> 界樹の迷宮を、あたかもTRPGのリプレイ風にかいてみるプレイ日記。





までのあらすじ >


 新しい仲間たちが弱いので鍛えていたら、ワイバーンを倒せる程度に強くなってしまったので、ボチボチ先に進もうかと思います。




> カルキ、清流、の花



 前回のセッションの2日後。

 都内某所(いつのもばしょ)……。



シグ : 「さて、ワイバーンを倒す程に強くなった我らさばみそギルドの面子であれば、怖いモノなど何もないッ! という訳で、ぼちぼち迷宮の奥を目指そうと思うんだけど、シュンスケ。どう思う?」


シュンスケ : 「ん……そうだな、頃合いだろう」


シグ : 「よし、軍師参謀殿の許可も下りたし、今日で第三階層を抜けるつもりで頑張るぞ、皆気合いいれてけよッ!」



一同 : 「おー!!!」



GM : 「と、そんなシグのやる気からスタートした訳だけど……早速敵が現れたぞ。キミらの天敵のフォレストバットだ!」



シグ : 「へへッ。昔の俺たちならまだしも、もう簡単にやられるようなさばみそじゃ無ぇぞ、姉弟子!」


ヒルダ : 「あぁ、任せろ坊ちゃん! 我が一太刀を喰らえ!」


GM : 「あぁ、真面目に殴られると痛いな……結構ふらふらだ」


フィガロ : 「追撃、いくさね! 射抜く!」


GM : 「っと、さらにフィガロも真面目に攻撃するか……うん、スムーズに倒れた。やっぱりキミたちも強くなってるね、もう13階の敵も問題なさそうだな」


リン : 「ヒルダさん、凄いです!」


ヒルダ : 「むむ、そ、そうか?」 (照)


シュンスケ : 「フィガロも、真面目に戦えば強いじゃないか。見直したぞ」


フィガロ : 「見直した? 惚れ直したの間違いじゃないのかねェ、ね。シュンスケ君?」 (触)



シュンスケ : 「無闇やたらに俺の髪に触るなッ! 全く……誉めて損した気分になったのは初めてだ!」



 と、何とか第三階層の敵も楽々といなせるようになったさばみそギルドご一行。

 チームワークもより強固に(?)なり、さらに地下へと進んでいくのだった……。




GM : 「という訳で、おいでませ地下14階〜。新しいフロアでーす」


シグ : 「へへっ、一番のり!」


ヒルダ : 「先に行くな坊ちゃん、坊ちゃんを守るのが私の仕事なんだからな!」


リン : 「ここは、どういう所なんですか?」


GM : 「そうだね、13階同様水の多いフロアだ……いや、13階以上かな。殆どが湖になっていて、そこに島が点在している印象だね」


シグ : 「湖ィ?」


シュンスケ : (遠くの浮島を眺めながら) 「む……どうやら向こうの浮島に、先の道があるようだな……だが、どうやって向こうに進めばいいんだ?」


フィガロ : 「泳いで渡れって事じゃないのかねェ、見た所道もないし……」


ヒルダ : 「泳いで、だと!?」


リン : 「えぇぇ、ボク、水着もってきてないですよ!?」


フィガロ : 「いいじゃ無いのさ、でも。見られたって減るモンじゃないし……」


GM : 「フィガロが言うと何か減りそうだな」


シュンスケ : 「犯罪の匂いすら感じるぞ、俺は」


フィガロ : 「ちょ、失敬だねお前たちは!」 (笑)



リン : 「うー! でも、恥ずかしいです……もっと、ダイエットしておくんだったよぉ」


ヒルダ : 「? リンは今でも痩せてるだろ?」


リン : (かぁっ) 「そ、そ、そんな事ないです。ボクなんて、胸はぺったんこだしくびれてないし。ううう、ペンギンみたいなこの身体、シグに見せるウェストがありませんよぉ……ヒルダさんが羨ましいです……」


ヒルダ : 「わ、私だって筋肉質だし……他人様に見せる身体ではないぞ……」


GM : (女性同士の麗しい会話だ……ひそひそ声で他の男性面子は気付いてないが、俺はGM特権で全て聞くコトが出来る。GMでよかった……)


シュンスケ : 「? どうしたGM、顔が見た事がないくらいニヤけているぞ?」


GM : 「そ、そんな事はない! 気のせいだ! 気のせい!」


シュンスケ : 「それならいいが……」


シグ : 「なぁ、泳ぐはいいとしてさ。脱いだ装備はどうするんスか、フィガロのアニキ?」


フィガロ : 「そんなの、頭にのせて泳げばいいんじゃないのかね?」


ヒルダ : 「……間抜けな格好だな」 (泣)


フィガロ : 「でも、先に進めないのは困るだろ? ここは勇気を持って……レディは裸が嫌なら、エトリアから水着っぽいものを買ってくればいい訳だしさ、出来るだろGM?」


GM : 「できなかないけど……」


ヒルダ : 「水着なら抵抗はないが……」


リン : 「ううう、でもボク恥ずかしいです、やっぱり……」 (照)


シグ : 「でも俺は見たいかもな、リンの水着……」 (ぼそ)



リン : 「えぇっ! えっ!? シグっ。もー、シグのえっち!」



シグ : 「はは、悪ぃ悪ぃ」


GM : (俺もリンちゃんのワンピース水着や、ヒルダ嬢の白ビキニ。ここには居ないがアイラ君のビキニ姿を見たいけれども、それを言ったらシグ君なら笑って済ませてもらえるが、俺はきっとセクハラ扱いされるんだろうなぁ……悲しいなぁ……)



シグ : 「でも、本当に泳ぐしか無ぇなら……仕方ないよな、シュンスケ」


シュンスケ : 「……そうだな、やむを得ないだろうが……」 (汗)


フィガロ : 「そうと決まれば男は度胸って奴さね、さ、シュンスケ君! 率先して泳ぎにいくといいさね!」 (げしっ!)


シュンスケ : 「!! ちょっ、フィガロ、俺は……」 (ざばしゃあーん!)



シグ : 「シュンスケ!?」



シュンスケ  : 「…………」 (ぶくぶくぶく)


リン : 「大丈夫ですか、シュンスケさん服ごと飛び込んだ気がするんですが……」



シュンスケ : 「…………」 (ぶくぶくぶくぶく)



シグ : 「というか、浮いてこないんだが……」


ヒルダ : 「……なぁ、坊ちゃん。一つ、いいか?」


シグ : 「ん。何だ、姉弟子?」


ヒルダ : 「私の知っているシュンスケ・ルディックという男は、昔から運動神経がぷっつり切れていてな。確か、生粋のカナヅチだったと思うんだが……」



シグ : 「え!?」



シュンスケ : 「…………」 (ぶく)


フィガロ : 「あ、泡が途絶えたけど、これ息止まっている系かねぇ?」




シグ : 「ちょっ、シュンスケー! 死ぬなぁー!!!」 (慌てて飛び込む)



 ※ 沈んでしまって浮いてこないシュンスケさんを、リーダーが助けに行ってます。 暫くお待ち下さい。



シグ : 「はぁ、はぁ……大丈夫だったか、シュンスケ?」


シュンスケ : 「はぁ……はぁ……20年前に死んだ犬のタイガがリアルに心配そうな顔をして対岸でくぅん?と首を傾げている姿が見えたぞ……」


GM : 「タイガ? 犬なのにタイガー(虎)?」


フィガロ : 「あははははは! 泳げないって聞いてたけど、ガチで全然泳げないんだねぇシュンスケ君は!」



シュンスケ : 「笑い事じゃないっ! 20年前に死んだタイガが 『大きくなったねシュンスケ君、でもこっちに来ちゃ駄目だよ? ボクは一人でも寂しくないから早くみんなのところにもどってあげて。本当にシュンスケ君がこっちに来る必要が出来た時には、またいっぱいあそんでね!』 って顔して吠えなければ俺はそのまま虹の橋を渡る所だったぞッ!」


GM : 「おい、フィガロ君。普段論理的なシュンスケ君が、おもわず叙情的なたとえを持ち出す程にテンパっているぞ?」(笑)


フィガロ : 「いやぁ、ゴメンゴメン。まさか本当にここまで非道いカナヅチだとは思わなかったんさね!」


ヒルダ : 「いや……だがこれでは、泳いで渡るのは無理そうだな……」


フィガロ : 「そうかい? シュンスケ君がカナヅチだって事だけなら、俺が抱えてやってもいいけど……」


シュンスケ : 「いや、この泉思いの外深いからな……泳ぐのは危険だ。それにお前に抱きかかえられる事に対して激しい抵抗がある」


リン : 「確かに、触らなくていい所まで触りそうです……」


フィガロ : 「そんなぁ……あーあ、シュンスケ君があんまり俺の事をセクハラ呼ばわりするから、とうとうリン嬢までに嫌われちゃったじゃないのさ。どうしてくれるさね、シュンスケ君? 責任とってくれる?」


シュンスケ : 「断る! だが、どうする。これでは先に進めないではないか……」


フィガロ : 「そうさね……仕方ないから、そこにある蓮の花みたいな船にのって行くとするかね?」



シュンスケ : 「は?」



フィガロ : 「だから、蓮の花みたいな船。あれ、のって向こう岸まで渡れば安全じゃないのさね?」



シュンスケ : 「そうだな……って、何故それがあるのなら早く言わないんだ、貴様は!!」


フィガロ : 「細かい事、気にしちゃ駄目さねシュンスケ君? 早死にするよ?」


シュンスケ : 「くぅ……!!!」


GM : (わざとだ……絶対わざとやってる、フィガロ……)



> 若色の少女



GM : 「という訳で、蓮の花をつかって浮島へ……」


リン : 「蓮の花の船って、綺麗ですけど……ぐらぐら揺れて、思ったより乗り心地は良くなかったですね……」


ヒルダ : 「あ、あぁ……べ、べ、別に怖くはなかったがな!」 (ぶるぶる)


シグ : 「足、滅茶苦茶震えてるぜ、姉弟子?」


ヒルダ : 「ち、ち、違う! これは武者震いだ!」 (ぶるぶるぶる)


GM : 「……と、キミたちが蓮の花の船に不平を漏らしていると、向こうから人影が横切る」


シュンスケ : 「人影? ……レンとツスクルか」



GM : 「いや、彼女たちとは違う……片手に弓をもった、まだ幼さを残した少女だ……姿は……こんな感じ、か」 (画面に人影の映像を投影させる)



シグ : 「!!」



 目の前に現れたのは、どこか幼さを残した、まだ少女と呼ぶべき年代の乙女である。

 片手に弓をもち、質素な服装。

 深緑色の髪は、最初に踏み入れた迷宮その木々の若葉色を思い出させる……。




リン : 「あれ、何だろ、何処かで見たような……気がしますけど……」


シグ : 「…………嘘だろ……あいつ……


GM : 「……彼女は敵意の宿った瞳できみたちを見据える。 (少女) 『これ以上、森に足を踏み入れるな! ここは、我らの聖地……警告を無視し立ち入ったのなら、その命、無いと思え!』 彼女はそう告げると、慣れた足取りで迷宮の奥へと消える……」




シグ : 「……待てっ、お前!」



ヒルダ : 「……あれが、眼鏡男のいっていた、迷宮の奥に居る亜人、か?」


フィガロ : 「亜人というか、人そのものって位、俺たちに近い外見だったねェ……」


リン : 「……でも、怖かったです。仲良くなれると良かったんですけど」


シュンスケ : 「あぁ……これはもう少し調査が必要だな、シグ。どうする。シグ……」



シグ : 「……追いかけるぞ!」



シュンスケ : 「……シグ。どうした、お前……」




シグ : 「今の人影を、すぐに追いかけるんだ!」



リン : 「ど、どうしたんですか、シグさん?」


シュンスケ : 「そうだ、冷静になれ……もう少し慎重に進んでもいいだろ……?」




シグ : 「ボケボケしてらんねぇんだよ! っ……お前らがいかないなら、俺一人でも行く! 悪い、先に進むぞ!」




リン : 「!! 待ってください、シグ。ボクも行きますから!」


ヒルダ : 「そうだ、坊ちゃん! 一人になるな!」



 シグを追いかけ、リンとヒルダが先へと進む……。



フィガロ : 「ありゃりゃ、置いてかれちゃったねぇ……どうするよ、シュンスケ君?」


シュンスケ : 「どうするも何も……俺たちだけで迷宮に留まっていられる訳ないだろう? 追いかけるぞ、フィガロ!」


フィガロ : 「そう? 俺としてはもー少し、シュンスケ君とこうやって湖岸のデートを楽しみたい気持ちもあるけど……」



シュンスケ : 「俺としてはそれを避けたい気持ちしか、無いからな!」




GM : 「かくして、わき目もふらずに進んでいくシグを追いかけて皆ついてくる……と、程なくして階段が見つかる」


シュンスケ : 「……地下15階の階段か、今までのパターンだと、ここを下れば間もなくボスの登場だろうな」


リン : 「はぁ、はぁ……」


GM : (普段は女性陣の歩く速度を気にして、わざと遅く歩いているシグが、リン君の呼吸が上がっている事も気付かず進んでいる……って事は、よっぽど急いでるって事だな……)



フィガロ : 「あーあ、リン嬢も呼吸あがってるじゃないのさ。大丈夫かい?」


リン : 「えっ? ぼ、ぼ、ボクは大丈夫ですよ、へっちゃらです?」


フィガロ : 「……にしたって、男の俺からしてもリーダーの歩みに会わせるのは正直、キツいくらいさね。な、リーダー。急ぐのはいいが、せめてもう少し歩くのをゆっくり、してくれないか? このままじゃ、敵と戦う前に皆ばてちまうさね?」



シグ : 「……行くぞ」



フィガロ : 「……はぁ、俺の言葉も届かないくらい熱くなっちまってるのかね、全く……仕方ない奴だよ」 (と、いいながらフィガロは徐に拳を振り上げ……)


 ばきっ!


 鈍い音が迷宮に響く。

 フィガロの右腕が、シグの頬をとらえた。



リン : 「きゃぁ! 大丈夫ですか、シグ!」



シグ : 「……痛ぇじぇねぇかっ、何しやがんだアニキ!」


フィガロ : 「……おっと、ようやく俺の事を認識したかね。全く……お前はスポーツマン特有の集中力から、熱入っちゃうと周囲の事全く見えなくなっちゃうの、悪い癖だよ?」


シグ : 「……はぁ? 何の事だよ?」


フィガロ : 「ほら、これだ……俺はね、お前が突然急いて迷宮を進むようになったから、他の面子がお前の足についてけない、って言ってるんさね。ほら、もっと周囲を良く見ろ……お前は一人でここまで来た訳じゃないだろ?」



 周囲を見れば、呼吸のあがるリンやヒルダの姿が見える。

 その後を、やや遅れてシュンスケがついてきた。




シグ : 「え……あ、俺……あれ、俺、そんな急いでた、か?」


シュンスケ : 「そうだな……俺の足ではとてもついていけない程度には、急いでいたな」 (←最初は一緒に走っていたが、途中諦めて歩きだした)


シグ : 「あー……」


フィガロ : 「リンもヒルダも、お前の事心配だから必死でついてきてたけど、息切れしてて見てらんない位疲れてたよ。 お前が何でそんな急ぎたくなったか、その理由はわかんないけどさ……お前、今は一人じゃないんだから。もう少し、回りの奴の事見てやりなって、な?」


シグ : 「う……そ、そう、だった……な。 悪い、リン……姉弟子」


リン : 「ぼ、ボクは大丈夫です……」


ヒルダ : 「私も、大事ない……だが、もし差し支えなければ、シグ。お前の急ぐ理由を、聞かせてくれないか?」


シグ : 「へっ!?」


シュンスケ : 「そうだな……お前は、あの迷宮で警告を発した少女の人影を見た瞬間から、急に歩みを早めた気がする。一体、何があったんだ?」


シグ : 「……そう、だな。 あぁ、わかった。少し話しておく。俺の気のせいかも、しれないが……」



 シグはそう言いながら、少し迷宮の先を見据える。

 言い渋るような素振りを見せた。

 だが、やがて意を決したように口を開くと、その理由を語り始めた。





シグ : 「あの人影、俺(プレイヤー)の妹に……そっくり、だったんだ……俺の知っている妹、若葉の子どもの頃に……」



GM : 「!!」



ヒルダ : 「……本当、か?」


シグ  : 「わかんねぇ……けど、遠くから見たら……そっくりだった……」


フィガロ : 「なるほどねェ……」


シグ : 「……悪い。こんな所に、あいつが居る訳ないって。頭のどっかで分かっているんだけど、な……あんまりに、似てたから……」


シュンスケ : 「……」


リン : 「そっか、だからボク、見覚えがあったんだ……」


フィガロ : 「はぁ……そういう事なら、シグが急ぎたくなる気持ちも分かるね。悪かったよ、殴ったりしてさ」


シグ : 「いえ、大丈夫ッス。アニキのおかげで、目が覚めましたから……でも」



 ぼぐらっ!



フィガロ : 「まそっぷ! っ、急に何するさね、シグ! 俺のビューティフルフェイスが! 軽く飛ぶくらいの力でブン殴るなんてぇ!」


シグ : 「……殴られたのは俺もッスからね。これで、お互い様ッスよ」


フィガロ : 「お互い様って、レベル52のソードマンの拳で、お互い様はないさね……」


シュンスケ : 「俺としては、お前は殴られているくらいで丁度良いがな」




> 迷の守護者、水の主




GM : 「こうして、キミたちはあの謎の人影を追いかけ、とうとう地下15階へやってくる、と」


シュンスケ : 「この階層の何処かに居る可能性は、高いと思うが……」


ヒルダ : 「だが新しいダンジョンだからな。暫くまた、彷徨わないといけないか……?」


GM : 「そう思っていたが、割とゴールは早く見つかる。キミたちが少し進むと、程なくして扉の前から、すさまじい威圧感を覚える……熟練の冒険者であるキミたちからしても。いや、熟練の冒険者である故に分かってしまうのだろう。この扉の奥に、すさまじい能力を秘めたが……居る!」


フィガロ : 「おやおや、早いお出ましだねェ……そういうの、女性に嫌われるよ?」


GM : 「別にモンスターだから嫌われてもいいんだろう?」(笑)


シグ : 「だが、俺としては都合がいいぜ……皆、準備はいいな?」



一同 : (無言で頷く)



シグ : 「よし……行くぞ!」


GM : 「そうして、シグが勢いよく扉を開ける……部屋はまるで泉の中に浮かぶような印象で、周囲は水につつまれ、空も海も、青く深く輝いているその空間は、迷宮の中というより海を思わすね。そんな中……部屋のおよそ中央に、一人の少女が、たっている。彼女は、まるでキミたちがここに来るのがわかっていたようだ……」


リン : 「シグ……?」


シグ : 「やっぱり……似てる。あいつに……そっくりだ……」



GM : 「……キミたちが人影に近づくと、少女は鋭い視線を向ける。 (少女)『森の外、隔離された者達よ……我らが聖地に、無断で何の用だ? 古き盟約により、貴様たちは聖地に入る事は禁じられているはず……』


シュンスケ : 「聖地……盟約、何の事だ……?」


フィガロ : 「さぁ、でも……」



GM(少女) : 「『だが、度重なる警告を無視し聖地に赴くのであれば容赦はしない。守護者の手によって……貴様らを始末する!』



フィガロ : 「歓迎してるって雰囲気じゃなさそうだよ?」


GM : 「そうだね。(笑) 彼女はそう言い、口笛を吹くと、樹海の奥から一匹の魔物があらわれた。 『樹海の守護者、コロトラングルよ……汚れた侵入者どもを、うち砕け!』 そういって、彼女は姿を消す……」



シグ : 「!! 待て!」


GM : 「慌てておいかけようとするが、その行く手を巨大なモンスターが阻む……さぁ、戦闘だ! 敵は……樹海の守護者、コロトラングル!


シグ : 「ちッ……」


GM : 「という訳で現れたコロトラングル、その姿は……」


ヒルダ : 「エイか!」


フィガロ : 「エイだねぇ」


GM : 「エイじゃないやい! コロトラングルだい! さぁ、皆張り切って戦い給え」


シグ : 「くそ……こんな所でもたもたしてられねぇんだが!」


シュンスケ : 「だが落ち着けシグ、こいつを倒さなければ先には進めんぞ……」


シグ : 「そうだな……よし、相棒。とっとと片づけちまうか、何する?」


シュンスケ : 「うむ……水生生物。氷属性に効果があると思えんが、亀の例があるからな。よし、大氷嵐でいこう」



※亀の例 → 永劫の玄王 の事。亀の外見で氷のブレスを吐くが、魔法はどれでも適度にきく。



シグ : 「おお、それだったらチェイスフリーズ行くぜ!」


GM : 「そうか、頑張れ」 (ニヤニヤ)


ヒルダ : 「私は、防御陣形を組もう……リンは、医術防御を頼む!」


リン : 「はい!」


ヒルダ : 「この、ブリュンヒルデ・ロックハートの命にかえても、我が主は守る!」


フィガロ : 「はぁ、ヒルダは真面目だねェ……俺は……防御は充分だろ。長期戦にかけて、安らぎの子守唄を歌うよ」


GM : (フィガロが真面目に仕事をしている……)


フィガロ : 「×××〜××〜×〜♪」


GM : (だが歌っている唄は、安らぎを全く感じない程に卑猥だな……やっぱりフィガロで安心したぜ……)



シグ : 「と、こっちのターンは決まったぜ。攻撃は誰からだ?」


GM : 「……どうやらこっちから、みたいだな。よし、それじゃ早速……コロトラングルの、アイスブレス! この攻撃は、複数人に氷属性の攻撃だぜ!」



シュンスケ : 「!! しまった、アイス……こいつ、氷属性か!?」


GM : 「さぁ、どうだろうねぇ……。(ニヤニヤ) ダメージは、シグ・リン・フィガロ・シュンスケ。 ダメージの平均は70だ!」


シグ : 「70!? 痛ぇな…」


GM : 「さらに追加バステだ! 抵抗に失敗したリンは……睡眠状態ね」(笑)



リン : 「えぇええぇ! ボク、まだ医術防御できてないですよ!?」


GM : 「次に期待だな」 (笑)


リン : 「ううう、しょんぼりです……」


シグ : 「メディックがやられたか。そうなると、回復は出来ないんだよな……シュンスケ、大丈夫か?」


シュンスケ : 「……大事ない、心配するな」


シグ : 「本当か?」


フィガロ : 「はいはい、シュンスケ君お得意のやせ我慢ですよコレ……体力もう、三分の一切ってるじゃないのさ。ま、ここは無理せず回復に徹してもいいと思うよ?」


シュンスケ : 「……そうだな。だがまだやれる、大丈夫だ」


シグ : 「そっか……無理するなよ」


シュンスケ : 「あぁ」


ヒルダ : 「防御陣形は発動している、これで通常攻撃は怖くないだろう……最も、今のアイスプレスのような属性攻撃を連発されると弱いが……な」


シュンスケ : 「次はこちらの攻撃だな……大氷嵐だ! ダメージは、どうだ……」



GM : 「ころとらんぐる に 1 のだめーじを あたえた!」



一同 : 「えぇええぇええぇ!」



シュンスケ : 「くそっ……やはり氷耐性か……」


シグ : 「それだと俺のチェイスも期待できないな……もしかして、ダメージ1ですか?」



GM : 「YES,YES,YES!」 (笑)



シグ : 「ちぇ、完全無駄骨だったか……」


GM : 「ははは、まぁそういう事もあるさ! という訳で次のターンだけど……」


シグ : 「シュンスケ、雷か?」


シュンスケ : 「あぁ、そうだな……」


ヒルダ : 「私は、フリーズガードを組もう。これで同じように全体攻撃を受けても、有る程度持つだろう」


リン : 「ううう、はやくおこしてくださーい!」


フィガロ : 「OK、まっててね……俺はテリアカβをつかって、リン嬢を起こす事にするよ」



※テリアカβ → 状態異常回復用アイテム。睡眠、呪い等のバステを回復する。



フィガロ : 「で、リン嬢。口移しで治すバージョンと、普通に使うバージョンがあるけど、どっちがいい?」


リン : 「ふ、普通でお願いします!」


フィガロ : 「そ、残念」



GM : 「あんまりそういう事やると、本気でリン君が殴りメディになった時に怖いぞ?(笑) さて、次のターンは……」



ヒルダ : 「フリーズガード発動! これで氷属性の攻撃も怖くはないぞ」


GM : 「そうか、残念……あ、このターンの攻撃順番はフィガロ→シュンスケ&チェイスのシグって順ね。今回はコロトラングルが最後だ」


フィガロ : 「はいはい……大丈夫かね、リン?」 (テリアカβ使用)


リン : 「ふぁ……おはようございます」 (ぺこり)


シュンスケ : 「行くぞ! 大雷嵐発動! ダメージは……298か、上出来だな」


シグ : 「チェイスもそんなもんか……ま、1に比べればマシだけどな」(笑)



GM : 「そして、コロトラングルの攻撃は 大海原の浸食 は全体に氷属性の攻撃、だけど……フリーズガードされると弱いな、無効化されちゃったよ」


シグ : 「流石姉弟子!」


ヒルダ : 「当然の結果だ! ……ほっ」




GM : 「で、次のターンだけど……」


シグ : 「真打ち登場、でいくか!」


シュンスケ : 「あぁ、大爆炎でいこう。コレが一番ダメージが期待出来るからな」



ヒルダ : 「私は念のため、フリーズガードに徹しよう。回復が終わったら戦線に入るとするか」


シグ : 「あぁ、頼むぜ姉弟子。やっぱり無効は美味しいからな」


リン : 「ボクは……どうしよう。まだ、医術防御をしてないですけど……」


シグ : 「リンは回復をひとまず頼む、シュンスケは確実にあと一発もらったら花畑の河岸行きだからな」


シュンスケ : 「あぁ、俺としても20年前死んだタイガと会うのは程々にしたい所だ」(笑)



リン : 「はい、だったらエリアキュアを!」


フィガロ : 「俺は、猛き戦いの舞曲……攻撃力上げておくよ。こうも全体攻撃連発されると……早めに片づけて欲しい気持ちも出るからねェ」


GM : 「今回真面目だねフィガロ君は、どうしたの。熱でもあるの?」(笑)


フィガロ : 「さすがに自分の命がかかっている時までふざけてられないさね」(笑)


GM : 「うぃ、ヒルダはフリーズガード。フィガロは猛き戦いの舞曲なら、攻撃はコロトラングルからか。コロトラングルは体当たりだ! 目標は……ヒルダに!」


ヒルダ : 「はぅ……」 (←泣きそう)


GM : 「そんな顔したって手加減してやらんぞ! ダメージは134だ」


ヒルダ : 「ひゃぅっ……ぅ」


シグ : 「姉弟子!」


リン : 「大丈夫ですか、ヒルダさん。エリアキュアです!」


GM : 「しまった、まだリンの行動順番が終わってなかったか。それだったらすぐ回復されちまうなぁ」


ヒルダ : 「あぁ、ありがとう。助かったよリン」


リン : 「……よかった」


GM : 「コロトラングルの攻撃は、終了で今度はそっちの攻撃だけど……」


シュンスケ : 「大爆炎の術式だ!」


シグ : 「おっかけ行くぜ、チェイスファイアだ!」


GM : 「うはぁ……正直それが一番堪えるんだよな。ダメージは大爆炎が395。おっかけ攻撃が451だ」


シグ : 「よし! 次からは連発してこうな、シュンスケ!」


シュンスケ : 「……あぁ」


フィガロ : 「なるほど。それだったら俺は火幕の幻想曲でサポートするさね」


GM : 「ちぇ……弱点がバレてしまったか。だが、コロトラングルもこの程度でへこたれるボスじゃねぇぞ! いくぜ……フリージング・アイ!


一同 : 「?」


GM : 「この効果は……お前たちの攻撃力を、下げる!」



一同 : 「ええぇええぇぇ!」



フィガロ : 「って、恐れる事ぁないさね。俺が猛き戦いの舞曲を使える限り、弱体化はうち消せるからねェ……」


GM : 「……そうなんだよなぁ。 何で居るんだよ、このパーティにバード」(笑)


フィガロ : 「知らないさね」(笑)



シグ : 「よし、次のターンか、俺はチェイスファイアだ。相棒?」


シュンスケ : 「あぁ、大爆炎を準備しよう」


GM : 「そうはさせるか! そんなコロトラングルがすかさず攻撃、テイルコイルだ!」


リン : 「ている……何ですか?」


GM : 「説明しよう、テイルコイルとは単体に封じ技を使うスキルである! 対象の頭、腕、足を縛る技だ! 勿論、相手は死ぬ!


リン : 「え、死んじゃうんですか!?」


GM : 「すまん、ついた。つい、エターナルフォースブリザードのノリで。死なないよ。でも、封じ技が入る」


シュンスケ : 「シェヴァが聞いたらうらやましがりそうな技だな……」


シグ : 「ジ・エンドにエクスタシーって、あいつ博打技好きだもんな」(笑)



GM : 「で、テイルコイルの対象は……シグか」


シグ : 「あぁ、封じられちまったか……とはいえ、チェイス攻撃はセットさえしちまえば封じ無関係だよな」


GM : 「ですよねー。あぁ、攻撃は受けるか……コロトラングル、タイミングだけじゃなくて人選も悪いなぁ」(笑)


シグ : 「あぁ、封じもリンのリフレッシュですぐに治せるよな、リン?」


リン : 「え!? あ、あ、ごめんなさい……シグ。ボクのリフレッシュじゃ、封じまでは治せない……です」


シグ : 「え?」


リン : 「封じ系は、バインドリカバリで……ボク、それ覚えてないんです……」


シグ : 「あれ、えっと……じゃ、テリアカβで……」


シュンスケ : 「シグ、封じ系はテリアカαじゃないと治せないぞ?」


シグ : 「うそーん。じゃ、俺、次から何してりゃ、いいんだ!?」


ヒルダ : 「坊ちゃん、素直に殴ってたらどうだ……」


シグ : 「とほほほ……」



 ※アイテムの買い忘れに注意しよう!



GM : 「そんなこんなしているうちに、俺のターン! コロトラングルの、水のヴェールだ! どうだ。火の耐性を一気にあげたぞ!」


シュンスケ : 「大爆炎の術式……でも、ダメージが5か……これはほぼ、炎の無効化だな……」


GM : 「ふふふ、そうさ! コロトラングルは伊達に迷宮の守護者じゃない! こうして、お前たちの攻撃を防ぐ事も出来るんだぞ!」


フィガロ : 「でも、うち消してやればいいだけだろ? 火幕の幻想曲でうち消してやれば……」


ヒルダ : 「そんなモノに頼らなくても、沈静なる奇想曲があるだろう? それなら、敵の強化スキルをうち消す事が出来るはずだ!」


フィガロ : 「そうだったさね。珍奇な音!


GM : 「何だその略称!?」


フィガロ : でろでろでろでろ でん でん♪


リン : 「しかもドラクエの、冒険の書が消えた時の音がします……」


フィガロ : 「いかにも強化スキルうち消す感じするだろ?」(笑)


シグ : 「冒険の書がうち消された雰囲気の方が強いッス、アニキ」(笑)



シュンスケ : 「だがでかしたぞフィガロ! 大爆炎の術式の効果、これで薄れる事はない!」


GM : 「うううう……コロトラングルと、鳥の居るギルドは相性が悪いな……」



 かくして、少しずつ。

 だが確実にダメージを削られていくコロトラングル。


 途中。




シグ : 「やっと封じ効果がきれたぜ、俺もまたチェイスさせてもらうぜ!」



 シグの復活もあり。

 こちらもまた、崩れる事のないまま少しずつ、窮地を迎える。

 そして……。




GM : 「前のターンで水のヴェールをしておいた、け、ど……」


フィガロ : 「珍妙なる音!」



GM : 「だから何だよその略称! あぁ、でも……やっぱりそれ使われると弱いな、うち消されたぜ……」



シュンスケ : 「大爆炎の術式だ!」


シグ : 「おっかけいくぜ、チェイスファイア!


GM : 「あー、それでもう耐えられないな。うん、無事に倒したよ! 森の守護者はその巨躯を伏し、身動きを止める……コロトラングルを退治した!」



一同 : 「やったー、ぱちぱちぱち!」



 ……戦いは、終わるのである。




> 彼女はその影をして



GM : 「という訳で、無事に敵は倒したが、すでに人影はない……」


シグ : 「…………」


リン : 「シグ……」


ヒルダ : 「……坊ちゃん」


シグ : 「いや、仕方ねぇよな……まぁ、全員無事だったんだし、ひとまずそれを喜ぶとするか」


フィガロ : 「そうさね、それに……迷宮の探索を続けていれば、またきっと会えると思うよ?」


シュンスケ : 「あぁ……相手は俺たちに敵意をむき出しにしていた。いずれは衝突するのが定め、だろうな」


シグ : 「あぁ……」


GM : 「と、きみたちが話していると、ふとその人影が消えた先に、石板のようなモノが落ちている」


リン : 「何ですか、これ。 何か文字がかいて……」


シュンスケ : 「あの敵が落としたのか。ふむ……古代語か? まぁ、これは亜人が居た証拠になるかもしれんな……執政院にもっていってみるか」


フィガロ : 「そうさね。一度戻るとするかい。リーダー!」


シグ : 「……」


フィガロ : 「おい、リーダー!」


シグ : 「あ! な、何だよアニキ?」


フィガロ : 「はぁ、もぅ、ぼーっとしてる場合じゃないだろ? シュンスケ君が帰還の術式を組むっていうから、早くおいでって。じゃないと、この迷宮の最深部に置いてかれるハメになるさ」


シグ : 「げげ……それは勘弁! すぐ行くよ、まっててくれ!」



 シグはそう言うと、一度だけ人影の方を振り返る。



シグ : 「…………若葉」


 そして、一言。

 そう漏らすと、再び仲間の元へと戻っていった……。





> 幕劇 〜 若葉の少女





 仮初めの世界が、現実に浸食する時。

 世界はその境界を曖昧にする。

 キミは、曖昧になった境界線のこの物語に、触れても触れなくても、良い……。


 ・

 ・

 ・



 ……セッション終了後、都内某所。(いつもの場所)



神崎高志(@フィガロ) : 「さて、と。ジュンペイ、そろそろ車出すけど、どうする? お前も乗ってくだろ?」


椎名淳平(@シュンスケ) : 「……あぁ」


西園寺馨(@GM) : 「あれ、シーナ君今日は神崎君とランデブーかい?」


神崎 : 「そうそう……ジュンペイ、どうしても俺と逢いたいってきかなくてねェ……困ったコだよ」



椎名 : 「違う! 別にそんなんじゃ無いッ!」



滝 睦(@ヒルダ) : 「力の限りの否定だな」(笑)


神崎 : 「あらあら、愛情の裏返しと知っていても、お兄さん悲しいねェ……」



椎名 : 「愛情もないッ!  ……澪が。 シェヴァのプレイヤーでもある、七瀬澪が、今日退院するからな」



神崎 : 「そ、それで俺が迎えに頼まれたって訳さね……ジュンペイ、車運転出来ないからねェ」


西園寺 : 「なるほど……通りで、お前達が連むなんてヘンだと思ったんだ」


滝 : 「確かに……椎名が神崎と連むなんて、兎が狼の巣に飛び込むようなモンだからな……」


芹沢梨花(@リン) : 「何だろう、滝さんの言葉に凄く納得しちゃった……」


西園寺 : 「俺からすると神崎君は狼というよりキツネといった印象だがな。いかにも本性を見せない感じが……」


神崎 : 「本性を見せないのはお互い様でしょう、西園寺教授? 俺よりアンタの方がよっぽど立派なおキツネ様だと思うけどねェ……」


西園寺 : 「嫌だなぁ、俺、キミたちに嘘ついた事なんて無いよ?」


神崎 : 「どうだか……ま、いいけどねェ……さ、芹沢嬢! 滝嬢! よかったら、俺の車に一緒にのってかないかね?」


滝 : 「私はいい。お前と一緒だと何されるかわから……」


椎名 : 「差し支えなければ乗っていってくれないか、ムツミ」


滝 : 「ん、何でだ?」



椎名 : 「神崎と二人になると、何されるかわからんからな!」



滝 : (笑) 「わかった、それなら乗っていこう」


神崎 : 「何だよそれ、信用ないねェ……あ。カズ! お前もどうだ、よかったら乗ってくかい?」


桐生和彦(@シグ) : 「…………」


神崎 : 「カズ!?」


桐生 : 「あ! な、何すかアニキ?」


神崎 : 「聞いてなかったのか、全く……いや、俺今日車だからさァ。一緒にどうだって思って。どうだい、おくってくよ?」


西園寺 : 「おくってくって簡単に言うけど、お前の車何人乗りなんだ?」


神崎 : 「さぁ? HUMMER って何人乗りだっけ?」


西園寺 : 「ハマー!? てめぇ、喫茶店経営者の癖にハマー!? お前何やって稼いでンだよマジで! つーか、何処乗るつもりだよハマーで!?」


神崎 : 「近所のコーヒーお届けにHummerで向かっていますさね」(笑)


西園寺 : 「嫌なお届けだなそれ」


神崎 : 「まぁ、多分大丈夫でしょ。という訳で、どうよカズ。のってくかい?」


桐生 : 「あ、俺はいいっすよアニキ。俺も車で来てますから……」


神崎 : 「あ、そ……芹沢君は?」


芹沢 : 「えっと、ボクはその……」 (もじもじ)


桐生 : 「梨花は、俺が送っていくから大丈夫ですよ」


神崎 : 「あ、そ……デート?」



芹沢 : 「えぇええぇえ、そ、その、そんな……」 (おろおろおろ)



桐生 : 「そんなの、決まってンじゃないっすか。(笑) 全く、アニキは相変わらず野暮だなァ」(笑)




芹沢 : 「ひゃぁぁ……和彦さんまでぇ……はぅはぅはぅ……」 (おろおろおろおろ)



桐生 : 「と、言う訳で梨花。いいだろ、今日は俺の車で送ってくから……先に、車に戻っててくれ、な?」


芹沢 : 「はぅうううううぅ……はぃいい!」 



 芹沢梨花が退室する。



神崎 : 「……彼女、真っ赤だったよ……全く、カズは相変わらずしれっとした顔でそーいうから、からかい甲斐がないねェ……」


桐生 : 「アニキ喜ばせる理由思いつきませんから、俺……」


神崎 : 「はぃはぃ……さて、俺もそろそろ車出してこようかね……ムツミ嬢?」


滝 : 「……あぁ、行くか」



 神崎高志、滝睦が退室する……。




西園寺 : 「はいはい、またねー……って、行ったか。皆早いなぁ、忙しいんだなぁ……」


桐生 : 「……えぇ、俺もそろそろ戻ります」


西園寺 : 「そっか……」


桐生 : 「……その前に、一つだけいいっすか、西園寺さん」


西園寺 : 「……何だね、桐生君?」


桐生 : 「今日、あの……世界樹の迷宮、その中で出会った少女の人影は……若葉に、そっくりでした。俺の妹の若葉に……」


西園寺 : 「……そのようだね」


桐生 : 「……何で、なんですか?」


西園寺 : 「…………」



桐生 : 「何で、若葉にそっくりなんですか!? あの少女の顔、仕草……俺の知ってる若葉そのものだ! 一体あんた、アンタ……」



西園寺 : 「…………」



桐生 : 「アンタなのか……? 若葉が、あんな風になったのは……アンタのせいなのか……」



西園寺 : 「桐生君……」


椎名 : 「落ち着け、桐生!」


桐生 : 「!? 放せ、椎名!」


椎名 : 「……西園寺教授に手をあげるな。質問なら……拳がなくても出来るはずだろう?」


桐生 : 「…………ッ」


椎名 : 「だがどうしてもお前が拳をふるいたいと言うのであれば……西園寺教授の前に、俺を殴るのが道理だろう?」


桐生 : 「…………」


椎名 : 「…………もし、若葉君のあれが教授の責任であるのなら……教授とお前たちを引き合わせた、俺の責任でもあるからな……」


桐生 : 「……あぁ、わかった。悪い、椎名」


椎名 : 「気にするな……」


桐生 : 「だが、聞かせて欲しい事がある……あの少女の事だ。アレは、間違いなく俺の妹若葉のガキの頃の姿、そのものだ……」


西園寺 : 「そうだったんだな……知らなかった」


桐生 : 「どういう事だ? 若葉は……未だ、目覚めないままだ……そして、世界樹の迷宮で若葉と同じ姿をした亜人が現れた……これは、偶然なのか? 西園寺教授……」


西園寺 : 「……」




桐生 : 「答えろ、西園寺馨!」




西園寺 : 「…………答えてやりたいのは山々だが、わからないんだ」


桐生 : 「わから……ない? 西園寺、この期に及んで……」


椎名 : 「押さえろ、桐生。西園寺さんは嘘はつかない。理解の範疇に及ばない事態がおきたのは、事実だろう……そうですよね、西園寺先生?」


西園寺 : 「…………あぁ。 そうだ、あの日……若葉君に何かおこったのだとすれば、恐らくそれは俺の責任なんだろう」


桐生 : 「テメェ、やっぱり若葉に何か……」 


西園寺 : 「……七瀬君が入院したあの日、俺の所に若葉君がきたんだ。少し、話をして……若葉君に、せがまれたんだ。ニーズホッグ・システムを作動してくれないか、と……」



椎名 : 「!! ニーズホッグ・システム!? 何てことを……西園寺さん、あれは、俺がいないと……」



西園寺 : 「確かに、あれは椎名君がいなければ制御がおぼつかないシステムだ。が……俺なら、大事はおこらないと計算していた。事実、ラタトスク機関である俺が居れば、問題なくシステムは作動する……むしろ、プログラム・フレスベルグがある状態より安全な運営が出来るはずだったからね」


桐生 : 「……ラタ? 何だ、話がとおらねぇんだが?」


西園寺 : 「ラタトスク機関とは、ニーズホッグ・システムプログラム・フレスベルグ。そして……世界樹の迷宮、その架空の世界を作り出す巨大サーバー・ユグドラシルとを結びつけ、制御するシステムの事だ……」


桐生 : 「……椎名、俺でも分かるように説明してくれ」


椎名 : 「普段、俺たちが楽しんでいる架空の世界、世界樹の迷宮……そのダンジョンはすべて、ユグドラシルというサーバー内にあるプログラムによって組み込まれている」


桐生 : 「……」


椎名 : 「西園寺さんは、その架空と現実の世界をリンクさせ、制御している装置……ラタトスクを動かしているんだ」


桐生 : 「つまり……若葉が、あぁなったのは……」


西園寺 : 「椎名君が普段制御している、プログラム・フレスベルグがいなかった為に、ユグドラシルが何かしらの暴走をおこし、彼女の記憶を吸い尽くしてしまった、と……考えられる」



桐生 : 「だったら、やっぱりテメェが若葉を……」


西園寺 : 「あの時……システムは問題なく作動していた……若葉君も、クエストを終了させた直後は、何ら問題なかったんだ……だから俺も、大丈夫だと思っていた、だが……もしあの直後、彼女が倒れたというのなら……」


椎名 : 「…………」



西園寺 : 「俺のせいだろうな……」



桐生 : 「テメェ、だったら何で早く言わねぇんだよ!」


椎名 : 「落ち着け、桐生……」




西園寺 : 「…………怖かった」




桐生 : 「……っ」


西園寺 : 「……キミたちに、嫌われるのが怖かった……キミたちが、これを恐れてもう、俺の所に来なくなるのではと。そう思うと怖くて、恐ろしくて……言い出す事が、出来なかった……」


桐生 : 「西園寺……?」



西園寺 : 「……俺はこんなにも弱い存在(もの)だったんだな」



桐生 : 「…………黙っていられる方が、胸くそ悪いだろうが」


西園寺 : 「すまん……俺は……こういった人付き合いが、初めてだったものだから……どうしたらいいのか、わからなかったんだ……」


桐生 : 「……聞かせてくれ、若葉が、どうしてゲームの世界になんか現れたりしたんだ?」


西園寺 : 「それは、わからない……だが、可能性の一つとして考えられるのは……彼女の意識、あるいは記憶の一部が、何かしらの原因でサーバー内に吸い上げられ……架空の世界に影響を及ぼしたのだと考えられる」


桐生 : 「椎名、解説頼む」


椎名 : 「つまり、若葉君がゲームの世界に入り込んでしまった、という事だ」


西園寺 : 「椎名君のそれは簡略すぎる気がするが、まぁそうだな」


桐生 : 「元に戻す方法は無ぇのか、若葉を……」


西園寺 : 「如何せん、前例がない事態なので何ともいえないし、ぬか喜びをさせるのも嫌だから確証を持てるまで黙っていようと思ったが……可能性は、ある


椎名 : 「本当ですか、西園寺さん?」


西園寺 : 「今回、ゲーム上に現れた若葉君。あの少女を、とらえる事が出来れば、あるいは……」


桐生 : 「……若葉は、戻るのか? 若葉が……」


西園寺 : 「可能性にすぎない、が……吸い上げられていた記憶を戻せば、元の人格が戻るという点だけいえば……前例がある」


椎名 : 「……」


西園寺 : 「試してみる価値はあると思うよ」



桐生 : 「本当だな、若葉が助かるんだな!」



西園寺 : 「……その可能性は、ある」


桐生 : 「そうか……若葉……」


西園寺 : 「……せめてもの償いに、私も力を尽くそう」


桐生 : 「あぁ……よし!」


椎名 : 「……何処に行く、桐生!?」


桐生 : 「若葉の所に決まってるだろ! よかった……あいつ、治るんだよな! 良かった……」



 桐生和彦が、退室する。



椎名 : 「おい、桐生! まったく……相変わらず、単純な奴だ」


西園寺 : 「……だが、いい奴だな、桐生は。いい友達だ、大事にしろよ」


椎名 : 「当たり前です……それより、西園寺教授。本当の所、どうなんですか?」


西園寺 : 「ん、何がだ?」


椎名 : 「若葉君が、元に戻る可能性です……」


西園寺 : 「………………悲観的な結果を口にするのは性分じゃないな」


椎名 : 「俺の計算だとせいぜい42%、ほぼ五分五分ですよ?」


西園寺 : 「現在の状況だと……32.4%



椎名 : 「!! そんなに……」



西園寺 : 「正直……若葉君の記憶を元通り吸い戻したとしても……何の手も加えられてない脳髄の神秘だ……記憶、記録が正常に脳髄へ戻る可能性は、キミが思っている以上に低いんだよ……」


椎名 : 「…………ッ」


西園寺 : 「あるいは、彼女にフレスベルグを組み込む事が出来れば……可能性は飛躍的に高まるだろうが……」


椎名 : 「……馬鹿な。彼女を、俺の二の舞にしたいんですか?」


西園寺 : 「いんや。それに、もう俺の身体ではキミと同じようなシステムを組み込む事ぁ出来ないからね……」


椎名 : 「…………」


西園寺 : 「キミは私の最高傑作だよ」


椎名 : 「……冗談で言ってるんですか?」


西園寺 : 「科学者として素直な感想だ。冗談なんかじゃないさ。ただ……同時にキミは、私が作り出した最大の罪でもある」


椎名 : 「……そうです、俺は……あってはいけない存在だ……」


西園寺 : 「だが、有り続けてくれ」


椎名 : 「………………」


西園寺 : 「俺の為でも、科学の為でも、技術の為でも何でもない……ただ、七瀬君の為にも、キミは……生きてくれ」


椎名 : 「……」


西園寺 : 「それが、西園寺馨の意志だ」


椎名 : 「わかってます……」


西園寺 : 「あぁ……ほら、そろそろ七瀬君の所に行ってやれ。待ってるだろう、彼?」


椎名 : 「はい……」



 椎名淳平は退室しようとするが、一度振り返る。



椎名 : 「西園寺先生、一つだけいいですか?」


西園寺 : 「何だ?」


椎名 : 「若葉君の首には俺のと同じ……ラタトスクの噛み傷が残されていました。貴方は……彼女を……俺のようにするつもりは、なかったんですよね?」


西園寺 : 「……当たり前だろう。今更、プロジェクト・Yを再開させる能力、俺にはないからな」


椎名 : 「若葉君のあれは、事故だった……信じていいんですね」


西園寺 : 「俺は嘘はいわんよ……だが、どうしても信じられないなら……俺を、好きにしてくれて構わない」


椎名 : 「!?」


西園寺 : 「……キミならそれも出来るだろう?」


椎名 : 「いえ……そんな真似はしませんよ。西園寺さん。貴方が言葉でそういうなら、俺はそれを信じましょう」


西園寺 : 「……どうしてキミは、俺を信じられるんだ? 俺は……キミを騙し、その身体を傷つけて……キミの身体も、心も滅茶苦茶にして……キミの全てを奪おうとした男だぞ?」


椎名 : 「……」


西園寺 : 「どうして信じられるんだ、どうして……」


椎名 : 「貴方が嘘をつかない人だという事は、教え子だった俺はよく知ってます。それに……」


西園寺 : 「…………」


椎名 : 「……友達ってそういうもんですよ」


西園寺 : 「シーナ君……」


椎名 : 「……それじゃ、俺、もう行きますから。澪が……待ってるんで……」



 ……椎名淳平が、退室する。



西園寺 : 「……シーナ君」



 一人残され、男は笑う。



西園寺 : 「……やっぱりこの世界に生きるべきは、キミだよ。椎名淳平君。キミは……私の最高傑作で、最高の教え子でもあるが、それ以上に……私に残された、たった一つの希望だよ……」



 そして男は一人。

 足音もたてず、闇に包まれた部屋の奥へと消えた。


 その前に、一台のサーバーが音を立てて唸る。

 ユグドラシル……世界樹と名付けられたそのサーバーは、やや熱を帯びていた。





紀行に戻る / ワイバーン退治に行く  /  ちょっとツスクルたんにはぁはぁしてくる!