> 世界樹の迷宮を、リプレイ風に記録しいくんだ日記。
前回までのあらすじ >
第3階層、クイーンアントをやっつけてキラークイーンになりました。
もう限界だ倒すねッ!
> 戦いの序曲。
クイーンアントを倒した直後、エトリア。
GM : 「さてさて、無事にクイーンアントを倒し……」
シェヴァ : 「泉にいってつやつやー」
アイラ : 「泉にいってすべすべー」
GM : 「泉にいって、体力を回復させた訳だけど。というか、君らすごいな、アントと闘った後で地下8階の泉に行くなんて」
アイラ : 「だって、ぼったくり宿に行く気にならないよ! 今回は、私もシェヴァさんもまだ余力があったし、もう泉まで、危険なモンスターもいないしね!」
シュンスケ : 「俺は身体が重くて大変だったがな……」
シグ : 「なぁ、TP切れになると身体が動きづらくなるから大変だぜ」
リン : 「えへ、でもボクはちょっと……ドキドキしたな、シグを……支えながら歩くの」
GM : 「と、回復したところで……どうする。思ったよりサクサク進んだみたいだし、このまま13階に挑戦するかい」
シグ : 「そうだな……俺は挑んでもいいぜ、サクサク進みたい所だしな?」
シェヴァ : 「ちょっとまって!」
GM : 「おぉっと、ちょっと待ったコールだ!」
シュンスケ : 「……どうした、シェヴァ?」
シェヴァ : 「いや、さ。金鹿の酒場で、随分前から出てるクエストがあるだろ、ほら、あの……山賊王エドゥの財宝!」
シグ : 「山賊王エドゥって、あれか、確か」
リン : 「伝説の山賊王の財宝、その隠し場所が世界樹の迷宮。その中にある……って、やつですよね」
シュンスケ : 「あぁ、あの眉唾の依頼か」
シェヴァ : 「まゆつばって言うなー! ほらほら、迷宮に財宝っていかにもな印象だろ! 冒険者の浪漫というか……やってみたいと思わないか、な!」
シュンスケ : 「……お前はそう言うがな。そもそも、山賊王エドゥの伝説というのは……酒場のマスターが幼い頃にすでに伝説だった物語だろ?」
シェヴァ : 「ん、そうみたいだね」
シュンスケ : 「一方、エトリアでこの迷宮が発見されたのは最近。この迷宮は存在そのものが最近まで知られてなかったんだぞ。そんな場所に宝を隠した、なんて……胡散臭いと思わないのか?」
シェヴァ : 「それはそうだけどさァ……シュンスケは、無いの? その、財宝を巡る冒険者の浪漫ってのは!」
シュンスケ : 「俺は知識が最大の財産だ。金銀財宝には興味はない」
シェヴァ : 「お前がなくても、俺にはあるのっ! その噂がホントで、財宝があれば、俺は向こう30年、あのぼったくり宿の部屋で、天蓋つきベッドで生活出来るもんね! な、シグ。シグにはこの浪漫、解るだろ!」
シグ : 「……そうだな、宝を得る為に危険はつきもの。危険な守護者と呼べるガーディアンとの激しいバトルには、激しく浪漫を感じるな!」
アイラ : 「何か、浪漫を感じる所が間違えている気がするけど」(笑)
シェヴァ : 「だろー、俺、行く価値はあると思うんだよねー!」
シュンスケ : 「……GM、そのエドゥの宝とやらは、どこにあるんだ?」
GM : 「えっと……地下5階の、隠し部屋だね」
シュンスケ : 「地下五階……第一階層か」
シェヴァ : 「いいだろ、第一階層でも第二階層でも、いいちこでも二階堂でも!」
GM : 「何で麦焼酎だよ」(笑)
シュンスケ : 「だが、今更一階層まで戻るのはな……クエストが迷宮探索にあまり意味のない依頼である、という事を考えても……無理に行く必要性は感じないな」
シェヴァ : 「意味あるよ、経験値稼ぎになるだろ! だいたい、シュンスケ! お前、一度スキルを振り直す為に休養してンだから、レベルは俺よりずっと低いだろッ! 経験値稼ぎ、したいんじゃないのか?」
GM : 「おぉっと……そういえばそうだったな、最近なんで大氷嵐を連発してるんだと思ったが、そういう事か」
シグ : 「全体攻撃魔法主流に、ふりなおしているんだよな。チェイス攻撃専門の俺には嬉しい選択だが」
シュンスケ : 「確かに経験値は欲しいが、第1階層の敵では、得られる経験値も微々たるモノだろう? それなら、地下に降りて戦闘を重ねた方が効率が良いのではないか?」
シェヴァ : 「……だけど、シグの期待する、宝を守るガーティアンが本当に居るかもしれないだろ。そいつ倒せば、経験値がガッポガッポはいるかもしれないじゃないか!」
シュンスケ : 「宝を守るガーディアンが、俺たちの手に負えない強敵である可能性もあるだろう。リスクは極力避けるもの、それが冒険者だ」
シェヴァ : 「むぅ……どうしてそう、行くのを渋るんだよ、シュンスケ!」
シュンスケ : 「無駄、だからだ……ガセネタの可能性も高く、リスクも大きい上、行く必要性を感じない。動くだけの必要性があれば、俺も動くがな」
シェヴァ : 「うう……」
シュンスケ : 「……それとも、俺を動かすだけの理由が、あるのか」
シェヴァ : 「あう……」
シグ : 「おい、行くなら早く決めてくれよ、俺たちは別に、どっちでもいいんだからさ」
GM : (普段、シュンスケは自分の味方だから、味方である彼を説得する技術がないんだな、シェヴァ……さて、どうする?)
シェヴァ : 「…………ヘッドボンテージ!」
シュンスケ : 「ぐはっ!」
GM : 「まさかの強行突破に、全俺が驚愕ッ!」
シェヴァ : 「つべこべ言ってないでッ……俺が、ついて来いって言ったら、来るんだよ! わーかったな!」
シュンスケ : 「わっ……わかったからッ、封じを解け! アルケミストは、術式封じ(頭封じ)されると……弱い」
アイラ : 「シェヴァさん、意外と亭主関白」(笑)
シグ : 「まぁ、前衛と後衛がまともに闘ったらやっぱり後衛が弱いもんな」(笑)
> 幻想迷宮。
GM : 「……さて、そういう訳で久々に第1階層にやってきた君たちだけど」
アイラ : 「わー、懐かしい。ちょっと前までここのハサミカブトに散々いてこまされてたのに、今は逆にいてこましているんだもん。自分の成長を感じるよね!」
シェヴァ : 「でも……本当にあるのかな、隠し通路なんて」
シュンスケ : 「俺をいてこまして連れて来た癖に、随分と弱気な発言だな、シェヴァ?」
シェヴァ : 「だって、俺一応、壁とかも注意して進んでるんだぜ。それなのに、見落としているとは思えないけどな」
リン : 「シェヴァさんが見落として無くても、イベントが起きるまで開放されない通路かもしれませんよ。とにかく、行ってみましょう?」
GM : 「そういう訳でズンズン進むと……」
シェヴァ : 「怪しいのは、多分、水晶の扉を開けた一番奥の、宝箱の隣にある壁だと思うんだけど……」
GM : 「やがて、シェヴァが目星をつけていた場所へとたどり着く」
シェヴァ : 「……道があるとしたら、ここしか無いけど。前に来た時は、気付かなかったけどなァ」
GM : 「そう呟きながら恐る恐る壁を調べれば……確かに、依頼であった通り。そこには、人の通れる隙間がある!」
シグ : 「……フラグがたった! フラグがたった! わーいわーい」
GM : 「そう茶化すな、まぁ、張り切って進んでくれたまえ」
シュンスケ : 「……とはいえ、第一階層の敵だろう。それほど心配する必要はないだろう」
GM : 「……ふふふ、果たしてそうかな! さぁ、敵が現れたぞ…現れた敵は、ポイズンウーズとスリーパーウーズだッ!」
シグ : 「何いッ! そいつは……第二階層に出る敵じゃ、ないかッ!」
GM : 「ふふふ、そうだ! 第1階層だからといって油断している冒険者の為に、第二階層から呼んだサプライズゲストだ!」
シグ : 「何だと、お前ら! 気合い入れていけよッ!」
GM : 「……」
シグ : 「……と、思ったけど、しょせん二階層の敵だよな。もうすでに、三階層に到達している俺たちからすると……」
アイラ : 「何だ、こいつらか! って感じだよねー」
GM : 「うるさいやいっ。もっと早くお前らが来ると思ったんだいっ!」 (笑)
シェヴァ : 「シュンスケがしぶった結果、敵と俺らの強さが釣り合わなくなっちゃたんだね」(笑)
と、そんな事がありせっかく、サプライズゲストとして現れた第二階層の敵も、難なく撃退され。
挙げ句は。
シグ : 「雑魚ばっかじゃ、腕がなまるぜ……これなら、闘わない方がマシなくらいだぜ」
アイラ : 「弱いモノ虐めしているみたいだしね」
リン : 「あ、ぼく、念のため魔物よけのスズを買ってきましたよ。これ、使いましょうか、獣避けの鈴!」
……と。
敵が弱すぎて、これまでどんな敵を出しても丁重に潰していてくれたさばみそギルドの面子に、ついに獣避けの鈴を使われる始末。
※獣避けの鈴 : 一定歩数、弱い敵の出現率を下げるアイテム。 (同義語:せいすい)
道中。
シェヴァ : 「あ……こんな所に隠し通路がある」
シグ : 「ん……ホントだ。しかし何の意味がある通路だ、それ?」
シェヴァ : 「ここに隠し通路があれば、多少は行き来が楽になるかな……行ってみよう」 (ごそごそ)
シグ : 「おい、待て! お前、穴があったら入るなんて、お前はイタチの子か!」
シェヴァ : 「……出てきた。やっぱりここの通路に繋がっているんだ、ぱっと見た感じ、あんまり便利そうじゃないね……あれ?」
GM : 「……どうした、シェヴァ君」 (ニヤニヤ)
シェヴァ : 「あぁああぁああ! 今来た通路が、今来た通路がなくなってる。なくなってるよッ!」
GM : 「そりゃぁ、そうだ。行きの通路が必ず、帰りも使えると限らないだろう。この通路の間が、断崖絶壁で降りれるけど登れないという可能性もあるんだからな!」
シェヴァ : 「……そんなァ。おーい、リーダぁ。シュンスケぇ、早く来てくれよ、俺一人だとっ、体力がガリガリ削られていくよ!」(笑)
シグ : 「全くッ。 (ごそごそ、と通路を通り追いかけてくる) ……ふぅ、お前っ、穴があったらホイホイ入るんじゃねぇぞ! 何があるかわからねぇんだからな!」
アイラ : (ごそごそ) 「ふぅ、出てきた。もー、シェヴァさん、ゴッキーちゃんだったら絶対に、ホイホイさんに捕まるタイプだよね」(笑)
シェヴァ : 「や、やめてくれよチャバネッタゴキブリェンヌに例えるの! 俺、確かに茶色いけど、あいつら苦手なんだから!」
シグ : 「……しかし、本当にここの隠し通路は戻るだけ、なんだな」
GM : 「うぃ、戻るだけですよ。隠し通路は必ずしも、行き来出来るとは限らないモンで、はい」
シェヴァ : 「非道ぇーなー、言ってよマスター! マイティボンジャックで戻されちゃった気分だよ」
GM : 「それを言う程親切なGMに見えたか?」(笑)
アイラ : 「見えない」(笑)
リン : 「むしろ、ボクたちが困るのを見てニヤニヤしているマスターさんでした」(笑)
シュンスケ : 「元の場所に戻るには、また大回りをしなければならんか……とんだ無駄足だな」
シェヴァ : 「まぁまぁ、そう言わなーいの……可愛いオレのする事だ、許してくれ給え!」
シグ : 「ちょ、お前! 反省の色が足りな……」
シェヴァ : 「シグぅ、ねぇ、許してくれるよ……ねッ?」 (ニコ)
シグ : 「……こ、今回は特別だぞッ!」
アイラ : 「ちょっ、シグが折れた! 私の色気には折れないくせに!」(笑)
GM : 「魔性の男だな、シェヴァは。前世は傾国の美女に違いない」(笑)
と、うっかり 来たけど戻れない隠し通路 に入ってしまい、大幅に戻される事になりつつ。
GM : 「……それじゃ、上の階段。久しぶりの地下4階」
アイラ : 「だけど、敵は相変わらず二階層のやつかな?」
リン : 「そうみたいですね……大ナマケモノさんですよ」
シグ : 「おぉ、アイラじゃないか! 相変わらず逞しいな!」(笑)
アイラ : 「んー、だ・れ・が、ゴリラみたいに筋骨隆々な大ナマケモノなのかな。だ・れ・が!」 (ぎりぎりぎり)
シグ : 「……うぁ。じょ、冗談に決まってるだろうが、アイラ……な?」
アイラ : 「……もぅ、人を大ナマケモノ扱いなんて、失礼しちゃうわ! てぃっ!」 (ぶんっ!)
GM : 「あ! その一撃で、大ナマケモノは倒れたよ」
アイラ : 「やったぁ、ぶいっ!」
シュンスケ : 「……確かに、大ナマケモノでは、無いな」
シグ : 「あぁ……もっと強い化け物(フリークス)だ」
サプライズゲストの、第二階層の敵もモノともせず進み……。
シグ : 「おい、通路にF.O.Eが居るぜ。どうする?」
シェヴァ : 「経験値稼ぎに倒していこうか?」
GM : 「戦う? 森の破壊者だけど……」
アイラ : 「熊肉おいてけッ!」 (ずばばばばばばっ!)
GM : 「……うん、アイラ君の一撃がやっぱ一番応えるなぁ。森の破壊者は熊肉になった」
シェヴァ : 「……あ、さらに先に進んだらまたF.O.Eが」
GM : 「そいつとも戦っていくのか……災いの巨神だな」
アイラ : 「マンガ肉おいてけッ!」 (ずびばほふ!)
GM : 「……うん、アイラ君に殴られるとやっぱりこたえるな。それがトドメになって倒れたよ」
シグ : 「……心なしか、アイラがどんどん逞しくなっていくのだが、気のせいだろうか」
GM : 「気のせいじゃないかもしれない。だが、気付かないのも優しさだぞ、シグ」(笑)
……第二階層からの、ゲストF.O.Eも何なく仕留めながら、確実に奥へと進んでいくのであった。
シグ : 「しかし、思ったより深いダンジョンだったな……クエストだからサッサと終わると思っていたんだが。今、何階だ?」
シェヴァ : 「えーと、地下3階かな?」
リン : 「何処まで戻ればいいんでしょうか……」
アイラ : 「……地下1階まで戻されちゃったら、ちょっといやだね」
GM : 「……等と話ながら数多の部屋を進んでいると、ある部屋に一つ、異様な雰囲気を持つ影を君達は発見する」
シグ : 「異様な雰囲気って……おぉっと、黒影じゃないかッ!」
※黒影 → 黒いF.O.Eの事。通常のF.O.Eは追いつめられていなければ逃げる事が可能だが、黒影は逃走が出来ない。
シェヴァ : 「こんな所に黒いF.O.Eなんて……あやしぃっ! まさかこれが……宝を守る、ガーディアン!?」
GM : 「さぁ……はっきりとわからない。 ただ、その影は巨大な石造りの身体を持ち、何か言いつけられたように、同じ場所に佇んでいる。今こそ静かに佇んでいるが、恐らく自分の領域に入ったモノを逃しはしないのだろう……己の領域を守るよう、注意深く周囲を伺っているように見える」
アイラ : 「……宝の気配は全然ないけど」
シグ : 「……だが、アイツが守護者である雰囲気だな」
シェヴァ : 「きっとそうだよ! アイツがエドゥのお宝を守っているんだ!」
シュンスケ : 「……宝の気配がないのが気になるが。いや、元より眉唾の情報だな。さて、どうするリーダー?」
シグ : 「どうするもこうするも……強ぇ相手が目の前に居たら、戦うしか無ぇだろッ!」
GM : 「……挑むんだね。わかった。それでは……石造りの巨人、無垢故に無慈悲な守護者……ゴーレムが、お前達の相手をしよう!」
> 呼び醒まされた守護者 〜 The Battle with Golem
GM : 「命令を受けた事のみ忠実に再現する、大いなる力を持つ胎児……ゴーレムが君達の行く手を阻む! さぁ戦闘だ。ゴーレム様は君たちが自分に突っ込んできているから、ご立腹だ! しかも黒モンだから逃がしてくれねぇぞ!」
シグ : 「ウーララー! 男なら、やってやれー!」
アイラ : 「って、いきなりもう突っ込んでるし!」
シェヴァ : 「ちょ、落ち着けよリーダー!」
GM : 「こうして、つっこんできたシグの挑戦を受ける形で戦闘になった訳だが……こっちが先制攻撃だ」
一同 : 「な、なんだってー!!!」
シェヴァ : 「よっぽどシグのウーララーがジェロニモってたから、警戒したんだよ」(笑)
アイラ : 「もぅ、シグが考え無しに雄叫びなんてするからぁ!」(笑)
シグ : 「うぁ、正直すまんかった! まさか先制されるたぁ思わなかったんだ!」
GM : (いや、シグが雄叫びをあげようとあげまいと、この敵は必ず奇襲してくるんだが・笑) 「ウーララーなんて突っ込んでくるヤツ相手に身構えない訳はない。という訳で、先制攻撃は……ゴーレムのスキル、フラッシュだ!」
一同 : 「フラッシュ?」
GM : 「だ、が……ふむ、これは皆、抵抗か……。抵抗されると特に効果がないんだよな、せっかくの奇襲を無駄にした」
アイラ : 「フラッシュってどういうスキルだったんだろ? 効果がないと何だかわかんないよね、気になる〜」
シュンスケ : 「恐らくバステを付与するスキルだろうが……フラッシュというくらいだ、盲目効果が濃厚だな」
シェヴァ : 「太陽拳! 太陽拳だ! クリリンだな!」
シグ : 「という事は、ゴーレムはゲーハーのカーピーって訳か」(笑)
GM : 「はげてないやい。(笑) きっと、額に電灯がついているんだい」(笑)
リン : 「額に、電灯ですか!?」
アイラ : 「その方が不自然な気がするけど」(笑)
GM : 「いいだろ、さて戦闘だ。どうする?」
シグ : 「相棒、どうする?」
シュンスケ : 「……正直、何が効果的か皆目検討がつかない。得意の氷からたたき込んでみるが、いいか?」
シグ : 「よしゃ、それじゃ追撃はブーストでいくか!」
シュンスケ : 「いや、弱点が分かってからでも遅くないだろう。ブーストは少しまってくれ」
シグ : 「了解。それじゃ、とりあえず通常でチェイスフリーズだ!」
アイラ : 「私はヘッドバッシュいくよ!」
シェヴァ : 「じゃ、俺は……こいつ、腕系の技使いそうだね。アームボンテージだ!」
リン : 「医術防御! 間に合うといいんですけど」
GM : 「了解。最初の攻撃は……シェヴァからか」
シェヴァ : 「腕を絡めとってやるッ……どう、縛れた? 縛れた?」
GM : 「残念、縛れない。ダメージが120って所か」
アイラ : 「だったら私が! ヘッドバッシュ、どうかな?」
GM : 「それは……してやられたな、頭は封じられた。 それじゃ、ゴーレムの攻撃は……リンに、通常攻撃だ!」
シグ : 「何だとっ、いきなり後衛を狙ってくるなんてッ……ずるいぞ!」
GM : 「お前たちだって、五人がかりでずるいと前もいっただろ! それに、僧侶系から狙うのは基本だと思うけどな、俺は。という訳で、ゴーレムの丸太のような腕がリンの身体を打ち抜く!」
リン : 「うぅ〜」
GM : 「と、思ったが……いかん! すかしたか。残念……」
リン : 「ほっ……」
アイラ : 「ラッキーだったね、リンちゃん。大振りだから命中率は低いのかな?」
GM : 「世界樹モンスターは大振りでも結構な命中率だけどね」
シュンスケ : 「それならこちらは、術式を編もう……大氷嵐、行くぞ……ダメージは、498……」
GM : 「ぐはっ……流石にレベル10になると豪快な攻撃力になるな」
シグ : 「追撃行くぜ!」
GM : 「うぇぇ……とはいえ、こっちもそこらのボスじゃねぇぞ! まだいける。まだいけるさ!」
シグ : 「やっぱり、ボスともなるとホイホイ倒れないか……相棒、次はショックを試してみるか?」
シュンスケ : 「あぁ……大雷嵐をセットしよう」
アイラ : 「私、ブレイバント2を使ってもいいかな?」
シグ : 「いいけど、どうしたよ?」
アイラ : 「あいつ、思ったより硬くて私の攻撃入らないんだもん」(笑)
シェヴァ : 「俺は腕縛りするまで、アームボンテージだ! 絶対に三点縛りして、エクスタシー決めてやるからなッ!」
GM : 「ははは、やれるもんならやってみろ!」
リン : 「ボクは……どうしようかな?」
シュンスケ : 「……無理はするな、防御でもいいぞ」
リン : 「あ、はい! だったら、ガードしてます」
GM : 「それじゃ、ターンの頭は相変わらずチョコロチョロしている、シェヴァから。 受けてたとう!」
シェヴァ : 「ご主人様の鞭を喰らえッ!」 (ビシッ!)
GM : 「きかぬ、きかぬよ! その程度では、我が主と呼べぬ!」 (笑)
シェヴァ : 「むむ、思ったより封じ技、きまらないなぁ」
アイラ : 「私は攻撃力あーっぷ!」
GM : 「シェヴァ、アイラの攻撃が終わったか。それならこっちの攻撃だ……リンに、トリプルアタック!」
一同 : 「なんだって!」
シグ : 「ふっざけんな、一度ならず二度までもリンを狙ってくるなんて……」
GM : 「戦術としては正解だろうけどね。とはいえ……やっぱりゴーレムの攻撃、精度は高くないのかもな。一発目はミス。二発目はダメージ15、三発目はダメージ12だ」
アイラ : 「あれ、大きい体の割に繊細な攻撃だね」(笑)
GM : 「医術防御がきいてる上、ガードされているからな……」
シグ : 「大丈夫か、リン?」
リン : 「大丈夫です、これくらいへっちゃらですよ」
GM : (リン君は案外、ガードが堅いな……装甲の脆いシュンスケから崩していった方がいいかもな)
シュンスケ : 「…………リンを二度狙った、か」
GM : (ぎくっ!) 「ん、それがどうしたかなぁ、シュンスケ君?」
シュンスケ : 「いや……気にするな、あと一回、検証してみるとするさ」
GM : (やばいな、流石に勘のいいヤツ。気付いてるか……) 「じゃ、次のターンね」
シグ : 「相棒、ファイアだな?」
シュンスケ : 「あぁ、試してみる価値はあるだろう」
シグ : 「それじゃ、セット……チェイスファイア、行くぜ!」
アイラ : 「私はスタンスマッシュいっくよー! 攻撃力を増したアイラさんの怖さ見せてあげる!」
シグ : 「おぅ、何時もみたいに挽肉にしてやれ!」
GM : 「肉じゃないけどな」(笑)
シェヴァ : 「やった、ブーストたまった! 俺は、アームボンテージだ! 今度こそ決まればいいなぁ」
GM : 「了解、ターンは……いつも通り、シェヴァとアイラの攻撃から〜」
シェヴァ : 「ブーストしていつもより強烈な攻撃力と、いつもより巧みな俺の縛りテクニックを見ろッ!」
GM : 「ボンテージ技って、縛りプレイの一環だったのか!? ……あぁ、でも縛られないな。ダメージはキツイが」
シェヴァ : 「がっでーむ!」
GM : 「まだまだ縛りが甘いな、シェヴァ」
シグ : 「練習が足りないんじゃないのか。ちゃんとシュンスケで練習しておけ!」
シュンスケ : 「何故俺がそんな練習に付き合わなければならんのだ!」
シェヴァ : 「わかった! もっと激しく! 確実に! ボンテージが決まるように、今度練習させてくれよな、シュンスケ!」
シュンスケ : 「だが断る!」
GM : 「このシュンスケ・ルディックの最も好きな事の一つは、ボンテージ技の練習がしたいと言っているショタっこに、Noと言ってやる事だ!」
シュンスケ : 「かってに俺の台詞を模造するな、マスター」
アイラ : 「でも、シュンスケさんじゃ練習にならないわよ」
GM : 「……そうか。まぁ、そうだろうな。シュンスケは華奢で虚弱だから技はすぐ決まりそうだし」
アイラ : 「そうじゃなくて!」
GM : 「?」
アイラ : 「シュンスケさんはむしろ、縛る側の人間だもん、ねぇ!」
シュンスケ : 「別にそういう趣味はないッ!」
GM : 「さ、て、と。まぁ、シュンスケ君が縛られるかそれとも縛るのかはさておき、ゴーレムの攻撃といこうか! ゴーレムこっちの攻撃は、リンに単体攻撃のパワーハンマー!」
リン : 「うぅ、また私ですかぁ?」 (しょんぼり)
GM : 「うん。でも防御激しいからな。ダメージは19」
リン : 「ほっ……」
シュンスケ : 「そうか……やはり、な」
シグ : 「どうした、シュンスケ?」
シュンスケ : 「3ターン、連続してリン君を狙ってきた……というのは、偶然には思えんな。恐らくゴーレムは、回復役……あるいは、後衛から優先に狙ってくるモンスターと見た」
GM : (ぎっくぅ!)
シグ : 「マジでか?」
シュンスケ : 「確証はないが、可能性は高いだろう。後衛は本来狙われにくい位置。だが、その後衛ばかりが3ターン連続で狙われたのだ。偶然とは思えん」
GM : (くそ、やっぱり気付いたか……勘のいい奴だ、ホント)
シェヴァ : 「だったら、パラディンがいれば楽だったねぇ。パラディンがバックガードだけしていれば楽だったじゃん!」
シグ : 「居ないヤツの話したって仕方ないだろうが。ま、でも、そいつが解れば対応も楽だな。リン、医術防御は切らさないように、そしてガードだ!」
リン : 「は、はい! わかりました!」
シグ : 「シュンスケは……体力が持つ限り、俺の支援をしてくれるな?」
シュンスケ : 「元よりそのつもりだ。最も効率のいい攻撃方法も、フリーズである事が解った今、お前の援助は惜しまない」
シグ : 「つぅ訳で、ガンガン行くぜ!」
一同 : 「おー!」
GM : 「くぅっ……マンドクサヤツらめ! こうなったら、シュンスケから潰してやる! パワーハンマー……ダメージは、55!」
シュンスケ : 「……ッ」
シェヴァ : 「シュンスケ、大丈夫か!?」
シュンスケ : 「あぁ……大丈夫だ。この攻撃なら、あと2度は持つ」
GM : (シュンスケがつぶれればこっちも勝機があるはずだ……が……)
リン : 「すぐ、回復飛ばしますからね!」
GM : (……やはり、回復層は十分。火力も高い、こいつぁ……もぅ、ゴーレムでもさばみその相手は荷が重いか)
その後も、アームボンテージやスタンスマッシュで確実に削られ。
何より、レベル10大氷嵐とチェイスフリーズの複合攻撃はさしものゴーレムの体力を削り。
また。
GM : 「スキル発動、フラッシュ! あ、しまった……頭部が封じられていたか」
アイラ : 「えへへー」
なんて、敵モンスターらしいミスもあり、確実に体力は削られていくのだった……。
GM : 「くぅ、もぅ……持たないな。やむを得ん……次のターン、ゴーレムは……リジェネ発動だ!」
アイラ : 「リジェネ?」
シグ : 「初めて聞くスキルだな?」
GM : 「スキル発動、リジェネ。この効果は……毎ターン、HPを280ずつ回復していく! ははは、恐ろしいだろ! お前たちの攻撃力が280以下なら、確実にゴーレムは復活していくぞ。と、言いたい所だが……」
シグ ← チェイスで追撃ダメージの平均260。
アイラ ← スタンスマッシュ平均ダメージ200。
シェヴァ ← ボンテージ平均ダメージ120。
シュンスケ ← 大氷嵐平均ダメージ450.
GM : 「全然削られるじゃねぇか、チクショー!」(笑)
シグ : 「火力が自慢のさばみそだからな」(笑)
GM : 「でもわからんぞ、勝負はまだ……シュンスケもシグも、残りTPは少ないしな! 大ダメージをたたき込むお前達が居なくなれば、ゴーレムにも勝機が……」
シグ : 「確かにそれを言われると弱いな……俺もシュンスケもあと一発しか打てないか?」
シュンスケ : 「……あぁ」
GM : 「ははは、どうするどうする? さしもの火力でもTPがなければ……」
リン : 「だったら、ボクがアムリタを使いますよ!」
※アムリタ → TP回復薬。 ちなみに、TPは他のRPGで言うMP的なもの。
GM : 「がびーん!」
シグ : 「あぁ、助かるぜリン!」
こうして、リジェネ効果の恩恵もなく確実にダメージは削られて行き。
そして……。
GM : 「もう赤ラインです。でもまだやれるぜ! リジェネで280回復があるんだから、アイラとシェヴァの攻撃は何とか凌げるんだからな!」
シェヴァ : 「……でも、赤ラインだろ。だったら俺……アレ、狙っちゃおうかな?」
GM : 「アレ?」
シェヴァ : 「THE END」
GM : 「!!!」
シグ : 「あぁ、体力が赤ラインの敵を即死させる……って、アレか?」
アイラ : 「シェヴァさん、博打的なもの結構好きだよねー」
シェヴァ : 「まぁ、ダメな時はノーダメが当然ってアレだけどさ。試してみる価値はあるんじゃないかなぁ?」
GM : (うぇぇええぇええ、よりにもよって、ジ・エンドは勘弁だ! ゴーレムのレアドロップ、石像の豪腕は即死効果のあるスキルでトドメを刺す事なんだよ! そんな、ボスクラスの能力を持つ敵が、いきなりレアドロップを落とすなんて格好悪いじゃないか!)
シュンスケ : 「そうだな……どの道、俺とシグ、アイラ君で十分削れる体力だ。即死が聞けば御の字でもある。試してくれ」
GM : (やーめーてーくーれー) 「でも、即死効果がきかない敵も居るからね!」
シュンスケ : 「……イヤに親切なアドバイスだな、GM」
GM : (ぎっくぅ!)
シュンスケ : 「このGMが親切にアドバイスをくれる、という事は、このボスには即死が効くという事だろう。シェヴァ、安心して即死効果をたたき込んでくれ」
シェヴァ : 「ラジャりました!」
GM : 「もぅ、GMの顔色をうかがう奴なんて大嫌いだ!」
シェヴァ : 「それじゃ、行っくよー! じ・えーんど!」
と、いう訳で。
レベル47ダークハンター、レベル5ジ・エンドを前にさしもの石像も倒れない訳にはいかず。
GM : 「ううう……ゴーレムは、倒れました」
……戦いは終わるのであった。
> レクイエムは静かに奏でられる
GM : 「かくして、ゴーレムは倒れた訳だが……」
アイラ : 「ふぇー、強かったぁ。これだけ強ければ経験値はがぽがっぽだよね!」
GM : 「いや、経験値はゼロ」
一同 : 「何ですと!?」
GM : 「まぁ、ゲストボスみたいなもんだから」(笑)
シュンスケ : 「……」 (ジロ)
シェヴァ : 「うぁ、睨むなよシュンスケ! ほら、まだお宝があるかもしれないだろ!」
GM : 「そういって、お宝を探すが……お宝の気配も、ない」
シェヴァ : 「あれ? おっかしぃな……」
シュンスケ : 「……」 (ジロ)
シェヴァ : 「そ、そんな紅い目で見るなってば! うーん……こんな強いボスがいたんだから、お宝はここだと思ったんだけどな?」
GM : 「いくら、探してもない……噂は噂だったのだろうか……?」
シュンスケ : 「……ガセネタだったんだろう」
シェヴァ : 「うぁ……お、怒るなよシュンスケぇ!」
シグ : 「はは……ま、ここもあらかた調べたし、いいんじゃないか。ボチボチ帰ろうぜ」
アイラ : 「何か、石像の豪腕とか手に入れちゃったしね。これ重い!」
リン : 「今回は、牙とか腕とか大きいモノが一杯で持ち帰るの大変ですね」
シグ : 「というか、この荷物袋も不思議だよな。ネズミの皮と、石像の腕が同じスペースに入っているんだから」(笑)
シュンスケ : 「まぁ……目的は果たしただろう。そろそろTPもない、差し支えがなければ、帰還の術式を組むが、いいか?」
シェヴァ : 「そうだね……うーん、やっぱガセネタだったのかな?」
GM : 「と、言う訳で帰還の術式を組み無事にエトリアに戻る……」
アイラ : 「ただーいまっと!」
シェヴァ : 「……ガセネタだったんだろうなぁ。うん、とりあえずこの依頼はガセネタだったって、金鹿のマスターに報告してくるよ!」
アイラ : 「うん。私はこの、腕とか牙とかシリカちゃんに渡してくるね」
シグ : 「お、珍しいなアイラから率先してシリカに会いに行くのを許してくれるとは……」
アイラ : 「だって、腕とか牙とか持ち歩きたくないじゃない。(笑) 報告は、シェヴァさんに任して……行こう、リンちゃん!」
リン : 「はい!」
シグ : 「お、シリカになら俺も会いに行くぜ!」
アイラ : 「シグは……はい、これ!」 (ずしっ!)
シグ : 「なぁっ……ちょ、待て! 大王の牙とかっ、一人じゃちょ……辛ッ……」
アイラ : 「荷物持ち要員としてなら、ついてきていいよ。じゃ、リンちゃん、行こうか!」
リン : 「は、はい。でも……シグ、大丈夫かな?」
シグ : 「おーい、まってくれー!」
GM : 「と、シグたちはシリカの店に行くのか。報告に行くのは……シェヴァだけ?」
シュンスケ : 「俺も行こう」
GM : 「じゃ、シェヴァとシュンスケが報告に行くんだね……君達は、金鹿の酒場へ向かう」
シュンスケ : 「全く、今回は無駄足だったな……」 (ぶちぶち)
シェヴァ : 「だから、シュンスケはすぐそう言う……いいだろ、依頼だったんだし、報酬も出てるしさ!」
GM : 「と、酒場に入ると君たちを見て、マスターはえらく驚いた様子を見せる。 (酒場のマスター) 『あ、さばみそのシュンスケさんとシェヴァくん……大丈夫だった?』」
シェヴァ : 「あ、マスターに名前覚えられている、俺! やば、ちょっと嬉しいかも!」
シュンスケ : 「……大事ないが、どうした?」
GM(金鹿の女主人) : 「『……実は、あなた達がこの依頼を受けた後、依頼主の方が見えて……本当は、そこには財宝なんて、無いって言うの』」
シュンスケ : 「……そうだろうな、実際何も無かった」
シェヴァ : 「なー。でも、何でその人、そんな嘘をついたんだろ?」
GM(金鹿の女主人) : 「『実はそのお爺さん、孫が冒険者でね……ある場所に潜むモンスターと戦い、命を落としたそうなの。お爺さん、何としても仇をとりたかったんだけど、敵は強くて……名前を出したら、誰も怖がって依頼なんて受けないと思ったそうなの』」
シュンスケ : 「!!」
GM(金鹿の女主人) : 「『だから、山賊王エドゥの財宝が隠してある、なんて嘘を……でも、お爺さん、この依頼を受けた冒険者にも家族が。悲しむ人が居るんだ、って思ったら急に心配になってね、依頼を取り下げるつもりで、ここに来たの。そうしたら、モンスターを倒した貴方たちが戻ってきてくれた……』」
シュンスケ : 「……」
GM(金鹿の女主人) : 「『うふふ……めでたし、めでたしね。……ありがと、シュンスケさん。シェヴァ君。おじいさん……きっと、喜ぶわ。報酬……受け取って、ね?』」
シュンスケ : 「あ、あぁ……」
シェヴァ : 「な、シュンスケ! 無駄な依頼なんて……無いんだよ! それを望む、依頼人が居る限りはさッ!」
シュンスケ : 「……あぁ、そうだな」
かくして、強敵ゴーレムを屠り、依頼人の無念を晴らしたさばみそギルドご一行。
この先にある迷宮の謎とは!
そして、これからある出会いとは!
次回、新展開!
新たなメンバーを迎えた、新生さばみそギルド、いよいよ登場!
誰が期待しているかさっぱりわからないけど、乞うご期待ッ!
シュンスケ : 「……ところで、アイラ君がさっきからションボリしているんだが、どうした?」
シグ : 「あぁ、シリカの店で石像の豪腕を売ったら、新しい斧が販売されたんだが……」
アイラ : 「…………はぁ」
シグ : 「その値段が、目玉が飛び出るくらい高くてな! (165000エン) 諦めて、戻ってきた所さ」
アイラ : 「あの斧! 絶対私の為にあるんだから! 絶対に、絶対に手に入れてやるんだからねー!」
そして、アイラは最強の斧・星砕きの戦斧を手に入れる事が出来るのか!
乞うご期待!
> 幕間劇 〜 若葉の気持ち。
それは、少しずつ乖離していく現実。
仮初めと現実。
少しずつ、曖昧になっていくその境界。
キミは曖昧になりつつある世界に、触れても触れなくても良い。
・
・
・
……七瀬澪(シェヴァ)が救急搬送されてから二時間後。
西園寺研究室。(いつもの場所)
アイラ@桐生若葉 (以後 若葉) : 「こんにちは、誰かいまーすかー」
…………。
若葉 : 「……あれ、西園寺さん。居ないのかな? おーい、西園寺さーん?」
…………。
若葉 : 「奥の部屋かな?」 (と、奥の部屋のドアノブに触れようとする)
GM@西園寺馨 (以後 西園寺) : 「触るなッ!」
若葉 : 「きゃぁッ! な、なんだ。西園寺さん、居たんだ。脅かさないでくださいよ!」
西園寺 : 「いや、脅かすつもりはなかったんだけどね。まさか、急に人が来るとは思わなくて……急に大声出してゴメンな。でも、その部屋には色々、見られたくないモンがあるもんで」
若葉 : 「見られたくないもの、ですか?」
西園寺 : 「あはは、君らが見ても面白いモンじゃないけどな……俺の研究資料とか。あと、脳髄のホルマリン漬けとかあるけど、そういうグロいもん好きなら、見てもいいよ?」(笑)
若葉 : 「えー、本当ですかぁ?」(笑)
西園寺 : 「俺、君たちには嘘ついてないつもりだけど?」
若葉 : 「じゃぁ、井上喜久子お姉さんと同い年齢(どし)というのも?」(笑)
西園寺 : 「真実さ! 俺は永遠に喜久子お姉さんと同年代だッ!」 (笑)
若葉 : 「じゃ、そういう事にしておいてあげますよ」(笑)
西園寺 : 「真実だといっておろうが……しかし、わざわざ俺の研究室に何の用事だ。まさか……夜這い! これが噂の、夜這いというものか!」
若葉 : 「そんな訳ないじゃないですかっ! ケータイ忘れたから、取りに来ただけですよ」
西園寺 : 「そんな……せっかくなら、夜這いをかけてくれても構わないんだぞ?」(笑)
若葉 : 「せっかくなので、遠慮しておきます! ……ところで、西園寺さん、どうしたんですか。あそこ。床に、陶器が散乱しているみたいですけど?」
西園寺 : 「あぁ……実は、七瀬君が倒れてね」
若葉 : 「えっ! 七瀬さんが? ……ひょっとして、また……自殺未遂、とか……?」
西園寺 : 「……いや、多分盲腸」
若葉 : 「盲腸? なぁんだ、よかった……七瀬さん、また……そういう風に、なっちゃったんだと思って……」
西園寺 : 「……」
若葉 : 「って、すいません……西園寺さん、知らないですよね。私、この前兄さんから聞いて……七瀬さん、何度かそういう事もしているって……私、ヘンな事いっちゃったかな……」
西園寺 : 「いや、知ってるよ……仮にも私は、椎名君の先生だった訳だからね。 七瀬君に不運が重なった事。 男としてのプライドも、人としての尊厳さえも、悪戯に踏みにじられてしまった事。 それにより、人として生きる事の意味さえ見いだせなくなってしまった事……それで七瀬君も、椎名君も深く傷ついてしまった事……全て聞き及んでいるよ」
若葉 : 「そうですか……西園寺さん、案外椎名さんに信頼されている先生だったんですね」
西園寺 : 「案外って何だよ、案外って!」(笑)
若葉 : 「えへっ……でも、椎名さん、そういうの絶対表に出さない人みたいだから……」
西園寺 : 「……私も椎名君を信頼していたからね。彼は、私の右腕。いや、半身と呼んでいい程の存在だったよ。だから……椎名君が研究室に残らない、ときいた時は残念だったね」
若葉 : 「あれ、椎名さん、勉強出来なくて大学院に行けなかったんじゃないですか。この前、自分でそういってましたよ?」
西園寺 : 「……椎名君ならそういうだろうなぁ。とんでもない、俺なんざ比べモノにならないくらい優秀な男だったよ。 整理整頓は壊滅的に苦手だったがね」
若葉 : 「掃除が苦手なのは、西園寺さんもじゃないんですか。もー、いつまでも割れた食器を放置してたら、ダメですよ」
西園寺 : 「はは……如何せん、今は掃除がまるっきり出来なくてね……」
若葉 : 「仕方ない、この若葉おねーさんが片づけちゃおっかな。感謝してくださいね!」
西園寺 : 「悪いね、助かるよ」
若葉 : 「…………」 (かちゃ、かちゃ)
西園寺 : 「……ところで、若葉君の本当の用事は何だい?」
若葉 : 「えっ! な、何の事ですか?」
西園寺 : 「忘れてもいない携帯電話を忘れたなんて言い張る理由は何かと、そうきいたつもりなんだけどな」
若葉 : 「わっ、西園寺さんって本当にカンがいいっていうか……えへへ。 実は、ちょっと愚痴きいてほしいなぁって。 梨花ちゃんには言えないし……西園寺さんなら、きいてくれるかなぁって思って」
西園寺 : 「言うのは自由だよ。秘密にしていろ、というならそうもしよう。こんなだが、口は結構かたい方なんだ」
若葉 : 「うん……でも、ほんと、大した事じゃないだけど……ね、西園寺さん。西園寺さん、兄弟とか居るんですか?」
西園寺 : 「私は母子家庭だよ。シングルマザーって奴か。 親父はお袋を孕ませた後、大病院のお嬢様に見初められ、お袋を捨てたそうだ。腹違いの兄弟とは仕事上やりとりも多かったが、兄弟って感覚はないな」
若葉 : 「え……あ、ごめんなさい、ヘンな事きいて」
西園寺 : 「気にするな、大病院の弱み、散々利用してやったからな!」(笑)
若葉 : 「本当に利用してそうですね、西園寺さんの場合……あ、私は兄さんが居るんですよ。和彦にーさん……知ってますよね?」
西園寺 : 「あぁ……気持ちのいい男だよな、君の兄さんは。今時、珍しいくらいの正義漢だ」
若葉 : 「ねー……でも、兄さん。昔から、ヘンな女の人にばっかりひっかかるんですよ。 最初の彼女なんて、二股をした挙げ句兄さんの事をストーカー扱いして、別れようとしたり。 兄さんの友達と浮気して、別れたり……最近の奴なんて、貯金勝手に使ったりして、ほんと、最低で!」
西園寺 : (……確かに、異性運のなさそうな所はあるんだよな、桐生君は)
若葉 : 「だから私、兄さんの彼女って全員嫌いだったんです……高飛車だったり、ぶりっこだったり、裏表激しかったり、ヘンな人ばっかりだったから!」
西園寺 : (若葉君の、兄の彼女嫌いは、若葉君自身がブラコンのせいもあると思うがな)
若葉 : 「でも……今度、兄さんが好きな人は……私も、大好きな子なんです。だから、祝福しないといけないのに、それが……私……ダメですね」
西園寺: 「……」
若葉 : 「これ、私の携帯についている、ビーズのこれ! ね、西園寺さん。何だと思います?」
西園寺 : 「んぁ。 そうだな……見た所、指輪みたいだが? 随分と小さいが……」
若葉 : 「これね、結婚指輪!」
西園寺 : 「なんと!?」
若葉 : 「私、子どもの頃、結婚式に憧れていて。お兄ちゃんによく、空き缶のフタをとった偽の指輪で、結婚ごっこをしてもらったんですよ……で、いつも、アルミの指輪じゃ、ヘンだろうって。これ、お兄ちゃんが、かってくれた奴なんです」
西園寺 : 「……なんだ、ごっこあそびのか。ビックリした」
若葉 : 「ホントの指輪な訳ないじゃないですか。(笑) ……私ね、お兄ちゃんを新郎役にして、指輪交換って、それしてもらうの、凄く好きで……兄さん、飽きずにそれに付き合ってくれたんですよ。私が泣くと、お母さんに怒られるから」(笑)
西園寺 : 「そうなんだ、兄も大変なんだな」(笑)
若葉 : 「兄さん……彼女にフられると、いつもかなり凹むんです。 大概、手厳しいフられ方をするから」
西園寺 : (確かに、二股や親友に寝取られは手厳しいな)
若葉 : 「それで、俺ってほんとダメな奴だどうだこうだってウジウジいってる時に……この指輪を見せながらね。 『おにーちゃんダメじゃないよ、もしダメでも、若葉がお嫁になってあげるから平気だよ』 って言うと……ちょっと嬉しそうに笑って……それで、この指輪を、私の小指につけてくれて、はにかんで笑うんです。私、その笑顔が好きで……」
西園寺 : 「…………」
若葉 : 「でも……もう私には、笑ってくれないんだろうな」
西園寺 : 「……若葉くん」
若葉 : 「なんて……あは。こういうの、私らしくないですよね! 少し、身体を動かそうかな……ね、西園寺さん! この、ニーズホッグ・システムって今は動かないんですか?」
西園寺 : 「え。あ……動くと思うが……ただ、今はプログラム・フレスベルグが居ないからな……」
若葉 : 「プログラム・フレスベルグが居ない? 居なくなるものなんですか、プログラムって?」
西園寺 : 「居なくなるんだよ、このプログラム」
若葉 : 「へぇーッ……それが居ないと、どうなるんです?」
西園寺 : 「プログラム・フレスベルグの力で、世界樹の迷宮の触覚を擬似的に作り出している……あいつが居ないと、触覚が再現されなくなる……つまり、何時もみたいに花の匂いや水の冷たさは再現されなくなると思うんだ……たぶん」
若葉 : 「……たぶん?」
西園寺 : 「プログラム・フレスベルグが居ない状態でニーズホッグ・システムを動かした事ないんだよ……プログラム・フレスベルグがあってのニーズホッグシステムだから。最も、俺がいれば動かせない訳じゃないけど……」
若葉 : 「じゃ、動かしてみましょうよ! いつもみたいに、モンスターの手応えとかがなくなるだけ、ですよね?」
西園寺 : 「あぁ……理論ではそうだ。最も、俺はプログラム・フレスベルグではないから、あいつがどういう処理をしているかは判別しかねるが……」
若葉 : 「だったら、大丈夫ですよ! 確か、世界樹のミッションに、一人でモンスターを倒しに行け! ってのがありましたよね。 私、あれクリアしたらやめますから!」
西園寺 : 「そうだな……まぁ、その位なら、俺でも制御しきれるか……」
若葉 : 「……ね、お願いです、西園寺さーん!」
西園寺 : 「……わかった、やってみよう」
ニーズホッグ・システムに向かい、桐生若葉は笑顔を見せる。
西園寺はその姿を確認すると、静かにそれを起動した。
……ただ、彼女の笑顔を見たい。
そんな、純粋な思いの為に。
紀行に戻る / モテる男ってのは彼女居ない時期ないんだよ / さばみそギルドの新たな戦いはこちらから