、いった調子でヒルダの完全防御を前に屈するしかなく。

 そのままじわり、じわりと……。




アイラ : 「通常攻撃ぃー、ぼこりぼこり!」


ガモン : 「サジタリウスの矢……落ちろ! そして……ダブルショット!」



 アタッカー担当の二人による畳みかける攻撃でHPを減らしていった黄竜。

 そしてついに……。



ガモン : 「サジタリウスの矢……落ちろ!」


GM : 「!? ……………………それで、倒れた」



一同 : 「「「……えっ!?」」」



GM : 「だぁからぁ! ……それで倒されましたよっと。キミたちは、雷鳴と共に現わる者を退治しましたー、おめでとー! ぱちぱちぱちぱちー!」



一同 : 「「「ええええぇえぇえぇ!?」」」



GM : 「何だよその倒した事に実感がないって反応は!」(笑)


ヒルダ : 「……いや、だが。まさか初見で倒せるとは思わなかったからな」


アイラ : 「ねー、アッサリ倒せすぎて拍子抜けしちゃったというか」


フィガロ : 「最後の相手だからって、こっちも気張りすぎたんだろうねェ……」


GM : 「俺だってもっと善戦すると思ってたんだい! でも、黄竜はメインの特技も防御系で……前の奴らと比べて強力な技とかもってないから……」(しょぼーん)


リン : 「あんまりしょんぼりしないでください、GMさん」(なでなで)


GM : 「くすんくすん」


フィガロ : 「ん、でも倒したならとっとと凱旋しようじゃないかねぇ。リーダーたちも首を長くしてまってるだろうしねぇ!」



一同 : 「「「おー!!!」」」




> 最の晩餐



 かくして、無事にエトリアへ戻ってきたさばみそギルドの面々……。



シェヴァ : 「おかえりー、リンちゃーん、アイラちゃーん!」


シグ : 「戻ってくるの、遅かったな。大丈夫だったか?」


アイラ : 「えへへー……それもそのはずっ! 何と、黄竜をやっつけてきちゃいましたよー!」(えへん)



シグ : 「なん……!?」


シュンスケ : 「……だとッ!?」


GM : 「……嘘じゃないのが何だかなぁ。まさか一発で倒されちゃうとは」


シュンスケ : 「……本当に初見で倒してきたのか!?」


リン : 「はい! ……何だか、防戦の得意な竜さんだったみたいで」


シグ : 「……おおお! よくやってきたなぁぁ、アイラ! リン!」(がしっ)


リン : 「……きゃぁ!」


アイラ : 「ふぁっ!?」


シグ : 「俺の出る幕がまったくない、ってのはアレだがよ……お前らが頑張ってくれて、嬉しいぜ?」(なでなで)


リン : (もじもじ) 「あ、あの! あ……ありがとうございます!」


アイラ : 「やー、やめてよシグー、苦しいからー!」(照れ照れ)


ヒルダ : 「坊ちゃん…………あ、あの。えーと……」(もじ)


シグ : 「……姉弟子も、ありがとな。リンとアイラ、二人をしっかり守ってくれて……俺、嬉しいぜ!」(なで)


ヒルダ : 「わ、私は。その……騎士として当然の事をしたまでで、その……」(照れ)



ナルラト : 「青春だねェ……」


フィガロ : 「うン、純情だよねェ……」


GM : (実年齢はヒルダと全くかわらないフィガロくんにも、その純情さがないというのは些かモラルの乱れを感じるけどな)


シグ : 「ともかく、これで3竜は全部退治したんだよな!」


シェヴァ : 「だよね! となると、いよいよこのゲームクリア? クリア?」


GM : 「ふふふ……それはどうかな……」(ゴゴゴゴゴゴゴゴ)


シュンスケ : 「!? 何だそのジョジョにでもありそうなオノマトペは……!」


GM : 「キミたちはまだ第6階層の奥に向かってないだろう……ふふふ、まっているぞ、この階層の奥で……最強の名に相応しい、真のラスボスとともにな……クククク」



 かくしてGMの不適な笑みにより示唆された第6階層の真ボス。

 果たしてさばみそギルドの面子はそのボスにうち勝てるのか……。


 さばみそギルドの冒険。

 その真のラストも、ほど近い!







>幕劇 〜 帰天





 幕間劇に興じよう。

 それはいずれくる当たり前の物語。

 精一杯に生きて、そして死ぬ。

 長く繰り返された生命の、あたりまえの営み。


 キミはこの物語に、触れても触れなくても良い。



 ・

 ・

 ・


 その日のセッションが始まる前。

 都内某所。



芹沢 梨花(リンPL) : 「ムツミさん久しぶりですー」


滝 睦(ヒルダPL) : 「あ、あぁ、芹沢くん。久しぶり……」


芹沢 早苗(カエデPL) : 「あはは、芹沢くん。だったら、私も芹沢ですよー、滝さん!」


滝 : 「あ、あぁ、そうだな……じゃぁ」


梨花 : 「ぼくは、梨花でいいですよ!」


早苗 : 「私は、早苗でいいです!」


滝 : 「そうだな……改めて、久しぶりだな、元気そうで何よりだぞ、梨花。早苗」


芹沢姉妹 : 「「はい!」」


桐生 若葉(アイラPL) : 「そして私は、若葉でいいですよー! ムツミおねーさま、久しぶりでーす」(むぎゅ)


滝 : 「ちょ、ちょまっ……そそそ、そんな急に抱きつかないでくれ、若葉くん……!」(オロオロ)


早苗 : 「あ、あれ面白そう……私も、ムツミさーん!」(ぎゅ)


梨花 : 「わ、ボクもー。ムツミさーん!」(ぎゅぎゅ)


滝 : 「そ、そんないきなり皆で抱きつかないでっ……きゃー! やー!」(オロオロ)



西園寺 馨(GM) : 「…………楽しそうだねー」(ほのぼの)


桐生 和彦(シグPL) : 「楽しそうだよなぁ……」(ほのぼの)


滝 : 「……桐生! ほのぼのしているヒマがあったらフォローしてくれー!」(泣)



芦屋 灯里(ナルラトPL) : 「……何か、ムツミちゃん本人は結構、泣きが入っているように見えるけどねェ」(笑)


西園寺 : 「…………まぁ、こうやって皆で集まってワイワイ出来るのもセッションの楽しみだからね」


ウォード・ランカスター(ガモンPL) : 「……それも、後数回になるんでしょうか?」


西園寺 : 「えっ?」


ウォード : 「……いえ。以前戦った竜は2匹目。今回、3匹目の竜と戦ったら……もうこのゲームで出来る事は、残り僅かなのでは。と思いまして」


西園寺 : 「あ……まぁ、そうだね……このゲーム自体長くやってるし。そろそろ終わる頃はそうだけど……」


神崎 高志(フィガロPL) : 「……実際、どうするつもりさね、先生?」


西園寺 : 「えっ、えっ!?」


神崎 : 「……いや、もうこのセッションも残り僅かで風呂敷畳まなきゃならないだろう? 終わったら、カオルちゃん先生は、どうするのかねぇ、ってちょっと気になってね……」


西園寺 : 「どうするのかって……何だよタカシ君、そんな俺の事気遣ってくれて……何だったら気遣いついでに、俺の事養ってくれない? なに、タカシ君の名字くれるだけでいいよ?」


神崎 : (無言で肩を竦め首を振るポーズ)


西園寺 : 「断られた! アメリカンなガッカリポーズで断られた!」


七瀬 澪(シェヴァPL) : 「というか、今の話の流れで受け入れる要素が全くゼロだったと思うよ、おれは」


桐生 : 「まぁまぁ、馬鹿な事いってないで、サッサとセッションはじめようぜー!」」


西園寺 : 「あぁ、そうだな。じゃ、準備してくれー、みんなー!」




一同 : 「「「はーい」」」




西園寺 : 「さて、じゃこっちも準備を……」


椎名 淳平(シュンスケPL) : 「………………先生」


西園寺 : 「ん? 何だい、シーナ君。どうしたの、身体の具合悪い? 顔色悪いけど……」


椎名 : 「この顔色は元からです……それより、あの。お耳に入れておきたい事がありまして」


西園寺 : 「何だよ、改まって……」


椎名 : 「本当はセッションが終わった後に、と思ったのですが……後にすれば後にする程、言い出す機会がなくなりますので……あの……」


西園寺 : 「…………何だよ、もったい付けずに言ってくれ」


椎名 : 「はい。ですが、その……」


西園寺 : 「……………………彼女の事なら、覚悟してるから」


椎名 : 「!? ……はい、でしたら、正直に申し上げます。西園寺透さんの事です」


西園寺 : 「……あ、あぁ。やっぱり、あの女(ひと)の事か……彼女に、何か……?」


椎名 : 「……先日、夜半に………………息を引き取りました」



西園寺 : 「!?」 (ふらっ)



神崎 : 「……おっと」(ぎゅっ)


西園寺 : 「あ! ご、ご、ごめん、神崎くん……」


神崎 : 「……何やってるんさね、カオルちゃん先生? もう歳だから足腰弱いのかねぇ」


西園寺 : 「歳って何をいってるんだよ! 俺はまだ気持ち的には井上喜久子さんと同年代だ!」


神崎 : 「……まぁ、気を付けてね。あんまり無理しちゃ駄目だよ?」 (と、いいつつ皆の輪に戻る)




椎名 : (……気付いてるのか、神崎。西園寺先生の異変に……)


西園寺 : 「……ごめん、シーナ君。覚悟してるとかカッコイイ事言った癖に……ちょっと駄目だった」


椎名 : 「いいえ、無理もないです……心中、お察し申し上げます……」


西園寺 : 「でも、そうか……透さん、亡くなったのか……」


椎名 : 「……はい。葬儀は、身内だけで細々と済ませたようで……俺もその件があって、暫くここへ来れなかったんですけど……」


西園寺 : 「いいよいいよ、事情が事情だから……悪いね、透さんに関しては……キミにも迷惑かけたみたいで……」


椎名 : 「いえ、俺にとっては恩師の母ですから……」


西園寺 : 「そっか。透さんが……」


椎名 : 「……はい」


西園寺 : 「………………あ、あのさぁ、椎名くん」


椎名 : 「何ですか?」


西園寺 : 「透さんは…………その、亡くなる前。苦しまずに、済んだのかなぁ、と思って……」


椎名 : 「……」


西園寺 : 「俺の時は、とても、辛かったから……」


椎名 : (……そうか、オリジナルの先生がもつ死の記憶があまりに強烈だったせいで、複写である今の西園寺先生にも……自我を持ちながらにして死の記憶が焼き付いてしまったのか……)


西園寺 : 「どうだったのかな、母さんは……」


椎名 : 「…………西園寺透さんは、死の間際。治療薬の副作用などもあり……老いた身体には、さぞ辛かったと思います」


西園寺 : 「そうか…………」


椎名 : 「……ですが死の間際……意識が混濁し、殆ど喋るのも億劫になる程やせ衰えた身体で、必死に苦しみにあえいでいた透さんはある日を境に、痛みから解放されたように穏やかになったのだと……」


西園寺 : 「ある日? あぁ、治療法をかえたのかな」


椎名 : 「いいえ、治療法は何も。ただ……馨、ありがとう……と。貴方の名前を呼んだ日から……安らかな表情をするようになったと、そう、聞き及んでおります……」


西園寺 : 「!?」


椎名 : 「そしてそのまま、安らかに……眠るように、亡くなったそうです……」


西園寺 : 「そう……そうか……」


椎名 : 「彼女は、笑ってましたよ」


西園寺 : 「えっ?」


椎名 : 「……ですから、透さんです。透さんが息を引き取ったと連絡を受けて……一番最初に、病室へ訪れたのは俺だったんですけれどもね、その顔はとても穏やかに、優しく笑ってましたよ。そう、あの顔はまるで……」


西園寺 : 「まるで?」


椎名 : 「子供に笑いかける母親の顔のようでした……」


 椎名の言葉を最後まで聞き終わるや否や、西園寺の目に熱いものがこみ上げてくる。

 よろめき膝をつきそうになる、西園寺の身体を。



神崎 : 「おっと……」



 再度、神崎が支えた。



西園寺 : 「……あ、ごめっ。タカシくん」


神崎 : 「……まったく、一度だけじゃなく二度もフラつくなんて、実体がないのに困った中年だねェ」


西園寺 : 「ちゅ、中年じゃなっ……井上喜久子さんと同級生ー! ていうか、実年齢はまだ1歳で若いですしー!」


神崎 : 「……はいはい、それより早く準備してほしいんだけどねェ……皆、まってるよ?」



 言われて振り返れば、もう準備を終えてGMを待つばかりのさばみそギルド面子が見える。

 一刻も早く、ゲームに興じたいといった様子だった。




西園寺 : 「あぁ、ごめんごめん。今こっちもスタンバイするから……タカシ君、シーナ君、二人とも先にいっててよ」


神崎 : 「はいはい」


椎名 : 「……わかりました、先生」



 二人が所定の位置についたのを確認し、西園寺はゆっくりとシステムを機動させる。



西園寺 : 「でも、そうか……透さんが、逝って……皆も……自分の生活を続けて……自分の道を歩んでいて……」



 システムが機動すると同時に、暖かな光……西園寺はその暖かさを感じる器官がないのだが。

 その光に満たされながら、彼は小さく呟く。



西園寺 : 「もう、俺がこの世界に留まっている理由は何もなくなってしまったな……」



 システム用のサーバーは、今日も熱を帯びていた。





>天劇 〜 いつかまた廻り会う為に






 少しだけ、外の話をしよう。

 今ここにある世界の外、天幕の外の話を。

 そう、これは幕外劇。


 現ではなく、だが夢でもない、母と息子の物語。




 ・

 ・

 ・



 前後も分からぬ道を、彼女は一人で歩いていた。



西園寺 透 : 「私は……」



 何処を歩いているのだろう。

 そして、これから何処へ行くのだろう。


 彼女はその思考をすぐに中断する。

 乳白色の霧に包まれた見た事もないその地で、すでに思慮など役に立たない。

 そう、思ったからだ。



透 : (行こう……きっと立ち止まっていても意味がない)



 元より行動的である彼女は右も左もわからぬ道を、とにかく前だと思う方向へ歩みはじめた。

 周囲に立ちこめる霧は、何故か甘い匂いがする。

 誰かが香でもたてているのだろうか……。


 そう思い、目をこらせば眼前に立つ人影が、何か香炉のようなものをぶら下げている姿が見えた。

 見れば霧かと思っていた乳白色の煙は、あの香炉から立ちこめている。



透 : (何だ、この霧……霧だと思っていたらあの香炉から出る煙だったのね……)



 とにかく、やっと出会えた人だ。

 ここは何処なのか、人里に降りれる道がないか聞かなければ……。

 そう思い、人影の元へと赴く。


 その顔を見て、彼女は思わず声をあげた。



透 : 「………………馨!?」



 そう、その人影は紛れもなく彼の姿をしていた。

 失って幾年……二度と、出会う事の出来ないと思っていた、息子の姿そのままで。



西園寺 馨 : 「……久しぶり、母さん」


透 : 「……馨。本当に、馨なの?」


馨 : 「……何言ってるんだよ母さん、息子の顔まで忘れた?」



 おどけたように笑う不器用な笑顔は紛れもない、自分の息子そのままだ。

 だけど、何故、どうして。

 あの子がもう自分の傍らに現れる事なんて……。


 そう思うがすぐに、思い直す。

 考えてみればあの子は、自分の眼前に現れる事さえなかったが……ずっと、傍にはいてくれた。

 そんな、気がしたからだ。



透 : 「忘れる訳ないでしょう! そんな、もうろくはしていません!」



 毅然とした態度に、息子は笑う。



馨 : 「……せやねんなァ、やっぱり母さんだ」



 だがその笑顔は、すぐに深い悲しみの色に包まれた。



馨 : 「……ごめんな、母さん。先に、いったりして。母さん、置いていって……ほんとに、ごめん」


透 : 「……馨」


馨 : 「父親がいなかったから、その分僕が母さんを守るんだって……そう、小さい頃から行ってた癖に……情けない息子だよなァ……」



 悲愴にくれて語る息子の言葉に、彼女はただ首を振る事しか出来なかった。



透 : 「いいの、いいの……いいの、馨。もういいの……私こそ、ごめんね……私は、私は貴方を……貴方を、復讐の道具として扱ってしまった……」


馨 : 「…………母さん」


透 : 「それだけじゃない、私は……貴方の事をただ、がむしゃらに勉強だけをして……人並みの幸福さえ知らない、可哀想な子だと、勝手に思いこんでいた……あんな素晴らしい教え子を、私に残してくれたのに。私は、貴方の事を勝手に可哀想な子だと……」


馨 : 「……会ってくれたんだね。椎名君に」


透 : 「彼が、会いに来てくれたの…………貴方の遺志を継いでくれた、立派な教え子ね。お母さん、一目で気に入っちゃったわ」


馨 : 「当然だ。彼は僕の……彼は僕の最高傑作だからね」


透 : 「……そう。こんなに素晴らしい教え子を残していた貴方を、私は勝手に哀れんでいた……貴方の母親なのに、貴方の思いを、気付いてあげる事が出来なかった……」


馨 : 「…………」


透 : 「……お母さん失格ね」



 寂しそうに笑う彼女を前に、彼は暫く黙っていた。

 だが。



馨 : 「母さん」



 彼は母へと向き直り、その手を彼女の前へと差し出す。



馨 : 「そろそろ行こう、母さん。僕は、ずっと待っていたんだ」


透 : 「……待っていたの、私を?」


馨 : 「そうさ………………この道を、僕が先に行ってしまったら……母さんを見失ってしまうかも、しれないだろう」


透 : 「馨、貴方は何を……何をいいたいの?」


馨 : 「……だから。僕が先にいったら、また母さんの子供に生まれてこれないだろう?


透 : 「……?」



馨 : 「……また、僕の母親になってくれませんか?」



透 : 「馨……」



 ……あぁ、貴方はこんな愚かなで哀れな母親を、許してくれるのね。

 悲愴を上回る喜びの感情が複雑に混ざり合い、母の目尻に暖かな感情が溢れる。



透 : 「……ありがとう、馨。お母さん……とっても、嬉しい……」



 差し出された手を握りしめ、その温もりを指先に確かめる。

 それは紛れもなく息子の腕。

 西園寺馨の手だった。



馨 : 「行こう、母さん」


透 : 「――えぇ」



 固く握った手を放さないように、甘い匂いに包まれて。



馨 : 「――今度は、僕、ちゃんと親孝行するから。肩たたきもする、旅行もしよう。約束だよ、母さん」


透 : 「えぇ。私も――もう少し料理の勉強をしようかしら。ロールキャベツ、好きだったわよねぇ、馨?」


馨 : 「え、いや。その、別に……」


透 : 「……大人になってからも、シチュー・カレー・スパゲッティのローテーションで……子供舌よねぇ、貴方は……今までは外食ばかりだったけど、母さん今度はちゃんとつくってあげるからね」


馨 : 「あ、あぁ……期待しないでまってる」


透 : 「少しは期待しなさい!」


馨 : 「あはは……」



 苦笑いになるのは、西園寺馨が普段うけた劣悪な食事環境からである。



馨 : 「……そろそろ行こうか、母さん。僕、母さんとしたい事が沢山あるんだ」


透 : 「えぇ、えぇ……馨」


馨 : 「……何?」


透 : 「ありがとう、馨……」



 待っていてくれて、ありがとう。

 許してくれて、ありがとう。

 そして……。


 また、私が母親である事を望んでくれてありがとう。

 いくつものありがとうが重なった言葉を抱いて、彼女は穏やかに逝った。


 永久の道を、彼とともに。

 またいずれ、出会う為に……。




紀行に戻る / 青竜はまじ強いッスよ。  /  いよいよ最終章へ。