> 界樹の迷宮を、リプレイ風にレポートしてやんよ!






までのあらすじ >


 第二階層でやり残しは 濃紫の尾針 が 手に入ってない 事くらいなので、第三階層に行く事になりました。




> 現のさばみそギルドさん成長録



シグ (青髪ソードマン LV.40)

 氷属性優先で伸ばすアルケミスト・シュンスケの意向に添う形でチェイスフリーズだけ突出してレベルが高い状態に。

 強力な斧が手に入っていても、剣以外持たないというポリシーから火力が劣るようになってきたが、一応リーダー。


 アイラ・リンは可愛い妹分。

 シュンスケは頼れる相棒。

 シェヴァは賑やかな楽器くらいに思っている。



アイラ (赤髪へそだしソードマン LV.40)

 斧をメインに高火力を叩き出す、斧系女子。斧一本のばしなのでかなりのゆとり教育で、暇さえあれば地下鉱脈を削る毎日。

 ギルドNO.1の火力だが、可憐な乙女だと言い張る。


 リンは可愛い妹分。

 シュンスケはシェヴァの所有者で、 シェヴァはシュンスケ固有の領土。

 シグは世話の焼ける相棒くらいに思っている。



シェヴァ (褐色金目ダークハンター LV.40)

 鞭攻撃メインのダクハンは、主にボンテージ系で叩いてしばってなんぼのもんじゃい。

 装甲の薄さは目立たなくなってきたが、シュンスケの装備品扱いは相変わらず。

 シュンスケは相棒。 シグはリーダー。 リン・アイラは友達だと思っている。



リン (ロリメディ LV.40)

 医療防御、エリアキュアIIを伸ばし続けて皆を守るパーティの防御壁兼救急箱。

 ほのぼの担当で、皆を影ながら笑顔とともに支える、ギルドの良心。


 アイラは頼れる先輩冒険者。

 シェヴァは良き相談相手。

 シュンスケは頭のいい人。

 シグは…… 「き、聞かないでください、もぅ!」 。



シュンスケ (黒髪赤目アルケミスト LV.40)

 属性攻撃のエキスパートであり、リレミト係であり、説明係。

 皆の知恵袋として、参謀として、後衛から様々な入れ知恵を行う。

 さばみそギルドの皆は頼れる仲間であり、それ以上の思いも以下の思いもないと言い張る。(シェヴァは舎弟でも固有の領土でもない)





 THE ATLAS (じ・あとらす) 



 前回のセッションからおよそ一ヶ月後。

 都内、某所。(いつものばしょ)




GM : 「皆、お久しぶりです。元気していたかな。さぁ、前回のセッションから間があいた訳だけど、皆、前回までの事を覚えているかい?」



シェヴァ : 「はーい、俺、覚えてます!」



GM: 「相変わらずいい返事だね、シェヴァ君。それじゃ、先生に説明してみてください!」




シェヴァ : 「はい、先生! 確か…… 外輪船にのってゆったりしていたら、殺人事件がおこったのでしゃしゃり出て解決しようと思ったら、船には落とし穴が仕掛けてあるわ、ナイフが仕掛けてあるわどうなってるんだ、これ何て嫌がらせ! といった所で終わっていたんでしたっけ?」




GM : 「わぁ、それミシシッピー! ミシシッピー殺人事件だよ、シェヴァお前幾つだ!」


シグ : 「というか、GMはシェヴァがゼッタイに前回のあらすじを覚えてないと知っていてシェヴァにあらすじを聞くよな」(笑)


GM : 「だって、シェヴァはいつも、偽のあらすじを用意してきているんだぞ、聞かないと失礼じゃないか。(笑) という訳で、本当のあらすじは、リンくん。頼むよ」



リン : 「………………」 (ぼーっ)


GM : 「……リンくん?」


リン : 「はっ、はい? 何ですか?」


GM : 「がーん、リンくんにも、頼りのリンくんにも覚えてもらえてなかった……しくしく、こうなったら俺ぁぐれてやる! 不良になってやるぜ! 空き缶を灰皿に煙草を吸って、俺も不良(わる)になった。とか一人呟いてやるぜ!」


シュンスケ : 「マスター、貴方の年齢で煙草を吸っても咎めるヤツは誰も居ないと思いますが」(笑)


GM : 「何を言う、俺は井上喜久子おねーちゃんと同い年だぞ」


アイラ : 「それ、17才って事でいいのかなぁ?」(笑)


シェヴァ : 「…………えっと、ほんとは、ケルヌンノスを倒して。それから、地下8階に5日間こもるミッションを終わらせた所だろ、な!」



GM : 「!!! し、シェヴァが…………普通に、あらすじを言った!?」


シェヴァ : 「えへん、偉いだろッ。ちゃんと、シュンスケに聞いてきたんだからな!」


リン : 「あ……すいません、シェヴァさん。私、ぼーっとしてて……」


シェヴァ : 「いーの、いーの。困った時はお互い様って……」




GM : 「……馬鹿野郎、シェヴァ! お前、明日を雨にするつもりかッ!」




シェヴァ : 「そんなッ、正しい事言ったのに責められた!?」(笑)


アイラ : 「しかも、ケムンパスの名前を、間違えてない!」




GM : 「何とッ……シェヴァ、お前明日を台風にするつもりかッ!」




シェヴァ : 「非道ぇー、そんなつもりないってば!」


アイラ : 「あははは、それよりどうする、今回こそ地下11階……第三階層の探索に向かうのかな?」


シュンスケ : 「……いや、その前に執政院に向かおう」


シグ : 「執政院、何だシュンスケ、お前急にあの肩パットが強固なメガネに会いたくなったのか?」(笑)


シュンスケ : 「別にメガネが恋しくなった訳ではないぞ。(笑) 以前依頼を受けていた、ケルヌンノス退治を達成させた報告がまだだろう。それを済ませておこうと思ってな」


シグ : 「ん……あれ、まだ報告してなかったっけか」


シェヴァ : 「してなかったかもね、俺らつい報告忘れるって事、多いから」


シグ : 「だったら、仕方ねぇ。気乗りはしねェが、早速執政院のメガネ男の面でも拝みにいこうぜ!」


GM : 「気乗りはしないとか言わないでくれ。(笑) 執政院のメガネさんは、キミらを見ると安心したように笑うよ。 『……ありがとう、あの密林の魔物を退治してくれたのか。君たちも、立派な冒険者になったという事だね』



シグ : 「いや、メガネ男の台詞はどうでもいいから、とっとと報酬よこせ」(笑)




GM : 「いくら男キャラだからって、そんなに冷遇しないでくれよ、もぅ……まぁ、俺も男を演じるのなんてつまらんから、それじゃそこそこに切り上げるかな。(笑) ほら、報酬の3500エンだ」(笑)



アイラ : 「GMさんも、男性NPCに対しては愛がないねー」(笑)


GM : 「やっぱり、シリカや金鹿の女主人と比べればどうもな……っと、報酬を手渡したメガネ君はキミたちを見てさらに続ける。 『さて、キミたちのおかげで再び、第三階層に向かう事が出来るようになったのだが、如何せん新しい土地。まだ右も左もわからない状態だ』



アイラ : 「第三階層は私たちがボスを倒すまで、封鎖されていたも同然だったんだもんね」


GM(執政院のメガネ) : 「『あぁ、そうだ。だから今は、第三階層に赴いた兵士達に地図を作らせているのだが……なにぶん、強力なモンスターも居る。彼らだけでは心許ない、というのが本音だ。よかったら、力を貸してもらえないか?』



アイラ : 「えっ、えっ、力を貸すって、何を?」


シグ : 「地図作りしている、兵士たちの護衛でも、すりゃいいのか?」


GM : 「いや、護衛じゃなくて地図作りそのものだ。(笑) 『……ひとまず、地下11階地下12階の完全な地図を作ってもらいたいのだが』


シグ : 「地図作りっちゃ、マッパーの意見を聞かねぇとな。どうだ、シェヴァ?」


シェヴァ : 「ぜーんぜん、問題無しだよ! 大体、地図は最初から作るつもりだもんね。いいんじゃないかな、受けちゃっても? 地図を作るだけなら、危険はないだろーし!」


シグ : 「そうか、それじゃ、シェヴァの所有者の意見も聞かねぇとな、どうだ、シュンスケ?」


シュンスケ : 「俺はシェヴァの所持権を主張した事など一度もないが……俺の意見も、概ねシェヴァと同意だな。地図は必要なもの、そして完璧である事が望まれる。ミッションを受ける事は俺たちの世界樹探索の目的と合致する。受けない理由はないだろう」


シグ : 「だよなぁ? ま、メガネの依頼というのが気に入らないが、断る理由がない以上受けておくとするか。その依頼、このさばみそギルドが受けてやるぜ!」


GM(執政院のメガネ) : 「メガネの依頼が気に入らないと言われた、その事実が非常に心に引っかかるが。(笑) キミたちが受けてくれるなら、今地下に派遣している兵士たちも、安心するだろう。それじゃ、頼んだよ』



シグ : 「……と、そういう訳で地図作るハメになったかぞー。地下11階、地下12階はくまなく歩く事になると思うが、皆気合い入れてけよー!」



一同 : 「おー!」





 ノ洞窟



GM : 「という訳で、キミたちは早速、地下11階に行く訳だが……」


アイラ : 「わー、初めての階層はドキドキするねー……ねね、GMさん。前回の階層は、熱帯の密林で、前々回木漏れ日もある森林だったけど……今回の階層は、どんな所?」



GM : 「今回は……」




シェヴァ : 八畳一間の和風建築だ!」




GM : 「いやいやいやいや、そんな訳はない! それだったら、すぐ探索終わっちゃうだろうが!(笑) 今回は……そうだな、一言で言い表すなら……だ」


アイラ : 「海?」


GM : 「そう……床一面がく、そこここにある石は珊瑚のように輝く……ライトブルーの海を思わす世界……その名も、千年ノ蒼樹海!」



 と、そこでプレイヤー達の前に、光り輝く蒼い迷宮が広がる!



一同 : 「おおおおぉ〜!」



シェヴァ : 「すっげ、すっげ、本当に海の中居るみてぇ……」


アイラ : 「わー、すごーい、きれーい! 一面が蒼くてッ、キラキラしてて……今までの迷宮とは違う感じね!」


シェヴァ : 「なー……なー、シュンスケ、あれ、珊瑚かな、珊瑚! うわぁ凄ぇ……魚泳いでないかな、魚!」


シュンスケ : 「泳いでないだろ、ここは迷宮だぞ?」(笑)



GM : 「流石、見た目美しい千年ノ蒼樹海。 入った瞬間、女性とちみっこのハートを掴んだぞ!」(笑)


シグ : 「そりゃ、ちみっこや女の子は水族館とか好きだもんな……な、リンもこういうの、好きだろ?」


リン : 「………………」 (ぼーッ)


シグ : 「リン? どうした、具合でも悪いか?」


リン  : 「……えっ? あ、あ……べ、べ、別に、ボクは大丈夫ですよ! えっと……そう、そう、あんまりキレイだったから、ボーっとしちゃって!」


シグ : 「……そうか? だったらいいんだけどよ……ま、あんまり無理するなよ、な?」


リン : 「あ……あ、はい……」




シェヴァ : 「わー、すげーキレイだよ、シュンスケー。早くもっと奥に行ってみよーよー!」


シュンスケ : 「ん……コラ、お前ッ……手を引っ張るな! 俺は……前衛じゃない、前に出たら即死だぞ!」



アイラ : 「あー……シグぅ。シェヴァさんがシュンスケさん連れて駆け落ちしようとしているよー、早く行かないと、置いてかれちゃう!」




シュンスケ : 「……別にこいつと駆け落ちするつもりは無い!」



シグ : 「ははっ、どっちにしてもあいつら二人の装甲薄いコンビが単独行動したら致死率がぐっと上がるからな……追いかけてやろうぜ」


アイラ : 「だねー、邪魔するのはわーるいけどっ……えー、でも楽しみだな、この階層のモンスター!」


シグ : 「楽しみ……そっか?」


アイラ : 「そうだよ、だってこんなキレイなフロアで、ほら、いかにも海の中って印象じゃない。しかも、沖縄とかそっち系の! きっと、出てくるモンスターも海系のモンスターだよ!」


シグ : 「海系?」


アイラ : 「そうそう、海の中に居るような……例えば、くらげとか、ヒトデとか!」


シェヴァ : 「あ……そうかもしんないね。俺もそういうのがいいなァ。まんぼうとか、ペンギンとか……戦うのはイヤだけどさ、何かそういうの出てきてくれると嬉しいなァ!」


シグ : 「何だよお前ら、すっかり水族館気分か?」


アイラ : 「あは、でも期待していいんじゃないかなッ。だって、世界樹のモンスターって、可愛いのが多いもんね!」


シュンスケ : 「ふむ……確かに今までは、ウサギやらアルマジロなんて敵が多かったが……」



GM : 「……と、期待もされているようだから、早速が現れた!」



アイラ : 「……わくわく。 くらげ! くらげ!」(笑)


シェヴァ : 「……てかてか。 ぺんぎん! ぺんぎん!」(笑)




GM : 「敵は二匹、その名も……森林ガエル




アイラ&シェヴァ : 「……え?」




GM : 「……だから、森林ガエル。カエルですけれども、何か?」




アイラ&シェヴァ : 「……えぇええぇえええぇー!」



GM : 「そんな、不満そうな声漏らすなよ、いいだろ、カエルだって」(笑)


シェヴァ : 「でもさァ……期待してたのにな、ペンペン的なもの」(笑)


アイラ : 「しかもっ、いやぁだぁ、このカエル、ものすごく気持ち悪い顔してるゥ……何かおたまじゃくしになりかけみたい……」


シグ : 「カエルからオタマジャクシになりかけている顔なのか」(笑)


シュンスケ : 「確かにこのカエル、オタマジャクシからカエルになりかけている顔より、カエルからオタマジャクシになりかけている顔に思えるな」(笑)


シェヴァ : 「キレイな海っぽい場所だから、水族館気分が満喫出来ると思ったんだけどなー」




GM : 「ところがどっこい、現実! これが現実ですッ……という訳で戦え、さっくりとだ!」



シグ : 「じゃ、さっくりハヤブサ駆け」


アイラ : 「さっくりスタンスマッシュ」


シェヴァ : 「さっくりレッグボンテージ」



GM : 「いきなり全力かよ!」(笑)


シグ : 「新階層の敵は、なめた外見でも思わぬ強敵が多いからな」(笑)


GM : 「ふむ、ウサギスライムベスに散々いてこまされた経験が、お前たちの警戒心をあげてしまった訳か……とはいえ、キミらが警戒する程強くはないな、この敵は。シェヴァのレッグボンテージでぱちん! アイラのスタンスマッシュでピチン! と泡が弾けるみたいに倒れてしまった」


シェヴァ : 「カエル風船にしてやる!」


GM : 「やめてくれ、ケツの穴にストローさして膨らますなんて非道い真似はやめてくれ」(笑)


アイラ : 「はぁ〜ぁ、でも、カエルかぁ……これじゃ、とっても水族館デートの気分にはなれないねー」


GM : 「そんな楽しそうな事、俺がさせるか」(笑)


アイラ : 「だよねぇ……はぁ、でもちょっとガッカリ……あ!


シェヴァ : 「どうしたの、アイラちゃん?」


アイラ : 「うぅん、確か……リンちゃんて、凄くカエルが嫌いだったよ……ね?」


シェヴァ : 「あ! そういえば、言ってたね……前、爬虫類は全般的にダメ、カエルとかイモリとかもダメだって……」


アイラ : 「ね、大丈夫だった、リンちゃん。怖くなかった?」


リン : 「…………」 (ポケーッ)


アイラ : 「…………リンちゃん?」


リン : 「……へっ。あ、あ……ど、ど、どうしましたか、アイラさん? 何か、ありました?」


アイラ : 「えっ……? えーっと、今、カエルが出たけど、大丈夫だった?」



リン  : 「え、え……か、か、カエルですか、何処ですかッ!?」 (わたわた)



アイラ : 「も、もう大丈夫よリンちゃん、倒したから慌てないで!」



シュンスケ : 「……何だ、今日のリン君は随分集中力散漫だな、疲れているのか?」


シェヴァ : 「………………んー、どうだろうね?」


リン : 「うぅ……カエルが出るんですね、ここ……イヤだなぁ……」


シグ : 「ははッ、心配すんなって。俺が、リンの近くにカエルが来ないよう身体張るから、まぁ見ててくれって! な?」


リン : 「シグ……優しいですね。ボク……」


シグ : 「あったり前だろ、俺たちは…………」



リン : 「…………ぼく、誤解しちゃったな、シグのそういう所」



シグ : 「……ん? どうした、リン。今何か言った……か?」


リン : 「……何でも、ないですよ。さっ、行きましょう!」


シグ : 「ん……あ、あぁ……」




> メルカトルの




シェヴァ : 「えっと、ここが曲がり角、こっちは行き止まり……」 (※MAPを記載中)


シュンスケ : 「……順調にできあがっているな」


シェヴァ : 「あぁ。これでも一応、さばみそギルドのマッパーだからね、ちゃんと責任もって地図作らないと……」



GM : 「と、キミ達が必死で進んでいると、前に一人の兵士が立ち止まっている姿が見える」


アイラ : 「一人の兵士? ……執政院のメガネさんが言っていた、先に派遣して地図を作っている、っていう兵士さんかな。おーい!」


GM : 「アイラ君が呼びかけると、兵士は安心したように笑うね。 『さばみそギルドの皆さん! 皆さんが、地図製作を請け負ってくれると聞いて安心しましたよ!』


シグ : 「この流れ……さてはこの兵士、もぅ自分で地図作る気はゼロだな」(笑)


GM : 「そう言ってやるな、この兵士は第三階層をたった一人で歩いているのだ。(笑) 『正直、ここまで敵を避けながら何とか来ましたが、正直もう限界です! 私がここまで作った地図をさし上げますから、どうかここから先は皆さんで地図をつくってください!』


シグ : 「そんな、根性で何とかしろ。お前には根性があるぞ!」(笑)


GM(兵士) : 「『いいや、もう限界だ! 帰るね!』


シュンスケ : 「ん、吉良吉影か?」(笑)


シェヴァ : 「あなざーわんばいつぁだーすと!」


GM : 「と、そこで兵士はシェヴァから地図を取り上げて……」


シェヴァ : 「あー。取られた! 俺の最高傑作がとられたよ!」


GM : 「すぐ返すから貸せよ……っと、ちょい、ちょい、ちょいっと……キミらの地図に自分の書いてきた地図を書き足す。 『これが、私リサーチの、ここから先にある地図です、どうぞ役立ててください!』 そして、逃げるように立ち去った」(笑)


シグ : 「ここから先の地図が書いてあるんだな?」


GM : 「そうだね、キミたちがまだ見ぬ、先の道が書き込まれている」


シグ : 「そりゃ、いいや。わざわざ先に行く必要もなくなったじゃないか、手間が省けたってモンだ、な!」



シェヴァ : 「……あああああああああっ!」



シグ : 「うぉっ! な、何だシェヴァ、急に声をあげンなっ、繊細な俺がビックリしちゃうだろうが!」


アイラ : 「シグが繊細なら、世界中の誰しもが繊細だってば! でも、どうしたのシェヴァさん、そんな、地図見た瞬間素っ頓狂な声あげて」


シェヴァ : 「だって、ほらこれ見てよリーダー! これ、俺の書いた地図……めっちゃくちゃに上書きしやがった、あいつ!」


シュンスケ : 「……どれ。なるほど、確かにかなり書き換えられているな」


シェヴァ : 「しかも……見ろよ、ここ。ほら、ココとか、ココとか間違ってるし! ココはちゃんと扉があるしッ、ここは行き止まりなんかじゃ無ぇーよ!」


シグ : 「何ぃっ……ホントだ、シェヴァの言う通りだな……俺らが歩いた感じと、かなり違うみてぇだ」


シェヴァ : 「全く、非道ぇなぁ……書くならちゃんと正しく書いてくれ、って感じだよ!」 (←と、言いながら地図を書き直している)



GM : 「ははッ。まぁ、所詮、逃げ回りながら書いた地図だ、諦めてくれ!」



シュンスケ : 「……諦めろ、か……どうやら兵士が書いた地図は当てにはならないな。確認した方がよさそうだ」


シェヴァ : 「そうだね……あ、ここも間違ってる! ここもッ!」


アイラ : 「いいじゃない、いいじゃない。全部歩いて確かめた方が面白いもの!」


シグ : 「そうだ、同じ旅なら、足跡が残る方がいいぞ!」(笑)


シェヴァ : 「皆、前向きだーねー……ま、いいや、まったり行こう!」



 かくして、さばみそギルドの面子は迷宮をひた歩く事になった。

 その途中……。





GM : 「迷宮を進むと兵士が一人キミたちに近づいてくるね! 『ケルヌンノスを倒した高名な冒険者が地図作り代行をやっていると聞いて!』


シュンスケ : 「別に、地図作り代行をやっている訳ではないのだが……」


GM(兵士) : 「『まぁまぁ、ぶっちゃけもう帰りたい、ここ怖いから』 と、いいつつ、兵士はキミたちに地図を手渡し……」


シェヴァ : 「い、いらないよ! その地図、ぶっちゃけ間違っているんだろうし」(笑)


GM(兵士) 「『そ、そんな、オラが一生懸命作った地図こさ使ってくれねぇだか!』


シグ : 「何で急にかっぺ調になる?」(笑)



GM(兵士) : 「『オラ、臆病だが必死に地図こさえただよ! そりゃ、オラはダメな執政院の兵士だァ……でも、何時かメガネさんみたく立派になろうと頑張ってるだよ! そんなオラの血と汗の結晶、受け取ってくれないだか?』」(笑)



シグ : 「メガネは立派なのか?」(笑)


アイラ : 「肩パットは立派だけど」(笑)


シェヴァ : 「うぇー……でも、そう言われたら、受け取らないと鬼みたいじゃないか! 仕方ない、受け取るよ……」


GM(兵士) : 「『ありがとな、ありがとなぁ!』 と、兵士は感謝の言葉を述べつつ去っていった……地図が書き変わった!」(笑)




シェヴァ : 「うわぁ、やっぱり目に見えて間違えているよこれ!」(笑)




シグ : 「言うな、兵士の努力の結晶だ」



 ……と、再び間違っている地図を強引に手渡されたり。



GM : 「と、迷宮をひた進んでいると、キミたちを見つけた一人の兵士が……」




シェヴァ : 「もぅいやだ! シュンスケ、氷結の術式してくれッ、氷結の術式! 大氷嵐でも可!」



シュンスケ : 「……お前は俺にNPC殺しをさせるつもりか」(笑)


シグ : 「NPC殺しはコンピューターゲーム界きってのタブーだぞ。最も、そんなに簡単に殺せるNPCは、ゲーム界といえどもガラハドくらいのモンだろうがな」(笑)



GM : 「出会い頭にヌッ殺そうとしないでくれたまえ、兵士ビビっちゃうから。 とにかく兵士はキミたちを見つけると駆け寄ってきた…… 『べ、別に来てくれなくても、良かったんだからねッ!』」




一同 : 「ツンデレだー!!!」




GM(兵士) : 「『もぅっ……遅い! ケルヌンノスを倒したやり手の冒険者だっていうからどんなヤツらかと思ってみれば、全然遅いじゃない! 探索は、オレがもうかなり進めちゃったんだからね!』



シグ : 「何で兵士にそんなキャラをたてるんだ、GM?」


シェヴァ : 「このギルドには、ツンデレ成分が足りないと思ったのかな」(笑)


GM(兵士) : 「『でも……何とかここまでの地図は書けたんだからね! ほらこれ、受け取りなさいよ! べ、別に、あんたたちの為に作った訳じゃないんだからねッ!』



シグ : 「発言としては非常に萌えるんだが、グラフィックが鎧甲冑をまとった兵士じゃなぁ……」(笑)


シェヴァ : 「でも、それ明らかにまた、間違っている地図だろ……それを受け取るのは、ちょっとなぁ……」


GM(兵士) : (明らかに落胆した様子で) 「『い、いらないっていうの!? べ、別にいいんだから! さ、最初っから貴方に渡すつもりなんてなかったんだし! なかったん……だ……しッ……』


シェヴァ : 「もー、またそれ、オレが受け取らないと悪党みたいじゃないかー! 仕方ない、受け取るよ、受け取るってば!」


GM(兵士) : 「『ほんと! べ、別に喜んでなんかいないんだからね! もぅ、ここから先は落とし穴とかあるから、気をつければいいけど、別に気をつけなくてもいいんだからねッ!』 と、いい地図を手渡すと、兵士は去っていく……案の定、地図は間違いだらけなのだった」(笑)


シェヴァ : 「やーっぱりかー、もー、がーっかりだー」



 と、三度間違っている地図を受け取りながらも。

 それでも、着々と先に進んでいくのだった……。





GM : 「で、三度も間違った地図を上書きされたキミたちだけど、それにもめげず奥に進んでいく訳だ……」


シェヴァ : 「ん……けど、ボチボチ、F.O.Eとの戦いが避けられなくなってきた感じかな……避けながら進むの、いい加減、限界だよー」


シグ : 「俺からすると、シェヴァは少し避けすぎな気ぃするけどな、戦闘! 俺らくらいのレベルになれば、多少のF.O.Eでもものともしねぇってのによ!」


シェヴァ : 「でも、避けられる所は避けておきたいだろ、何が起こるかわかんねぇしさ……」


シュンスケ : 「……そんなに、F.O.Eとの遭遇を避けたければ、俺が千里眼の術式を取ってもいいが?」



 ※ 千里眼の術式 → MAP内のF.O.Eを感知する。 トルネコの大冒険で言う所の、千里眼の巻物



シェヴァ : 「んー、確かにそれあれば、出会い頭にいきなりF.O.E! って事故はなくなるけどさー、アレ、必要TP多いし条件も結構厳しいだろ、無理にとらなくても、注意してれば大丈夫だから別にいいよ!」 


シュンスケ : 「……お前がそう言うなら、構わないが」


シェヴァ : 「曲がり角とか、見通しの悪い場所は少し、注意して進めば大丈夫だからさ!」 (と、言いながら扉を開ける)



GM : 「と、シェヴァは扉を開ける訳だね……すると、何と扉の内側にはF.O.Eが潜んでいたッ!




シェヴァ : 「な、なんだってー!!」



GM : 「はいはい、キバヤシご苦労……ささ、戦闘だよー」


シェヴァ : 「は、反則だー! そんな、扉開けていきなりF.O.Eなんて、避けようがないじゃないかー、反則だー!」



GM : 「反則上等! むしろ、お前らのルールに則ってやれるかぃ! という訳で、戦闘開始ぃ〜、はい、敵は……ハイキラーアントだ!」



シグ : 「おッ、おっ、おっ……戦闘開始かッ、ちょっと待て、今陣形をっ」 (もたもた)


アイラ : 「え、いきなりぃ……オヤツ食べてる場合じゃないかなぁ」 (わたわた)



GM : 「……どうやらキミたちは随分もたついているようだね。だったら、こっちが先制攻撃だッ!」



一同 : 「な、なんだって〜」



アイラ : 「もー、そんな事言われてもモンスターの準備なんてしてなかったもんっ!」


シェヴァ : 「あーぅー……」


シュンスケ : 「……やはり俺が、千里眼の術式をとるか?」


シェヴァ : 「うぅ……余裕があったら、お願いしまっす……」



GM : 「という訳で、1ターン目は……ハイキラーアントの攻撃ッ! ……ハイキラーアントは仲間を呼んだ!




シェヴァ : 「しかし助けはこなかった!」




GM : 「残念ながら、世界樹のモンスターはそんなに白状ではないのだ! ……キラーアントが現れたッ!」



アイラ : 「えー、何でこんな海みたいにキレイな階層に、こんなうじゃうじゃアリが居るのー?」」


シグ : 「床下が、シロアリにでも喰われているんだろ?」(笑)


GM : (強ち、間違いじゃないんだよな、それ・笑)



シグ : 「とにかく、シロアリが繁茂しているようじゃこの世界樹の迷宮土台が腐る可能性があるな。早速、害虫駆除おっぱじめようぜ!」


GM: 「シロアリじゃない、キラーアントだ!」



シグ : 「どっちだって一緒だろ、ちゃっちゃと片づけてやるぜっ! この野郎ッ……って、硬ぇええぇえ!


GM : 「アリなもんで、サーセン……という訳で、やられたらやりかえすアリ! がっちーんと行くぜ、シグ!」



シグ : 「アリの攻撃くらい……って、痛ってぇええぇええ!」


GM : 「アリをなめるな! リアルのアリは蟻酸で小柄な割にかなり痛みを与えるが、世界樹のアリは物理的に攻撃力があるんだ」(笑)


アイラ : 「……アリだと思っていたけど、硬くて痛いんなら、医術防御あった方がいいかな、リンちゃん!」


リン : 「……」


アイラ : 「…リンちゃん?」


リン : 「えっ……あ、あぁっ、シグ! 大丈夫ですかッ! 今キュアを……」


アイラ : 「え、えっ……医術防御が先でいいよ、リンちゃん、あいつはまだ頑張れるから!」


シグ : 「いや、俺としてはキュアが先でも全然いいんだが」(笑)


シュンスケ : 「……今日は本当に、集中力が散漫だな、リン君」


リン : 「あ……ご、ごめんなさい、シュンスケさん……」 (しょんぼら)


シェヴァ : 「いーっていぃって、硬くて痛ぇ相手だけど、手に負えないって訳じゃないだろっ、そーれレッグボンテージ!」


アイラ : 「そーそー……それ、ヘッドバッシュだよ!」


GM: 「うぁ……流石にお前らの全力攻撃は痛ぇな……ガンガン削られてく……」


シェヴァ : 「これでシュンスケが大氷嵐ぶちこんでくれれば、問題無く勝てるって」


シュンスケ : 「そうだな、大氷嵐を発動しよう……」


GM : 「で、入れる訳だね……大氷嵐。うん、それで殆ど瀕死だ……っと、次のターンでアリはさっくり殺される」



シェヴァ : 「ほら、なー、退治出来ただろー。医術防御使わなくてもっ、うま立ち回れば何とかなるんだって!」


リン : 「……あ。す、すいません、シェヴァさん、そのっ……」


シェヴァ : 「いーのいーの……お互いフォローする為の仲間なんだから、気にするなって! 俺達のフォローは、リンちゃんが出来る時にしてくれればいいからさ!」


リン : 「……シェヴァさん、そのっ……ありがとう、ございます……大丈夫ですっ、すぐまた……出来るように、なりますから……」




> 其は、永久に横たわる宮にあらねど。




GM : 「そうして、モッサモッサと君達が歩いていると……君達が到達したその小部屋で、珍しい人物を発見する?」


シェヴァ : 「な、何だよ、もぅ、地図なら散々上書きされたんだから、貸さないんだからねッ!」


シグ : 「何でお前がツンデレ化するんだ、さっきの兵士の影響か?」(笑)


GM : 「大丈夫、兵士じゃない。兵士だったら今日、三回も会ってるんだ、珍しく無いだろ?(笑) 森の奥に一人佇んでいるのは……ブシドーの姿、そう……レンの姿だね」



シェヴァ : 「マユナシ! マユナシじゃないか!」



GM : 「ちょっ、お前……そんな、某ジブリなアニメに出てきそうな妖怪の名前で女性NPCを呼ぶの、GM、どうかと思いますよ! 確かに彼女は眉毛が見あたらない系だけどさ!」(笑)


シュンスケ : 「ブシドー……レンが一人でいるのか?」


GM : 「一人みたいだね、ツスクルの姿は見えない」


アイラ : 「珍しいね、二人で一緒に行動している事が多いってイメージなんだけど……」


GM : 「今は一人だね……レンは君たちに気付くと、話しかけてくる。 (レン) 『キミたちか……順調に冒険を重ね、己の腕を磨いているようだな』


シグ : 「まぁな、おかげさまで随分強くなったぜ!」


GM(レン) : 「『だが……君たちは、そのに、何をむ?』


シグ : 「……ハァ?」


GM(レン) : 「『…………キミ達は、この迷宮に何を望んでいるというんだ?』



アイラ : 「え、え、何って私は……皆がここに来るって言うから?」


シェヴァ : 「俺は……」



シグ : 「強くなる為。そんな理由でここに居ちゃ、いけねぇのか?」



GM(レン) : 「『強くなる為……なる程、最強の獣。その名が欲しいか?』



シグ : 「男なら一度は夢見る、バカげた夢が何時までたっても捨てられねぇんだよ」


GM(レン) : 「『なるほど……いかにも理解しやすい、解りやすい理由だ。だが……何故ここでなくてはいけない?』



シグ : 「はぁ?」


GM(レン) : 「『ここである必要は……無いだろう?』


シュンスケ : 「いや、ここでなければなし得ないな」


GM(レン) : 「『……』


シュンスケ : 「俺の目的は、世界樹の迷宮。その謎を解く為だ」


GM(レン) : 「『……なるほど、冒険者らしい真っ当な答えだが……』


シュンスケ : 「冒険者らしい? 学士らしい、と言って欲しいモノだがな……」


GM(レン) : 「『だがそれに何の意味がある?』


シュンスケ : 「…………理由を問いたいのか?」


GM(レン) : 「『……エトリアは、迷宮が発見される前は小さな村だった。だが迷宮が発見された事で人が賑わい、発展していった……であるから人が集まるこの迷宮に……われてしまったら、どうなるか、考えた事はあるのか……?』


シュンスケ : 「……議論をしたいのか? それとも、説教か? 忠告か?」


GM(レン) : 「『考えろ、と言ったのだ。このまま迷宮に挑む事で何がおこるかを、な……』」 (と、そこで何かを取り出し、差し出す)



シュンスケ : 「……施しか?」


GM(レン) : 「『……餞別だ。キミたちが考えて進むというのなら、これが助けになるだろう……ブシドー秘伝の書だ』



アイラ : 「ブシドー秘伝の書?」


シェヴァ : 「この、秘伝の書のレシピ通りに鍋で煮込めば、立派なブシドーが作れます、みたいな?」(笑)



GM : 「おいこら、せっかく格好いい雰囲気を出しているにに茶化すなよ! ……まぁ、実際その通り、ギルドでブシドーがつくれるようになるアイテムだけどさ」(笑)


シュンスケ : 「……何故そんなモノを、俺によこす?」


GM(レン) : 「『……考え、迷宮に挑むのであれば役立つだろう。それでは、壮健でな』 と、そこで彼女は森から去っていった……」



アイラ : 「……ふぇぇ、相変わらず怖い人だったぁ」


シグ : 「まゆげないしな」(笑)


GM : 「いやいや、一応あるよ!」(笑)


アイラ : 「でもでもッ、新しいアイテムゲットで新しい職業ゲットだよ! これ、早速ギルドに戻って登録してこうよ!」


シグ : 「そうだな、11階の地図も大方出来上がって来た訳だしっ……」



シェヴァ : 「…………」



シグ : 「おぃ、どうしたシェヴァ! 鍛えついでに、徒歩で帰るぜー」


シェヴァ : 「……え、あ……あぁ、わかった、今行くよ」


シュンスケ : 「……どうした、リン君に続きお前まで集中力を欠くとは……考え事でもあったか?」


シェヴァ : 「考え事じゃ無ぇよ、はは……たださ」


シュンスケ : 「……」


シェヴァ : 「彼女は何であんな事を言うんだろうな、何で……って、それがちょっと、気になっただけだよ」


シュンスケ : 「……さぁ、な」




 かくして、地図を作り続ける冒険者。

 ブシドー、レンの言葉の真意は一体何処にあるのか。


 そしてこの先に何があるというのか……。


 次回!

 そういえばシュンスケさんは濃紫の尾針は拾ったんですか?

 に、続く!





シュンスケ : 「心配されなくても拾ったから安心しろっ!」



シェヴァ : 「良かったねー」



 さばみそギルドがジュエリーデザイナーの要求に応えられるようになったのは、三階層到達後だったのは、全てシュンスケさんのリアルラックの低さの賜物です。




> 幕劇 〜 西園寺の研究室




 現実と架空の世界を行き来して、また現実へ。

 穏やかな日常は、ゆるゆると進み続ける。

 仮初めは仮初め。

 現実は現実。

 お互いに別の世界として、ただそこにありつづける。


 キミは仮初めの世界とともにある、現の世界の物語に触れても触れなくても良い。





 ――セッション終了直後、都内某所。(いつものばしょ)



西園寺馨 (GM 以後、西園寺) : 「はーい、セッション終了ー、皆おつかれさまでーす。さぁ、シーナ君、プログラムをダウンしてくれ!」


椎名淳平 (シュンスケ のプレイヤー。 以後 椎名) 「了解しました……プログラム・フレスベルグをダウンします。システム――オールグリーン、異常、みられません。システムは異常なく終了しました」



芹沢梨花 (リン のプレイヤー。以後 芹沢) : 「…………はぁ」


桐生和彦 (シグ のプレイヤー。以後 和彦) : 「どうした、梨花……今日は溜め息ばっかりだな、調子……悪いのか?」



芹沢 : 「…………い、いえ、そのっ。何でもないです!」



和彦 : 「何でもないって雰囲気じゃないだろ、何処か悪いなら……」


芹沢 : 「あ……ぼ、ぼく、今日は早く帰らないといけないんだった! も、もぅ……帰りますね!」



 芹沢梨花 が 退室する。



和彦 : 「何だよ……ヘンだな……」


七瀬澪 (シェヴァ のプレイヤー、以後 七瀬) : 「……そうだね。あ!」


椎名 : 「どうした、澪?」


七瀬 : 「いや……梨花ちゃんっ、ほらみてコレっ、ケータイ忘れてるんだよ! これ……届けてあげないといけないね」


桐生若葉 (アイラ のプレイヤー、以下便宜上 若葉) : 「だったら、私が明日仕事場で渡してあげようか?」


七瀬 : 「今出たばっかりだから、カズ君なら追いつくよ! ね、カズ君これ、渡してきてくれないかな?」


和彦 : 「何で俺が?」


七瀬 : 「だって俺より足早いよ? それに、明日にしたら梨花ちゃん困るかもしれないだろ?」


和彦 : 「わかったわかった。仕方ないな。俺、届けて来るわ……」 (携帯を受け取る)


若葉 : 「あ、兄さん。傘忘れずにねっ、今雨降ってるからッ!」


和彦 : 「おぉ、悪い……じゃ、いってくるぜ!」



 桐生和彦が退室する。



西園寺 : 「……携帯忘れてた? よっく言うねぇ、七瀬くん。 隠してポケットにしまっていたのは、お前じゃないか?」


七瀬 : 「うぇッ……何で見てるんですか、西園寺さん。というか、バレてた? バレてた?」


西園寺 : 「生憎俺はそういうの見逃さないんだよッ、まったくもぅ……お主もなかなかの悪じゃのぅ!」


七瀬 : 「でも、西園寺さんも気付いててとめなかったら同罪だよ。(笑) ……いえいえ、お代官様ほどでは」(笑)


西園寺 : 「全く、何でそんな真似するかと思って見ていたんだが、まさかこういう事だとはおじさん、思わなかったよ」


七瀬 : 「……だって、今の梨花ちゃんには、カズ君と二人だけで話をする時間。少し、必要だって思ったんだよ。西園寺さんもそうだろ?」


西園寺 : 「んー、まぁ、確かに凹んでたみたいだもんね、芹沢君」


若葉 : 「え、え……それって、梨花ちゃんがうちの 触手調教ゲー大好き鬼畜エロ男爵 の事が好きって事なのかな、かな?」


七瀬 : 「ちょっ、急に大声はビックリするよ、若葉ちゃん! それに若葉ちゃん、カズ君の事普段そんな風に呼んでるのッ!?」(笑)


若葉 : 「細かい事はどーだっていいのッ! ……ねぇねぇ、七瀬さーん。そういう事なのかな、かな? 若葉さんにもそれ、教えてー!」


七瀬 : 「んー……いや、でも本人に確認した訳じゃないからはっきり言えないけどさ。俺は多分、そうだと思うよ。根拠は……男のカンってヤツ?」


若葉 : 「そっか……七瀬さんのカンなら、女の子のカンと同等かそれ以上っぽいから、多分そうなんだろうね……」



七瀬 : 「ちょっ、どういう意味だよそれっ!?」



若葉 : 「でも…………そうか、そう……だったんだね……やっぱり」


西園寺 : (ん……やっぱり?


若葉 : 「あはは……でも、兄さん……どうするんだろうね、もし梨花ちゃんが好きだって言ったら……前の彼女とも、もう別れたしさ。やっぱり、付き合ったりするのかな?」




西園寺 : 「俺だったら二つ返事でオッケーだが!」



若葉 : 「西園寺さんの意見は常に聞いてません♪」



西園寺 : 「しくしくしく……」


七瀬 : 「……さぁ? カズ君の気持ちまではわかんないよ。俺、カズ君じゃないもん」


若葉 : 「……そう、そうだよねっ。あはは……でも、まいっちゃうなァ……今までの兄さんの彼女は、イヤな人ばっかりだったけど……梨花ちゃんだったら……祝福しないとね」



椎名 : 「……??」 (※会話についていけてないようです)


若葉 : 「……さ、て、と。私、今日夕飯作らないといけないんだった。そろそろ、帰ろうかな……西園寺さん、もし兄さんがココに戻ってきたら、私は先に帰ったって伝えて置いてね!」


西園寺 : 「ん、わかった。気をつけてな〜」


若葉 : 「はーい!」


西園寺 : 「あと、たまにはパンツくらい見せろー!」


若葉 : 「絶対にイヤです! ……じゃ、私ももう帰るね。皆さん、お疲れさまでしたッ!」



 桐生若葉が退室する……。



七瀬 : 「……どうしたんだろ、若葉ちゃん、何か元気無かったような」


西園寺 : 「さぁ? 女の子の気持ちってのは俺らの与り知らぬ場所にあるからなぁ」


七瀬 : 「そうだね…………」


西園寺 : 「……さて、皆帰ってしまった訳だけど、キミたちはどうする? 桐生君が戻ってくるまで待ってみるかい、それとも、そろそろ帰るかい?」


椎名 : 「そろそろお暇しますよ。西園寺教授の研究室に、長居する訳にもいかないでしょう?」


西園寺 : 「あ、そ……別に気を使わなくてもいいんだぜ。もぅ教授でもなきゃ、研究もろくにしてないもんで、毎日暇で仕方ない訳だしさ?」


七瀬 : 「……何かそれ聞いていると、西園寺さん何しているのかすっごく気になるんだけど、ちゃんと働いているんですか、西園寺さん?」



西園寺 : 「当たり前だろ、俺の職業はプロ自宅警備員だ!」


七瀬 : 「何と……俺だってプロ自宅警備員だ!」



椎名 : 「この狭い空間にまさか二人もプロ自宅警備員がそろうとはな……」


七瀬 : 「えへへー……あ、そろそろプロ自宅警備員として、俺も夕食の準備しないと……西園寺さん、俺もそろそろろ帰りますね! ……行こう、淳兄ぃ!」


椎名 : 「……あぁ。すいません、西園寺教授。また……」


西園寺 : 「おお、気をつけてな!」


七瀬 : 「はーい、西園寺さんもお元気で!」


椎名 : 「……お疲れさまでした」



 ……七瀬澪・椎名淳平が、退室する。



西園寺 : 「……西園寺さんも、お元気で、か。はは……俺にこれ程似合わない挨拶はないよな」



 一人残され、男は笑う。

 外は静かに雨が降り注いでいた。






 一方、同じ頃。

 都内、某所……西園寺研究室の最寄り駅前。



芹沢 : 「…………」 (とぼ、とぼ)



和彦 : 「…………ちょっ、おーい、梨花、待て。待ってくれ!」



芹沢 : 「!! えっ……か、和彦さん?」



和彦 : 「はぁ、はぁ……やばい、俺やっぱり結構なまってるな……少し走っただけでこれ、息切れ非道ぇ……」


芹沢 : 「ど、ど、どうしたんですか、一体」


和彦 : 「いや、キミが携帯忘れてたみたいだから届けに……ホレ」


芹沢 : 「あ……ありがとうございます。そ、それじゃ、これで……」



和彦 : 「待てぃ!」



芹沢 : 「きゃっ! な、何ですか、和彦さん……?」



和彦 : 「いやさ……何かキミ、今日はよそよそしいというか、調子悪そうというか……だからさ、何かあったのか、と思ってな……」


芹沢 : 「そ、そんな事ないですよ、何時も通りです……」


和彦 : 「でもよォ……最近何かキミ、元気ないよな……前は良くメールもくれたし、電話もしてきただろ? ……何か、悩みとかあるんならさ。俺にも少し、相談してくれたっていいんだぜ。頼りにはならないかも、しれないけどよ」



芹沢 : 「……そんな事、ないです、ただ、最近は忙しくて……それで……」


和彦 : 「……そっか?」


芹沢 : 「……ダメだな、わたし。こうやって、いつも逃げてばっかりで……今日、ちゃんと言うんだって決めたのに……」


和彦 : 「ん、どうした?」



芹沢 : 「あ、あの……和彦さん。少しだけ……聞いて欲しい事があるんで、お時間いいですか?」


和彦 : 「えっ? 別にかまわないぜ、だったら喫茶店にでも……」


芹沢 : 「ここでいいです……歩きながらでも、いいです……そうしないと、また、言えないといけないから……」


和彦 : 「あ、そ……何だよ、急に改まってさ」



芹沢 : 「…………あの、驚かないで聞いて下さい、ね? 私…………私、あのッ……私……私っ、わたし……」


和彦 : 「…………?」


芹沢 : 「私……そのっ、き……だったんです」



和彦 : 「……へ?」



芹沢 : 「……和彦さんの事が……ずっと前、初めて会った時からずっと……好き、だったんです」



和彦 : 「……ちょっ、梨花……急にっ、どうし……」



芹沢 : 「和彦さんに、そのっ……彼女さんが、居るのは知ってます! でも……私、ずっと和彦さんの事が好きだった。ずっと、ずっと憧れていたんです。だけど……」



和彦 : 「…………」



芹沢 : 「だけど……和彦さんに恋人が居るって知って、私どうしようって思った……好きで好きで仕方ないけど、和彦さんに恋人が居るなら、仕方ないなって……和彦さんが幸せな所、私が割って入ったらいけないんだろうな、って……だから、黙っていようって思ったんです。私が和彦さんの事を諦めて、忘れられるようになるまで。私が好きだっていう事で、和彦さんを困らせたくなかったから。でも……」


和彦 : 「梨花……」


芹沢 : 「一ヶ月、忘れようって努力したんですよ。電話も、メールもやめて……でも、ダメだったんだ。私、もぅ、和彦さんの事考えないようにする事が、出来ないくらい、好きになっちゃってたんです。 私の中で、忘れられない位に、好きになっちゃってたんです……だから私、私どうしようもなくって……言わないと苦しくて、胸が一杯になっちゃって、苦しくて切なくて……辛いから」



和彦 : 「梨花、俺さ……」



芹沢 : 「だから、言います。和彦さん……私、貴方が好きです。ずっと、ずっと……好きだった。大好き、だったんです」



和彦 : 「俺……」



芹沢 : 「……はぁ、やっとすっきりした」(にっこり)


和彦 : 「…………」


芹沢 : 「……っていいですよ、和彦さん。私……貴方を諦める為に、言っただけですから!」


和彦 : 「梨花……」


芹沢 : 「そ、そんな顔しないでください! その……いいんですよ、私の事に気を使わないで、和彦さんは彼女さんの事だけを考えれば……」



和彦 : 「……別れたよ」



芹沢 : 「えっ?」



和彦 : 「……前の彼女とは、一ヶ月前に別れた。だから……俺、今は恋人は居ねぇんだ」



芹沢 : 「え、っ…………」



和彦 : 「…………知らなかったか?」



芹沢 : 「えっ……うぇっ、えぇっ……」



和彦 : 「!! 何だよ、急に泣いたりしてッ……?」



芹沢 : 「ご、ご、ごめんなさい……私……和彦さんが、前の彼女さんと別れたばっかりで、まだついてるのに……和彦さんが今、彼女さんが居ない事に凄くほっとしていて……自分が諦める為になんて、我が儘な理由で和彦さんの事を好きだっていって、困らせているのに……傷ついてる和彦さんに気付かないでこんな事を……ごめんなさい、ごめんなさい……私、本当にイヤな子ですね……」



和彦 : 「落ち着けよ、梨花!」



芹沢 : 「うっ……うっ……うぅ……」


和彦 : 「………もぅ、わかったから……」 (ぎゅっ)


芹沢 : 「……あ、和彦さ……ん?」



和彦 : 「…………梨花の気持ち、解ったから……梨花が一生懸命なのも、俺、知ってるから。そんな梨花を……イヤな子だなんて、俺は思わないから……」


芹沢 : 「和彦さん……和彦さん、いつも優しいですね……」


和彦 : 「梨花だから、俺は優しくするんだぜ」


芹沢 : 「……えっ?」


和彦 : 「そう……俺は、梨花だから、優しくしてたんだよ」


芹沢 : 「和彦……さん?」


和彦 : 「……俺はまだ、前の彼女と別れたばっかりで……完全に、気持ちの整理がついた訳じゃない」


芹沢 : 「はい……」


和彦 : 「だから、すぐに梨花の気持ちにこたえてやる事は出来ないんだ。まだ完全に、お互いの整理もついた訳でもないしな……」


芹沢 : 「……」


和彦 : 「でも……もし良かったら、梨花のその気持ち……もう少しだけ、俺に預けておいてくれないか?」


芹沢 : 「……和彦さん?」



和彦 : 「もう少し、時間をくれたら、こたえられるように気持ちの整理つけてくるから……」


芹沢 : 「ホント、ですか……?」



和彦 : 「…………少なくても、君がそんな不安そうな顔をする必要がないこたえを、準備出来るようにしておくから」



芹沢 : 「!! 和彦さ……ん!」


和彦 : 「……待っていて、くれるか?」



芹沢 : 「はい……待ってます、待って……ますからっ……」




 切れ間の無い雨は降り注ぎ、二人の身体を冷たく濡らす。

 だが……。


 二人の心に、暖かな繋がりが生まれようとしていた。






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