> 界樹の迷宮を、リプレイ風にかいてみる系日記。





までのあらすじ >


 アイラ、シェヴァが抜けた穴を埋めるべく新しい仲間を募集かけた所、やってきた冒険者とシュンスケの折り合いがなかなかに悪いようです。




> ち果て朽ち果て



 前回のセッションから三日後。

 都内某所(いつのもばしょ)……。



GM : 「さて……新しいメンバーが入って、今回が二回目のセッションだけれども……どうかな、皆。仲良くやってけそうかな。先生、いじめ問題なんかに敏感なPTAにビクビクしているタイプだから、キミたちが仲良くやっていけるか心配なんだけれども」


リン : 「大丈夫ですよ、GMさん。ヒルダさんは、とってもいい人ですよ! ね、ヒルダさん」 (ニコニコ)


ヒルダ : 「ん……いや、違うな。リンが気を使ってくれるから、私も楽に迷宮に挑む事が出来るんだ。」


リン : 「そんな事ないですよ! ヒルダさんがいい人だから……」


ヒルダ : 「いや、リンがだな……」



リン : 「ううん、ヒルダさんが……ヒルダさんが……ヒルダさんが……」 (喧々)

ヒルダ : 「いや、リンが! リンが……リンが……」 (囂々)



シグ : 「あぁ、姉弟子とリンは仲良くやっているようだぜ」(笑)


GM : 「そのようだね。(笑) さて、男性陣はどうだ、誰もフィガロ君を虐めたりしてないよな?」


シグ : 「えぇ、まぁ……フィガロのアニキを虐めるような奴は、そもそもこのさばみそギルドには居ませんよ。ただ……」



フィガロ : 「シュンスケくーん、今日も一段と色つやのいい黒髪だねぃ。トリートメントはしているかい?」



シュンスケ : 「触るな!」



フィガロ : 「あっはは、まーた、シュンスケ君たら照れちゃって、ウブだねェ……あ、髪からシトラスの香り。シェヴァと使ってるシャンプー、一緒だよねお前?」



シュンスケ : 「匂いを嗅ぐなッ!」



フィガロ : 「せっかくだから味もみておいていいかね?」



シュンスケ : 「舐めるなッ、もう、いい加減にしろッ!」



シグ : 「むしろ、シュンスケが虐められているような気がしない事もないですがね」


GM : 「そのようだな。 まぁ、喧嘩する程仲がいいっていうし、まぁあれはあれでアリなんだろ」(笑)



シュンスケ : 「アリとかいって納得するなシグっ、見てないで助けてくれっ!」 (泣)



GM : 「という訳で、シュンスケがセクハラ王子にセクハラをされているうちに話をすすめようか。キミたちは今、地下13階の探索を勧めているんだが……」


シュンスケ : 「生贄……生贄なんだな俺は……」


GM : 「さて、今日はどうする? さらに探索をすすめるかい?」


シグ : 「当たり前だろッ! 俺に進む以外の選択肢はねぇ。 倒れるなら、前のめりだッ!」


GM : 「シグ、その台詞好きだなぁ。(笑) ンじゃま、探索をすすめるんだね……じゃ、キミたちは地下13階に到達。迷宮の探索を始める訳だ……」


シグ : 「よし、皆気合い入れていくぞーっ!」



一同 : 「おー!」



GM : 「と、言っている傍から敵が! 敵は……フォレストバット三匹ね」



フィガロ : 「いいじゃないのさ。蝙蝠野郎風情、さっさと仕留めてやろ……」



GM : 「フォレストバットの攻撃! フィガロに112のダメージだ!」



フィガロ : (ぺちっ) 「ぅっ!」 ← ※ レベル8


リン : 「きゃぁ、フィガロさん!」


シグ : 「アニキの首が、何か曲がらない方向に曲がってるぞッ!」



フィガロ : 「……花畑の向こうに幾人の美女が手ぇ振って待ってるよ……行かなくちゃいけないねぇ……」



ヒルダ : 「フィガロ、それは渡ってはいけない川だ! 戻ってこいッ!」


リン : 「すぐにリザレクション(蘇生)しますからね!」



シュンスケ : 「もういい! 役立たずはそのまま殺しておけっ! こんな雑魚、すぐに大氷嵐の術式で仕留めてや……」



GM : 「フォレストバット、残りの二匹は立て続けにシュンスケを攻撃ね。ボコスカジャンジャン。はい、シュンスケも合計ダメージ128、減らしておいてね」



シュンスケ : 「なぁっ!?」



シグ : 「あれ……シュンスケ、お前確か前の戦いの体力、回復させてなかったよな? そのダメージだと、死ぬんじゃないのか?



シュンスケ : 「……俺とした事が、どうやらそのようだ」


フィガロ : 「あっはは! まぁ、シュンスケくん。一緒に穏やかな川と綺麗な花畑を眺めてようよ。ほら、川の向こうに財宝と美女が美酒を片手に笑いながら手ぇ振ってるよ?」


シュンスケ : 「……あぁ、こんな綺麗な花畑は見た事ないな、思わず対岸に渡りたくなる程だ」 (苦笑)



ヒルダ : 「だからお前達、それは渡ってはいけない川だ!」 (笑)



リン : 「たいへん! シュンスケさんにもリザレクションしないと……」 (おろおろ)


ヒルダ : 「私は……」


シグ : 「姉弟子は、俺と蝙蝠野郎を叩いてくれ!」


ヒルダ : 「坊ちゃん。わかった、手伝おう!」


シグ : 「と、言う訳で……行くぞ蝙蝠野郎、ダチを傷つけた代償、テメェの身体で清算するんだな!


GM : 「うーむ、やはり本職戦士の攻撃は違うな……蝙蝠野郎の体力、半分はもっていったよ」


シグ : 「よし……姉弟子、続いてくれ!」



ヒルダ : (へんじがない、つづいていないようだ)



シグ : 「あれ……姉弟子?」 (振り返る)



ヒルダ : 「くっ、この……待て、蝙蝠め! えい、えい!」 (ぶん! ぶん! ぶん!)



GM(フォレストバット) : ひらり、ひらり、ひらり。



ヒルダ : 「このっ、もー……当たれぇ、当たれぇ!」 (ぶん! ぶん! ぶん!)



GM(フォレストバット) : ばさばさ、ばさばさ、ばさばさ。



ヒルダ : 「もー、この、この、この! えーい!」 (ぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶん!)



シグ : 「いや、姉弟子、そんな振り回しても当たらないモノは当たらないって!」


シュンスケ (三途の川旅行中) : 「ヒルダは防御のエキスパートだが、攻撃の専門家ではないからな……」



ヒルダ : 「えーい、このぅ……!」 (ぺちっ!)


リン : 「あ、当たった!」



ヒルダ : 「やった……当たった、当たったぞ。見たか坊ちゃん!」



シグ : 「あぁ、見たぜ……でも、姉弟子。喜んでる所、悪ぃんだけどさ……」



GM : 「フォレストバットは60のダメージ! でもまだ元気だ、ばさばさばさばさ、ヒルダを狙ってくる!」




ヒルダ : 「え、あ……ひゃぅううぅ、坊ちゃん! 坊ちゃんっ、蝙蝠が! 蝙蝠が攻めてくるっ!」



シグ : 「……敵はトドメをさすまで、安心しちゃいけないぜ、姉弟子?」


フィガロ(蘇生済み) : 「見てないで助けてやりなよ、リーダー?」(笑)



ヒルダ : 「ひゃぁ! 坊ちゃん! 坊ちゃん! 援護をしてくれ、もぅ。いやぁだぁ!」 (泣)



シグ : 「そうだな、姉弟子待たせた! 助太刀するぜ」


ヒルダ : (泣) 「お、遅いぞ坊ちゃん!」



リン : 「ボクは、シュンスケさんを蘇生して……」 (おろおろ)


フィガロ : 「よし、その間に少しでも皆を優位にするよう歌でも歌ってようかねぇ、攻撃力を上げる歌、猛き戦いの……」



GM : 「その前にフォレストバットの攻撃、フィガロに120」



フィガロ : (ぺちっ!) 「ゆべし!」



リン : 「いやぁ、フィガロさんがまたっ!」



フィガロ : 「……やぁ、シュンスケ君。対岸の美女、その誘惑に耐えかねてまたきちゃったよ」


シュンスケ(蘇生前) : 「そうか、久しぶりだな。思ったより居心地がいいぞ、ここは」




ヒルダ : 「お前ら、そこに居着くな! 戦闘に戻ってくれ!」 (泣)



リン : 「えっと、次はシュンスケさんを蘇生……その前にヒルダさんを回復? あれ?」 (おろおろ)


ヒルダ : 「いや、回復はまだいい……それより、私と坊ちゃんで蝙蝠を一匹でも多く減らして……」



GM(フォレストバット) : 「そうはさせるか、ヒルダを攻撃だ!」 (ばさばさばさばさ)



ヒルダ : 「ひゃぅ! あうあうあうあうあうあう……」




シグ : 「姉弟子、フロントガードだ!」



ヒルダ : 「あ、そうだったな! ふ、フロントガード発動!」


GM : 「それだと一撃は耐えられるか、残りは……ヒルダとシグとだと、何とか耐えられるなぁ……」


ヒルダ : 「ふぁ……良かった」


シグ : 「だがこれ以上戦闘を長引かせるのはマズイな……本気で行くぜ! ハヤブサ駆けだ!」


GM : 「そうか……ハヤブサ駆けは、流石にこたえるな……これで一掃された、蝙蝠を退治した!」


ヒルダ : 「……ほっ」



GM : 「という訳で、キミたちは無事に戦闘を終えた。フィガロとシュンスケ、その尊い命を犠牲に……」(笑)


シュンスケ : 「永劫の分かれみたいなナレーションはやめてくれ」(笑)


リン : 「リザレクション……リザレクション……シュンスケさん、フィガロさん、大丈夫ですか?」


シュンスケ : (むくり) 「……あぁ、少し身体がビシビシいってるがな」


フィガロ : 「ほんっと……やっぱ、死ぬのは身体に良くないねェ……」


ヒルダ : 「も、もっと慎重に戦ってくれ、二人とも……」 (泣)


シグ : 「あぁ。フィガロのアニキが死ぬのは想定の範囲内だが、シュンスケまで死ぬとな……正直、ここまで体勢が崩れるとは思わなかったぜ」(笑)


シュンスケ : 「仕方ないだろう、フィガロが倒れればその分、壁が少なくなる……壁が少なくなれば、俺が狙われる確率も高くなるからな……アルケミストは元来脆弱、同じ敵に幾度も狙われれば命はない……」


リン : 「前衛がシグとヒルダさんだけになったから、後衛のボクたちにも攻撃の矛先が来やすくなってますしね……」


シグ : 「……そうだな……先を急ぎたい気持ちはあるが、少しレベルを上げていった方がいいかもしれん」


フィガロ : 「レベル上げか……めんどくさいねェ」



シュンスケ : 「一番レベル上げが必要な男はお前だろうが!」



フィガロ : 「なーに、そんなに怒ってるのさ。カルシウム足りないの、ほら、小骨満載の食用煮干しでも囓るかい。口移しでよければやるよ?」


シュンスケ : 「……口移しではいるか!」


GM : (にぼしは欲しいんだな……)


シグ : 「と、言う訳で……この階層で回復の泉も発見した事だし、少しレベル上げしていきたいと思う! 皆、死なないよう慎重に戦うように!」



一同 : 「おー!」



シュンスケ : 「……特にフィガロは、レベルがあがって一人前と呼べる程度になるまでに、セクハラは禁止だ。いいな?」



フィガロ : 「なぁっ!?」



ヒルダ : 「それはいい案だな」



フィガロ : 「ちょっ、ヒルダまで!?」



ヒルダ : 「この男、今でこそシュンスケのセクハラだけで収まっているが、元来淫奔……何時、他のメンバーに手出しをするかはわからんからな。私は……」


フィガロ: 「そんなっ、ヒルダ嬢。信用ないねぇ、別にセクハラなんてしないよお嬢さんたちには……」 (と、いいながら徐に肩へ手を回そうとする)



ヒルダ : 「滅!」



フィガロ : (ボグッ!) 「すあまッ!」



ヒルダ : 「……私は、セクハラをされても撃退する程度の技量は持ち合わせているが、リンに何かあると大変だからな、そうだろ、坊ちゃん?」


シグ : 「ん……まぁ、そうだな」


フィガロ : 「そんなッ、ホント、信用ないねぇ……でも、セクハラするなぁって……俺のアイデンティティ全否定されているみたいで、いやな感じだよ……」



GM : (セクハラがアイデンティティという方が、いやな感じだと思うが……)



シグ : 「でも、いくらアニキでもリンにまで何かするとは思えないけどな」


リン : 「そうですよぉ……あっ、大丈夫ですか、フィガロさん。痛い所とか、ありませんか?」


フィガロ : 「うぅん……ヒルダ嬢にやられた傷が疼いて疼いて仕方ないねぇ……彼女、本気で殴るんだもん、ホント……」


リン : 「大丈夫ですか? キュアでいいかな……」 (あせあせ)


フィガロ : 「いや、それより俺は……今はキミのひざまくらで休みたい気分だねぇ……いいかな、ひざ?」



リン : 「え? えっ? えっ?」 (おろおろ)



シグ : 「……アニキ、今何か ひざまくら って空耳が聞こえたんですがきっと気のせいッスよね?」 (剣を抜きながら)



フィガロ : 「!! い、いやだなぁリーダー、そんなの空耳に決まってるじゃないのさ。 俺は、そう。ピザなんか食べたいなぁ、っていったんだよ、あはははは!」



シグ : 「っすよねー、あははは!」


ヒルダ : 「……な、油断ならん男だろう。セクハラ制限はかけておいた方がいいぞ?」


シグ  : 「ですが姉弟子ぃ……そんな事すると、かえってアニキにやる気がなくなるんじゃ、ないっすかね?」



フィガロ : 「そうさね! 俺のやる気がなくなるさね! 横暴な政治反対、俺にセクハラの自由を!」



ヒルダ : 「……私は、こいつは何もしないでボーっとツッ立ってくれているのが一番役に立つと思うが」


フィガロ : 「そんなぁ……もうホント、歌ってやらないよ、俺。機嫌損ねちゃうから?」


シグ : 「かといって、アニキがブーストしている状態の能力上昇はバカに出来ないっすよ……」


シュンスケ : 「それは心配するな。俺に奴のやる気を引き出す妙案がある……任せてくれないか?」



シグ : 「マジで? わかった、だったらシュンスケ。頼む」



シュンスケ : 「あぁ……おい、フィガロ」


フィガロ : 「ん……何さね?」


シュンスケ : 「一人前の冒険者になるまで、お前にセクハラ制限をかける。これは皆が決めた事だ、以後お前のセクハラは認めない……」


フィガロ : 「何さね、皆して俺をっ……ホント、やる気なくなっちゃうよ俺?」



シュンスケ : 「……だが、逆に言うとこれは……一人前の冒険者になったら……セクハラを許可する、という事だぞ?」



フィガロ : 「……何?」


シュンスケ : 「だから、一人前になればお前はセクハラしたい放題、という事だな」


フィガロ : 「……また、そう言っておいて、レベルがあがったらやっぱり嘘でしたと言うつもり、だろ?」



シュンスケ : 「俺を好きにしていい」



フィガロ : 「……は?」


シュンスケ : 「だから……一人前になった暁には、俺を好きにしていいぞ?」


シグ : 「ちょ、本気かシュンスケ!? 気でもふれたのかっ!?」


シュンスケ : 「本気だし気もふれてない……どうだ、フィガロ?」



フィガロ : 「……そういって、実際事に及ぶ際に怖じ気付く訳じゃぁないよね?」


シュンスケ : 「その時は縛るなり叩き伏せるなりして、強引にしてもらっても構わん……必要なら契約書をつくってやってもいいぞ。それでも俺が信用出来ないか?」


フィガロ : 「……本気なんだね?」


シュンスケ : 「シュンスケ・ルディックの名にかけて誓おう」



フィガロ : 「よっしゃ、俄然やる気が出たってモンさね! さぁ皆いくよ、バリバリ経験値っての稼いじゃおうじゃないのさ!」



シグ : 「アニキが急に生き生きしだした」(笑)


ヒルダ : 「だが、本当に大丈夫かシュンスケ。フィガロはやるといったら、やる男だぞ?」


シュンスケ : 「大丈夫だ……フィガロ、早く レベル80になって、一人前の冒険者になるんだぞ」



フィガロ : 「わかったよ、やってやるさね! レベル80で一人前の冒険者なんだってんなら、おにーさん頑張っちゃうからねぇ!」



リン : 「えっ、レベル80って……シュンスケさん、世界樹の迷宮のレベル上限は、確か70……最高レベルでも、70までしかあがらない、ですよね?」


シュンスケ : 「……いいか、リン君。これが計略というものだ、覚えておくんだな」


リン : 「は、はい!」


GM : 「……シュンスケが、フィガロ君まで手玉に取り始めたぞ」


シュンスケ : 「扱いになれた、と言ってくれ。マスター」(笑)




> 迷は朱く染まる



 かくして、シュンスケの妙計にはまりやる気を出したフィガロを引き連れ、レベル上げをはじめたさばみそギルドご一行。

 その道中。




GM : 「モリヤンマの登場〜巨大なトンボのモンスターだぞー」


シュンスケ : 「モリヤンマか……」



フィガロ : 「落ちろ蚊トンボ!」



GM : 「落ちるのはお前だ!」



フィガロ : (ペチッ!) 「ぽくて!」


リン : 「きゃぁ、フィガロさん、フィガロさん!」


シグ : 「アニキの頭から、想像を絶する量の血液が!」


フィガロ : 「あー、何か大地に急激な献血をしちゃった気がするねェ……」


GM : 「ふははは、お前は落ちろブランドン!」



 ……フィガロが、モリヤンマの前に陥落したり。



GM : 「クリムゾンネイル登場〜」


シグ : 「また出たな、赤いクマさんめ」


リン : 「森の破壊者さん三倍強いんですかね、やっぱり?」


GM : 「えっ、赤いから? 別に誰かの専用機だと訴えている訳ではないよ?」(笑)


フィガロ : 「何にしても、ちゃっちゃとやっちゃうとするかね……」



GM : 「ちゃっちゃと殺られるのはお前だ!」 (ふんぬらば!)



フィガロ : (ぱちん) 「せいぶざわぁるどっ!」



シュンスケ : 「フィガロ、大丈夫か!?」


シグ : 「またっ、アニキの胴体に傷というより空洞と呼ぶべき箇所がぽっかりと!」


フィガロ : 「あぁ……何か急に風通しが良くなった気がするねぇ……寒いよ……」


GM : 「ふはは、お前にはお似合いの墓場(グレイヴ)だ!」



 ……クリムゾンネイルの爪、その餌食になったり。



GM : 「メルトワームが現れた」


ヒルダ : 「メルト……何だ?」


シュンスケ : 「地虫のモンスターだな」


フィガロ : 「虫ね……なぁ、リーダー」


シグ : 「何すか、アニキ?」


フィガロ : 「……あのモンスターが淫猥に女性キャラを狙って責め立てたりしたら、こう、ゾクゾクする気がしないかね?」



シュンスケ : 「しまった、杖が滑った」 (ボグワッ!)



フィガロ : (ぼくっ) 「あざぜるっ!」



シュンスケ : 「セクハラ制限時にそういった類の発言をした時は、容赦なく行くからな……」


シグ : 「怖ッ……一瞬、ゾクゾクするに決まってるでしょうに、と返答しそうになったが、しなくてよかったぜ……」


リン : 「もう、シグ! えっちなのはいけないですよ!」



 ……シュンスケの杖の餌食になったりしつつも。



フィガロ : 「よし、レベルアップだね……これで、ホーリーギフトを使えるようになったよ?」



一同 : 「おおおお!」



 取得経験値にボーナスを得る事の出来るスキル。

 ホーリーギフトを得たあたりから、フィガロの重要性も増していき、そして……。




GM : 「フォレストバットの攻撃〜、ヒルダに60!」


ヒルダ : 「しまっ……ううう」


シグ : 「大丈夫か姉弟子!」


リン : 「今回復を……」


ヒルダ : 「私はいい、それよりフィガロを頼む。あいつさえ生きていれば……取得経験値のボーナスを、ボーナスを得る事が出来るのだ!」



 ついに、フィガロは、積極的に守られる存在になっていった……。



フィガロ : 「何か、俺を守りたいというより、ホーリーギフトの恩恵を守りたいって言われている気もするけどねぇ」(笑)


GM : (事実そうだろうなぁ……)



 ともあれ、ホーリーギフトの恩恵もあり。

 新人だったフィガロも、ヒルダも、少しずつ経験を増していき、そして……。



フィガロ : 「これで、レベル36……一人前とはいえないまでも、有る程度戦えるようにはなったかね?」


ヒルダ : 「……私も40を越えた、この階層も随分楽になったな」


シュンスケ :  「あぁ……もう、先に進んでもいいだろう。なぁ、シグ?」



 誰もがもう充分だと思った、だが。



シグ : 「いや、ちょっと待て!」


シュンスケ : 「何だ、まだ何かあるのか?」


シグ : 「いや……本当に戦えるかどうか、確かめてみる必要があるだろ。ここは一つ……腕試しで、どれだけ力をつけたか試すつもりで……挑んでみようぜ、あいつに」


シュンスケ : 「アイツ……誰だ?」




シグ : 「地下8階の王者……ワイバーンだ!」




シュンスケ : 「何ぃ!?」



 シグの思わぬ一言で、さばみそギルドはワイバーンと対峙する事になるのだった……。




> 地の人、森の竜




GM : 「という訳で、やってきました駿河の国〜。じゃなかった。やってきました地下8階! ワイバーンの居る迷宮だ」


シュンスケ : 「何でこんな事に……」


シグ : 「はは、いいだろ別に。あいつの強さなら、腕試しにもってこいだし!」



ヒルダ : 「ふむ……竜退治というのは初めてだが、飛竜でも竜は竜。やはり剣の道を志すなら一度は挑んでみたい相手だな」


フィガロ : 「何だか知らないけど、名声があがれば女の子が寄ってくるだろ? やっぱりそういうの、欲しいよねぇ……」



シグ : 「姉弟子も、フィガロのアニキも乗り気だ。この勢い、捨てるにゃ惜しいだろ?」


シュンスケ : 「しかし……ワイバーンは強敵だぞ……」


シグ : 「大丈夫だって、俺もお前もいい加減強くなってるし、リンの医術防御ももうスキルレベル10だ、滅多な事にはなんねぇよ」


リン : 「はい、頑張って守ります!」


シュンスケ : 「そう、だが……」


シグ : 「それに……シェヴァは絶対にワイバーンと戦うのを嫌がるだろう? だが、迷宮を完全踏破するにゃ、アイツも戦わなければいけない相手……シェヴァに内緒で、ってのは気がひけるがよ。シェヴァの事考えても、悪い選択じゃ無いと思うが……どうだ?」


シュンスケ : 「そうか……いや、そうだな……わかった。そういう事であれば、力を貸そう」


シグ : 「……あぁ、頼むぜ相棒」



ヒルダ : 「早くこい、坊ちゃん。置いていくぞ!」


シグ : 「ん。あぁ、待てよ姉弟子。それとっ、俺の事、坊ちゃんはやめろよな!」




GM : 「さて、そんなこんなで久しぶりにやってきた地下8階ですが、と……」


ヒルダ : 「泉で体力の回復もした……準備万端、怠りはないな?」


シュンスケ : 「あぁ……」


フィガロ : 「それじゃ、さくっと突撃してちゃっちゃとやっつけちゃおうか。それ……」


シュンスケ : 「いや、まてフィガロ。あいつは、特定のサイクルで回り続けるという特性がある。うまくいけば、背後がとれるかもしれん……背後をとって攻撃しよう。運が良ければ先制攻撃が出来るぞ」


フィガロ : 「あはは、狡い! 狡いねぇシュンスケくん……ホント、そういう所嫌いじゃないよ。じゃ、シュンスケ君の言う通り、狡っ辛く背後を狙うとするかね……」


シュンスケ : 「何とでも言え……生き残るために、なりふりなんて構ってられないからな。フィガロ、相手の背後がとれそうになったら、言ってくれ」


フィガロ : 「了解〜……まだだ。まだだよ……もう少し」


リン : (どきどきどきどき)


フィガロ : 「よし、今だよ。行くとするさね!」



一同 : 「おおーっ!」



GM : 「っと、背後を攻めてくるか……ま、そうだろうな。という訳で戦闘だ。 5人がかりの上、さらに背後をとるとは卑怯なり!


フィガロ : 「いやだねぇ、何いってるのさ。こっちを優位に戦うのは戦術の基本だろ?」


シュンスケ : 「フィガロと同意見というのはしゃくに障るが、その通りだな。誰も強力な相手と分かっているモンスターに真正面からぶつかるような真似はせんよ。俺たちは命知らずの英雄は血気盛んな蛮族じゃぁない……ただの一介の冒険者だからな」


GM : 「ちっ、仕方ない。だったらテメェらの先制攻撃だ。このターン、ワイバーンは何もしない……さぁ、好きにするがいいですよーだ。ふん」


リン : 「GMさん、拗ねちゃ駄目ですよ」(笑)


シグ : 「あぁ……とはいえ、ワイバーンにゃ何が効果的なんだろうな。おい、どうする、相棒?」


シュンスケ : 「そうだな……得意の氷から試してみるか。大氷嵐の術式を組もう」


シグ : 「了解、だったら俺はチェイスフリーズをセットするぜ」


ヒルダ : 「私は、防御陣形を組もう。総員、配置! サイゴ族直伝のムーフェンスだ!」


GM : (ムーフェンス?)


リン : 「ボクも、皆さんをお守りします! 医術防御!」


フィガロ : 「うん、防御は完璧だねぇこれ……俺は、どうしようかな。な、シュンスケ君、どぅして欲しい?」


シュンスケ : 「勝手にしてろ」


フィガロ : 「勝手にしてていいんなら、脆弱なシュンスケ君の胸板が少しでも厚くなるように胸を揉みしだく仕事でもしてようかな。ね、どうかね?」



シュンスケ : 「ふっざけるな! 大体、何で俺が胸をもまれなきゃならんのだ!?」



フィガロ : 「だって、リン君は……」


リン : 「えっ、えっ、えっ?」 (おろおろおろ)


シグ : 「いくらアニキでも、リンの嫌がる真似は許さねぇぜ?」


フィガロ : 「ほら、保護者のリーダーが怒るし。かといってヒルダは……」



ヒルダ : ギロッ!



フィガロ : 「ほら、揉んだらすぐに右フィガロにーさんと、左フィガロにーさんに分かれちまいそうだろ? だったら、シュンスケ君が一番安全かなぁと思ってねぇ」


シュンスケ :「消去法か、なるほど……ならばその安全圏だと思っていた男から心ばかりのプレゼントだ。大氷嵐の術式を喰らうがいい!」


フィガロ : 「いやだねぇ、すぐ熱くなって……」


シュンスケ : 「大体、お前セクハラ制限をかけたばっかりだろう、この……」


フィガロ : 「勝手にしていいって言ったのそっちさね! それに、これはセクハラというよりスキンシップ! コミュニケーションってやつだろ、な?」


シュンスケ : 「むむ……」


ヒルダ : 「落ち着けシュンスケ。お前がすぐそうやって熱くなるから、フィガロにいいように扱われるんだぞ……フィガロ。もし暇だったら、安らぎの子守唄を頼む」


フィガロ : 「了解〜」


ヒルダ : 「な、命令さえすれば素直で扱いやすい男だぞ、フィガロは……」


シュンスケ : 「そうか。だがヒルダ……」




フィガロ : 「Mama and papa were layin' in bed! Mama rolled over, this is what she said Give me some」 (意訳 : ママとパパはベッドでゴロゴロ、転がりながらこういうの。お願い、欲しいわ!)



シュンスケ : 「……奴の歌っている唄は、果たして本当に安らぎの子守唄か?」


ヒルダ : 「……歌詞を聴くな、それが我々の心を穏やかにする」



 ※ ちなみに、フィガロの歌っている歌は フルメタルジャケットの教官が新兵に歌わせているあの卑猥ソングである。 (ファミコンウォーズの替え歌で有名なアレね)



GM : 「という訳で、各々がた、準備は完了かね。 そいじゃ、攻撃いってみよー……とは言っても、今回はワイバーンの攻撃はなしか。こっちは、オロオロしてるだけだ。おろおろ……おろおろ……どうしよう、お鍋吹きこぼれちゃうわ」


リン : 「何だかお母さん的なワイバーンさんですね」(笑)


GM : 「そっちの攻撃は問題なく全部入るよ。サンドバック扱いだな」


ヒルダ : 「防御陣形、完了だ!」


リン : 「ボクも続きます、医術防御ですっ!」


フィガロ : 「……安らぎの子守唄、発動したよ?」


GM : 「はいはい、補助おつかれさーん」(笑)


シュンスケ : 「攻撃は……大氷嵐だ、ダメージは……288か、思ったより震わないな」


シグ : 「チェイスも241だ、案外氷耐性あるみたいだな」


GM : 「うん、そのようだね。 (ニヤニヤ) じゃ、次のターンだ!」


シグ : 「相棒、どうする……」


シュンスケ :「…………も試してみるか、大雷嵐でいく。チェイスショックで頼む」


シグ : 「ラジャ」



GM : (来た来た、ニヤニヤが止まらないぜ……)




ヒルダ : 「私は……パラディンは基本、通常攻撃しかないからな。せめてブレイバント2で攻撃力を底上げしておくか」


リン : 「……ボクはどうしようかな」


フィガロ : 「あ、お嬢さん。暇なら俺にアクセラ渡してくんないかねェ……」



 ※ アクセラ : ブーストをupさせる為の薬。 ブーストがたまっていれば、大幅にステータスupし、有効なスキル攻撃が可能になる。



フィガロ : 「ブーストがたまれば、こっちの強化がより有利になるからねェ……」


リン : 「は、はい、わかりました!」


フィガロ : 「うん、出来れば、口移しで頼むよ」


リン : 「え、え!?」 (おろおろおろおろ)



シグ : 「アニキ、いい加減しないと怒りますよ、俺?」 (眼力)



フィガロ : 「うぉっと! じょ、冗談だよもー、シグは案外真面目だねぇ……じゃ、猛き戦いの舞曲、いっとこか。 デッデレッデッデ デッデレッデッデ デッデレッデッデ デッデレッデッデ……」


GM : (相変わらず、フィガロの名かで 猛き戦いの舞曲=熱情の律動 なんだな)


シュンスケ : 「……大雷嵐の術式を組もう」



GM : 「よし、そいじゃ戦闘だ! こっちの攻撃、初ワイバーンアタックは、シグにウィングクローだ! とはいえ……すでにガッチガチに固められてるな、ダメージは61だ」


シグ : 「おっと……思ったより入ったな、これ」


GM : 「で、そっちの攻撃だけど……」


ヒルダ : 「ブレイバント2!」


リン : 「アクセラです、どうぞ!」


GM : 「……何だ、ダメージ判定があるのはまたシュンスケとシグの攻撃だけか」


シュンスケ : 「そのようだ……大雷嵐の攻撃は、どうだ?」



GM : 「ふふふ、それだが……大雷嵐の攻撃は、ダメージ……1だ!」




一同 : 「えぇぇええぇえぇ!」



GM : 「ちなみに、チェイスは幾分か入る……5、ね」



シグ : 「何ぃ!? 全然入ってないじゃねぇか……」


シュンスケ : 「しまった……雷耐性か……」



GM : 「YES! YES! YES! ま、こういう事もあるさね〜。じゃ、次のターンいってみよー!」



シュンスケ : 「くそ、TPの無駄使いだったな……」


シグ : 「気にするな、挽回してけばいいだろ。次は炎だな。相棒?」


シュンスケ : 「あぁ……弱点であってほしいが……」


ヒルダ : 「ならば私は通常攻撃でいこう、少しでも通ればいいのだが」


リン : 「フィガロさん、これ……アクセラです」


フィガロ : 「あぁ……とはいえ、俺もやる事ないねぇ。ねぇ、シュンスケくん。スキンシップをしてもいいかね?」



シュンスケ : 「真面目に戦え! 戦えないならせめて邪魔にならない所に居ろ!」



フィガロ : 「はいはいはい……じゃ、俺も殴っておきますかね?」


シグ : 「大丈夫っすか、アニキ?j


フィガロ : 「まぁ、大丈夫でしょ。一撃で死ぬ事はないと思うから」



GM : 「このターンの攻撃、攻撃はワイバーンからだ……ウィングクロー。シグ、ダメージ65ね」


シグ : 「うほ、また俺ですかい! 何で俺ばっかり……」


GM : 「さぁ? 一番お前が、ワイバーン様好みなんだろ。 はぁはぁ、あらこの子は私の初恋のエルヴィス・プレスリーにクリソツだわ……はぁはぁ」


シグ : 「えるびす?」(笑)


ヒルダ : 「妙に人間的な名前だな……」


リン : 「人と竜との、禁断の恋愛だったのかもしれないですね」(笑)


ヒルダ : 「なるほど、ロマンチックな竜だ……さぁ、私の番だな。ロックハート家の剣、その身で味わうがいい!」


GM : 「ぺちん! 112のダメージか……結構痛かったな。 非道い、何するのよ、顔はやめて! 私女優なのよ!」


ヒルダ : 「そうだったのか? それは、すまない事をした」


GM : 「いやいや、冗談だから」(笑)


シュンスケ : 「大爆炎はどうだ?」


GM : 「ダメージは180オーバーってとこ。シグのチェイスも150程度」


シグ : 「くぅ、属性は思ったより通らねぇな! アイラやシェヴァの方がこいつ退治は向いてそうだぜ」


GM : 「居ないヤツの事はいうな。さて、次は……」


シグ : 「一番きくのは氷か……」


シュンスケ : 「そのようだな。相棒、これからは大氷嵐を連発していく。お前もそのつもりでたのむ」


シグ : 「了解ッ、俺もチェイスフリーズ連発してくぜ!」


ヒルダ : 「私は……そろそろ防御陣形の恩恵が途切れる頃だな。防御陣形をしておこう、リン。キミも医術防御を頼む」


リン : 「はい、ヒルダさん!」


フィガロ : 「それじゃ俺は……」


シュンスケ : 「……触るなよ、色魔」


フィガロ : 「まだ触るとかいってないのに、心外だねぇ……さて、氷属性を主として使うと分かったら遠慮する事ぁないね。氷幕の幻想曲、いっとこうか?」



シュンスケ : 「何だって!?」



ヒルダ : 「フィガロが真面目に仕事してるなんて……いかん、季節はずれの台風が来るな!」



フィガロ : 「ちょ、驚きすぎだよお前ら!」 (笑)


GM : 「いかにフィガロ君が仕事面において期待されているかが理解できるよな。(笑) さて、攻撃ちゃっちゃとしてこうか。ワイバーンは、大ファンのシグに攻撃だ。 エルヴィス様、私の愛を受け取ってくださいませぇ……シグにウィングクロー、ダメージは65」


シグ : 「その愛、人間が受け取るには痛すぎるぜ!」(笑)


GM : 「本物の愛って、痛いモノだぜ……。(笑) そっちの攻撃は、シグとシュンスケの氷属性か……うん、氷幕効果もあって、ダメージは少しupしてるよ。氷嵐で300,チェイスで200強だ」


シグ : 「ホント、通らないなコイツ……」



 シグの言う通り。

 炎・氷に耐性を持ち、雷攻撃に限ってはダメージ1固定のワイバーンに攻撃はなかなか通らなかった。

 と、いうものの……。



GM : 「ウィングクロー……今度はリンにだ! さっきから私のエルヴィス様に色目をつかって、この小娘が……」 (ぶん、ぶん!)


フィガロ : 「ワイバーンさん、どうやらリンをライバルと認識したみたいだねぇ」(笑)


GM : 「あぁ。でもダメージは少ないね。後衛ってのもあるのか……リンのレベルが52ってのもあるのかな。ダメージは19だ」


リン : 「ひゃぁ……」


シグ : 「大丈夫か、リン!?」


リン : 「大丈夫です、かすり傷です!」



 ワイバーンの攻撃も……。



GM : 「さらに次のターン、攻撃はヒルダに向かう! よくみたらこっちの金髪の小娘も、私のエルヴィス様の隣に居るなんてけしからん! ワイバーン様の牙を喰らえ!」


フィガロ : 「ヒルダもロックオンされたみたいで……いや、流石はリーダー。もってもてだねェ」


シグ : 「はは……俺としてはワイバーンなんかにモテられるのは困るけどな」


GM : 「だなぁ……ヒルダ、ダメージは、31だ」


ヒルダ : 「ひゃぅう……」


シグ : 「姉弟子! 危ねぇと思ったらすぐ戻ってこい!」


ヒルダ : 「す、すまない、坊ちゃん……」


GM : 「うーん、やっぱりガッチガチに固めているパーティだと、こっちの攻撃も通らないな……」



 と。

 ワイバーンの攻撃もさばみそギルドの連中には殆ど効果はなく、戦闘は持久戦の装いを見せ始めた……。



GM : 「とうとう10ターン目か……久しぶりだな、このギルドで二桁のターンを見るのは」(笑)


シグ : 「確かに、今まで前衛が三人居たから短期決戦ばっかりだったもんな」(笑)


GM : 「うむ……だがワイバーンの体力も半分を切ったし。よし、ぼちぼち本気で行くかな、ワイバーンの……ウィングクロー。狙いはシュンスケ。ダメージは……289だ!



一同 : 「何っ!?」



シュンスケ : 「しまっ……」


フィガロ : 「大丈夫かい、シュンスケくん!?」


シグ : 「289なんて、今のシュンスケの体力ほとんど全部じゃないか!」


フィガロ : 「……シュンスケくん?」


シュンスケ : 「ん……あぁ、大事ない。心配するな……」


フィガロ : 「体力が瀕死の状態で強がるんじゃないよ、全く……ホント、無茶するねぇお前はさ……痛い時は素直に痛いって。助けて欲しい時は助けて欲しいんだって言ってもバチは当たらないくらい、お前は頑張ってると思うけどねェ……リン?」


リン : 「はい! すぐに、エリアキュアしますね!」


シュンスケ : 「フィガロ……リン君。すまない……」


フィガロ : 「気にしないでよ、俺ら仲間だからね」


シュンスケ : 「フィガロ……お前……」


フィガロ : 「それに……シュンスケ君がいなくなったら、壁が一枚減るだろ! そうなったら、俺が狙われる……俺じゃあの強烈な攻撃、到底防げないからね!」


シュンスケ : 「あぁ、少しでもお前の事を信頼した俺がバカだった。俺が、バカだったよ……」


シグ : 「しかし、ヤバイなぁ……心なしか強くなってる気がするぜ、こいつ」


シュンスケ : 「あぁ、確かに危険だな。これからは、もっと攻撃力の高いスキルを使ってくるかもしれん」


リン : 「そうですね、ヒルダさん……」


ヒルダ : 「わかった。防御陣形を崩さないようにしよう」



 こうして、慎重に攻撃を続けた結果。

 いよいよ……。




GM : 「く、ワイバーン……とうとう、体力が赤ラインに達したか……」



一同 : 「おおっ!?」




 飛竜が陥落する時が、近づいていた……。



シグ : 「一気に畳みかけるぜ、相棒!」


シュンスケ : 「あぁ……大氷嵐の術式だ!」


ヒルダ : 「ささやかではあるが私も尽力しよう、支援するぞ、坊ちゃん!」


シグ : 「おお、頼りにしてるぜ姉弟子ぃ!」


リン : 「エリアキュアを!」


フィガロ : 「俺は……」


シュンスケ : 「……支援を頼む、フィガロ」


フィガロ : 「ん……そうさね。シュンスケ君にそう頼まれたなら、いやなんて言えないさね。わかった、支援しよう。弓を取るよ」



 そしてついに……。



シュンスケ : 「大氷嵐の術式……」


シグ : 「もらった、チェイスフリーズだ!」


GM : 「うわ……それは耐えられないなぁ……飛竜。ワイバーンは少し嘶き、そしてゆっくりと大地に伏す……ワイバーンを退治した!」


一同 : 「おー、ぱちぱちぱち!」


 ……戦いは終わったのである。




> の後に



GM : 「という訳で飛竜は退治された! 皆、お疲れさま〜」



一同 : 「お疲れさまでしたー」



GM : 「と、いっても経験値はゼロだけどね……」(笑)


シュンスケ : 「またか、以前のゴーレムも、そうだったな……」


リン : 「ボス系のF.O.Eさんは経験値ゼロなんですかね?」


フィガロ : 「ハイリスク、ローリターン……はぁ、俺に会わない仕事だねぇ、これ」


シグ : 「とはいえ、すでにワイバーンを倒せる程俺たちは力をつけた、という事がわかったじゃないか! 凄い事だぞ、これはッ!」


ヒルダ : 「うむ……名声は何より自信になるしな。これでいよいよ、地下13階以下にもすすめる事になるだろう……」


シグ : 「あぁ、姉弟子の言う通りだ。さて、いよいよ地下13階より下、迷宮の奥に向かうぞ。皆、気合いいれていけよ!」



一同 : 「おー!!」



 かくして、ワイバーンを仕留めたさばみそギルドご一行。

 このまま勢いづいて、いよいよ第三階層を制覇出来るのか。

 そして、謎の人影の正体は!


 謎が謎を呼び、次回へ続くのである。






> 幕劇 〜 アイラ、だったもの





 世界樹の迷宮をリプレイ風に演じている皆さんの、現実の日常も少しおいておきましょう。

 キミはこの壊れはじめた現実に、触れても。

 触れなくても、いい……。



> 幕劇 〜 アイラ、だったもの



 ……セッション終了後、都内某病院の一角。 (とある、びょうしつ)



桐生 和彦 (世界樹の迷宮では、シグのプレイヤー) : 「入るぞ、若葉ぁ!」



桐生 若葉 (世界樹の迷宮、前パーティのアイラのプレイヤー) : 「…………」


桐生 : 「……っと、悪いな。まぁーた、ノック忘れちまったぜ。はは、ゴメンな」



若葉 : 「…………」



桐生 : 「昔はよく怒られたよなぁ、お前の部屋に勝手に入ってきてさ、勝手に入るなって……辞書投げつけられた時は、流石の俺もビックリしたぜ。はは……」


若葉 : 「…………」


桐生 : 「……何か言ってくれよ、若葉。 親父、お前がそうなってから、毎日つまんなそうだぜ。おふくろも……あんなに笑ってばっかりいる、おふくろが、だぜ。全然笑わないんだよ、なぁ、若葉……お前がいなくなってから……」


若葉 : 「…………」


桐生 : 「…………火が、消えたみてぇだ……」



 トン、トン。



桐生 : 「……誰だ?」


芹沢 梨花(世界樹の迷宮では、リンのプレイヤー) : 「ボクです。あの、すいません、和彦さん。あの、若葉さんは……」


桐生 : 「梨花か……いや、そんなに変わらないな……」


芹沢 : 「そう、ですか……」


桐生 : 「あぁ……」


芹沢 : 「……どうして、こう、なっちゃったのかな……どうして……」


桐生 : 「分かんねぇ……ただ、家に連絡があった時には、すでにこうなってたんだ……脈も、呼吸も、脳波も……医学的には何の問題もないと、医者はいっていた。だが……」



若葉 : 「…………」



桐生 : 「意識だけは……戻らないんだ。健康なはずの若葉の身体の、意識だけが……」


芹沢 : 「和彦さん……」


桐生 : 「好きな曲とか、匂いとか……そういうのがきっかけで、意識が戻る場合があるんだ、って医者は言ってたからさ。色々試してるんだけど、効果がなくて……」


若葉 : 「…………」


桐生 : 「いや、違うな……俺は……考えてみれば、若葉が好きなモノなんて……知らないんだ。傍に居て、一緒に暮らしている妹だけど、俺は若葉の事なんて何も……」


芹沢 : 「和彦さん、そんな……」


桐生 : 「……お兄ちゃんなのにな」


芹沢 : 「和彦さん、駄目です。そんなに、自分をせめちゃ、駄目です……そんな顔、きっと若葉さん、見たくないですよ?」


桐生 : 「梨花……」


芹沢 : 「ボク……何か、飲み物買ってきますね!」



 芹沢梨花が、退室する……。



桐生 : 「梨花……ありがとう、な」



 ……トン、トン。



桐生 : 「? ……梨花か、早かったな」


滝 睦 (世界樹の迷宮ではヒルダのプレイヤー) : 「いや、芹沢君ではない。私だ……悪いな」


桐生 : 「い、イインチョ! あ、いや、悪くはないさ。お見舞いに来てくれたのか?」


滝 : 「あぁ……これ、花束だ。若葉君に、と思って……受け取ってくれないか?」


桐生 : 「あ、あぁ! 悪いな、気を使わせちまって……えっと、花瓶。花瓶……」


滝 : 「花瓶もある。心配するな」


桐生 : 「マジでっ!? ……いや、ホント……準備いいな、イインチョは」


滝 : 「……昔から、何かと心配になってな。つい、買いそろえてしまうだけだ。気にするな」


桐生 : 「あ、そ……変わってないね、イインチョ」


滝 : 「お前もだ、桐生」


桐生 : 「……そうか?」


滝 : 「あぁ、お前も変わってない……明朗で、快活で、無粋で鈍感で……私の好きな桐生和彦と、寸分違わぬままだ



桐生 : 「!?」



滝 : 「……少しでもお前が変わっていれば、こんな事。言わなくて済んだのだろうがな」


桐生 : 「イインチョ?」


滝 : 「高校時代から、生真面目な私を奇異にも思わず、他の仲間と同じように接していた桐生の存在が、知らない間に大きくなっていた……時を得て会えば、かつての幻想から逃れられると思い、再び会ったお前は……昔の幻想と違わぬ姿をしていた……」



桐生 : 「イインチョ、俺……」


滝 : 「嬉しかったぞ、とてもな」


桐生 : 「委員長……いや、滝。俺は……俺も、お前の事が……」


滝 : 「桐生」



桐生 : 「俺も、お前が好きだ」


滝 : 「……あぁ、知ってる。そう……だったんだよ、な?」


桐生 : 「あぁ……だけど、もう昔の事なんだ。あの頃は、俺はもう他の彼女がいて……お前が好きだという思いがあった。けど……今の彼女を、大切にしたい思いから……あえてそれに鈍感に振る舞った」


滝 : 「……後で、神崎から聞いたんだ。桐生が、私を好いていたという事をな」 


桐生 : 「……あぁ。今でも後悔してるよ、イインチョに……滝に、好きだって言えなかった事をな」


滝 : 「あの時だったら、私は拒まなかったぞ?」


桐生 : 「あぁ……そうしたら、俺は……今頃、お前と結婚していたかもな?」


滝 : 「……今では、無理か?」


桐生 : 「……」


滝 : 「神崎から、聞き及んでるぞ。お前が以前の女性と別れたという事は……もう、咎める者がないのなら、私は……構わないぞ。今でも、お前に対する思いは……何も変わってないからな」


桐生 : 「滝……」


滝 : 「……桐生」


桐生 : 「…………ごめん、俺」


滝 : 「そうか……いや、いいんだ……他に好きな相手が、居るんだろう?」


桐生 : 「あぁ……」


滝 :  「そんな顔をするな、桐生……お前は、それでいいんだ。だから、お前が好きだった


桐生 : 「イインチョ……」


滝 : 「私もな……ずっと言えなかった事を、引きずっていた。お前の思いを引きずったまま、生きていた……こんな状態で、他の誰かを好きになっても……大事に出来るはずもないのに、誰かを好きになろうともしたよ。でも……出来なかった……」


桐生 : 「俺も……似たようなモンだったな……」


滝 : 「……これで私も、やっと前に進めそうだ」


桐生: 「イインチョ……」


滝 : 「……桐生、幸せにな?」


桐生 : 「……イインチョも、な」



 トントン、トントン。



桐生 : 「!! 梨花か?」



滝 : 「ほら……私に向ける笑顔と全く違うだろう。これでは、私の居場所なんて最初から……」



桐生 : 「梨花……?」


椎名淳平 (世界樹の迷宮では、シュンスケのプレイヤー) : 「……いや、すまん。芹沢君では、ない」


桐生 : 「なんだ、椎名じゃねぇの……どうしたんだ? 缶コーヒーなんかもって……お前らしくなく、気が利くじゃないか」


椎名 : 「悪いな、普段は気がきかなくて……いや、だがこのコーヒーは俺のではないんだ?」


桐生 : 「そうなのか? 熱ッ……今自動販売機からかってきたばかりのモノっぽいけどな」


椎名 : 「……この病室の前に落ちてたんだ。てっきり、俺はお前が落としたモノかと思ってもってきたんだが……」


桐生 : 「は?」


椎名 : 「お前のじゃないんなら、誰かの落とし物だったかな?」


桐生 : 「…………梨花?」


椎名 : 「何だ、ムツミも来てたのか?」


滝 : 「あぁ、久しぶりだな淳ちゃ……椎名」


桐生 : 「それより、椎名どうしたんだ、見舞い?」


椎名 : 「あぁ……澪から、若葉君も同じ病院に入院していると聞いて、様子をな……どうだ、若葉君は」


桐生 : 「…………何も変わんねぇよ。ココに入院してから、ずっとこうだ」 (と、若葉の額に触れる)


若葉 : 「…………」


椎名 : 「…………首の後ろに、小動物が噛み付いたようなはないよな。そう、ちょうどリスが噛んだような……」


桐生 : 「リス? 若葉に? リスに噛まれた痣かは分かんねぇけど……痣なら、あるぜ?」



椎名 : 「!!」



桐生 : 「でも、お前何で知ってンだ? 確か、お前若葉の見舞いに来たのは、初めてだろう。なのに、何故……」


椎名 : 「い、いや……何でもない、すまん……急用を思い出した……失礼する……」


桐生 : 「あ、あぁ……」



 椎名淳平が退室する……。



桐生 : 「何だろ、な……椎名、ヘンな奴……何だろうな?」


滝 : 「……淳ちゃん……椎名が、何を言いたかったかは、わからない。だが……」


桐生 : 「ん?」


滝 : 「若葉君の首にあるのと同じを……私は、椎名の首にあるのを、見た事があるぞ?」


桐生 : 「何だって?」


滝 : 「……若葉君の首の痣は、これだろう。位置も、ちょうど似た場所だ……何だろうな、この痣は」


桐生 : 「……どういう事だ?」


滝 : 「さぁ、な……」



 病室の日差しが、少しずつ傾いていく。


 時は静かに動き続ける中。

 運命もまた、少しずつ動きだそうとしていた……。




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