> 界樹の迷宮をリプレイ風プレイ日記、するよ。よ!





までのあらすじ >


 ラスボス退治後に出てきたダンジョンが思いの外敵がつよかった。




> 新しいエトリアでの頼を求めて



 休憩後。

 再びヴァーチャル世界のエトリア。



GM : 「はいはーい、それじゃ、休憩も済んだ事だしボチボチ始めますかな。かなー?」


アイラ : (もぐもぐ、むぐむぐ……) ← リンの手作りケーキ堪能中。

シェヴァ : (むぐむぐ、もぐもぐもぐ……) ← 同上。



シグ : 「すまん、GM。まだ食べ終わってない奴がいる」(笑)


GM : 「あはは……まぁ、食べながら聞いてくれればいいよ。とりあえず休憩前までのおさらいをするから……えー、君たちは、第5階層・世界樹の王が居た玉座の裏で、第6階層の扉を見つけた。けど、敵が強すぎてすぐに戻ってきた……」


カエデ : 「……ガツンといい一撃を受けてしまいました。ううう」


リン : 「大丈夫、カエデちゃん……」 (←カエデの頭をなでなでしている)


カエデ : 「あっ、あっ。やや、やめてお姉ちゃん。みんな見てる恥ずかしい!」(照れ照れ)


ヒルダ : 「攻撃が痛すぎるというのもあるが、こちらの攻撃を受け付けないというのが厄介だな……メタルシザース、といったか」


シュンスケ : 「そうだな。最も、全ての攻撃に耐性がある、という訳でもあるまい……弱点属性があるはずだ。そこを突けば勝てると思うが」


シグ : 「うーん、しかし新人3人を抱えてすぐに挑むにはちょいとハードルが高いかもだな〜」


ガモン : 「……面目ございません」


アイラ : 「あ、ガモンさんが謝らなくてもいいですよー。ここの敵が強すぎるのがいけないんですから!」


フィガロ : 「何にせよ、少しレベル上げに励みたい所だねぇ。何か効率のいいレベル上げ方法ってあったっけ?」


シュンスケ : 「うむ……一応、カエル道場モア道場を開いてレベルを上げるという手もあるが……」



※カエル道場・モア道場とは。

 仲間を呼ぶ特性のある森林ガエルやヒュージーモアにちくちくダメージを与えて、仲間をわざと呼ばせてそれを退治しながら経験値を稼ぐ方法の事である。

 別にカエルが胴着をきて 「私がカエル道場師範代、江田島平八である!」 等叫んだりする事はない。



シグ : 「……そういう、一カ所に留まってちくちく攻撃するような方法、俺が好きだと思うか。シュンスケ?」



シュンスケ : 「全く思わんな」



シグ : 「だよなー……嫌だぜ俺、そんなエターナルに同じ敵と戦うような方法でのレベル上げは、普通のRPGでだって絶対やらねーんだから」


シェヴァ : 「確かに、シグって一つの場所にじっとしているのが苦手だもんねー」


アイラ : 「そうそう、シグが1時間以上じっとしていられるのは、触手ゲーをプレイしている時くらいよ!」


シグ : 「ははは、何をいってるんだねアイラ君。紳士な俺をつかまえて非道い言いようじゃないか。 それと、ギャルゲーの時もその位頑張れるぞ!


リン : 「……男の人ってみんなこうなのかな?」 (ぼそ)


カエデ : 「……姉上が居るというのに! ……不潔です!」


シグ : 「ま、じっとしているのが苦手な俺としては出来ればウロウロとダンジョンを歩き回れるプランで行きたいんだが……何かお勧めの旅行プランはないかね、GM殿?」


ヒルダ : 「おいおい、坊ちゃん。GMは旅行会社じゃぁ……」


GM : 「ふふふ……そんな熟練さばみそギルドの面子に、実はいいプランがあるんでヤンスよ……げへげへげへ」



ヒルダ : 「あるのか!? 用意周到だなGM!」


ガモン : 「……というか、何であんないかがわしいしゃべり方をするんですかね。あのGMは?」


フィガロ : 「まぁ、本人の性格がいかがわしいからねぇ……」


GM : 「はいはーい、フィガロくーん。ヘンな事言わないでおくんなせー……ではとりあえず、その魅惑のプラン1は ワイバーンの様子がおかしいから調べてくれよう依頼!」


シェヴァ : 「……ワイバーンさん、か」


シュンスケ : 「…………」


GM : 「ん、そう。実は地下8階にいるワイバーンが最近、ヘンな鳴き方をするから調べてほしいっていう執政院からの依頼が酒場に来ているんだ」


ヒルダ : 「酒場にか……まぁ、酒場をポストにしているが我々への依頼だろうな」


GM : 「そだね。このエトリア広しといえども、ワイバーンと対等に渡り合えるのは君たちくらいだろうから……」


シェヴァ : 「うーん……何でか理由は気になるけど、ワイバーンと戦うのは嫌だな、おれ……」


シュンスケ : 「まだ戦うと決まった訳ではないだろう?」


シェヴァ : 「そうだけど……でも……」


ナルラト : 「まぁまぁ……それだったら坊やはアタシとシュンスケ君とで留守番していればいいさね。また仲良く……ね?」


シュンスケ : 「む……ナルラトさんと、ですか……」(汗)


ナルラト : 「なーに、何不服そうな顔しているんさね、シュンスケくぅん?」 (ぎゅ)


シュンスケ : 「やぁっ、やめてください、抱きつくのは。あの、近いです近いッ! 背中に、あたってますよあれがっ、胸が!」


ナルラト : 「嫌ぁねぇ、あててるんさね。もう、言わせないでよ、坊や」


シェヴァ : 「!! だめっ、ナルラトねーちゃん。シュンスケにえっちな事したらだめっ!」



ガモン : 「……それで、他の魅惑のプランとは何でしょうか」 (背後で痴話喧嘩をするシュンスケさんご一行を華麗にスルーしつつ)


GM : 「ん、そうだね。あとは……吹雪をあやつる竜を見たから証拠を探してきてくれ! って依頼」


リン : 「ふ、吹雪の竜ですか?」


ヒルダ : 「そのようなモンスター、今まで迷宮では見た事がないが……」


GM : 「だが氷の竜に腕をはじき飛ばされたという男から依頼がきているから調べてくれってモンだ……後は、地下にアンク型のパーツがおちてたら拾ってきてくれ。っていう依頼だな」


ガモン : 「アンク型の……?」


シェヴァ : 「あ! 俺それ知ってる、見た事ある……第5階層のマップ歩いている時、時々におちてたやつだよね。ちゃんとマッピングの時に、落ちてた所メモしておいたからすぐに集められると思うよ!」


ガモン : 「そうか……」


シェヴァ : 「そーなのだ! どうだ、ガモン兄ちゃん。俺だってちゃんと役に立つだろ、偉いだろ、すごいだろ! ね。ね、ほめてほめてー」


ガモン : 「調子にのるな、バ褐色!」


シェヴァ : 「またっ、バカって……シュンスケー。あのでっかいオッサンがひどい事いう。非道い事言うよー!」


シュンスケ : (なでなでなで……)


ガモン : 「事実を客観的に述べただけだ! それに、オッサンではないと……って、おいシュンスケとやら!」


シュンスケ : 「ん、何だ?」


ガモン : 「また安易にバ褐色を誉めるなど……貴様がそのように過保護だから、このバ褐色はつけあがるんだぞ! いい加減にもっと厳しい教育をだな……」 (くどくどくど)


シュンスケ : 「む……スマン」



GM : 「さて、痴話喧嘩している黒ケミご一行はさておいて。それで、さばみそギルドの諸君。これから、どうすつるもりだい?」


アイラ : 「えーと、新しい依頼は、第2階層のワイバーンさんに。第3階層に、第5階層……結構色々な場所を探索しないとダメっぽいねー」


シグ : 「そうだな……でも俺としてはこう、目的のある探索の方が有り難いがな!」


ナルラト : 「アタシにとっては何処も行ったことのない場所だから、楽しみだねェ……」


シグ : 「だな。ここはナルラト姐さんに案内を兼ねてと、各地の復活しているであろうボス退治巡りしながら、てのも悪くねーよな! な、姐さん?」


ナルラト : 「うふふふふ……アタシとしてはシュンスケ君と一緒なら何処でもいいさね〜」(ぎゅ)


シュンスケ : 「うぁっ! だ、だからやめてくだっ……腕に、あの。柔らかいモノがっ……」(汗)


ナルラト : 「だからあててんさね! もう、言わせないでよ、恥ずかしいじゃないのさ!」


シェヴァ : 「むー……」 (ぴと)


シュンスケ : 「……ど、どうした、シェヴァ?」



シェヴァ : 「どうしたじゃないよ! あててんだ!」



シュンスケ : 「何をあててんだッ、何をっ!」




ナルラト : 「あはははは……若いってのはいいねェ。そう思わないかい、坊や?」


フィガロ : 「同感ですよ姐さん。あははははは!」


GM : (フィガロ君は確実にナルラトさんの教育方針に影響を受けているよね……うん、確実にね)




> 湯樹海お色気珍道中。



 ともあれ、新しい依頼を得たさばみそギルドご一行は早速。

 その依頼を遂行する為に、世界樹の迷宮に降り立つのであった……。




GM  : 「とりあえず、新人さんの成長を目的として……面子は」


前衛 : シグ ・ シェヴァ

後衛 : ガモン ・ ナルラト ・ シュンスケ




GM : 「これでいいかな?」


シグ : 「あぁ」


リン : 「……大丈夫、シグ? 回復役が居なくなっちゃいますけど」


シグ : 「あはは、大丈夫だって! 途中に回復の泉もあるし、危険な相手は避けていく。危なくなったらシュンスケの術式ですぐに戻るつもりだしな!」


リン : 「それならいいですけど……」 (そわそわ)


シグ : 「…………心配するなって、すぐ帰るから。な?」 (ぽんむ)


リン : 「はい……まってますから、早く戻ってきて下さいね」



カエデ : 「…………」 (ずいっ)


シグ : 「? 何だよカエデ、俺に、何か用か?」



カエデ : 「シグ様! 姉上と離れている間に浮気は許しませんからねっ!」 (ビシっ、と指を突きつけつつ)



リン : 「ななな、何言ってるのよ、カエデちゃんっ、もー! もー!」 (照れ照れ)


シグ : 「あははは! ナルラト姐さんみたいなタイプが俺なんて相手にする訳ねぇっての。ていうかよ……」



ナルラト : 「……うふふ、頼りにしているわよ、シュンスケ君」 (ぎゅむ)


シュンスケ : 「やっ! だからやめてくださっ……」


シェヴァ : (オロオロオロオロ……)


ナルラト : 「さ、さ……今日はシュンスケの坊やがアタシを守ってくれるんだろう? あはは……楽しみだねェ……」 (ぎゅ)


シュンスケ : 「だぁっ、だからあんまり近づくのは……あの、腕に暖かく柔らかいものが……」(汗)


ナルラト : 「だからあててんさね、もー。何度言わせればわかるのかねぇ、この子は♪」


シュンスケ : 「あぁぁ! もぅ……」(汗)


シェヴァ : 「……だめー、ナルラト姐さん、シュンスケぎゅーってしちゃダメぇー」



シグ : 「ナルラト姐さんの場合、もう俺なんか眼中にねーみてぇだから大丈夫だろ、な!」



カエデ : 「……なるほど! それなら安心ですね、姉上!」


リン : 「安心……して、いいのかなぁ?」


GM : 「それじゃ、面子も決まった事だし元気にいってみよー!」



一同 : 「おー!」



 かくしてGMのかけ声で始まった第1階層〜第5階層、ボス退治巡りの旅。

 一見困難そうな試練にも見えるが、前衛が一度ラスボスを制しているだけあり、さして苦戦する事もなく、道中。




シグ : 「よし、体よく復活しているな。スノードリフトめ……行くぞ、皆!」



後衛一同 : (シーン……)



シグ : 「あれ、皆?」 (くるり)



ナルラト : 「きゃぁ、何か出たさねシュンスケくぅん。怖いぃ、怖いぃ」 (ぎゅむっ、すりすり)


シュンスケ : 「ちょ、離れてくださいナルラトさん! 術式が放てませんッ!」


シェヴァ : 「そうだよ、ナルラトのねーちゃん離れてよ! シュンスケの術式のお邪魔だよっ!」 (ぐいぐい)


ガモン : 「……そういうお前も、こんな所で油を売っていていいのか?」


シェヴァ : 「ほぇ?」


ガモン : 「……お前は前衛。俺やナルラトさんは後衛だぞ?」


シグ : 「そうだシェヴァ、早く前に出てくれ! いくらなんでも俺を一人で放置するな! というか、後衛4人というあらぬ事態に、さしものスノドリさんもポカーンとしているぞー!」



 後衛に何故か4人があつまるという不具合がおこったり。

 また。




シグ : 「よし、ケルヌンノス撃破だ! ……確かここのレアドロップはまだ拾ってなかったよな。シュンスケ?」


シュンスケ :  「特に目新しい発見はないな」 (きっぱり)



シグ : 「そうか……よし、次行くぞ!」



シェヴァ : 「クイーンアントもまだレアドロップ落としてないよね。じゃあ、いってみよー!」


GM : 「……何て言ってる傍からもう到着だよ、クイーンアントの所まで、隠し通路が出ていればすぐだからね」


シグ : 「よし、だがまだこの階層の敵なら……速攻で片を付けるぞ!」


ガモン : 「……何かお手伝い出来る事は御座いますか。リーダー?」


シグ : 「あぁ、無理のない程度に支援攻撃を頼む!」


ガモン : 「了解致しました……ダブルショットです!」


シェヴァ : 「後に続くぞー、ヘッドボンテージ!」


GM : 「うーむー……流石に新人組の攻撃はきかないが、ベテラン組が本気なのはこたえるな……クイーンアントは倒れた!」


シグ  : 「よっしゃ、相棒! レアドロップは!」



シュンスケ : (レアドロップなんて全く探す様子もなく) 「……大丈夫だったか、怪我はないか。シェヴァ?」


シェヴァ : 「大丈夫だよ、怪我してないし! これくらいかすり傷だし、すぐ下に泉もあるし!」


シュンスケ : 「そうか……でもばい菌が入るといけないからな。みせてみろ……何処切ったんだ?」



ナルラト : 「きゃうーん、アタシも口の中切っちゃったさね、シュンスケのぼーやぁ! ツバでもつけてなおしてほしいさねー!」 (抱きつきっ!)



シュンスケ : 「うわっ! や、やてください、ナルラトさん!」



ガモン : 「…………全然探してないようですよ、レアドロップ」


シグ : 「……あぁ、そうみてぇだ。これじゃ、コロトラングルのレアも期待できそうにないな!」



 レアドロップを探しに来たはずが、博識レベル10でも全く役に立たなかったり。

 また。




シェヴァ : 「よし、あと一撃だな! ……ヘッドボンテージだ!」


GM : 「……それで倒れた。よし、イワオロなんとかを退治した!」


シグ : 「とうとうGMがボスキャラの名前を言うのを諦めたぞ」(笑)


GM : 「いいだろ、言いにくいんじゃこいつらの名前は……」


シェヴァ : 「……何にせよ倒したー。イェーイ、リーダー! イェーイ!」 (←ハイタッチ)


シグ : 「イェーイ!」 (ぱちん!)


シェヴァ : 「シュンスケ! 俺倒した! 俺倒した……イェーイ!」 (←ハイタッチ)


シュンスケ : 「……」 (ぺちん!)


シェヴァ : 「イェーイ、ガモンのにーちゃん。いぇーい!」 (←ハイタッチ)


ガモン : (ひょい)


シェヴァ : 「……ふぁぁ! よけた! ガモンのにーちゃんが避けたよ、非道い非道い! 何で避けるんだよ!」


ガモン : 「ベタベタ触るな……」


シェヴァ : 「ううう、非道いー。非道いー、ガモンのにーちゃん。俺そんな別に、ベタベタの手はしてないよ!」


ガモン : 「いや、ベタベタ触るな、ってそういう意味では……」


シェヴァ : 「大体、ガモンの兄ちゃんの方がベタベタしてそうだよ! 何か、トイレの後手ぇあらってなさそうだし!」



ガモン : 「しかも言うに事欠いて何てことをっ……洗ってる! 俺はトイレの後、ちゃんと手を洗うタイプだぞっ!」



ナルラト : 「いやぁねェ、ガモンってば不潔さねぇ……」


ガモン : 「しかもナルラト様までっ……洗っているていってるでしょうに!」



 微妙にかみ合わないチームワークを発揮しながらも。

 何とか淡々と、5階層まで制覇するのでありました……。





> 遠き竜の呼び声



 等とわきゃわきゃやっているうちに、無事に第5階層の旅も終了したようです。



シグ : 「ただいまー、リン。アイラ、ちゃんと留守番してたかー!」


リン : 「シグ……よかった。、おかえりなさい!」


アイラ : 「おかえりー、シグー。お土産はー!」


シュンスケ : 「……土産だ」 (じゃらじゃらじゃら)


アイラ : 「わーい、ありがとシュンスケさーん! って、これ……何? 食べられるもんじゃないのー?」


ヒルダ : 「これは……アンク型のパーツか?」


シグ : 「あぁ、執政院で依頼受けた奴だ」


シェヴァ : 「途中でダメージ結構受けちゃって、3つしかもってこれなかったけどね!」


ガモン : 「……お前がすぐに無理な突進をし余計な被弾をするからな」


シェヴァ : 「なぁんだよ、ガモンの兄ちゃん守る為の名誉の負傷だってのー! もー!」


ガモン : 「俺は貴様のようなチマいガキに守られる程ヤワな身体ではない」


シェヴァ : 「でも、今はまだレベル低いだろっ! 俺の方が今は強いもん! 俺の方が先輩だもん!」



フィガロ : 「はいはいはいはい……ケンカはしなァい、っと……それで、リーダー。階層回ってみて、特にヘンな事とかはあったのかい?」


シグ : 「そうだな、特別ヘンな事はなかったが、強いて言えば……」 (と、いいながら荷物袋より、ドンっと。氷漬けの腕を取り出す)


ヒルダ : 「ひゃぅうっ!?」 (ビクッ!)


シグ : 「コロトラングルの居た場所に、こんなもんがあったぜ。これが、氷竜とやらの居た証拠になるんでないかい?」




ヒルダ : 「い、いきなり腕とかドンって出さないでくれ、坊ちゃん! こここ、心の準備が出来ていなかったではないか!」 (→半べそ)



フィガロ : 「相変わらず、グロ系がてんでダメだねぇ、ヒルダは……」


ヒルダ : 「う、う、うるさい!」 (泣)


リン : 「氷漬けの腕……確かにこれなら証拠になりそうですね!」 (嬉々とした表情で)


ヒルダ : 「ううう……リン君は、こういうモノは、だ、だ、大丈夫なのだな……まだ心臓がどきどきするぞ……」 (ぷるぷる)


シグ : 「……と、氷竜が居る証拠は見つけたが、飛竜の異常解明には至らず。アンクはあつめきれなかったな」


GM : 「だねぇ……とりあえず、その腕は証拠として、金鹿の女主人が受け取っておくよ……。 『皆、ありがとう。それじゃぁこれは受け取っておくわね』


ヒルダ : 「むむ……金鹿の主人も、こういうモノが大丈夫系なのか……」(ぷるぷる)


シグ : 「……ひょっとしたら、ワイバーンの異常を究明するには、奴を倒さないといけないのかもだなァ」


フィガロ : 「なるほどねェ」


シェヴァ : 「…………でも、それは。俺……そういうのは……」


シグ : 「あ! シェヴァは無理にくる事ぁ無いぜ! お前にとってあいつは……特別、だもんな」


シェヴァ : 「うん……ごめん、シグ」


シグ : 「いいって、いいって……さて、んじゃま、ワイバーン退治をさくっとしてくるが誰か行く奴いるかー!」


アイラ : 「はいはい、アイラさんいきまーす!」


ヒルダ : 「……私もご一緒しよう。坊ちゃんを守るのは私の仕事だしな」


フィガロ : 「サポートは必要かい?」


シグ : 「そうだな、姉弟子や俺たちで一気に畳みかければ……」



カエデ : 「あ。あの、すいません!」


シグ : 「……カエデ?」



カエデ : 「わ、私もご一緒してもよろしいでしょうか。シグ様!」



シグ : 「っと。別にいいけど、どうしたんだよ。えらいやる気みてぇだけど……」


カエデ : 「……私、以前はシグ様に守られて戦うので精一杯でしたが、今は幾分か修行して強くなりましたから! 修行の成果、シグ様にお見せしたいのです!」


シュンスケ : 「……だが、ワイバーンもまだ強敵の部類に入るぞ。君にとってはその一撃、驚異なはずだが」


カエデ : 「未熟は承知です! ですから、無理にとは言いませんけどっ……」


シグ : 「あはは……別にいいぜ!」


シュンスケ : 「ん……いいのか、シグ?」


シグ : 「大丈夫だろ? もう俺たちも充分強くなっているから、大事にはならねぇだろうし。それに……」



カエデ : 「よしっ、よし! 今日こそ強くなった私を、シグ様にお見せできます! 楽しみです!」



シグ : 「……あの勢いを殺すのは、惜しいもんな!」


シュンスケ : 「……そう、だな」



 かくして、ワイバーン戦は。


前衛 : シグ ・ ヒルダ ・ カエデ

後衛 : フィガロ ・ シュンスケ


 で挑む事となる訳でして




GM : 「んじゃま、サクサク行くよ地下8階〜、べべん、べん」


シグ : 「見た印象、前戦った時とかわんねーよな……」


ヒルダ : 「というより、見た目は何時でも黒い丸だな、奴らは」(笑)


シュンスケ : 「そうだな……背後をとって、一気に片づけるぞ、皆!」


シグ : 「おうっ! ……という訳で、背後とったりー! 先制攻撃、でいいよな。GM」


GM : 「ういうい。好きにしてくれ、どうせこっちはそう来るのは想定内だ」


シグ : 「よし、先手必勝! とはいえ、こいつは属性攻撃に耐性があるんだよな……チェイスはやめてハヤブサ駆けにしておくか!」


ヒルダ : 「……このターンに攻撃がこないなら、一気に畳みかけよう。シールドスマイトだ」


カエデ : 「私は上段の構えをとります!」


シュンスケ : 「雷は通用しないんだな……さして削れる訳ではないが、大氷嵐の術式を組もう」


フィガロ : 「ん、猛き戦いの舞曲を。一応、ねぇ?」


GM : 「おいおい、いきなり全力かよ! 非道いな、まったく……」


シグ : 「今回はハイリスクローリターン作戦! って訳で、メディック抜きできているからな……悪いが、一気に攻めさせてもらうぜ!」


GM : 「……むむ、想定していたとはいえ結構削れたな……ワイバーンさん突然の訪問に吃驚ぷんぷんだ! 『何やってるのよあーたたち! おナベがこげちゃうじゃない!』


シグ : 「相変わらず、妙に家庭的なワイバーンだな」(笑)


GM : 「やりくり上手の専業主婦、隈 番子(わい ばんこ)さんだからな!」


カエデ : 「……GMさんの中でワイバーンさんがとんでもない事になってますね」


GM : 「ともあれ、次は俺のターン! という訳でこっちも攻撃するぜ!」


シグ : 「その攻撃喰らう前に叩く! って訳で引き続いてハヤブサ駆け行くぜ!」


ヒルダ : 「前ターンと同等……シールドスマイトだ」


シュンスケ : 「同じく、大氷嵐の術式だ」


シグ : 「何だ、皆さっきのターンと一緒か?」


カエデ : 「私は違います! このターンから構えが完了しているので、つばめがえし! 行きます!」



一同 : 「おおー!」



フィガロ : 「俺は強化かけたらさしてやる事ないねェ……焼け石に水だけど、弓撃っておくとするさね」


GM : 「ういうい……ワイバーンは物理耐性は特にないからサクサクと削られていくよ……と、こっちの攻撃! さて、ウイングクローやテイルストライクあたりがでれば、シュンスケ君やカエデ君あたりは厳しいだろうが……」


カエデ : 「ううう……」


GM : 「ん、だが……攻撃の矛先はシグか……そこは固いからダメージ奮わないんであんまり叩きたくないんだけどなぁ」(笑)


シグ : 「どーんと来いワイバーンの攻撃ッ! ……って、流石に痛ぇけど、これならあと2発は耐えられるぜ!」(笑)


GM : 「……むむ、流石カンスト直前のソード男。固いですのー」


シグ : 「伊達にレベルの限界は見てねぇんだよッ」



GM : 「うむっ。んじゃま、次、3ターン目ね〜」


シグ : 「3ターン目、といっても、回復もいねーしただ同じようにぶち込むだけだな!」


シグ他一同 : (無言で頷く)


GM : 「ラジャー了解! って事でワイバーンも遠慮なくブチ込むぜ! ……とはいえ今回は通常攻撃だが、相手は……よし、カエデ君だ!」


カエデ : 「!? ……きゃぁ!」


シグ : 「カエデっ! 大丈夫か!」


カエデ : 「…………大丈夫です、何とか耐えました!」



一同 : 「おおー!」 (ぱちぱちぱち)



GM : 「何と! ……HPブーストをちゃんととっておくとブシドーでも耐えるな」(笑)


シグ : 「よし! 強くなったな、カエデ!」


カエデ : 「はいっ! そして……反撃、いきます! ツバメ返し! ……どうですかっ!」


GM : 「うむぅ、三回攻撃は流石に痛い……が、まだ生きてるおー!」


カエデ : 「そんなっ……!」


シグ : 「……いや、上出来だカエデ! 追撃行くぜ、ハヤブサ駆け!」


シュンスケ : 「……大氷嵐の術式」


ヒルダ : 「シールドスマイト、どうだ!」


GM : 「くぅっ……流石に怒涛で仕掛けられるとダメだな……それでワイバーンさんは倒れた! 君たちは、専業主婦・隈番子さん(24)を退治した!」


フィガロ : 「そんな名前じゃないでしょうに……」(笑)


ヒルダ : 「に、二十四歳なのか!? 若いな、ワイバーン。いや、ワイバーンとしては年齢がいっているほうなのか……?」


シグ : 「真面目に考える事じゃないと思うぜ、姉弟子」(笑)


GM : 「そして君たちはワイバーンから、飛竜の牙笛という見慣れないドロップアイテムを手に入れたぞ!」


シグ : 「お、珍しい……シュンスケの博識が役に立つ事があるとはな!」


シュンスケ : 「……いや、これは条件ドロップじゃないか? 自分でいうのも何だが、俺がそんなに運がいいと思えんからな」


GM : 「自分で不運を認めている黒ケミさんって……とは思うがいかにも、条件ドロップアイテムじゃよー! 3ターン以内撃破で手に入るものだ」


カエデ : 「えへへ、やりました。戦士の勲章ですねっ!」


GM : 「……そうやってカエデちゃんがそれを手にしたその時、上空から突如巨大な黒い影が現れた!


カエデ : 「えっ……!? な、何ですか!?」


GM : 「その影は、すさまじい殺意をはなちながら君たちの様子をうかがっている……が、一瞬だけ気配をはなった後、その圧倒的な気配だけを残し姿を消した……」



カエデ : 「い、い、今の何ですか。あれ、あれっ!」 (カエデは混乱している!)


ヒルダ : 「……坊ちゃん、今のは?」


シグ : 「俺に聞いてもわかるかって、姉弟子。ただ……ヤバイ相手、ってのは間違いないみたいだな。一回戻るか?」



一同 : (無言で頷く)



 かくしてリーダーの判断に従い、謎の気配を感じながら。

 さばみそギルドの面々は、一度エトリアへ帰還するのだった……。





> 新たなるの息吹




GM : 「んじゃま、シュンスケ君もいるからさっくりエトリアへ」


シュンスケ : 「ただいま……」


シェヴァ : 「うわー、おかえりなさいシュンスケー!」 (←抱きつきモーション)


シュンスケ : 「シェヴァ……?」


ガモン : (がしっ! と、シェヴァの首根っこをつかまえながら) 「待て、バ褐色」


シェヴァ : 「ぎゃぁぁ! いやだ、痛い痛い、つかまえないでつかまえないで! ガモンの兄ちゃんこそっ、何するんだよ!」


ガモン : 「……だが貴様、今、何をしようとした?」



シェヴァ : 「えっ? シュンスケに、おかえりのダッコ!



ガモン : 「ガキでもないのにそんなマネはやめろといってるだろうが貴様はっ!」



シェヴァ : 「えぇぇ! でも、でも……」(おろおろおろ)



ナルラト : 「おかえりー、シュンスケくぅん!」 (抱きっ!)


シュンスケ : 「ちょ、ナルラトさっ……」(汗)


フィガロ : 「だったら俺も、シェヴァ代理で……シュンスケくーん」(ぎゅ!)


シュンスケ: 「調子にのるなフィガロ! くそっ!」




シェヴァ : 「……あれはいいの?」


ガモン : 「む……むむ……むぅ…………」



シグ : 「それより、飛竜の依頼をこなしたらヘンな影が出てきたんだが、アレは何だ……と、とりあえずクエストは消化しておく」


GM : 「うい、すると君らは酒場の主人からこんなハナシを聞く。 『ありがとう……それから、執政院の方で調べた所、それまでワイバーンの居た場所にどうやらもの凄く強い竜が現れたらしいの』」



一同 : 「竜!?」



シグ : 「ちょ、ワイバーンの場所ってあの、12畳のリビングにか!?」


GM : 「おう! 宿主が変わったぞ! ワイバーンは別の借家をかりて、新しい宿主・謎のドラゴンさん(仮名)が現れたらしい」(笑)


ヒルダ : 「しかし、物今まであの場所に竜など……」


GM : 「どうやら、今まではワイバーンのその笛の音が苦手で近づかなかったらしい……が、君たちが撃退しちゃったから来るようになった訳だね」


シグ : 「むむ……それって俺たちのせいか?」


アイラ : 「依頼を出したのは執政院だから、なで肩眼鏡さんのせいだよ!」(笑)


シグ : 「そうか、だったら俺が気に病む事はないな!」(笑)


シュンスケ : 「……だが、竜が、現れたか……」


カエデ : 「あの殺気、相当の手練れ……かなりお強い方とお見受けしましたよ!」


GM : 「現れただけじゃねぇよ、討伐依頼(クエスト)もきてる……奴が巣くう事で危険な目にあったから倒してくれって執政院から来てるぞ。なかなかの高額依頼だ」


アイラ : 「高額依頼! 高額依頼だって!」


シグ : 「確かに新しい武器も出てきて、アルケミストのレアドロップ探さない病が激しく貯金が控えめの我がギルドとしてはひかれるのは事実だが……」


ヒルダ : 「竜、竜が相手か……」



一同 : 「う〜ん」



シグ : 「……何て、考えるのは俺の性分じゃねぇな!」


ヒルダ : 「……坊ちゃん?」



シグ : 「敵が出たら倒して進む! ……それがさばみそギルドだろ?」



アイラ : 「あはは! 確かにうちのギルド、あんまり逃げる使わないしね!」


ナルラト : 「あら……なかなか男気ある坊やじゃないのさ。いいね、そういうの、嫌いじゃないさね」


シュンスケ : 「……そうだな、考えるよりとりあえず、戦ってみた方がいいだろうな」


シグ : 「よし、決まりだな! それなら、さばみそギルドの心は一つ! これからはそこに出た竜の退治としゃれ込もうぜ!」



一同 : 「おー!!!」



 こうしてはじまった、さばみそギルドの三竜退治。

 だが彼らはまだ知らないのである、この迷宮に潜む恐ろしい敵たちの事を…………。




>幕劇 〜 彼がさばみそと名付けた理由





 幕間劇をはじめよう。


 平和になった世界。


 君は、西園寺馨が生きていたかった理由、その一端を知っても。知らなくてもよい。



 ・

 ・

 ・



 その日のセッション終了後。

 都内、某所(いつもの西園寺研究室)



西園寺馨(GM) : 「よし、本日の営業は終了いたしましたー! って事で、ちょっと中途半端だけど今日はここで一端お開きにするぞー!」


神崎高志(フィガロ) : 「ふゥ……お疲れさん、っと」


桐生和彦(シグ) : 「くぅっ……どうせなら今回であのとやらと戦ってみたかったが、時間切れかー!」



西園寺 : 「あはは、悪いね桐生くん……いや、俺も実はまだ、調整中でさ。まだあんまり長時間、仮想世界を保つ事が出来ないっぽいんだよ。だから、勘弁な!」


芹沢梨花(リン) : 「仕方ないですよ、病み上がりなんですから……」


西園寺 : 「あはは、相変わらず優しいなぁ芹沢君は…………好きになってもいいですか?」


梨花 : 「えっ、えっ?」(汗)



桐生 : 「ダメだっての、もう芹沢は、俺の梨花なんだからな!」(笑)



梨花 : 「ちょ、あ! もう、急に何言ってるんですか、和彦さぁん!」 (照れ照れ)


芹沢早苗(カエデ) : 「もー、お姉ちゃんってば、らぶらぶー!」


梨花 : 「かかか、からかわないでよ早苗ちゃん!」



西園寺 : 「何と! …………おじさん、別に二号さんでもいいんだよ。よ!」


神崎 : 「何言ってるんさね、カオルちゃんの分際で……軟派な男って嫌われると思うけどねェ?」


西園寺 : 「カオルちゃんって呼ぶなー! それと、軟派な男とかタカシ君が言っても、凄く説得力がありません!」


神崎 : 「はいはい、ごめんなさいカオルちゃん先生」



桐生 : 「と……さて、今日のセッションも終わった事だし、俺はそろそろお暇しようかな?」


西園寺 : 「んぁ……相変わらず早いね、何。多忙?」


桐生 : 「そ、多忙。これから、梨花の買い物に付き合う予定だからな!」



西園寺 : 「!! 何、それ逢い引き! 逢瀬! デート! デート、デートなのっ、悔しい! 都市伝説だと思っていたのに、悔しい!」



七瀬澪(シェヴァ) : 「落ち着いて西園寺センセー!」



桐生 : 「んー、いや。まぁ、デートといえばデートといえるかもしれないけど……」



早苗 : 「嫁入りまえのお姉ちゃんに間違えがあったらいけないから……!」


桐生若葉(アイラ) : 「大丈夫、兄さんと梨花ちゃんのデートには、私たちがガッチリ、監視役としてついていきますよー!」



桐生 : 「……むしろ、俺は荷物持ちだな」


西園寺 : 「……あー、なるほどなー」



若葉 : 「せっかくだから、睦おねーさまも一緒にいきましょー、ね、ね!」


滝 睦(ヒルダ) : 「わ、私か。私は、その……に、賑やかな所は……」(汗)


若葉 : 「いいよねー、兄さん。こうなれば一人増えても二人増えても一緒、一緒!」


滝 : 「だが、芹沢くんに……」


梨花 : 「私はいいですよー、皆の方が楽しいし!」


滝 : 「そ、そうか……だ、だったら、私も……その、皆といっしょに……」(もじもじ)


若葉 : 「じゃー、決まりー、いっしょにいこー、睦おねーさま!」


早苗 : 「はい、ごーごー! ごー!」


梨花 : 「あ、もう。そんなに睦さんを引っ張ったら可哀想ですよー……二人ともー。ほら、和彦さんも早くー」


桐生 : 「あぁ……ってな訳で、またな、西園寺先生!」



 桐生和彦が、ハーレムマンガの主人公並の吸引力で女子キャラを全部かっさらっていった……。



西園寺 : 「……イナゴだな、桐生和彦は。まるで、豊穣の大地を食らいつくすイナゴのような男だ……」


椎名淳平(シュンスケ) : 「言葉の意味はわかりますが、そういうのは嫉妬っていうのですよ。先生?」


西園寺 : 「ぎぎぎ、悔しいのぅ! 悔しいのぅ! …………だが! 我々にはまだ光明がある! そう、まだ女子キャラはいるのだ……なぁ、芦屋さん! 一目見た時から決めてました、付き合ってください。あるいはぱんつ下さい!」



芦屋灯里(ナルラト) : 「…………ん、何かいったかねぇ?」 (すでに荷物をまとめて玄関に立っている)


ウォード・ランカスター(ガモン) : 「アカリ様、お荷物をお持ち致しましょうか?」


アカリ : 「あはは、大丈夫さね、そんな重いモンもってないし……ねぇ?」



西園寺 : 「えー! って、ちょ、ま! もう帰るんですか、芦屋のおねーさぁぁん!」



アカリ : 「ん。だって店の手伝いしないといけないし……」


ウォード : 「同上です」


西園寺 : 「そ、そんな。一目惚れを信じて俺と付き合うつもりとかはないんですか、おねーさ……」



アカリ : 「生憎アタシにはダーリンがいるから、無理さね!」 (にっこり)



西園寺 : 「がびーん!」


アカリ : 「という訳で、先に帰ってるさね。タカシのボーヤ」


神崎 : 「あ、ども。ジジイによろしくいっといて下さい」



 ウォード、アカリが退室する……。



西園寺 : 「華が無くなった。あっという間に、この空間が灰色になった……」 (しくしく)


神崎 : 「まぁまぁ、カオルちゃん先生には俺が居るじゃないさね」


七瀬 : 「俺も居るよ、先生! 俺もいるよー!」



西園寺 : 「うるさい! お前たちには胸がない!」



七瀬 : 「まーまー、そんなヘソ曲げないで。西園寺先生、俺とアニキ、今日休みだからたまには一緒に遊ぼうって!」


西園寺 : 「んぁー、何してだよー?」


七瀬 : 「ゲームで対戦しよ、ゲーム!」


神崎 : 「負けた方が服を脱いでいくルールでね」



西園寺 : 「えー、何それ誰得ルール!? もうここ女の子だれもいないよ!」



七瀬 : 「えー、アニキ俺も服脱ぐのやだー」


神崎 : 「大丈夫、みぃは一枚ずつ女装していくルールにするから……」



西園寺 : 「!? 希代の男の娘、七瀬君の女装……それは、ちょっと興味ある!」



椎名 : 「ヘンな路線に興味を持つな!」



神崎 : 「まぁまぁ……とにかく対戦ゲームなら一杯あるよ……ほら、バトルシティだろ……くにお君だろ……よりどりみどりさね」


西園寺 : 「何と、まさかのファミコン三昧! だが……ファミコンなら比較的世代! よし、受けてたとう! そしてこのイケメンの鼻っ柱を折る!


神崎 : 「ふふふ……面白い事言ってくれるねェ。じゃ、軽く裸にひんむいてやるさね!」


七瀬 : 「あ、じゃあ俺見てる! 俺見てる!」


椎名 : 「…………」



 皆が賑わう最中、椎名は静かにその部屋を去ろうとする。



西園寺 : 「あれ、椎名君。こっそり帰るの?」


椎名 : 「あ……えぇ、まぁ。少し、用事がありまして……」


神崎 : 「へぇ、珍しいねェ。今日はみぃと一緒に帰らない訳?」



七瀬 : 「べ、別におれ、いつも淳兄ぃと一緒に居る訳じゃないよ!」



椎名 : 「はは……一人で帰れるものな、澪?」


七瀬 : 「うん、帰れる。当たり前だろ、子供じゃねーんだぞっ!」


椎名 : 「だったら、俺は少し大事な用事があるから……澪、お前は先生少し、遊んでもらえ。な!」



七瀬 : 「うん、先生遊んでる!」



西園寺 : 「ちょ、あれ? 今、完全に俺おもちゃ扱いだったよね! 玩具だったよね!」


七瀬 : 「あははー、細かい事は気にしちゃダメだよー、だーめ!」


西園寺 : 「気になる! それすげー気になるって!」


神崎 : 「まぁまぁ……さ、対戦。一回戦目、はじめるとするさね!」


西園寺 : 「お? おぉ!」



 皆に囲まれ、西園寺は笑っていた。

 まるでそれが、当たり前のように、無邪気に……そして、から。


 椎名はその笑顔を横目に、一人。

 静かに、その部屋を後にした…………ある人物に、会う為に。



 ・


 ・


 ・


 一時間後。

 都内某マンション…………。





椎名淳平(シュンスケ) : 「確か……ここ、だったな」



 部屋番号を確認しながらインターフォンを押せば、中からか細い声が聞こえる。



??? : 「あぁ……お待ちしてましたよ。空いておりますから、どうぞご自由に……」



 語尾は殆ど聞こえなかった。

 促されるまま部屋に入ればそこには、一人の女性が椅子に腰掛け、穏やかな表情でこちらを眺めている。




椎名 : 「……以前より先生から名前は伺っていたのですけれども、お会いするのは初めてですよね。私は……」


??? : 「……椎名淳平くん、ですね?」


椎名 : 「あ……はい。ご存じでしたか?」


??? : 「あの子が、ここに誰か来るのだとしたら、一番の教え子である貴方だろうからと、生前……良く、言っておりましたから」



 強く握れば折れてしまいそうな細腕をした、彼女は穏やかに笑う。

 やや長めの髪を一つに束ねている、その髪は随分と白くなっていた。




??? : 「さて……改めて名乗らせて頂きますね。私は……西園寺 透(さいおんじ とおる)です。西園寺馨の……」



 そこで彼女は辛そうに唇を噛み、僅かに視線を椎名から逸らす。

 見据えた瞳の先には、若くして姿を留めてしまった、西園寺馨の遺影が良く知る笑顔をのぞかせていた。




椎名 : 「……母親、ですよね。西園寺先生の」


西園寺透 : 「……」



 そう、彼女は今は亡き西園寺馨の……母親、である。

 だが彼女はそれを言われると、一瞬辛そうに顔を歪めた後、儚げに笑うだけだった。




透 : 「私がそう、名乗っていいものか……解らないのです、今となっては……」


椎名 : 「? 何を仰っているのですか、貴方は先生の母親でしょう。たった一人で先生を育てた……」


透 : 「ですが、私は……あの子にとって、いい母親ではありませんでしたからね……


椎名 : 「何を……先生は、貴方に……」


透 : 「だって私は、家事ひとつまんぞくにこなせない……働いてばかりであの子に構ってもあげられなかった、愚かな母親ですもの」


 笑顔のまま、淡々と語る。

 彼女のその笑顔には、西園寺馨の面影が色濃く出ていた。



透 : 「……あの子が物心つく頃には、私は殆ど仕事で家に居る事なんて出来ませんでした……女手一つであの子を育てるには、働いて働いて、働き詰めるしかなかった……兄弟もないあの子には、寂しい思いをさせたでしょうね……」


椎名 : 「…………」


 室内には僅かに線香のにおいが残っている。

 遺影の前には、まだ僅かに煙が立ち上っていた。




透 : 「……何時からか、あの子は、寂しさを紛らわすかのように机にかじり付くようになりました。その時は私も、勉強が出来る大人しい子なのだと思ってさして気にしませんでしたが……あの子が専攻した分野が 『脳科学』 で……研究した内容が、あの子の父親のそれと同じだったと知った時、気付いたのです。 あぁ、あの子はこの分野で名を立てる事で、自分を捨てた父親に……復讐を、したかったのだろう、と……」



 椎名は、生前の西園寺馨から一度だけそれを聞いた事があった。


 プロジェクト・ユグドラシルは……。

 身重の母親を捨て、大病院の婿としての道を選んだ西園寺馨の父親が元々、研究していたものであったという事を。


 そして……父が諦めた研究を己が完成させる事こそが、彼ら母子と己の志を捨てた父に対する復讐なのだという事を……。



椎名 : 「……ですが、あれは極めて困難な研究だったと思います。それを完成させたのですから、先生は……天才でした。それは、誇ってよいと思いますが……」



 天才。

 椎名の口から漏れたその言葉に、彼女はまた儚げに笑う。




透 : 「……あの子は、天才と。よく言われる子でしたが……私からすると、馨はそれ程勉強の出来る子ではありませんでしたよ。そう……人より物わかりが悪い子だったから……最初は慣れない勉強に、随分と苦労をしたようで……」


椎名 : 「……」


透 : 「それに、とても不器用な子でしたから……感情を表に出すのが苦手だったんでしょうね。辛い時でも、悲しい時でも、寂しい時でも一度だってそれを口にする事はありませんでした……ただ、何があっても。何をされても笑っていたあの子はいつの間にか、誰に対しても笑うようになっていましたわね……」



 椎名は、西園寺馨の笑顔を思い出す。

 誰に対しても同等な笑顔を向けていた西園寺馨だが、皮肉な事に本当の笑顔を見せるようになったのは今……。

 人間ではなくなった今の西園寺だけであり、生前の彼は母の言う通り。


 笑顔なだけで笑う事のない男だった。




透 : 「家に友達をつれてくる事も……同じ年頃の男の子が遊ぶような玩具も、何もなかった……あの子は、趣味や友達に頭を使える程、器用な子でもなければ、頭の良い子じゃなかったんでしょうね……」


椎名 : 「……」



 はじめて西園寺馨と話した時、椎名は不思議な程の親近感を覚えた。

 その正体に、彼の母親の言葉で気付く……。


 そう、あの人も自分と同じタイプの人間だ。

 たった一つしか抱える事の出来ない、不器用な男だったのだろう。


 外面を取り繕うのに長けた西園寺はなかなかそれを見せる事はなかったが……。




透 : 「……あの子が、父親に復讐をしたかったのなら。そうさせたのはきっと、私です」


椎名 : 「……」


透 : 「あの子が研究している学問の事を知っていても、私はそれを止めなかった……あの子の父親がとうとう手に入れる事が出来なかった名声を、あの子が得るたび、私は何処か嬉しかったのです。私とあの子を捨てた、あの人を見返す事が出来るようで……力のない私の、密やかな復讐でした……でも……」



 彼女は静かに目を閉じる。



透 : 「私のそんなつまらない復讐の為に、あの子は。馨は、一生を使い潰してしまいました……」


椎名 : 「……西園寺、さん」


透 : 「本来であれば、あの子も普通の子供たちと同様に……同年代の子供達と遊び、誰かの事を好きになって、そして家庭を作る……そんな当たり前の幸せを、得る事だって出来たのだろうに、私はあの子をそのように導いてあげる事が出来なかった……」


椎名 : 「西園寺さん。先生は……」


透 : 「……この世界にもう、あの子は居ません。あの子の面影を残すものはもう、何もない……もう、何も……そう、あの子はこの世界に何も残す事がないまま、逝ってしまいました……たった一人で、ただ私の復讐を終える為だけにその人生を……だから……」



 元々力無い声がさらに小さくなる。



透 : 「きっとあの子は私の事を恨んでいるでしょうね。一度だって良い母親になる事が出来なかったこの私を。あの子の事を復讐の道具としてしか見る事の出来なかった私を……」


椎名 : 「……」



 何も、言う事が出来なかった。

 彼女の心を救えるたった一人の人間は、もうこの世界にはいないのだから。




透 : 「……すいません。ろくなおもてなしも出来ないまま、年老いた女の愚痴などに付き合わせてしまって。若い貴方には、さぞ退屈でしたでしょうね?」


椎名 : 「……いえ、とんでもない」


透 : 「そうだ……まだお茶もお出ししてませんね。食事時だというのに……何かお出ししましょうか?」



 時刻は彼女の言う通り、間もなく食事時だった。

 だが食事をご馳走になるのは悪いだろう……そう思った椎名の脳裏に、あの日の西園寺の言葉が蘇った。




椎名 : 「……ありがとうございます、ご相伴に預かりましょう」


透 : 「えぇ、是非そうなさって……何になさいますか。生憎、家事もろくに出来ない女すが……」


椎名 : 「さばみそを、作って頂けますか?」


透 : 「はい?」


椎名 : 「……生前の先生から、貴方の得意料理と伺っております」


 椎名の脳裏に浮かんだのは、あの日の西園寺の言葉だった。



 「いいだろ、俺の母親の得意料理だったんだ……」

 「いや、残念ながら、群を抜いてマズイ料理だった」

 「忘れない、俺はあのさばみその味を死んでも忘れないよ!」



 ……あの時、プログラムであった西園寺馨には、味覚は存在しない。

 だが、この味はよほど強烈な体験として残っていたのだろう……。


 現実の世界の味覚、嗅覚、触覚。

 その他もろもろの感覚をデータでしか知らない彼……西園寺馨にとって、この強烈なさばみその味が、唯一。

 現実(リアル)な体験だったのだ。


 そう、母の味である「さばみそ」は彼……西園寺馨にとって、架空と現実を繋ぐ唯一の体験だった。




透 : 「わかりました……私はあまり料理が得意ではありませんのでお口に合うかわかりませんけれども……」



 彼女はそう言うと、ゆっくりと立ち上がる。

 そして、一歩。一歩と億劫そうに歩く…………。


 彼女が、もう余命が幾ばくもないと医師から告げられている事。

 次に入院したらもう、この家には戻る事は出来ないのだという事を椎名も知っていた。


 料理は得意ではない、という彼女の言葉も決して謙遜などではないのだろう。

 冷蔵庫から魚を取り出す動きも、包丁を握る手つきもおぼつかない。

 病気の為に手先が思うように動かないのも、それに拍車をかけていた。




透 : 「…………お待たせしました、どうぞ」



 暫く後に現れた、彼女の出した皿の上にあったものは、到底料理というものから遠く離れた存在だった。

 バラバラに零れた身は一部炭化しているが、一部はまだ生である。

 骨は最初からとる気もないのだろう、無数の骨をまるで針山のように天へ向けて連ねている。


 何よりその色は、さばみそを頼んだはずなのにほんのりとピンクみがかっていた。




椎名 : 「い、頂きます……」



 自分が頼んだ手前、食べない訳にはいくまいと一口、口に入れて椎名は後悔をする……。

 さばみそどころか、食べ物の味がしない


 流石は、西園寺馨に死んでも忘れない味と言わしめただけはある……。



透 : 「……すいません、不器用ですのでこのようなものしか作れず……残してもいいのですよ」


椎名 : 「い、いえ。その……個性的な味わいで……」


透 : 「あの子は文句も言わずに食べてくれましたが……美味しくないでしょう、わかっています。みそ汁一つ満足に作れない女ですものね……」



 彼女はまた、儚げに笑う。

 自分の料理が美味しくないという事、それを知って息子は笑って食べていたという事……皆もうわかっていたのだろう。

 わかっているからこそ……。




椎名 : 「いいえ、頂きます」



 椎名は笑っていた。



椎名 : 「貴方が私の為に作ってくれた料理は、それだけで美味しいですよ」



 優しい笑顔だった。



透 : 「……そう、ですか」



 椎名が見せた、その笑顔を……彼女は、以前見た事があった。



西園寺馨 : 『何言ってるんだ、母さんが俺の為に作ってくれた料理はそれだけで美味しいって』



 そう。

 その笑顔はもう、二度と見る事がかなわなかった彼のものと同じ。

 その言葉はもう、この世界にいない彼の面影と同じ。

 その優しさは、この世界に何も残さないで逝ったはずの彼のものと同じ……。



 : 「……もう、お腹壊しても知りませんから。無理しないで食べなくても、いいのよ?」



 儚げだった彼女の笑顔に、僅かだが光が戻る。

 それは、母が子に向けるそれと何ら代わりがなかった。





椎名 : 「それじゃぁ、失礼します。西園寺さん」



 それから幾つか言葉を交わし、彼女は。

 西園寺透は、息子の教え子を名乗るその青年を送り出す。

 「また会いにきて」と言わなかったのは、そうする事で自分を、あの優しい青年の負担にはしたくなかったからだ。


 重い鉄扉が閉まり、一人になる。




透 : 「馨……貴方は、笑わない子だとばかり思っていたけど……」


 それは違った。

 自分の料理を食べた時、まずいとわかっているそれを食べた後の彼の顔は、本当の笑顔だったのだ。


 他の誰かに向けるそれは偽りでも、彼女に向けられる笑顔は本物だったのだ。




透 : 「……誰かを好きになる事はなく……何も残す事なく、一人で孤独に死んでしまったのだとばかり、思っていたけど……」



 遺影にははりついたような笑顔の息子がこちらを見据えている。



透 : 「……違ったのね、貴方は……素晴らしい教え子を、ちゃんと残してくれた。貴方は誰かとを残す事こそ出来なかったけど……貴方の意志を、を、こうして今に残してくれて、私の所に届けてくれた……」



 さっきまで立ちのぼっていた線香の煙は、すっかり消え失せようとしている。



透 : 「……馨。ごめんね、なかなか気付かなくて。お母さん、貴方の事ずっと、ずっと誤解してた……ずっと、気付いてあげられなかった……ごめんね、馨。お母さん、貴方の事を勝手に寂しい子にしてて……ごめんね、勝手に貴方の事を、可哀想な子にしてて……ごめんね、馨。ごめんね……でも……」



 大粒の涙が頬を流れる。



透 : 「……ありがとう、馨。ありがとう……お母さん、最後にまた貴方に会えて……よかった……



 頬を流れる涙が止まらない。

 孤独のまま閉ざされていた彼女の心。


 その氷った鍵を今、優しい涙が溶かしていた……。




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