> 界樹の迷宮をリプレイ風に日記つけてみたで!





までのあらすじ >


 新人ブシ子にフィガロ兄さんボコボコの巻。




> レモリッチの穴


 休憩後、再びセッションに戻るのである。



GM : 「それじゃ、そろそろセッション始めようか。キミたちは、枯れ森の壁に穴を見つけたけど、ひとまずそこには行かず宿に戻ってきた、と」


シェヴァ : 「ただいまー、シュンスケー、俺頑張ったよ! 偉い? 偉いよね? 頭なでなでしてくれるよねっ!」


シュンスケ : (なでなで)


シグ : 「いやいや、なでなでの前に状況報告しろよ。何がどうなって戻ってきた?」


ヒルダ : 「実はな、坊ちゃん……」



 ヒルダが、枯れ森の壁に穴があった事。

 どうやら先に通路があるらしい事、そしてその通路を巨大な獣が通ったらしい事を報告中 ……。


シュンスケ : 「巨大な獣か……」 (なでなで)


シェヴァ : 「ううう、シュンスケそこ気持ちいい! そこ気持ちいいッ!」


ヒルダ : 「……地下18階にある柱の一つに、大きな獣がつけた傷があっただろう。恐らくアレをつけた獣だと思うのだが」


シュンスケ : 「だったら、なかなかの大物かもしれんな……隠しボスか……新人であるカエデ君には少し困難かもしれんな、ここは俺やシグが出向いた方が……」 (なでなで)


シェヴァ : 「ひゃぅ! そこくすぐったい! そこ駄目、くすぐったい!」


シグ : 「そう言うけど、参謀どの。見て見ろよ、アレ」



カエデ : 「新しい道を発見致しました! 姉上が見つけてなかった道です! 私、張り切って探索してきますからね!」



シグ : 「……あんなに張り切ってるカエデに、悪いと思わないか。それ?」


ヒルダ : 「……私も、カエデ君のあの勢いは失わせるのは惜しいと、思うが」


シュンスケ : 「……ふむ。確かにそうかもしれん。よし、オマエたちがそう言うなら……シェヴァ!」


シェヴァ : 「ほぇ、何?」


シュンスケ : 「隠れ通路の探索を、俺と代わりオマエは留守番していろ」


シェヴァ : 「えぇー。何で留守番だよー!」


シュンスケ : 「属性攻撃があった方が効率がいいだろう。それに、俺ならもしも。という時でもすぐ迷宮から帰還できるからな」


シェヴァ : 「でも俺だって、迷宮行くの面白いから好きなのに! 留守番なんてつまんないしっ、シュンスケがいないなんて待ってるの嫌だよ!」


シュンスケ : 「……ちゃんと留守番出来たら、今の三倍撫でてやろう」



シェヴァ : 「えっ、マジで! わかった、じゃ、俺留守番するー。頑張ってなー、シュンスケ!」



シュンスケ : 「あぁ……」


カエデ : 「……」


フィガロ : 「どうしたんさね、カエデちゃん?」



カエデ : 「いえ……ただ……あの、シュンスケ様とシェヴァ様は……付き合っていらっしゃるので……



フィガロ : 「!! あぁっと!!」 (いきなり口を押さえる)



カエデ : 「むぐ、むぐー! むぐー!」



フィガロ : 「……それは、禁句って奴さね。カエデちゃん」


GM : 「そうだ、世の中には暗黙の了解って言葉があるからな。気付いても、言ってはいけない言葉って、あるんだぜ」(笑)


リン : 「それよりっ、フィガロさん危ないです!」


フィガロ : 「え?」



カエデ : 「は、は、破廉恥ですっ……お覚悟ッ!」 (上段の構え→ツバメ返し!)



フィガロ : 「はぶぁっ!」



シュンスケ : 「喋るのは出来ても、触られるのには慣れないんだな……」


カエデ : 「す、す、すいません。未熟者です……」




> けものれ、俺らの



 ともあれ、迷宮隠れ通路の旅は。

 前衛 : アイラ・ヒルダ

 後衛 : フィガロ・シュンスケ・カエデ

 で、進む事となるのだった……。




GM : 「という訳で、やってきました第4階層〜、ぺぺん、ぺん、ぺん」 (※三味線のつもりらしい)


カエデ  : 「あれです、得体の知れない穴……」


シュンスケ : 「確かに……シェヴァの書いた地図にもない、新しい道だな……」


ヒルダ : 「どうする、参謀殿?」


シュンスケ : 「……考えても仕方ないだろう、進むしかあるまい。それに」



アイラ : 「わーい、それでは新しい道一番乗りは私だー、それー」


カエデ : 「あっ、あっ……ずるいです、アイラ様……お待ち下さい!」




シュンスケ : 「すでに二人は、行く気満々のようだしな」


ヒルダ : 「そうだな。(笑) ……待て、二人とも! あんまり離れると危険だぞ」


シュンスケ : 「……まぁ、ここは第4階層……ヒルダやアイラ君の実力なら、特に問題はあるまい」


フィガロ : 「……そうかねぇ?」


シュンスケ : 「ん……?」


フィガロ : 「いや、さねぇ……なーんか、嫌な予感がするんだよ。なーんか、ね……」



GM : 「はいはい、そうこうしているうちに、壁の向こうへ〜。えー、壁の先はずずずーっと、通路になっておりまーしてーその先には階段。はい、階段っ」


アイラ : 「階段? どうする、降りちゃう? 降りちゃう?」


カエデ : 「もののふは退いてはなりません、ただ突き進むのみです!」


GM : 「……はいはい、突き進むのね。それだと地下17階! ここは……入ってすぐ隣が通路になっていて、前方はずずずいーっと廊下になっている、と。そしてその先には、立ちふさがるようにF.O.Eが見えるね」


シュンスケ : 「ふむ……回廊か? この通路が、一回り繋がっているかもしれんな」


フィガロ : 「あるいは、この通路の奥に敵が待っているとかね……どうするさね、参謀様?」


シュンスケ : 「F.O.Eが見えるという事は、その方向に何かあるのだろう……ひとまず、F.O.Eが居る方に進んでみるか……」


GM : 「OK! そうやってデロデロ進んでいくと、キミたちを目敏く見つけた野生の世界樹モンスターが草むらから飛び出してきたぞ! さぁ戦闘だ!」


アイラ : 「何でポケモン風なんですか、GMさん?」(笑)


カエデ : 「来ましたね! でも、第4階層の敵、その実力は有る程度解ってます。そう簡単には……!」



GM (ニヤニヤ) : 「敵は……バーストウーズ二匹と、ダイアーウルフ!」



シュンスケ : 「何……だと!?」


アイラ : 「えっ? えっ、シュンスケさん! あれ、初めて見る敵だよ! どうする、殴る? 殴ってみる?」


ヒルダ : 「どうする、参謀? 必要ならシールドスマイトするが……」


シュンスケ : 「む……」


フィガロ : 「あら、シュンスケくん? 普段は戦闘面はシグが仕切ってたから、こういう状況の指示は案外苦手かい?」


シュンスケ : 「うるさっ……いや、そうだな。確かに俺は迷宮内での行動で助言は心得ているが、戦闘の判断はそう得意ではないな……」


フィガロ : 「……何か嫌な予感がするからさ。ヒルダ嬢には防御陣形組んでもらおう。アイラちゃんには攻撃で、カエデちゃんは防御。オマエは大氷嵐の術式を組んでくれ」


シュンスケ : 「……オマエがそう言うなら、それでいこう。ヒルダ、アイラ君、それで頼む!」



アイラ&ヒルダ : 「了解!」



カエデ : 「ううう、折角刀が振るえると思いましたのにっ!」


フィガロ : 「普段俺に目一杯奮ってるじゃないさね……ささ、それより戦闘さね。順番は……」



GM : 「……防御陣形か。よし、それならいかせてもらうぞ、このバーストウーズ容赦せん! アイラに、奮うって攻撃だ! ぷるんぷるんどかーん!」


アイラ : 「えい、きなさ……」


 ドカッ。


アイラ : 「あれ?」


 鈍い音とともに、アイラの身体が崩れ落ちる。

 バーストウーズの連撃は、いとも容易くレベル50のソードマンの体力を削っていった。




アイラ : 「うぇっ! 嘘だぁ……ううう、アイラさんもう戦えないよッ!」


ヒルダ : 「アイラ君……防御陣形、遅かったか!」


GM : 「人の事に気を取られている場合じゃないぞ、ヒルダ! ダイアーウルフの爪がキミの身体を引き裂く。ばりばりばり!」


ヒルダ : 「!! っ……この攻撃、強いな……」


カエデ : 「ヒルダ様! カエデ様!」


フィガロ : 「ほーれ、見た事かっ……シュンスケ君、術式!」


シュンスケ : 「心配するな、すでに完了している……大氷嵐の術式だ!」


GM : 「それには流石に弱いな。さく、さくと倒されてしまった。こんぐらっちれーしょーん」


アイラ : 「……全然おめでたくないよー! いたたたっ、打ち込まれちゃった。うう、私、死んだの初めてだよ……」 ※ネクタル(蘇生アイテム)を使ってもらった


ヒルダ : 「大丈夫か、アイラ君?」


シュンスケ : 「……見た事のない敵だったな、ここより下層の強敵が出ている、という事か」


フィガロ : 「そうみたいだねぇ。どうするさね? 正直、俺たちだけじゃキツいよ。リンちゃんに声かけて、回復がある方が……」



カエデ : 「あ、姉上の力は借りたくありません!」



アイラ : 「……カエデちゃん、あぁいってるけど?」


フィガロ : 「はぁ……仕方ないさね。カエデちゃん本人の武者修行って側面もあるんだ。彼女の意向にはギリギリまで添う方向でいくかい」


シュンスケ : 「そうだな……アイテムが続くかぎり、彼女の望むようにしよう」



 かくして、意地でもリン(メディック)の力を借りたくはないカエデ。

 その希望に添う形で、隠し通路の探索を続けるものの……。




GM : 「はい、ダイアーウルフさんとかぎづめモグラさんねー攻撃はこっちから、アイラをバリバリバリ!


アイラ : 「やめて! ううう……ばたんきゅー」


ヒルダ : 「アイラ君!」


GM : 「続いてヒルダも、バリバリバリ!」


ヒルダ : 「やめて! ひゃううう、あぁっ!」


フィガロ : 「シュンスケ君、術式! 術式はまださね! このままじゃ……」


シュンスケ : 「待ってろ……」


カエデ : 「ああああ、アイラ様もヒルダ様もっ、私、どうしたら……」 (オロオロオロ)



GM : 「せっかくだから俺はこのギルドに居る花の部分をつみ取るぜー、カエデちゃん覚悟! バリバリバリ!」



カエデ : 「あーれぇーーー!」 (バタリ)


フィガロ : 「カエデちゃんまでっ! ちょ、シュンスケ君、早く術式! 早く!」


シュンスケ : 「術式は早く組めるモノではないっ……よし、終わった。大雷嵐の術式だ!」 (バリバリバリバリ!)


GM : 「やめて! あーあー……バリバリやられた。とりあえず敵は片づいたぞ」


シュンスケ : 「敵は片づいたが……」


フィガロ : 「味方も皆、片づいちゃったさね……」



 敵はとにかく攻撃力が高く強く、苦戦を繰り返し。

 また、F.O.Eも実力者揃い。

 何とか倒す事は出来るものの、毎回一人は死者を出す程度の苦戦を続けていた。

 だが、それでも……。




カエデ : 「倒しましたわ……魂の断罪者、討ち取りました!」



 少しずつ。

 新人ブシドーのカエデも強くなっていき……そして。




フィガロ : 「……これで、F.O.Eは何匹目さね?」


シュンスケ : 「三匹か……そろそろ道の奥が見えてもおかしくないのだが……」


アイラ : 「きっと次の部屋で最後だよ! ささ、いきましょう!」


 とうとう、この隠し通路の奥にまで到達した。

 だが……。




GM : 「そうして、アイラちゃんが嬉々として入ったその部屋は……普段と違うモンスターの雰囲気がする。強い悪意……そして、殺気! ここにはキミたちが会った事のない、強敵がいるようだ!」



シュンスケ : 「……あれは、特殊ボスか!?」


GM : 「イェース! 敵はなわばりに入った相手は容赦なく食らいつくが、今テリトリーを犯してないキミらには興味がない、さてどうする……?」



カエデ : 「た、た、戦わねばスズカケ一刀流師範代として……」(ぶるぶる)


シュンスケ : 「……いや、流石に無理だ。一度退いて、戦力を整えよう……戻るぞ!」


カエデ : 「ううう……く、口惜しいです……ほっ」


フィガロ : 「安堵の吐息をもらしていたのは、武士の情けで聞かなかった事にしておくよ、カエデちゃん」(笑)



> 黒くてきなけだものへ



GM : 「と、言う訳で戻ってきた訳で帰ってきた訳ですが」


シェヴァ : 「おかえりー、シュンスケー。三倍なでなでー」


シュンスケ : (なでなで)


シグ : 「だから、なでなでの前に報告を済ませろって」 (笑)


シュンスケ : 「あぁ、そうだな。実は……」 (かくかくしかじか……なでなで)


シェヴァ : 「三倍早い! シュンスケ三倍早いなでなでだ!」


シグ : 「……迷宮の奥に、ボスらしい影が?」


シュンスケ : 「あぁ……恐らく、かなりの猛獣だ……正直、俺たちだけでは手に余る程のな」


シグ : 「……それで戻ってきた訳か?」


フィガロ : 「そういう事……ま、大物ボスを俺たちが勝手に倒したら、リーダーだって気分悪いだろう? そろそろリーダーの出番かなぁってのもあってね。 まぁ、本音言うと俺もそろそろ肉体労働が堪えてきた訳だけどねぇ


シグ : 「……そんなに強い敵がいるのか?」


アイラ : 「うん……復帰したばっかりのアイラさんじゃ、正直堪えるよー」 (※ボロボロの傷を見せながら)


リン : 「あっ……大変です、すぐに治療を……」


カエデ : 「あ、姉上は出しゃばらないでください!」


リン : 「カエデちゃん……」


カエデ : 「姉上の力は借りません! スズカケ一刀流の道を捨てた姉上の力など……私は、スズカケ一刀流の師範代として……」



リン : 「……いい加減にしなさい、カエデちゃん!」



カエデ : (ビクッ)



リン : 「アイラさんやヒルダさんの身体をよく見なさい、カエデちゃん? ……傷だらけでしょう。 皆、未熟な貴方を守るために出来た傷なんじゃ、無いの?」


カエデ : 「そ、それは……その」


アイラ : 「……私は突っ込んでいった結果なんだけどね」 (ボソ)


リン : 「スズカケ一刀流の剣術は、道場で一対一で行うものだから、人に頼らないカエデちゃんの戦い方でも、いいの。でも、迷宮の冒険は違うでしょう?みんなで協力して、傷ついたら助け合わなきゃいけない。皆で力を合わせて先に進まなきゃいけない……そうでしょう?」


カエデ : 「…………」


リン : 「それを貴方は、私の力を借りたくないなんてワガママをいって皆を困らせて……その結果、誰も守れず怪我ばかりさせてしまっている……それが、本当にスズカケ一刀流を背負う師範代の戦い方ですか?」


カエデ : 「……そ、それは」



シグ : 「というか、スズカケ一刀流ってカエデがさっき作ったばっかりの仮の設定だよな」


GM : 「だね、役に入り込んですっかり、カエデちゃんにお説教モードだよ……リンちゃんも、案外感情移入するタイプだね」


フィガロ : 「普段、よっぽど妹さんに言いたい事をため込んでいるんじゃないさね?」(笑)



リン : 「……貴方がアイラさんやヒルダさん……皆を傷つき犠牲にして、ワガママを貫き通す戦い方こそ、スズカケ一刀流の戦い方だというのなら、私はそれを止めません。でも……違うわよね、カエデちゃん? もし、間違っていると思ったら……今度は、私をつれていって。私なら、みんなの傷を癒す事が出来るから……ね?」


カエデ : 「…………姉上」


リン : 「どうなの、カエデちゃん?」


カエデ : 「ごめんなさい、カエデが間違っておりました……」


リン : 「それじゃぁ……今度の戦いには、お姉ちゃんも連れて行ってくれるわね?」


カエデ : 「はい……」 (しょんぼり)


リン : 「…………それじゃ、お姉ちゃん皆さんの傷を癒してくるわね……ヒルダさん、アイラさん……お待たせしました、エリアキュアしますね」


アイラ : 「あ、ありがとうリンちゃん! 助かるよー」


カエデ : (しょんぼり……)


リン : 「それと……カエデちゃんも」


カエデ : 「えっ! わわわ、私はいいです。姉上。み、皆様には守って頂いてばかりだったし……その、ご迷惑ばかりかけた私が、姉上の力を借りるなど……」


リン : 「もう、意地はらないの。ね? ……迷宮は皆で力を合わせないと駄目なんだから。 それに……可愛い妹の怪我を放っておく訳には、いかないもんね?」


カエデ : 「あ、姉上……ご、ご、ごめんなさい……私、私……本当は、姉上と一緒に……戦いたかったん、です……



GM : 「どうやら、姉妹ケンカは終息しそうだねぇ〜」 (ぼそぼそ)


アイラ : 「というか、リンちゃんあんなに大きな声で怒る事あるんだ……初めてみたー」 (ぼそぼそ)


シグ : 「ともかく、これで真打ち登場! ってトコか……そのボス退治、俺も参加してもいいよな?」


カエデ : 「……はい。シグ様のお力、是非拝見したい所存でございます」


シグ : 「了解。それじゃ、ちゃっちゃとその獣を倒してくるぜッ!」




> 手の使い手


 かくしてボス戦挑戦メンバーは。

 前衛 : シグ ・ ヒルダ ・ カエデ
 後衛 : リン ・ シュンスケ

 の、さばみそギルド必勝の陣形となる……。




アイラ : 「シグー、お土産はまるごとバナナでいいよー」


シグ : 「コンビニに行くんじゃねーぞ、ボス退治に行くんだボス退治に。というか、好きだなオマエ。まるごとバナナ」


アイラ : 「CMのオファーが来たら速攻で受けるくらいすきだもん、美味しいよねまるごとバナナ!」


シグ : 「オマエにオファーが来る事は絶対にないと思うが……」


シェヴァ : 「シュンスケー、俺はお土産いらないから、無事に帰ってきてね?」


シュンスケ : 「ん、努力する」



GM : 「まぁ、そんな別れをちゃっちゃと済ませて、キミたちは再び迷宮へやってきやがりました、はいどんどん進めこら。休まないで歩け」


シグ : 「休み休み歩くつもりはねぇが、休まないであるくと出るんだろ……」


GM : 「出るねぇ。はい、敵さんだー。アイラちゃん大好きなカニ! まぁ、今はアイラちゃん居ないけど」


カエデ : 「……シグ様、お手並み拝見致します!」


シグ : 「お手並みっていったってな、俺も皆とやる事相違ねぇぜ? 姉弟子、フロントガード! シュンスケは大雷嵐をぶち込んでやれ。リンはTPを温存してくれ!」



ヒルダ : 「了解した!」


カエデ : 「あら……意外と作戦は普通ですね……でも」



ヒルダ : 「フロントガード完了した! 敵の攻撃は……坊ちゃん!」


シグ : 「任せろ! っ……痛ぇな、流石アイラを屠っただけある。が……持ちこたえればいけるな、シュンスケ!」


シュンスケ : 「術式は完了している……大雷嵐の術式だ!」



カエデ : 「……けど、何でしょう。シグ様がいると……場の空気が、少し違う気がします……何だか……」


シグ : 「終わったな、よし。次行くぜー」


リン : 「次って……怪我を治してからですよ、シグ。もう……」


カエデ : 「姉上が、あの方を頼る理由、少し解った気がします……」




GM : 「そうして再び訪れた地下17階、だけどもうキミたちを押さえるF.O.Eはいないね。サクサク進んでいく君たちは、再びあのボスの所に到達した……ちなみに、壁を背にしているから背後からの奇襲は出来ないぞ」(笑)


シグ : 「イワオにそれをやられたの、まだ根に持っているのか。マスター」(笑)


GM : 「そういう訳ではないが、全てのボスはもっと背後からの接近に気をつかったほうがいいとは思っているぜ」(笑)


ヒルダ : 「さて、敵が眼前に迫っているが、どうする。坊ちゃん……」


シグ : 「……考えてたって始まらないだろ! 突撃だ、とっとと化け物の首落としちまおうぜ!」



GM : 「……だったら戦闘だ! 敵の名前は……マンティコア!


ヒルダ : 「マン……何だ?」


リン : 「ファンタジーRPGでは良くきく名前ですけどね?」


シグ : 「安心しろ、そういう事はみんなのテリーマンが説明してくれるから。(笑) という訳で、テリーマン頼む!」


シュンスケ : 「俺は両腕に星のマークもつけてないし、テキサスブロンコと名乗った事も、額に米と書いた事もないが……マンティコアとは、人の顔と獅子の身体、蝙蝠の翼にさそりの尾を持つ俊敏な魔物というのが一般的なイメージだな。知能は人間並かそれ以上である場合が多く、人語を理解する個体も多いとされる。尾はさそりのモノであり、大概は猛毒。また、背中に有した翼で空を飛び、驚く程の俊足で獲物を捕らえるといわれる。大概が邪心を持ち、時には邪悪な知識の守護者ともされるな」


カエデ : 「凄いです、シュンスケ様! よくご存じですわね」 (パチパチパチ)


シュンスケ : 「シェヴァ(のプレイヤー)が、解らない事があるとすぐに俺に聞く癖があるからな。知らない間に余計な知識ばかりがついた結果だ」


シグ : 「肝心なシェヴァのプレイヤーは、聞いたそばから忘れる癖にな」(笑)


GM : 「世の中そんなもんだ……という訳で戦闘だ! 敵はその、人の顔をしていたり獅子だったりさそりだったり蝙蝠だったりする生き物ね」(笑)



カエデ : 「私は、上段の構えでよろしいですか?」


シグ : 「あぁ、問題ない。ブシドーのカエデはそれをしないと、戦えないからな……俺はどうするか、相棒?」


シュンスケ : 「順番に撃ってみるか……大爆炎の述式だ。チェイスファイアを頼む」


シグ : 「OK、姉弟子とリンは防御を固めてくれ!」


ヒルダ&リン : 「了解だ!」 「了解です!」



GM : 「それじゃ戦闘は……医術防御発動に防御陣形発動、カエデちゃんは上段の構えで……攻撃はシグ&シュンスケか」


シュンスケ : 「そうだな……大爆炎の術式! ……どうだ?」


GM : 「ダメージは、うん……大爆炎が127、チェイスが178って所かな」


シュンスケ : 「む……」


シグ : 「思ったより、奮わねぇな……普段のシュンスケなら、500前後は固いのに」


シュンスケ : 「耐性があるのかもしれんな……ワイバーンのように、全属性耐性じゃなければいいが……」


GM : (ニヤニヤ) 「さぁ、どうだろうねぇ……一方その頃マンティコアの攻撃はポイズンテイル! さそりの尻尾で全員に毒攻撃だ、ポイズン」


カエデ : 「あっ……!」


シグ : 「カエデ、大丈夫か!」


カエデ : 「は、はい……ダメージは、ヒルダ様や姉上のスキルで防いでおります。ですけど……毒が……」


GM : (マンティコアの毒攻撃はかなり高確率で決まるからな) 「ちなみに、毒のダメージは163ね」



一同 : 「163!?」



ヒルダ : 「そんな、私でも半分はもっていかれるじゃないか……大丈夫か、カエデ君?」


カエデ : 「はい、何とか……ですが、あら、どうしましょう……」 (オロオロ)


リン : 「えっと、ボクが回復を……でもそれだと、毒で次のターンにはカエデちゃんが持たないから、えーと。えーと」 (オロオロ)


GM : (姉妹でテンパってるぞ・笑)



シグ : 「落ち着けって! ……このターンは、シュンスケ、アイテムを使ってくれ! テリアカβ(状態異常回復)だ! リンはエリアキュアで全体回復を頼む。 そして、前衛は一気に畳みかけるぞ、総攻撃だ……カエデ、出来るか?」


カエデ : 「えっ!? は、は、はい!」


シグ : 「よっしゃ! それだったら、アイツの横っ面を、はり倒してこい! やられっぱなしじゃ、気が済まねぇだろ?」


カエデ : 「は……はい! それでは……ツバメ返し、参ります!」


ヒルダ : 「総攻撃だな、それならば遠慮なくシールドスマイトをさせてもらおう……だが、坊ちゃんはどうする? シュンスケの術式がなければチェイスは使えまい?」


シグ : 「俺にゃ、まだハヤブサ駆けが残ってるからな!」



GM : 「前衛総攻撃とは思い切った……だが、このマンティコアだってやすやすとやらせはせん! やらせはせんぞぉおおぉ! ダークネスコイルだ! この効果は全体に状態異常……リンと、カエデを呪い状態だ!」


カエデ : 「しまっ……!」


シュンスケ : 「だがこちらも、易々とやらせはせん。 ……テリアカβ、状態回復だ」


GM : 「む……今回ばかりは速攻が裏目だな。回復されたか、残念」


リン : 「そしてエリアキュアです! これでまだ、戦えますね。皆さん」



カエデ : 「それでは、攻撃。行きます! ツバメ返しは……三連続攻撃ですっ!」


GM : 「三連続は痛いよな……ダメージは、168、356、167」


シグ : 「ん……随分攻撃に波があるな……ハヤブサ駆けは?」


GM : 「418。ちなみに、ヒルダのシールドスマイトは598ね」


シュンスケ : 「……ひょっとしたら、オートガード的な機能をもっているのかもしれんな。50%〜70%程度の確率で、こちらの攻撃を半分まで押さえるような能力が」


シグ : 「マジでか! くぅ……状態異常を陰湿につかってくるし。シュンスケの属性攻撃も思ったより振るわなそうだし、皆。長期戦になる。気合いいれていけよ!」



一同 : 「おー!」



 シグの予想通り。

 マンティコアには属性耐性があるらしく。




シュンスケ : 「大氷嵐……どうだ!」


GM : 「ん、ダメージは170。シグのチェイスが212ね」


シュンスケ : 「大雷嵐もその程度のダメージだったか……すまん、シグ。どうやらこの敵はアルケミストでは役にたてないようだ……」


シグ : 「仕方ねぇな、俺はハヤブサ駆け中心で組むとするさ」


シュンスケ : 「俺は……どうする。術式はさして援助にならん気がするが」


シグ : 「だが、属性が効かないって訳じゃ、無ぇだろ? たかだか100でも200でも、10ターン与えれば1000、2000のダメージだ。オマエに余裕があったら、続けてくれ!」


シュンスケ : 「心得た」



 アルケミストの術式は単発で、シグはハヤブサ駆け中心で動く事を余儀なくされる。

 それでも、着実にダメージは与えていた。

 だが、6ターン目。

 ついに、パーティで一番新米のカエデから崩れていく……。




GM : 「このターンもポイズンテイル。 ポイズ〜ン、と……ダメージは相変わらず地味なもんだけど、毒は相変わらず過激だぜ。どかーんと削って163」


カエデ : 「ふ、不覚です……」


リン : 「カエデちゃん!? まってね、今……」


カエデ : 「良いです、姉上……私、未熟者ですから。このまま、倒れております……今、姉上に復活のスキルを頂いても、また倒れてしまうのが関の山ですから……」


リン : 「でも……」


シグ : 「……シュンスケ、アムリタ(蘇生薬)だ! リンはエリアキュアをしてくれ!」


シュンスケ : 「あぁ……了解した?」


カエデ : 「シグ様! 私などおかまいなくっ……」


シグ : 「何いってんだ、やられっぱなしは、悔しいだろ?」


カエデ : 「……そう、ですけど」


シグ : 「それに! 最後は皆で、立っていてぇもんな?」


カエデ : 「そう……ですね……」



 一度は崩れた陣形だったが、シュンスケのアイテム援助の後すぐに回復も入り。

 また、状態異常を繰り返しこちらを翻弄したマンティコアだが次第に体力のかげりも見え始める。


 そして……運命の12ターン目。




GM : 「うーむ……もう、ぴよぴよぴーだ。だが獣は弱っている部分などみせん。キリリと立ち上がるのだ! キリリ」


カエデ : 「あと、少しですか……」


GM : 「傷つきうなり声をあげるマンティコアの闘志は衰えていない! こいつは抵抗を、まさに死ぬまでやめないだろう……」


カエデ : 「……姉上は戦えません。ヒルダ様にもご迷惑をおかけしてます、一矢報いたい……未熟であれど、一太刀でも多く奴の身体に傷を……」


シグ : (無言で、カエデの身体を支える)


カエデ : 「!! ……シグ様?」


シグ : 「俺が支えている……カエデ。ツバメ返し……いけるな?!」


カエデ : 「はっ…………は、はい!」 



GM : 「だがそうはいくか! 先にマンティコアのポイズンテイル! 攻撃はともかく、このターンの毒攻撃はこたえるだろう!」



シグ : 「その前に俺が!」


カエデ : 「わたくしが!」



シグ・カエデ : 「オマエを断つ!」



シグ : 「行けるな、カエデ……?」


カエデ : 「はい! ツバメ返し……参ります!」



GM : 「うがー……攻撃は、163・320・168……だが、まだ倒れない!



シグ : 「追撃行くぜ、ハヤブサ駆けだ!」



カエデ : 「……シグ様!」


GM : 「……流石にシグの追撃は堪える。が……まだだ、まだ終わらない! 生憎とこの俺は、強ぇーのよー!


カエデ : 「そんな……」


シュンスケ : 「いや、上出来だ。カエデ君、シグ……術式は、すでに完了している……大氷嵐の術式、発動だ!」


GM : 「発動。だが、こちらは属性攻撃は聞き難い……」


シュンスケ : 「……シグ、オマエの言う通りだな。たかだか200程度のダメージも、つもれば2000……残り僅かなオマエの体力では、つぶてに等しいこの嵐も存外に堪えるだろう?」


GM : 「……う。確かにそうだ……その攻撃で……マンティコアは、沈む



一同 : 「おおおおおおー!!」



GM : 「己に効かぬはずの飛礫に身体を射抜かれ、マンティコアは暫し理解しがたいといった表情を浮かべる。だが、己が命に終焉が迫っている事を気付くと、罵りのようなわめき声をあげ、やがてその場に静かに倒れ伏した……マンティコアを退治した!」



一同 : 「……やったー!」 (ぱちぱちぱちぱち)



カエデ : 「あ! ありがとうございます、シグ様! 私……未熟者ですが、魔物の成敗を達成出来ました! シグ様のおかげです。ありがとうございます!」


シグ : 「なーにいってんだよ、カエデが頑張ったからだろ! ……それより、大丈夫だったか?」


カエデ : 「あ、はい! 怪我はもう、大丈夫です。姉上がエリアキュアをしてくれたので……」


シグ : 「そうじゃなくて……マンティなんたらと戦っていた途中、俺けっこうカエデの身体に触ってたりしたろ? フィガロのアニキみたいに、バッサリとやられるかと思ったんだが……」


カエデ : 「えっ! あ、あの。あれは……し、シグ様に触られるのは、その……私、嫌じゃ、ありませんでしたから……


シグ : 「?」



> まつりあと



GM : 「という訳で無事に目的の……ってか、何時の間にかマンティコア退治が目的になっていた訳だけど。(笑) どうよ、カエデちゃん。それで、スズカケ一刀流の跡取り問題は、どうなった訳?」(笑)



カエデ : 「そうですね……どうやらシグ様はお強いようですし、このまま姉上がシグ様と結婚してくだされば、我が道場も安泰とわかったので良しとします!」



シグ : 「そうか、どうやら俺は冒険者辞めても行く所がありそうだな!」(笑)


リン : 「ななな、何言ってるんですか、シグ! ももも、もう!」 (照)



アイラ : 「そうよそうよー、シグは冒険者辞めたら私と傭兵だよー! ねー!」


ヒルダ : 「それは困る! 坊ちゃんにはモーゼス家の跡取りが……」



シェヴァ : 「それじゃ、ひとまずリンちゃんはつれていかないで大丈夫って事?」


カエデ : 「そうですね! どうやらシグ様はおモテになる方のようですし、ここで姉上にしっかり拿捕して頂かないと!」


リン : 「ちょっと……カエデちゃん、もう。カエデちゃん!」 (照)


シグ : 「ま、まずは一安心だな!」


シュンスケ : 「そうだな……」


カエデ : 「……本当は、私が連れて帰りたい方ですけど……姉上が先に好きになったんですもの、仕方ないですよね」(ぼそ)



フィガロ : 「肝心の、シグの女性問題は何ら解決してない気がするけどねぇ」


シグ : 「ん、何かいったか、アニキ?」


フィガロ : 「なーんでもない。なーんでもないさね」



リン : 「……カエデちゃん?」


カエデ : 「姉上……皆さんも、今まで、未熟者の私にお付き合い頂き、ありがとうございました」


アイラ : 「ぜーんぜん、いいよ。かなり楽しかったし、ねー」


ヒルダ : 「そうだな……」


フィガロ : 「俺は殴られた記憶しかないけどねぇ」(笑)


リン : 「カエデちゃん……」


カエデ : 「姉上……お姉ちゃん……頑張って、ね!」


リン : 「……うん!」



 かくして無事に終わったカエデのギルド訪問。

 次回、いよいよさばみそギルドの面子が第5階層へ赴く事に。

 果たして、第5階層に何があるのか。

 そして……さばみそギルドの運命は。


 楽しみにされたり、されなかったりしながら……次回へ続くのである。






> 幕劇 〜 プロジェクト・ユグドラシル





 幕間劇をはじめよう。

 代わり行く世界。

 いや、すでにかわっていた世界。


 変わっていた世界でそれでも、かわらないでいようとしたある男の物語を。

 キミはこの物語に、触れても触れなくても良い。


 ・

 ・

 ・


 セッション終了後、都内某所。(いつもの場所)




芹沢 早苗(カエデ) : 「それじゃ、お姉ちゃん……私、今日は用事があるから、そろそろ行くね!」


芹沢 梨花(リン) : 「うん……大丈夫? 一人で帰れる?」


早苗 : 「も、もー! もう、子供じゃないんだからそんな心配しないでよねッ!」



桐生 和彦(シグ) : 「ここにもう一人、子供じゃない相手に似たようなタイプの心配する奴がいるけどな」(笑)


椎名 淳平 (シュンスケ) : 「……ん、誰の話だ?」


神崎 高志 (フィガロ) : 「本人に自覚が全くないのが驚きさね」(笑)



早苗 : 「それじゃ……失礼します……あ、和彦さん!」


桐生 : 「ン?」


早苗 : (じー……)


桐生 : 「な、何だよ……」(汗)



早苗 : 「……お姉ちゃんをよろしくおねがいします!」(ぺこり)



梨花 : 「も、もう! 何いってるの、さなちゃん!」


早苗 : 「えへへー。それじゃ、お姉ちゃん先に帰ってるね!」


 芹沢 早苗が退室する……。




七瀬 澪(シェヴァ) : 「それじゃ、俺らもそろそろ帰ろうか!」


椎名 : 「そうだな……西園寺先生。そろそろ、システムをダウンしてもいいでしょうか?」


西園寺 馨(GM) : 「……いや、今日はちょっと待ってくれないか? 話したい事が……あるから、な」


滝 睦(ヒルダ) : 「……」



西園寺 : 「さて、と。時に若葉君。キミが俺の所に一人で夜這いをかけに来た時……」



桐生 若葉(アイラ) : 「夜這いなんてかけてません!」



西園寺 : 「そんなに全力で否定するなよ、このツンデレがぁ! ……ともかく、俺の部屋にキミが一人で訪ねて来た時。俺は、奥の扉を開けようとしたキミに何ていったか……覚えているか?」



若葉 : 「え、ちょっとまってください。確か……触るな! って言われて……それから……見せたくない、研究資料とか……あと、脳髄のホルマリン漬けがあるから、グロいの見るのが好きじゃなきゃやめとけ、って……」


西園寺 : 「そう! 大した記憶力だねー、尊敬……それじゃ、俺が……誰の脳髄をホルマリン漬けにしているかは……話したっけな?」



椎名 : 「!? なっ、何をいってるんですか、西園寺先生!?」


若葉 : 「え? 話してない、ですけど……?」


西園寺 : 「だったらご覧頂こう。この鉄扉の奥にある脳髄の……正確には、脳髄の一部だが……を、ホルマリン漬けにしたモノを。そしてそれが誰の脳髄であるかを……今、君たちに教えよう」


椎名 : 「……西園寺先生!」


西園寺 : 「……はい、おーぷんざ、どあ〜♪」



 西園寺馨のかけ声と同時に、重い鉄扉が自動で開く。

 その中には……西園寺の言う通り、脳髄の一部らしいモノが、ホルマリン漬けにされていた。




神崎 : 「こいつは……」


椎名 : 「……あ……あっ……」



西園寺 : 「そいつぁ、4年前……俺が、被験者Xから摘出した脳髄の一部……だよ」



神崎 : 「!?」


七瀬 : 「のーみそ摘出って、その人大丈夫だったの? これ、何か結構いっぱい摘出されているみたいだけど」


西園寺 : 「あはははは! 大丈夫なわけないだろ! 一時……死んだよ。彼はうん……生命として一度は死んだ。そして、使い物にならなくなった脳髄の一部が……コレだ」


神崎 : 「……死んだ? 何、いってるさ、ね……それじゃぁ……彼は……」



西園寺 : 「……西園寺馨は、彼の使い物にならなくなった脳髄をごっそり電子部品と交換したんだ。予め周到に、彼の壊す部分を決定して……ね。そして、彼の脳を一部電子化する事で、彼を再び蘇らせた……コレが彼の壊れた脳髄だ」


滝 : 「……ば、かな。そんな事が……出来る訳がない! いくら西園寺馨が天才であっても、脳の代替え品など……」


西園寺 : 「やったんだ。出来たんだよ……その証明として……被験者Xは、まだ生きているからね。そして、被験者X。彼が、彼こそが……西園寺馨が生前、生み出した最大の罪にして……最高傑作……ユグドラシル・システムだ」


滝 : 「バカな……そんな、事が……」


桐生 : 「な、なぁ……さっきから、さっぱりハナシが見えないんだけどよー。何だよ、生前とかいって、西園寺さん、まだ生きてるだろ?」


若葉 : 「そ、そうだよー、西園寺さん、そこに居るじゃな……」



 そういいながら西園寺の方を見て、皆その姿に驚き言葉も失う。

 西園寺馨は僅かに宙に浮き、そして……その身体は、僅かに透けていたからだ。




七瀬 : 「うぁぁぁぁ! お化け、西園寺さん、お化け!」


西園寺 : 「あはは、お化けじゃないよ。これ、3D映像。俺さー、今まで黙ってたんだけどー、実は人間じゃないんだわ! きゃは、メンゴメンゴ!」



桐生 : 「キャは! とか言いながら受け入れるにしてはあまりに衝撃的な告白だぞそれッ! え、幽霊? じゃな、人間……?」


西園寺 : 「電脳人間。とでも言うといいかな? うん、俺は……1年前に死んだ、西園寺馨の複写……言うなれば、死者のコピー……亡霊みたいなもんよ」


桐生 : 「亡霊……」


七瀬 : 「ややや、やっぱ幽霊じゃないかよー!」


若葉 : 「でも、幽霊にしては随分顔色いいし。何より、私、以前西園寺さんに触った事あったよ……?」


西園寺 : 「ん、ニーズホッグ・システム内でだろう、それは。 ニーズホッグ・システムが起動中は、俺もまともな人間として認識されるからね……信じられないなら、オリジナルの俺の死亡記事でも探してみるといい。どうせもってるんだろう。な、神崎くん?」


神崎 : 「…………あぁ」



西園寺 : 「それに、この件はすでに神崎くんと滝くんは知っているからね。それより大事な事は……被験者Xの事、そして……プロジェクト・ユグドラシル。生前の西園寺馨が何をしたかったのか、だろう? 教えてあげるよ」



椎名 : 「いっ、いい加減にしろ! 西園寺馨! ……これ以上の発言は、俺の管理権限を用いてもッ……」



西園寺 : 「つべこべうるさいんだよシーナ君……黙らせたいなら、管理権限を用いてみろよ! ……っと、ホントに用いられたら俺、黙らなきゃいけないけどね。さて、アレコレ説明する以前にとりあえず、この脳髄の持ち主……被験者Xについて少し語っておこうか?」


 西園寺馨はそういいながら、机に置かれたホルマリン漬けに触れようとする。

 が、その手はすり抜け容器には触れる事はできなかった。



西園寺 : 「被験者Xは、まぁ、いわゆる天才って奴だったよ。子供の頃から非常に頭がよく、大学に入った時点でもう俺の片腕を勤める程の才覚を現した……うん、やや偏食な所があるのと、煙草を吸うのは頂けない個性だったが。まぁ、それを差し引いても充分によく出来た子だったよ」


椎名 : 「…………」


西園寺 : 「その子は、とても大切な存在が居た。それは、周囲からみるとよくある、幼馴染みの関係だったんだろうけどね。被験者Xにとってそれは、自分の運命を犠牲にしても守ってやりたい存在だった……だがね、守りきれなかったんだ。ささいな行き違いからね。それは、壊されてしまった


椎名 : 「やめてくれ……先生……」


西園寺 : 「壊れた存在を取り戻す為には、時間も必要だったがこの国ではそれ以上に、沢山のお金……壊れた存在を治す為の、入院費が必要だったんだよ。そりゃもう、当時まだ学生だった被験者Xでは到底、手の届かないような金額でね……それを捻出する為に彼はあちこち駆け回ったよ。でも……集まらなかった」


七瀬 : 「ちょ……まって、ください。西園寺さん……それ……」



西園寺 : 「そこで俺は提案したんだ、彼に。そう……実験台にならないか、と。たった300万だった。だが、その時の彼には絶対に必要な300万だった。こうして、俺は彼の肉体その全てを実験の道具として買い受けた。そして……」


椎名 : 「もう、辞めろっ、西園寺……」



西園寺 : 「被験者Xは一度死んだ……脳髄の一部を電子部品とすげ替える為に、彼は意図的に殺されたんだよ。他ならぬ、この俺の……西園寺馨の手によって、ね」



 ガコン、と激しい音がする。

 見れば神崎が、やり場のない怒りを近くにあるゴミ箱へぶつけていた。




神崎 : 「…………バカな! オマエっ、オマエ何てことを……何てことをっ……」


 西園寺馨が実体をもった人間であれば、その怒りはそのまま彼にぶつけられていただろう。

 だが西園寺は、生憎肉体を持たない。

 痛みや苦しみなどは、辛いと思ったら自由に遮断する事が出来る存在なのだ。




西園寺 : 「あ、ゴミ箱。後で弁償してな……それで、ハナシの続きだ。さて、神崎君。キミがききたかったのは、その被験者X彼の名前、だよね?」


椎名 : 「!! やめろっ、西園寺!」


西園寺 : 「教えてあげるよ。そう……被験者X、俺が一度殺して、頭の中をかき回し、ゴテゴテとした電子部品を埋め込んで生き返らせた男の名前は……」



椎名 : 「やめろっ、やめてくれ!」



西園寺 : 「椎名淳平……彼が、俺の生み出した最大の罪にして最高傑作……俺の記憶を司るサーバーと俺の存在を保つ為のスパコン。それらろ同じ名を冠された存在……そう、椎名淳平こそがプログラム・フレスベルグであり、ユグドラシル・システムだ」



桐生 : 「!!」

若葉 : 「嘘、だよね……」

芹沢 : 「椎名さんが……!?」


 驚き椎名を見る周囲の視線に、椎名は苦笑いでこたえる。

 不器用な男の、不器用な演技だ。



椎名 : 「………冗談はやめてください、先生。先生の言う通りなら、俺は一度死んでいるんでしょう。一度、死んだ人間がまた、こうして生きて話せるはずが……頭に金属埋め込まれているなんて、そんな大手術して生きてるはずが……」


神崎 : 「4年前。オマエは、満足に動けないみぃを置いて、三ヶ月ほど研究室に缶詰になった事がある。けど……あの時、その手術を受けてたんさね?」


椎名 : 「違う! 俺は……だいたい、そんな事、出来る訳がない! そうだろ、皆? こんなの、教授の冗談だ!」


西園寺 : 「しらきる? 今更? ……シーナ君。七瀬君見てみろよ。その泣き出しそうなツラ見て、オマエまだ嘘つけるのか?



 振り返れば、そこには今にも泣き出しそうな七瀬の姿がある。

 4年前……思い当たる事が、あまりにも多すぎた。




七瀬 : 「…………淳兄ぃ」


椎名 : 「澪……」


七瀬 : 「嘘、だよね。淳兄ぃ……4年前って、俺の……俺が、入院した時の……俺、俺の病院代出す為に、淳兄ぃ。俺のために、淳兄ぃ……淳兄ぃ……」



西園寺 : 「真実を話すべきだろう……キミの事も。そして……プロジェクト・ユグドラシルの事も……」



椎名 : 「!! いや、それだけは……それだけは、させんっ。西園寺馨! これ以上オマエがその事に触れるのであれば……!」


西園寺 : 「語らない訳にはいかないんだよな、俺は、そこにいる滝さんや神崎君からそれを語るよう望まれている……一応、人間に従順なシステムとしてプログラムされているからね、俺は。望まれると喋らなきゃいけないんだよ」


椎名 : 「だったら……仕方ない。管理権限を、行使する!」


西園寺 : 「ん……そうだろうな。だが」


 椎名はそう言い、何かのデータを送るような仕草をとる。


西園寺 : 「その行動を、待ちこがれていたぞ?」


 だがその刹那、閃光が室内を包む。



梨花 : 「きゃあ! 何ですか?」


 周囲を白く染め上げた閃光はすぐにおさまるが皆の視界と思考とを一瞬奪う。

 そして、気付いた時……。




桐生 : 「いてて……何だ今の、まだ目がちかちかする」



 ニーズホッグ・システムがダウンしているようだった。

 システムは音をたてず、さっきまであった画像も、もはや何もない。




若葉 : 「もー、びっくりした。何今の光? というか、大丈夫梨花ちゃん? ムツミおねーさま?」


滝 : 「あぁ、大丈夫だが……」


神崎 : 「それより……あいつは! 西園寺は何処にいったさね!」



 神崎の声で、皆はようやくその部屋から西園寺馨の姿が消え失せている事に気付く。

 同時に。




七瀬 : 「淳兄ぃ! 淳兄ぃ、大丈夫。淳兄ぃ……しっかりしてくれよっ、淳兄ぃ!」



 七瀬の声で、倒れた椎名がまだ起き上がらない事に気付いた。



神崎 : 「ちょ……大丈夫かい、ジュンペイくん?」



 声をかけた神崎は。



椎名? : 「……ん、大丈夫だよ神崎くんこれも全て……計画通りだから」



 その言葉で椎名の中に、何か異質な変化がおこった事に気付く。

 普段の椎名だったら自分の事を 「神崎くん」 と呼ぶ事などない事、彼はよく知っていたからだ。




椎名? : 「ただ、うん……久しく身体をもたなかったから、動かし方がわかんないだけだから……ほら起きれた。はは、うまいもんだ、うん」



 起きあがりながら笑う、椎名の顔・声・肉体。

 全ては椎名淳平のものに間違いないが、その仕草は違う。




椎名? : 「ん、うん……うん……? やっぱり、視力はあまり良くないね。眼鏡って嫌いなんだけど、確か何処かにこの身体用に誂えたコンタクトがあるから、それを着ければいいか? 前の身体より少しばかり背が高いけど、うん。これは許容範囲だね……あはは」



 笑う仕草。

 声のトーン、アクセント、しゃべり方……全て、椎名淳平のものではない。

 それは……西園寺馨の仕草、そのものだった。




七瀬 : 「うそ……淳兄ぃ? どうしたの、淳兄ぃ、いつもと違うけどっ、それ……あは、また冗談かな?」



 その変化に、椎名を良く知る七瀬が気付かぬはずはない。

 だが……認めようとしなかった。


 いや、認められないだろう……。



椎名? : 「淳兄ぃ? いや、もう違うな……俺の名前は……西園寺馨。たった今、椎名淳平くんの肉体を譲り受けて復活した、西園寺馨だよ



 ……自分が頼りにしていた、たった一つの世界がいま。

 七瀬の前から無くなろうとしていた。




西園寺 : 「という訳で、改めて自己紹介をしよう。身体は椎名淳平のそれだけど……中身は西園寺馨だよ」


桐生 : 「嘘だろ……椎名?」


滝 : 「そうだ、淳ちゃん! こんな時、悪い冗談なぞ……」



 勿論、みな椎名がそんな冗談をいう人間ではないのはわかっている。

 だが、それでも……俄に信じがたい光景であった。




西園寺 : 「悲しいけどこれって現実なのよねー。 という訳で、改めて説明するのはプロジェクト・ユグドラシルの事だ。そう、プロジェクト・ユグドラシル……世界樹計画ってのはな。 この俺……西園寺馨が、死ぬ間際。自分の人格、知識、その他もろもろを複写し新しい身体をもって復活する……他人の身体を借りて、永遠に生き続けるシステム。永遠の自我を紡ぐプロジェクトの事だったんだよ」



 西園寺は、椎名の顔で笑う。

 その笑顔は椎名のものだが、その感情にもうどこにも椎名はいない



西園寺 : 「いやぁ、準備にかなり大がかりだったけど、まさか本当に生き返る事が出来るとは……計算していたとはいえ、実現するとやり遂げたって実感があるねぇ! 俺のデータを移行しやすいよう、危険を冒しても脳髄の一部を機械化した甲斐があったってもんだ!」


神崎 : 「何てぇ……馬鹿な事を! 死者が! 他人の運命を塗りつぶしてまだ生きるだと、ふざけるな!」


西園寺 : 「ふざけた事も、大まじめにやったら実現できましたー! という訳で、ありがとうな。神崎君。キミたちのおかげで、何とか椎名君の身体を得る事に成功したよ!


神崎 : 「なん……だと?」


西園寺 : 「ン、実は電脳の世界に閉じこめられた俺は、簡単に椎名君の肉体と接触する事が出来なかったんだよ。平時の椎名君は、アレで結構慎重でね。簡単に俺の記憶を脳内に入れないよう、常にブロックをしていたんだ。最も、そのブロックも……キミたちの前で秘密を暴露された、ストレスと。俺に 管理権限を用いようとした時に出来る僅かな空白の時間 を利用して、よーやく突破する事が出来た訳だけどね」


滝 : 「そんな……それじゃ、私たちは……淳ちゃんの身体を、オマエに提供する為に動いていたみたいなモノじゃ……」



西園寺 : 「そうだよ、その通り。そういう風になるよう動いてもらってたんだ あはは! 何せ現実の身体をもたない俺は、表では動けないからね!」



桐生 : 「それじゃぁ……俺たちを、このゲームに誘ったのは?」


西園寺 : 「シーナ君にはデータをとるためと騙したけど、他でもない。キミたちという手駒を手に入れる為だよ!


桐生 : 「畜生、テメェ!」



 殴ろうとかかる手を、桐生は自然と納める。

 ……中身が西園寺であっても、友達の椎名の顔を殴る事はできない。

 桐生は、そういう男だった。




西園寺 : 「さて、キミたちの知りたがっていたプロジェクト・ユグドラシルの事もわかったし。俺もこの身体を得る事が出来たし。これで万々歳。めでたしめでたし、って事で……さ、もーゲームは終わり。そろそろ解散にしないか?」



 ふざけたように笑う西園寺の胸に、抱きつくように七瀬が触れる。



七瀬 : 「嘘だよねっ、淳兄ぃ……淳兄ぃ、いつまで俺の事騙すんだよ。そーやってさ……おれ、あはは……騙されないからな?」



 そんな七瀬を見て、西園寺は椎名の顔で微笑むと……。



西園寺 : 「だからもう、椎名淳平はいないって言ってるだろーが、バーカ」



 そう言い、まるで空き缶でも扱うかのように、七瀬の身体を蹴り上げた。



七瀬 : 「ぁっ!」


桐生 : 「ななみ、危ねぇ!」


 蹴り飛ばされてよろける七瀬を、桐生がすぐに受け止める。

 七瀬は暫く。



七瀬 : 「嘘、だよね……淳兄ぃが、そんな事する訳ない……俺にこんな事……」


 支えられながらそう呟いていたが、やがて。

 彼が椎名なんかではない事を認識すると、鋭い視線を西園寺に向け……




七瀬 : 「返せ! 淳兄ぃをっ、淳兄ぃをかえせ! かえせっ、オマエ……かえせよ、かえせっ、かえせよぉ……」


 西園寺に向かって拳を奮う。

 だが、それでも椎名の顔である彼を本気で殴る事が出来ないのだろう。

 ……その手は力無く、男の胸を叩くだけだった。


 程なくして




西園寺 : 「……いいぜ」



 西園寺は、そう呟く。



西園寺 : 「椎名淳平、かえしてやってもいいぜ」



 それは、これまでの西園寺の態度からからするとあまりに意外な発言だった。

 彼は明らかに、この身体を手放す気などなさそうだが……。




神崎 : 「本当かね?」


西園寺 : 「ん。ただしタダじゃない。俺だってリスクを負って手に入れたこの身体だ、易々と手放す気はないからな……そう、条件がある。俺と、ゲームをしよう


梨花 : 「ゲーム……ですか?」


西園寺 : 「そ、ゲーム」



 そう言いながら、西園寺馨は片手をあげる。

 同時に、それまで動かなかったニーズホッグ・システムに電源が入った。

 椎名の肉体になっても自由に動かせるよう、仕掛けをしていたのだろうか……。




西園寺 : 「実は俺の身体、まだ完全に馴染んでないんだ。というより、中にまだ椎名君の記憶が、断片的に残っている……上書きしても前の記憶がまだ残っちゃっている訳だ、今から俺は、その椎名君の記憶を消す作業に入る。終わるまでは、最長で24時間って所だ」


神崎 : 「24時間……」


西園寺 : 「そう、それだけたつと、椎名君は完全にこの世界から消える。データ上から完全に彼の記憶と知識を消すからね。でも、その24時間で少しゲームをしようと思うんだ」


滝 : 「ゲーム……?」


西園寺 : 「実は、椎名君から吸い上げた記憶は、まだサーバーの中にのこっている……若葉ちゃんの時みたいにね? その、椎名君の記憶。どうやら、キミたちが遊んでいたアレ……世界樹の迷宮、そのゲーム内に逃げ込んでしまったようなんだ」


若葉 : 「私みたいに、ゲームの中に……?」


西園寺 : 「そう、もしそのシーナ君の人格を君たちが見つける事が出来たら、キミたちの勝ち。椎名君を返してあげよう。どうこれ? 悪くないでしょ?」


神崎 : 「確かに悪くない、けど……ゲームを仕掛けるって事は、そちら側にも何か魂胆があるんだろう? 何を狙っているんさね、西園寺馨?」


西園寺 : 「勿論、魂胆はある。俺が欲しいのは……キミたちの中にある、椎名淳平の記憶だ」



一同 : 「!!」



西園寺 : 「俺としては、まぁ、中身が西園寺馨でも、外見は椎名淳平だからね。これからは椎名淳平として生きていきたい訳だけど、キミたちはこれ。肉体を奪うシーンまでばっちり見られている訳で、こんな所を知られているキミたちは俺の今後の生活に色々、支障をきたすだろう」



神崎 : 「……確かに、俺は今オマエの本体を引きずり出す事が出来るなら、ボロ雑巾みたいにしてやりたい程度には憎らしいねぇ」



西園寺 : 「だから、キミたちの記憶を少しばかり改竄させてもらおうと思ってね! コレ、俺としては絶対にやりたい事だから……どう、やってみない、このゲーム?」



 西園寺は笑う。

 まるでこのゲームの勝ちが、もう決まっているかのようだった。


 罠でも仕掛けてあるのだろうか。

 戸惑う周囲の中で。




七瀬 : 「………やるよ」



 最初に言葉を放ったのは、七瀬だった。



七瀬 : 「それで淳兄ぃが戻ってくる可能性が1%でもあるなら、おれ、やるよ……西園寺さん。そのゲームに、俺を参加させてください……」



 七瀬の言葉に。


桐生 : 「まてよ、ななみ。迷宮には一人で挑むなんて無謀だろ……俺もいく。さばみそギルドのリーダーだしな!」


 桐生が。


若葉 : 「私も! 私も! 火力は、多い方がいいもんね!」


 若葉が。


神崎 : 「んー、吟遊詩人が何処まで役にたてるかわからないけど、ここは可愛いシュンスケ君とジュンペイ君の為にも、一肌脱がせてもらうかねぇ?」


滝 : 「ここまで来て、引き返す真似なんて出来るか。原因をつくったのは、私でもある……七瀬、協力させてくれ」


 神崎が、滝が。そして。


梨花 : 「メディックは必要ですよね!」


 芹沢が。

 皆の心が一つになる。




西園寺 : [OK、いー友達だ!」


 そんな彼ら見て西園寺は、一瞬だけ儚げに笑うと普段の大仰な言い回しと立ち振る舞いで室内を歩き出す。


西園寺 : 「よし、それじゃ……
世界樹の迷宮第5階層をはじめよう! 最後のステージを開けるよ……掛け金は、キミらの綺麗な思い出! 景品は、我が可愛い教え子の記憶……タイムリミットは、24時間だ!」



 ニーズホッグ・システムが動きだし、再びサーバーから熱を帯びた音がする。

 …………最後の演目が、始まろうとしていた。




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