> 界樹の迷宮をリプレイ風に日記つけてます。はい。





までのあらすじ >


 レンさんとツスクルさんは何かたくらんでいて、モリビトはうんこの杖をもっているのでございます。




> 再び、レ森へ



 前回のセッションから数日後。

 都内いつもの場所、いつもの面子がそろいつつ、人数はぴったり5人しか居ないようです。



GM : 「さて、ボチボチ人数集まったからいつものセッション、始めようかなぁと思っているんだけど……今日も、フィガロのプレイヤーはお休みかい?」


ヒルダ : 「そのようだな……」


GM : 「何だよあいつはー、セッションの日は前もって伝えてあるんだから予定開けておいてくれればいいのになぁ……」


ヒルダ : 「そういうな、何でも 母方の祖母が急に病気で今夜がヤマ らしいぞ?」



シェヴァ : 「えっ!?」


シュンスケ  : 「……どうした、シェヴァ!」


シェヴァ : 「いや、アニキ(フィガロのプレイヤー)のお婆さん、先月亡くなったって聞いたよ?」



ヒルダ: 「なに!?」



シュンスケ : 「……父方の祖母がなくなったのか?」


シグ : 「俺、アニキの祖母は2年くらい前に3回亡くなったの知ってるぜ?」


シェヴァ : 「おれも、実はアニキのお婆さんが亡くなるのは先月で5度目! 今日で6度目だ!」


リン : 「何人おばあさまが居るんですか、フィガロさんの家には」(笑)



GM : 「えっと……これは、ズル休みと判断していいかなぁ?」(笑)


シュンスケ : 「そのようだな」(笑)


GM : 「まったく、非道いよなぁ……ズル休みしたいならズル休みしたいと言えばいーのに! 別に怒らないから!」(笑)



シェヴァ : 「あ! じゃぁ俺、ズル休みしたい! 今日99円市の日だから


シグ : 「俺も。 今日行きつけの焼肉店が食い放題やる日なんだ


ヒルダ : 「私もだ。 仕事が少し忙しくなってきてな……


リン : 「あ、ボクも……。 見たいドラマの最終回……



GM : 「ひどい、みんなひどい! シェヴァやシグはまだしも、ヒルダ君やリン君までそう言い出したのは些かショックだ! ショックだよ! シュンスケ、シュンスケ君はそんな事言わないよね、GM一人にしないよね!」


シュンスケ : 「……あぁ、俺は別に用事はないからつきあってやってもいい、が……アルケミスト一人で、どうする……何をすれば、いい……?」


GM : 「え。 えーっと……術式が発動するまでひたすら攻撃に耐える、マゾプレイ、とか?」


シュンスケ : 「…………どうして俺がそんなマゾプレイに及ばねばならんのだ?」


GM : 「いや、シュンスケ君案外マゾっぽい所があるから結構イケるんじゃないかなぁ、と思ってね」


シュンスケ : 「……俺もするぞ、ズル休み」


GM : 「じょ、冗談だよ、シュンスケ君! じょーうーだーん!」



シグ : 「ぎゃははは! まぁ、GMをからかうのもこの位にして、そろそろ始めようぜ」


GM : 「ううう、弄ばれた。アタイ、弄ばれたのね……」


リン : 「拗ねないでくださいよ、GMさん……それで、これまでは何処に進んでいたんでしたっけ?」


GM : 「ん? あぁ……とりあえず、執政院からモリビト殲滅の依頼を受けた途中、レンとツスクルに隠し通路を教えてもらった所だ……いよいよ、モリビト達が守る本陣に、突入! って所だね」



シグ : 「……そう、か」


ヒルダ : 「…………坊ちゃん、大丈夫か?」


シグ : 「姉弟子……あぁ、大丈夫だ。何、ちょっと考え事、な」


ヒルダ : 「無理するな」


シグ : 「あぁ、わかってる……わかってる、さ」



 かくして、レンとツスクルに(主にレンにより)教えられた隠し通路。

 その先にある数多のワープゾーンをくぐり抜け、いよいよ地下への階段を発見するに至るのである……。




GM : 「という訳で、数多のワープゾーン(B19)を乗り越えたキミたちは、いよいよ地下20階……モリビトたちが待つ階層へとやってきた!」



シグ : 「いよいよだな……リン、姉弟子。身体は大丈夫か?」


リン : 「あ……はい、大丈夫です。TPも充分残ってます!」


ヒルダ : 「私も大事ない……何時でも皆を守る事が出来るぞ」


シェヴァ : 「というか、ヒルダちゃんの場合身体より腹筋の方が心配だよ……」



シュンスケ : 「あぁ……グリンドレイクやグリンヴァルドが出るたびに、腹筋が崩壊するんじゃないかと思う程の爆笑をしていたからな……」


シグ : 「まだ見慣れないんだな、姉弟子」(笑)


ヒルダ : 「す、すまん。 どうしてもあの杖から魔法を繰り出す姿を見ると、笑ってしまうのだ」


GM : 「ツボに入ると長く持続しちゃうタイプなんだねぇ、ヒルダは。(笑) さてそれはそれとして、キミたちは地下20階の階段前に居る。その階段からは明らか様に他の階層とは違う……強い殺意が感じられる」


シグ : 「……」


シュンスケ : 「シグ……いいか?」


シグ : 「……あぁ、行こう」


GM : 「頷き歩き出すシグの後から、ヒルダ、シェヴァ、リン、シュンスケと順々に歩いていくと、程なくして枯れた木々の森が眼前に広がる……其処此処から射るような視線がキミたちに降り注ぐ。恐らく、モリビトたちだろう」


リン : 「ゴクリ……」


GM : 「恐らくモリビトたちがいよいよ、全力で挑んでくるのだろう……その前に、キミたちの眼前に、一人の少女が立ちはだかる


シグ : 「若葉!」


GM : 「……そう、モリビトの少女だ。 モリビトの少女は君たちを見下すように一瞥すると厳しい口調で問いかける。 (モリビトの少女) 『協定を破りモリビト達を殺す、貴様たちの目的は何だ……?』



シグ : 「…………言葉を交わさないと気が済まないか?」 (剣を構え)


GM(モリビトの少女) : 「『……』」



シグ : 「なぁに……未開の土地にある原住民たちを屠り我がモノ顔で闊歩する……何処にでもあるただの侵略だ。それでいいだろう?」


ヒルダ : 「……坊ちゃん」


GM(モリビトの少女) : 「『……幾千年も繰り替えし続けた愚かな事の為にその手を汚すか』


シグ : 「……そうしてまで 欲しいモノ があるからな。今更、退けねぇんだ。悪く思うなよ?」



GM(モリビトの少女) : 「『……人の中には貴様らのを願う者もいるというのに……何故に樹海の奥を目指すのだ、お前達は……』


ヒルダ : 「……何?」


シュンスケ : 「人の中には……?」



GM(モリビトの少女) : 「『だがいいだろう! 貴様らが数多に繰り返した過ちを再び犯そうというのなら、我らは全力でそれを迎え撃つ! 貴様らと我らの決着、今ここでつけよう! ……我らモリビトの精鋭と、樹海の守護鳥を倒す事が出来たのなら貴様らの勝利だ! さぁ……来るがよい』 少女はそう告げると身を翻し、森の中に姿を消した……」



シグ : 「……若葉」


シェヴァ : 「あ、見失っちゃうよ。追っかけないと!」


ヒルダ : 「いや、すぐには無理だな……周囲の殺気が激しい、恐らくモリビトの精鋭とやらが彼女の追跡を阻むだろう……」


GM : 「ヒルダの言う通り。彼女が消えると同時に周囲には、F.o.eが出現する……彼女の言う、モリビトの精鋭たちだろう」


シグ : 「……チッ」



シェヴァ : (オロオロオロオロ)



シュンスケ : 「足止めか……モリビトの精鋭と守護鳥を倒せ、と彼女はいったか」


GM : 「言ったね」


シュンスケ : 「追いかけても間に合うとは思えんな……仕方ない、燻り出すとしよう……望み通り、この精鋭と守護鳥を倒してな」



シェヴァ : (オロオロオロオロ)



リン : 「あまり気が乗りませんけど……それしか、なさそうですね……」


シグ : 「……仕方ねぇな、長期戦になりそうだが、皆頼むぞ!」



シェヴァ : (オロオロオロオロ)



ヒルダ : 「あぁ……しかし気になる事もいってたな。人の中には我々の死を、か……心当たりはあるか?」


シュンスケ : 「……いや、ないが……だがこれだけ様々な事をしてきた我々だ。恨みを買う事もあるかもな……」



シェヴァ : (オロオロオロオロ)



GM : 「って、さっきからシェヴァ君が挙動不審なんだけれども、コレ気になるから誰か何とかしてくれない、ほら保護者!」


シュンスケ : 「ん、俺か? ……どうした、シェヴァ?」



シェヴァ : 「えっ! あ、別にどうもしない、けど……ただ、皆がシリアスな雰囲気だから、俺、どうしたらいいのかわかんなくて……



GM : 「慣れてないシリアスに拒絶反応を起こしたか!」



シェヴァ : 「シュンスケ、俺どうしたらいい? ボケた方がいいの、ボケたら突っ込んでくれる、シュンスケ?」


シュンスケ : 「ボケなくていい、俺の言う通り鞭を振るっていてくれ」


シェヴァ : 「かしこまった! えっと、それでシュンスケ。シュンスケは俺に何処を打ち据えて欲しいの? お尻? 背中? あ、縛った方がいいのかな俺?」




シュンスケ : 「俺にじゃなくて敵にだバカが!」



シグ : 「……何かこれまでのシリアスの流れが一気に台無しになった気がするんだが、俺の心が汚れているからか?」(笑)


ヒルダ : 「安心しろ坊ちゃん、私の意見も概ね同意だ」




> と悪魔と



GM : 「そうして歩き出したキミたちはふとある事に気付く……どうやらここには、f.o.eしか居ないようだ!」


シェヴァ : 「んー、ほんとだ。いつまでたっても、エネミーアピアランスは、ずっと青いまんまだ」


ヒルダ : 「モリビトたちの精鋭はまさに、モリビトたちの切り札といった所なのだろうな……下手な戦士に手出しをさせるより、最強の戦士をあててくるのだろう」


GM : 「そうだ。そしてその強者が今、君たちの眼前に居る……さぁ、どうする!」


シグ : 「……剣を抜いた俺の前に立ったという事は、言うまでも無ぇんじゃないのか?」


GM : 「そうだな、よし戦闘だ! 敵はフォレストデモン……巨躯と翼とを持つ、モリビトだ」


リン : 「えっ、あれ……モリビトさん、ですか?」


GM : 「進化して何かあぁなったらしい。調子が良ければ空も飛べるぜ!」


シェヴァ : 「何か、グリンヴァルドとかとは全然違うけど……」


シュンスケ : 「……やはり我々とは別種の生き物なのだろうな」


GM : 「……ともあれ戦闘だ! ちなみに戦闘に入ると周囲にいるf.o.eは追跡状態になるからな!」


ヒルダ : 「よし、防御陣形を」


リン : 「医術防御を……」


 各々、普段の戦法で。

 ヒルダ・リンが防御を固めシェヴァが縛り(ヘッドボンテージ)、シグ&シュンスケがチェイス攻撃でフォレストデモンと対峙する。

 流石にレベルが高いギルドなだけあり、追いつめられる事はないが魔法が効きにくいフォレストデモンの体力はなかなか削りきる事は出来ず……。



GM : 「少し長引いてるな……よし、新たなるF.O.Eが乱入してきたぞっ! フォレストオーガの登場だ!」


シェヴァ : 「えー……」


シグ : 「いいじゃ無ぇか! ガンガン行くぜ、どうせならまとめて倒した方が、手っ取り早いしな!」



 他のF.O.E……物理攻撃の強い、フォレストオウガの乱入を許してしまう。

 魔法に耐性のあるフォレストデモン。

 物理に耐性のあるフォレストオウガのコンビに、削るのに時間がかかったものの……。




シュンスケ : 「よし、大氷嵐の術式……」


GM : 「うへぇ……それで終わった、はいしゅーりょー。キミたちは無事、フォレスト・ガンプを退治した」


ヒルダ : 「ん? 何時の間に我々はトム・ハンクスと闘っていたんだ?」


GM : 「あ、違った。フォレストオウガとフォレストデモンを退治した!」


リン : 「皆さん大丈夫ですか、すぐにエリアキュアを……」


ヒルダ : 「あぁ、大丈夫だが……思ったより消耗したな」


シェヴァ : 「なー、俺もーつかれたー、シュンスケ、おんぶー!」


シュンスケ : 「貴様、前衛の癖に俺に背負えというのか……俺だって消耗はしている、今は無理だ!」


シェヴァ : 「じゃ、街に戻ってからでいいよ、おんぶ!」


シュンスケ : 「わかった、考えておく」


GM : (街に戻ったらもう元気なんだからおんぶは必要ないだろう?)


リン : 「……はい、エリアキュアです。どうぞ?」


シェヴァ : 「ありがと、リンちゃん! 身体すっごく楽になったよ」


リン : 「はい、よかった……」(ふら)


シェヴァ : 「!! あ、大丈夫。リンちゃん?」


リン : 「え、えぇ、大丈夫です……ちょっと、TP使い過ぎちゃったみたいです、けど……」



シグ : 「……」


ヒルダ : 「……坊ちゃん、はやる気持ちは分かる。だが無謀に進むのが良い戦士ではないぞ、わかっているな?」


シグ : 「姉弟子……あぁ、わかっている。皆、こいつら思ったより固くて強ぇからな、程々で切り上げて、泉で回復してから戦うぞ、いいな!」



一同 : (無言で頷く)



 かくしてヒルダの提案通り。

 戦っては戻り、また戦っては戻る事でさばみそギルドご一行様は少しずつだが確実に、F.O.Eを減らしていく。

 そして……。




GM : 「よし、倒れた、と……これで残す所は、部屋の中央に居る黒丸……逃げる事が不可能のボスF.O.Eだけになった!」


シェヴァ : 「……良し!」


シュンスケ : 「これで何にも邪魔をされずに、ボスに対峙出来るな……」



シグ : 「ん? あぁ……」(ぶるっ)


ヒルダ : 「武者震いか、坊ちゃん?」


シグ : 「あ……いや、まぁ……そうだな……」


ヒルダ : 「……心配するな、何があっても坊ちゃんは私が守ってみせるから……な?」


シグ : 「……姉弟子」


リン : 「そうですよ、シグにはボクも、ヒルダさんもっ、シェヴァさんもシュンスケさんも……アイラさんだって居るんですから、大丈夫ですよ!」



シグ : 「!! ……あぁ、そうだな……ありがとな、リン。姉弟子。 それじゃ、そろそろ……軽く守護鳥とやらを撫でてやるとするか!」



一同 : 「おー!」




> もなるひとをまもるしゅごしゃ



 こうしていよいよ、さばみそギルドの面子はいよいよ森の守護者。

 イワオロペネレプと対峙するのである……。




GM : 「という訳で全てのモンスターを倒したキミたちの前に現れたのは丘ほどはある金色の鳥……モリビトの守護者、イワオロペネレプ様の登場だ! あ、ちなみに今回、先制攻撃キミたちね。 ちゃっかり背後とってるんだから、大人ってズルい」(笑)


ヒルダ : 「こちらがアドバンテージをとるのは戦闘で当然だ」


シグ : 「しかし、今回は鳥か……前回とのエイと比べれば、まともだな!」


シュンスケ : 「あぁ……あれはエラ呼吸の癖にむりして地上に出ていた姿が痛々しかったからな……」


GM : 「エイではない、あれは高貴なるコロトラングル様である! ……ともかく、戦闘だ! 俺のターン! ……は、先制攻撃されているから今回はなくて、そっちからね」


シグ : 「相棒、どうする?」


シュンスケ : 「そうだな……モリビトの守護者、というのなら炎属性に弱みがあるやもしれん。炎からだな」


シグ : 「了解。ほんじゃま、チェイスファイアで」


シェヴァ : 「大丈夫か、シュンスケ。シュンスケ、最近最初の属性はスカすって聞いたけど?」


シュンスケ : 「煩いシェヴァ……そういうお前はどうするつもりだ?」


シェヴァ : 「俺は縛りをいれてくよ。とりあえず、アームボンテージから!」


リン : 「アーム……ですか? 鳥さんですよね。手……何処なんでしょう?」


シェヴァ : 「そりゃ、あのかぎ爪みたいな所だろ?」


シグ : 「かぎ爪!? 俺、てっきり翼=手だと思ってたぜ?」


シェヴァ : 「翼は翼、手じゃないよ?」


シグ : 「でもよぉ、それだとレッグボンテージだと何処縛るんだよ? 俺ぁ、かぎ爪=足だと思ってたんだが」



シェヴァ : 「とさか!」



シグ : 「とさかぁ!? ……それはヘッドボンテージじゃないのかっ!?」


シェヴァ : 「とさかはとさか、頭じゃないよ?」


GM : 「つまり、シェヴァの言い分だと、 ヘッドボンテージ=頭、アームボンテージ=かぎ爪、レッグボンテージ=とさか を縛るという訳だな」


シェヴァ : 「Yes! That's right 」 (意訳:はい、そのとおり、です)


シグ : 「レッグ(足)が手より上にきて無いか、ソレ?」(笑)


シェヴァ : 「細かい事ぁどーだっていーんだよー! とにかく俺、アームボンテージね! ヒルダちゃんは?」


ヒルダ : 「……防御陣形だ! リン、油断するな!」


リン : 「はい。僕は医術防御で皆さんをお守り致します!」



GM : 「よし、最初のターンは……イワオさんの攻撃はないな。シグのチェイス準備の後、シェヴァのアームボンテージからか」



シェヴァ : 「女王様の鞭をお浴び!」



GM : 「とうとうシェヴァが女王を自称しだしたぞ。(笑) ……ダメージは、536。封じも……入ったか」


シェヴァ : 「Call me Master!」


シグ : 「相変わらず絶好調だな女王様」(笑)


シュンスケ : 「大枚叩いてクイーンズボンテージを買ってやったんだ、その分仕事してもらわないとな」


 ※クイーンズボンテージ → 高い攻撃力とブーストアップ効果をもつ使い勝手のいい鞭。結構高い。



ヒルダ : 「いまのうちに、防御陣形発動だ。リン!」


リン : 「はい! 医術防御、発動です!」


シグ : 「これで一気に防御面は安心感が出たな。相棒、術式を頼む」


シュンスケ : 「うむ……大爆炎の術式だ。どうだ……?」


GM : 「ダメージは204、シグのチェイスは178ね」


シュンスケ : 「思ったよりふるわないな……属性に耐性があるのか?」


GM : 「さぁ、どうだろうね?」


シグ : 「まぁ、気にするな! 次いってみようぜ」


シェヴァ : 「そうそう、シュンスケが最初の属性フカすのはもう、お約束って感じだしね!」



シュンスケ : 「いやな事をお約束扱いするな!」



GM : 「じゃ、次いってみよー」


シグ : 「チェイスフリーズ……で、いいか? 相棒」


シュンスケ : 「ン……あぁ」


ヒルダ :「私もシールドスマイトが出来るようになった。僅かでも攻撃に貢献しよう」


シェヴァ : 「シールドスマイトはもの凄く貢献出来るよヒルダちゃん! 俺は、封じ狙いでレッグボンテージね!」


GM : 「相変わらず、三点縛り狙ってるなシェヴァは」



シェヴァ : 「エクスタシーはダークハンターの夢! 野望! そして浪漫!」



リン : 「本当にシェヴァさん、ちょっと博打の手がお好きですよね……あ、僕は防御しておきます!」


シュンスケ : 「大氷嵐だ、今術式を組もう」



GM : 「よし、攻撃は……相変わらずシェヴァが先か。ダメージは大きいな。だが……今度は縛られんぞ!」


シェヴァ : 「ちぇー」


GM : 「次いで攻撃はイワオさんだ! ヒルダに……デスプリンガー!


ヒルダ : 「ひゃ……」


シグ : 「大丈夫だ姉弟子、防御もある」


シェヴァ : 「そうだよ、名前にデスとかついてるけど、一撃必殺とかはないって!」


ヒルダ : 「そうだろうか」 (ビクビク)


シェヴァ : 「そうだよ! 仮にあったとしても、ヒルダちゃんは運がいいもん! シュンスケだったら一撃で屠られるだろうけど、ヒルダちゃんなら大丈夫だよ!」



シュンスケ : 「貴様っ、自分だって充分運がローレートな癖に俺にそう言うか!」



GM : 「実際にダメージは8か……うーん、やっぱり防御固められるとな。イワオさんの攻撃なんてお前らに入らないな」


ヒルダ : 「よし、応戦しよう! シールドスマイト! ……どうだ?」


GM : 「うはぁ、それ痛ぇー……むしろ倍返し。いや、60倍返しされた。とほほ……」


ヒルダ : 「よし!」


シグ : 「大氷嵐も発動、どうだGMチェイスとダメージは……」


GM : 「さっきよりきいてる、正直。シュンスケの攻撃で400、シグのチェイスで407ね」


シグ : 「氷属性が弱点くさいな」


シュンスケ : 「あぁ……むしろ、雷は妖しいくらいだ。見るからに金色だしな」



GM : 「む。まぁ、次のターン」


シグ : 「どーする相棒、きくのは氷で決定くさいけど」


シュンスケ : 「そうだな。だが念のため、雷もたたき込んでみるか……?」


シグ : 「ラジャリコ! チェイスショックをセットするぜ」


ヒルダ : 「引き続き、シールドスマイトの準備をしよう。シェヴァはどうする?」


シェヴァ : 「ブーストたまった! ブーストたまった! おれ、レッグボンテージするよ!」



GM : 「了解。んじゃ攻撃はイワオさんから……通常攻撃、シグに、のダメージ……うう、泣きそう……」


シグ : 「こそばゆいわぁ!」


GM : 「固められると弱いなぁ……シェヴァのブーストinな攻撃は弱いし……足も縛られた」


シェヴァ : 「とさかゲット!」


ヒルダ : 「シールドスマイト! ダメージは……」


GM : 「500越えするもんなぁ、それも……」


シュンスケ : 「大雷嵐! ……どうだ?」


GM : 「ダメージは198……チェイスで176だ」


シグ : 「……やっぱり氷で決まりだな」


シュンスケ : 「あぁ、次から氷属性を連続してたたき込もう」



GM : 「うううう……じゃ、次……」


シグ : 「ブースト満期! チェイスフリーズ行くぜ相棒!」

シュンスケ : 「了解した」


GM : 「満期か! ヒルダさんは?」


ヒルダ : 「4ターン目だな……リン、防御を固めるぞ」

リン : 「はい、わかりました! 医術防御です!」



シェヴァ : 「俺もブースト満期、ヘッドボンテージ! これで三点縛り完成させるぞ!」



GM : 「させるかっ! ……ううう、ダメージは痛いけど耐えたぞ! 仕返しに……シェヴァ、お前にデスプリンガーだ!


シェヴァ : 「え!?」


シグ : 「大丈夫かシェヴァ、お前のラックもいい加減低いからな……」


シュンスケ : 「死んだら骨は拾ってやるからな」


シェヴァ : 「だ、大丈夫だもん! こ、こい!」


GM : 「んじゃま、遠慮なく〜シェヴァさんの白い頭をこつーんこつーんこつーん!」


シェヴァ : 「ぎゃぁ! ダメージ25……いたくはない、けど……身体、なんかへんだ……」


GM : 「そうだろう……デスプリンガーにあるのは石化の追加効果! イワオさんのくちばしには石化の効果があるのだ! という訳で、シェヴァくーん、少し固まっててな!」


シェヴァ : 「え! マジかよー……」(かちん)


シグ : 「おお、シェヴァが見事な小便小僧に」


シェヴァ : 「べ、別に小便はしてないよ!」


GM : 「はいはい、石化が喋らない」


シェヴァ : 「うー」


ヒルダ : 「石化はリンのリフレッシュで治るんだったか?」


リン : 「あ。えっと……そうですよね、GMさん」




GM : 「いや、王子様のキスで治る」




一同 : 「えぇーーーー!」



GM : 「石化は王子様のキスで治るんだ、それおとぎ話の常識! という訳で、シュンスケ君頑張ってくれたまえ



シュンスケ : 「バカ言うな! なんで俺だ! というか、そんな訳無いだろ!」



GM : 「いや、アイラ君が居たらこういうかな。という台詞を俺なりに臨場感溢れていってみた。駄目か?」


ヒルダ : 「駄目だろう、それは……」


シグ : 「アイラなら冗談で済むが、GMがそう言うと本当になるだろ!」(笑)


GM : 「そうか、駄目か……世間様にサービスが必要かと思った提案だったんだが……」


シグ : 「誰得だよ?」(笑)


シュンスケ : 「……本当に石化回復で必要なものはなんだ」



GM : 「リフレッシュでいいよ、リンはリフレッシュのレベル高い(レベル8)から。あと、テリアカβでもなおるね」


リン : 「わかりました、すぐに治しますからね、シェヴァさん」


シェヴァ : (返事がない、どうやら石化のようだ……)



GM : 「という訳で次いってみよー!」


シグ : 「ちぇーいーす! 相棒!」


シュンスケ : 「わかった。大氷嵐の術式だ」


ヒルダ : 「シールドスマイト」


シェヴァ : 「にかわる……だーれかー」


リン : 「任せて下さい。リフレッシュです!」



GM : 「という訳で、攻撃はー」


リン : 「ボクが一番ですね! リフレッシュです、大丈夫ですかシェヴァさん?」


シェヴァ : 「ふぁ……助かったよ、リンちゃ……」



GM : 「そこを狙い澄ましたかのようなイワオさんの攻撃、デスプリンガー! 狙いは、シェヴァ。お前だぁっ!」



一同 : 「えー!!!」



GM : 「ダメージは25、だが……シェヴァは石化状態となった!」 (キュピーン)



一同 : 「しかも連続でっ!?」



シグ : 「何だシェヴァ、保護者と同様にお前も運が低いのか!?」


シェヴァ : 「し、知らないよぉ……みんな、ごめん。俺もう少し大理石で居たい気分なんだ」(笑)


ヒルダ : 「大理石なのか!」(笑)


シグ : 「てっきりセメント的なものだと思っていたんだがな」


GM : 「あはは。という訳でシェヴァはもう少し石になっててーな」


シェヴァ : 「しくしくしく……」



 ともあれ、シェヴァの石化後もダメージは確実に与えられ。

 とうとう、イワオさんはいい所がないまま、倒れようとしていた……。



GM : 「ううう。もうやばいもうやばい、こいつらマジヤバイ……攻撃されたら……」


シェヴァ : 「石化された。かちんかちん」


シグ : 「だけどどうする、相棒? もう少しで倒せるらしいぜ?」


シュンスケ : 「そういえば、酒場に 『石化をなおしてみたいから、誰か石化状態になってきて!』 というクエストがあったな」



一同 : 「じ……」



シェヴァ : 「いやだいやだいやだー! まって、みんな非道い。俺、石化したままボス戦終わらせたくねぇーよー!


ヒルダ : 「大丈夫だシェヴァ、経験値はもらえるぞ?」


シェヴァ : 「経験の問題じゃないよ!」


リン : 「もう……そんな事言ったら可哀想ですよ。大丈夫ですよシェヴァさん、すぐにリフレッシュしますからね」


シェヴァ : 「やったー、ありがとリンちゃん!」



GM : 「と、その前に攻撃は……」



ヒルダ : 「シールドスマイト! どうだ?」



GM : 「あ、流石にそれ無理だ……イワオロペネレプは高い声で一度天に向かって鳴くとゆっくりと倒れ伏す……それを合図に、モリビト達は全てを知った。森の守護鳥が倒された事を……戦いが、集結したという事を……」


シグ : 「姉弟子!」


ヒルダ : 「あぁ……全て終わったようだな」



シェヴァ : 「って、ちょま! おれ、俺はっ!?」


リン : 「ごめんなさい、シェヴァさん、リフレッシュ……間に合いませんでした」


シェヴァ : 「がーん!」


シュンスケ : 「人の事を運が悪いとからかうから、そういう事になるんだ、お前は」




> アイラの場所



GM : 「こうして倒れたイワオさんを前に各々休憩をとっていると、キミたちの前に一人の少女が現れる……モリビトの少女だ」


シグ : 「若葉……」


GM : 「彼女は暫く呆然と、この様子を見ている。だがやがて、力なく肩を落とすと、キミたちの方を見た。 (モリビトの少女) 『イワオロペネレフを倒すとは……』


シュンスケ : 「……まだ、戦うか?」


GM(モリビトの少女) : (黙って首を振りながら) 「『私は、人の言葉を操れるというだけ……ただの交渉役に過ぎない。この少女の身体も、言葉も、全ては人との交渉を容易にするためにあるもの……戦闘能力はない、イワオロペネレフを倒された以上、もう邪魔はすまい……』


リン : 「モリビトさん……」


GM(モリビトの少女) : (樹海の奥を指さしながら) 「『向こうに隠された通路がある……そこを進めば貴様らが望んだ道があるだろう、行け。私にはもう、止める術がない……』 と、がっくりと肩を落としたモリビトの少女は……再び顔をあげ、君たちを見据えると……ん、あれ?


シュンスケ : 「どうした、GM?」


GM : 「いや、あれ。プログラムを受け付けない……シュンスケ君、ロックをかけた? いや、違うなこれは……」



モリビトの少女 : 『シグ、といったか?』


シグ : 「……あぁ、何だ?」



GM : (!! 俺のプログラムを受け付けない……また、システムの暴走か、モリビトの少女が勝手に喋っている……これは、若葉君の意志か?)



モリビトの少女 : 『アイラ、というのはお前たちの連れだな?』


シグ : 「!! アイラを、アイラを知ってるのかっ。何処に、何処にいる、アイラは……」


モリビトの少女 : 『……もしお前が彼女を取り戻したいと思うのなら……私に、ついてこい。ただし……一人でな』


 少女は、森の奥へと消えようとする……。



シグ : 「待て!」


 その手をつかもうと彼女にシグが触れる。

 その瞬間……二人の姿が、その場から消えた……。





リン : 「えっ、シグ!?」


ヒルダ : 「坊ちゃん!?」


シュンスケ : 「馬鹿な、消えただと……どうなっているGM? システムは、プログラムは……」


GM : 「知らん! ちょ、まってくれ、今追いかけるから、そう遠くはいってないと……」


シェヴァ : 「大丈夫だよ」


シュンスケ : 「シェヴァ? だが、ここでシグまで意識を取り込まれてしまうと、シグのプレイヤーもまた……」


シェヴァ : 「モリビトの子は、一人でこいっていったんだ……二人で話したいんだよ、行かせてやろうよ」


シュンスケ : 「だが……」


シェヴァ : 「大丈夫だって、俺たちのリーダーがそんな簡単に取り込まれるような事、ないからさ……今信じてまとう、な?」


シュンスケ : 「シェヴァ……」


ヒルダ : 「そうだな……暫く、待ってみよう、いいな、リン?」


リン : 「はい……は、い……」




> モリビトアイラと



 シグの前に現れたのは、モリビトたちの集落のようだった。

 画面には現れない空間であるのは理解出来る。

 何か政(まつりごと)を執り行うような建物の中、シグはモリビトの少女と二人歩いていた……。



シグ : 「なぁ、何処まで行くんだ……結構歩いてるよな、これ?」


モリビトの少女 : 「ワカバ」


シグ : 「ん?」


モリビトの少女 : 「ワカバ、は私の名前だ」


シグ : 「!! マジで?」


ワカバ : 「……本当の名はもっと長い。だが、私の名の中で人間で発音出来る部分は、そこだけだ」


シグ : 「はぁ……そういう設定なんだ?」


ワカバ : 「この世界のエトリアではな……さぁ、ついたぞ」


 モリビトの少女、ワカバは扉を開ける。

 するとそこには……石造りのベッドに横たわる、アイラの姿があった。




シグ : 「アイラ! ……アイラ、俺だ! シグだっ……おい、大丈夫か?」


ワカバ : 「樹海を一人彷徨っている所を見つけ、我らで捕らえた……本来は殺す所だが、事情も知らずに彷徨っていたようだからな。呪薬で眠らせている……命に別状はないだろう」


シグ : 「ジュヤク?」


ワカバ : 「グリンヴァルドたちが作る、呪術を用いた薬の事だ……今の彼女はただ眠るだけの道具にすぎない。おこしてやるといい」


シグ : 「起こしてってなぁ…… おーい、アイラー。朝だよー、朝ご飯食べて学校いくよー。 ……起きないぜ?」


ワカバ : 「……そんな事で起きるか」


シグ : 「え? じゃぁ、どうやって……?」


ワカバ : 「物語の姫を起こす時の方法は、相場が決まっているだろう?」



シグ : 「えぇっ、こいつ姫じゃ無ぇーし!」



ワカバ : 「お前のその無粋な言葉で、彼女をどれほど傷つけていたと思うんだ?」


シグ : 「う!」


ワカバ : 「身近すぎて女性として意識せず、ぞんざいに扱っていたのではないか?」


シグ : 「う、う!」


ワカバ : 「してやればいい、減るもんでもないだろう?」


シグ : 「でもなぁ……こういうのは、キャラクターとわかっていても恥ずかしいモンが……」


ワカバ : 「アイラの事は嫌いか?」


シグ : 「いや、別にそういう訳じゃ……」


ワカバ : 「それなら……してくれ」


シグ : 「……」



ワカバ : 「せめてこの気持ち……仮初めの世界でだけでも、本当にしてほしいから……」



シグ : 「…………二人にしてくれないか、アイラと」


ワカバ : 「ん?」


シグ : 「こーいうの、人に見られてするの好きくねーんだ……いいだろ?」


ワカバ : 「……そうか、わかった」



 少女は部屋から出る。

 後にはただ二人が残された。




シグ : 「若葉……」


 指先が頬に触れる。


シグ : 「俺は何時だって笑っているお前の笑顔に、鈍感に振る舞っていた……お前の本心に気付いていながら、そう振る舞う事で受け流す。俺は、それを許してくれていたお前に……甘えすぎていたのかもしんねぇな……」


 眠り続けるアイラの吐息が微かに感じられる。


シグ : 「……でも、俺にはお前が必要だ。俺の背中を押してくれる相棒が、いつも傍らで笑っているお前が、若葉が……」


 触れた指先は暖かい。



シグ : 「俺の傍らに若葉、お前が必要なのと同じように……いや、それ以上にだ。シグには背中を任せられる相棒が……アイラ、お前が必要なんだよ。だから……」


 影が、近づく。



シグ : 「…………帰ってきてくれ」



 暫くの沈黙の後、寄り添いながら、シグは優しく彼女の額に口付けをする。

 僅かな静寂、その後で。



アイラ : 「…………ん」


 アイラの身体が、僅かに動く。



シグ : 「アイラ、アイラ……俺だ、わかるか、アイラ!?」


アイラ : 「んぅ……もぅ……うるさいなぁー、シグは……何よ、はふぅ……せっかく、スキヤキに大量の牛肉を投入して、あと少しで食べれる状態になってたのに……もー」


シグ : 「なぁっ! 何がスキヤキだよ、人が心配してたってのに……」


アイラ : 「心配、何で……あれ?」


 立ち上がろうとするアイラの身体が、大きく傾く。

 どうやら、まだ立てないようだ。


アイラ : 「あれ、あれあれ? おかしいよ、アイラさん……たてな……」


シグ : 「アイラ? 大丈夫か?」


アイラ : 「それに、何だろ……今日のアイラさん、凄く眠い……」


 そして、アイラを支えるシグのその腕の中で再び眠り始めた……。


シグ : 「ど、どうなってるこれ、どうすれば……」


ワカバ : 「……心配するな、薬の影響だ……エトリアに戻ればまた、彼女は戻ってくるだろう」


シグ : 「!! ワカバ……?」


ワカバ : 「……意地悪だな」


シグ : 「? 何が?」


 その時。

 モリビトの少女、その顔が見知った顔になる。



ワカバ? : 『私にはしてくれないの、当然だけど……アイラにくらいいいじゃないの。けち』



シグ : 「……何いってんだよ。まだシグにとってもアイラは、その。あれだ……妹みてぇなもんだ」


ワカバ? : 『ぶー……』


シグ : 「そんな顔してねぇでっ、とっとと帰ってこいっての……いつまでもお前の匂いが残ったアイラじゃ、シグだって本気になんねーぞ」


ワカバ : 『そっか……ね、シグ?』


シグ : 「……何だよ」


ワカバ : 『……あの。シグは……アイラの事、好きになってくれるかな……アイラと、ずっと一緒にいて……』


シグ : 「……先の事は、これからだし。それは俺が決める事じゃねぇ。けど……シグにはきっと彼女が、必要なんだろうぜ」


ワカバ : 『そっか……大切なんだね?』


シグ : 「……あぁ、大切だ。ずっと一緒だった、大切な相棒だ。今までも……これからも、な」


ワカバ : 「そう……」



 モリビトの少女、ワカバからあどけない表情が消える。



ワカバ : 「彼女を連れて戻れ、来た道は分かるな?」


シグ : 「ん? あぁ……って、ちょっと待てワカバ。お前はどうするんだ……」


ワカバ : 「私はモリビト、もう二度とお前達の前には姿は現さんよ……帰らなければいけない所が、あるからな……」


シグ : 「ワカバ!」


 その言葉を最後に、少女は消え……。

 そして二度と、シグ達の前に姿を見せる事は、なかった……。



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 1時間後、枯れ森。

 さばみそギルドご一行。



シュンスケ : 「それにしても遅いな……GM、プログラムの様子は?」


GM : 「かわりない……まだシグたちもみつからん。うーむ、我ながら複雑なプログラムを組んだもんだ! あはは、天才って時に罪だな!」


ヒルダ : 「笑っている場合か!」


シュンスケ : 「どうする……俺がプログラム・ラタトスクを用いて探してもいいが……」


シェヴァ : 「…………」



リン : 「ちょっと待ってください! あれ」



 リンが指し示した方向から、ゆっくりと影が浮かび出る。

 そこには




シグ : 「よぉ! 遅くなって悪かったな、みんな!」



 笑顔のシグと。

 その腕に抱かれ眠るアイラの姿があり……。




リン : 「シグ……アイラさん!」



 そして、仲間たち全ての笑顔が、そこにあった。




> 幕劇 〜 白い森で眠れ





 幕間劇に興じよう。

 彼女と心を結ぶため。


 大切なあの人を、呼び戻す為。


 キミはこの物語に触れても、触れなくてもよい。



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 セッション終了、3時間後。

 都内、某病院。




桐生和彦 (シグ) : 「おかしいッ……何が悪いんだ、若葉……何で目覚めない?」



 未だ昏々と眠り続ける若葉の傍らに腰掛け、桐生和彦はそう呟く。


 「ニーズホッグ・システム」

 このシステムを繋げば、理論上は彼の妹……若葉の意識は戻ってくるはずだ、と西園寺馨は言った。




西園寺 馨 (GM) : 「今まで、システム内のサーバーに沈んでいた若葉君の意識を引き上げて、ニーズホッグ・システム内のデータとして封じる事に成功した。これを彼女に装着すれば元に戻るはずだよ、理論上は。ね?」



 西園寺馨はそう説明した。

 説明通りの操作をした、だがまだ意識は戻らない。

 時間だけがただ、過ぎていった。



桐生 : 「……若葉」


 西園寺の言葉を振り返り、足りないモノを思い出す。

 操作を間違えないよう、西園寺馨の教え子である椎名淳平(シュンスケ)の言う通りにした。

 だがそれでも、彼女は目覚めない。



西園寺 : 「あとは、きっかけさえあれば目覚めるはずだよ、うん」



 西園寺はそうとも言っていた。

 だがきっかけ、とは何だろう。

 絵本のようにキスでもしてやればいいのか……。



桐生 : 「無理に決まってるだろ……兄妹なんだぞ……?」



 自分の言葉を否定するように言う。

 その時、桐生の目の前にある携帯の着信音がなった。


 病院だというのに携帯……見れば、妹である若葉の携帯電話のようだ。

 今まで誰もならさなかったのか……電源を切り忘れてそのまま、置いてあったのだろうか……



桐生 : 「ちぃ子? 知らない名前だな……」



 おそらく若葉が倒れた事を知らない友人からの連絡だろう。

 そう思い携帯電話を置く、桐生の目に……なつかしいものが入った。



桐生 : 「お、これは……」



 若葉が小さい頃好きだった 「結婚ごっこ」 の時につかっていた、けっこんゆびわ。

 ビーズで出来た小さいモノだがお気に入りで、ずっと大切にしていたものだ。




桐生 : 「……けっこんゆびわ、か」



 「大きくなったらお兄ちゃんと結婚するんだよ!」

 
小さい頃、よくそういって若葉が、自分を困らせていた事を思い出す。


 「若葉が結婚してあげるから大丈夫だよ!」

 
何かとトラブルの多い女性と縁が多かった自分が、手痛い失恋をして凹んでいるといつも彼女はそう慰めてくれたっけ。


 
桐生はそれを思い出し、彼女の小指に 「けっこんゆびわ」 をはめる。



桐生 : 「若葉……ありがと、な」



 はにかんだ笑顔が自然と浮かぶ。

 ……半ば諦めが入っていた、その時だった。



若葉 : 「ん……」



 僅かに彼女が、身動ぎする。



桐生 : 「!! 若葉! 若葉、わかるか……若葉! 俺だ……」


若葉 : 「……ちょ! 声、おっきいよ……兄さん! もー、鼓膜破れたらどーするの!」



 いつもの若葉。



若葉 : 「……もー、せっかく上等のお肉でスキヤキ食べる所だったのに、兄さんが声かけるから台無しだよ!」



 いつもの若葉だ。



桐生 : 「……若葉!」



若葉 : 「きゃぁ! な、何?」



 桐生は黙って、彼女を抱きしめる。



桐生 : 「…………良かった。ホントに、良かった……」



 時は、ようやく動き始めていた。




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 一方その頃。

 都内某所(いつものばしょ)。




神崎高志 (フィガロ) : 「はいはい、こんばんはっと。西園寺先生、居るかねぇ?」



西園寺馨 (GM) : (ふわふわ) 「……空中遊泳〜」



神崎 : 「!!」



西園寺 : 「!! しまった! 今日はもう誰も来ないだろうと思って油断して、3D映像なのをいい事に無重力気分で空を浮いていた所を見られてしまうとは! くそ! 違うんだ神崎君! キミはいま空を飛んでいる人を見たかもしれないがこれは幻で……」



神崎 : 「あはは……誤魔化さなくてもいいさね、事情はもうムツミからきいてるよ?」


西園寺 : 「あ、そう……だったら遠慮なく浮いてるよ?」 (ふわふわ)


神崎 : 「だからって、浮く必要もないと思うけどねぇ……」


西園寺 : 「いいだろ、別に。およそ体重というものを持ち合わせていない俺は、君たちにあわせて地面歩くのめんどくさいんだからさ……それより、何のようだ? 男の夜這いは非歓迎だよ?」


神崎 : 「俺だって西園寺さんはお断り、さね。 だいたい、夜這いったって出来る身体がないじゃないさね、アンタには」


西園寺 : 「そりゃそうだけど、気分の問題だろこういうの。で、何の用事だよ。俺、キミと一緒で男と話すのはあんまり好きくないけど?」(笑)


神崎 : 「いや……ムツミ嬢にきいてアレコレ調べているうちに聞きたい事が出来て、ちょっといいかねぇ?」


西園寺 : 「俺とサシでかい? んー、まぁいいけど、男と語らい極力避けたいから、手短にね?」


神崎 : 「俺だって同じさね……」


西園寺 : 「はいはい……で、何の用?」



神崎 : 「俺は、椎名淳平が好きだ」



西園寺 : 「え!?」



神崎 : 「……といっても、ヘンな意味じゃないよ? 今時珍しいくらい純粋に、一人を思い続け……たった一人の為に、自分の身体を差し出しても構わないってぇあの根性ね。俺は、あれが好きなんだよ。 世界で一番薄っぺらい一時の感情だけで驚く程に鋭い信念を貫く事が出来る、あの男を……尊敬している、って意味でね?」


西園寺 : 「……あぁ、そう? ビックリした」


神崎 : 「何でビックリしてるのかねぇ」



西園寺 : (だってキミ、ちょっとガチっぽいんだもん……シュンスケ@椎名淳平に対するセクハラ度合いとかさ……)



神崎 : 「俺は愛情だの友情だの、そんな一時の熱病のような感情で何でも出来る奴なんていないと信じていたし、実際現実はそうだと思っているよ? でも、ジュンペイは違う……アレはそういう事だけで何でもする、不器用でだが純粋な男だ……」


西園寺 : 「ん、概ね同意」


神崎 : 「……だから聞きたい。 被験者X の事を、だ」


西園寺 : 「……」


神崎 : 「西園寺馨の研究を調べ調べていくウチに、この研究に大きく関わっている人間……被験者Xの存在が、明らかになってきた」


西園寺 : 「……すごいね、キミ。それ、極秘中の極秘事項だったはずだぜ? ……俺の教え子たちだって簡単に手ぇ出せないようにしてあったはずなんだけど……やっぱ死ぬとデータもおざなりにされちゃうのかなぁ?」


神崎 : 「……被験者Xは、プログラム・フレスベルグの基礎となるデータを取る為に ある手術 を受け……その後幾度も、西園寺馨の実験……いや、人体実験といった方がいいかねぇ、西園寺教授? データをとるために、肉体を提供している……」


西園寺 : 「……」


神崎 : 「……被験者Xの名前は、最後まで明らかにされてない。が……データを見る限り、非道い事したみたいだねぇ。薬剤の投与を幾度も繰り返し、かなり大がかりな手術もしている……一体何度この身体を弄んだのかね?」


西園寺 : 「……手術はそんなしてないよ? 流石に大がかりな真似は、バレるのが早いから」


神崎 : 「だが弄んだのは事実だろう? ……お前はこの被験者Xの身体に、短期間で大量の薬剤を投与し、実験と称して数多の苦痛を与える事でデータをとっていた……データ通りであればとっくに死に至る程の苦痛だ……これを……被験者Xに与えていた、そうだよねぇ?」


西園寺 : 「……」


神崎 : 「……被験者Xとは、椎名淳平の事だよな?」


西園寺 : 「……それは」


神崎 : 「お前は! 健康であった椎名淳平の身体にメスを入れる口実をつくる為! あいつに通常摂取しないような大量の服薬を促し……手術台であいつの身体に、自らの研究の為の手術を行った……そうだよな」


西園寺 : 「……」


神崎 : 「そんな事までして……人の命を踏みにじってまでアンタたちのしたかった事が、これか? アンタたちは……こんな下らないモノの為に、ジュンペイを……あいつの身体を、命を、運命を、弄んだっていうのか?」


西園寺 : 「…………俺は」


神崎 : 「何とかいいなよ、西園寺馨の分身


西園寺 : 「……」


神崎 : 「いや、アンタがただの複写である事は分かってるさね……西園寺馨に生み出されたあんたに、西園寺馨の生み出した罪についてあれこれ言うのはお門違いってのもさ。だが……」


西園寺 : 「いや、いいんだ神崎君。俺は……それだけの事をした西園寺馨そのものの意志と、知識を受け継いでいるにも関わらずまだ、シーナ君の傍にいようとしている……普通なら許されないよな……」


神崎 : 「……」


西園寺 : 「……そろそろ、頃合いだな」


神崎 : 「何の、事……さね?」


西園寺 : 「……いや、若葉君もそろそろ戻ってきているだろうし、全てを話してもいい、頃合いだろうな、と思ってな……聞きたいだろ、西園寺馨が椎名淳平にした事。 そして、西園寺馨がしたかった事。 ……全て聞かせてやるよ、次のセッションでな」


神崎 : 「本当かね?」


西園寺 : 「嘘つかないよ。それでなくても俺は人間に嘘を言わないようプログラムされてるから……ズル休みしないで来たまえよ」


神崎 : 「……ま、いいさね。そう約束するなら、今は信じてやるさね」


西園寺 : 「あぁ……」



 ……神崎高志は、何も言わず部屋を出る。




西園寺 : 「神崎高志、か」



 サーバーは熱を帯びた音をあげて唸る。



西園寺 : 「いい友達をもって、羨ましいよ。シーナ君」



 時は確実に巡り、終わりの日が、近づいていた。




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