> 界樹の迷宮を、TRPG風のプレイレポートしている、番外勝負。






までのあらすじ >


 いよいよ第三階層に向かう事になったが、そのまえに第二階層でやりわすれた事をやっておこうと思った。




> 迷に、5日間挑む冒険者




GM : 「あ、さて。無事に第2階層のボスであるサロンパスを倒した君たちな訳だが」


シュンスケ : 「とうとうGMまで、サロンパスと言い出したな」


アイラ : 「第二階層のボス、本当は何という名前だっけ、ケムンパスじゃなくて、サロンパスじゃなくて……」




シェヴァ : 「ケロンパス」



アイラ : 「足してるし!」


シュンスケ : 「どんどん遠ざかって行くな」


GM : 「仕方ない、プレイヤーにとって、モンスターの名前なんぞ記号みたいなモンだからな」(笑)



 ※ 本当は、 ケルヌンノス です。



GM : 「さて、まぁとにかく何だかんだで敵を倒した訳だけど……さて、どうする野郎ども。このまま、第三階層にブッ込むかい?」


シグ : 「……まぁ、このままブチ込みたい所だが……実は一つ、気になるクエストがあるんだよな」


リン : 「気になるクエスト? 何ですか?」


シグ : 「ほら、冒険者ギルドからのクエストであっただろ…… 地下8階で5日間過ごす。 ってアレ」


アイラ : 「あ、私たちを筋肉ダルマにしたい、冒険者ギルドからのあの依頼ね!」


シグ : 「そーそー……これから第三階層に行く訳だろ。その前のレベルアップとしても、いいんじゃないかな……と思うんだが、どうだ皆。俺と一緒に筋肉ダルマにならないか?」



アイラ : 「えー、私嫌だよー! 女の子なのに筋肉マッチョマチョになったら、可憐なイメージなくなっちゃうじゃない!」




シグ : 「安心しろアイラ、最初からお前に、可憐なイメージはない!




アイラ : 「……さて、シグ君の見たいのは、ブーストでヘッドバッシュする私かな? それとも、スタンスマッシュする私かな?」


シグ : 「え、えぇっと……き、今日も一段と綺麗だぞ、アイラ」(笑)


アイラ : 「わかれば、よろしい!」


シグ : 「まー、ともかく……迷宮に5日もこもれば、かなりレベルアップになるだろ! ここで一発、修行名目でこのクエスト挑もうぜ!」


シュンスケ : 「ふむ……クエスト達成のアイテムは……ロリカハマタか」


シェヴァ : 「ロリタ ハカマ?」


アイラ : 「ロリロリに袴をはかせたいという、シグの欲求を如実に現したエロネームね!」



シグ: 「ちょ、何言ってるんだアイラ、俺が常にロリっこに袴をはかせたいと思っている訳ないだろ……そりゃ、たまには思うよ、10日あれば3日くらいは思うさ! でも、常にじゃないからな!」



シュンスケ : 「実に三割の確率か……多いな」


シェヴァ : 「残りの七割は何なんだろう、ロリっこにポニーテールになって欲しい欲求かな?」(笑)


リン : 「むぅ、ポニーテールには髪の長さがたりないかな……じゃないっ、えっちなのはダメですよ!」


GM : 「ロリタハカマじゃなくて、ロリカハマタね。今、シュンスケが装備している奴」


シグ : 「何と、何時からシュンスケ、ロリキャラになったんだ?」(笑)



シュンスケ : 「だから袴ではないぞ?(笑) ……軽量の鎖帷子だ、後衛でも装備できるのが有り難いな」


リン : 「ロリカハマタ自体は、もうシリカさんのお店で売っているんですよね。」



GM : 「だね。だから、無理してやらなくてもいいクエストではあるけど……」



シグ : 「まま、鍛錬は楽しいモンだぜ……下の階で、敵が強すぎてペチンと返り討ちになるのもゴメンだからな! ささ、どうだ皆、一緒にクエストを や ら な い か !」 (ツナギを脱ぐ仕草をしながら)


アイラ : 「また、危険なネタを……」(笑)


シェヴァ : 「俺は、やってもいーよ! 何か、迷宮で5日過ごすとか、キャンプみたいで面白そうだろ!」


シグ : 「いいのかい、ホイホイついてきちまって……俺はノンケでも平気で鍛えちまう人間なんだぜ!」


アイラ : 「何時までそのネタ引っ張るつもりよ、もー! でも、私もいくかな。シグにレベル、おいてかれるの嫌だもんね!」


リン : 「ボクは……」


シグ : 「頼む、リンにきてもらわないと……いかなる局面でも、メディック抜きは厳しい!」


リン : 「くすくすくす……大丈夫だよ、シグ! シグが行くって言ったんだから、ボクだって頑張るよ!」




シグ : 「よし、皆の意見は聞いた……さばみそギルドの心は一つ! 今、樹海で5日間過ごす試練……あ、承ったりぃー!」




一同 (?) : 「おー!!!」



シェヴァ : 「……って、あれあれあれ? ねー、リーダー。シュンスケに、意見を聞いてない気がするんだけど……これ、俺の気のせい?」


シュンスケ : 「……気のせいではないな、事実として聞かれていないが?」



シグ : 「あ……悪い悪い。 シュンスケの装備品がついて来るって言ったから、てっきりお前も来るもんだと思って!



シェヴァ : 「……相変わらず、俺、装備品扱いかよッ!」



シグ : 「俺はお前の事を、インテリジェンスソード的なものだと思っているからな!」



 ※インテリジェンスソード : 意志を持ち、喋る剣の事。 



シュンスケ : 「まぁ……断る理由もない、付き合ってやるとするさ」



アイラ : 「こうして、シュンスケさんは、インテリジェンスソードに意志を乗っ取られて行くのでした……」


リン : 「確かに、シュンスケさん、何だかんだ言ってシェヴァさんに振り回されてますもんね……」



シェヴァ : 「ちょっ、俺そんな、人の意志を奪うよーな魔剣じゃないってば!」(笑)




> ジャングルの 〜 1日目 : それでも楽しく森を歩く




GM : 「じゃ、依頼を受けた君たちは地下へやってくる、やってくる、はい、地下8階とうちゃ〜く!」


アイラ : 「よーし、今から5日ここで過ごすんだねっ!」


GM : 「いんにゃ、開始時刻はAM5:00からだから……あと、二時間ほどあるねぇ」


アイラ : 「えー、いいじゃない、今から始めちゃえば!」


GM : 「俺もそう思うけど、一応決まりだから……ま、二時間ウロウロして時間潰してってな〜」


シグ : 「だ、そうだが……どうする、上の階でもブラブラしてるか?」


シュンスケ : 「いや……うっかり、戻れなくて5時に間に合わなくなると悲劇だからな。あと二時間……歩数だと60歩だ。下調べをする形で、この場を歩いておこう」



 ※ 世界樹の迷宮では、30歩で1時間。



シグ : 「ま、それでもいいか……よし、シェヴァ。地下8階の地図をくれ、下調べをするぞ!」


シェヴァ : 「了解ッ……えー、地下8階は……階段降りてすぐの東側に、例のワイバーンの住処があって……」


アイラ : 「12畳リビングね」


シグ : 「シェヴァの転居予定地だな」(笑)


シェヴァ  : 「西側に回復の泉があって、中央あたりに採取ゾーンがある……と、見た感じだとこの位かなぁ、ワイバーンにさえ触らなければ、特に危険はないと思うよ」



シグ : 「了解ッ……まま、とりあえず歩いてみようぜ、まだ時間あるしな!」



 うろうろうろうろ……。


 …………うろうろうろうろ。




GM : 「と、ウロウロしているうちにはいはい、時間でっす。 ごーん、ごーん、ごーん! 今から五日間、きたえやがれ野郎ども!」(笑)



シグ : 「目指せマッシブ、マッシブ!」


アイラ : 「目指せ可憐なマッシブ、マッシブ!」(笑)



GM : 「と、君たちが宣いながら歩いていると……敵が現れたッ、さぁ戦え! かみつき草 と 人喰い草だ!


シグ : 「……まぁ、既存のモンスターだな……俺は、ハヤブサ駆けで全体一掃だ!」


シェヴァ : 「そりゃ、地下八階にきただけだもん、特別なモンスターは出ないさ……と、シグがスキルを使うなら、俺は通常攻撃にしておこうかな。長期戦になるなら、TP節約したいしね」


リン : 「ううう……でも、ボク、このモンスター嫌いです。 頭封じしてくるんだもん!」


シグ : 「ははっ、まぁ、リンとシュンスケは余裕かまして見ててくれよ、とりあえず前衛がちゃ、ちゃっとやっつけてやるからよ!」



 草系モンスターを、ちゃっちゃ、と調理中!



アイラ : 「……えーい、これでもくらえッ!」


GM : 「あ……それで倒れた、人喰い草も退治されたね」


アイラ : 「やったぁ、よゆうっチ!」


シグ : 「うーむ、修行のつもりできたが、ここのモンスターは手応えがないかもしれんなぁ」



シェヴァ : (きゅっ、きゅっ、きゅっ)



シュンスケ : 「ん……何しているんだ、シェヴァ」


シェヴァ : 「あ……ほら、5日もダンジョンこもってモンスターと延々と闘っているなんて、暇だろ。暇つぶしに、モンスターの数でも数えておこうと思ってさ」


シグ : 「……なるほど、確かに時間を持て余しそうだな。俺たちも何か暇つぶしを考えながら闘うか?」


アイラ : 「じゃ、しりとりでもする? ただのしりとりじゃつまんないから、世界樹のモンスターでしりとりとか!」


シグ : 「おぉ、面白そうだな。よし、やってやるぜ!」


アイラ : 「じゃ……シグ、しりとりの、リから初めてね!」



シグ : 「了解。えー、しりとりの、リから……ん、り。リ? ……あれ、リで始まるモンスター、いなくね?」(笑)


シュンスケ : 「……終わったな」(笑)


リン : 「短いしりとりでしたね」(笑)




> ジャングルはかに笑う 〜 2nd day




GM : 「……ごーん、ごーん、ごーん、さぁ、二日目突入だけど、皆元気かなー? オイーッス!




一同 : 「……」




GM : 「んー、元気がないなー。もう一度! オイーッス!



シュンスケ : 「……スマン、GM。皆、同じ風景の繰り返しで気が滅入ってるんだ、あまり賑やかにしないでくれ」


GM : 「そんな、お前達を少しでも元気付けようと空元気振りかざす暖かいGMの気持ちも考えてくれたまえよ、シュンスケ君」


シェヴァ : 「あはは……でも、シュンスケの言う通り。同じ景色ぐるぐるで、行ける所も八階と限られていると……流石にめいってくるよね」


リン : 「出てくる敵さんも、同じのが多いですからね……」


シグ : 「特にあの、危険な花びらとやらが厄介だなッ……うっかり皆、寝ちまうと思わぬ長期戦になる!」



 ※ 危険な花びら : パーティ全体に、眠りの花粉をつかい眠り状態にする厄介な相手。



アイラ : 「せめて、戦闘にハプニングがあれば面白いんだけどね……。」


GM : 「ハプニング?」




アイラ : 「シェヴァさんのポロリとか」



シェヴァ : 「誰得!?」(笑)



アイラ : 「いいじゃない、 ドキッ、男だらけの樹海探索、ポロリもあるよ! って感じで、シェヴァさん、ポロリしてよ」(笑)



シェヴァ : 「嫌だよ! 大体俺から何がポロリすれば、満足してくれるっていうんだよ!」(笑)



アイラ : 「えー、私乙女だからいえなーい」(笑)


シェヴァ : 「い、言えないようなモノをポロリさせようとしないでくれよ!」(笑)


アイラ : 「あはッ……まー、でも少しドキドキの演出は欲しい訳よ、女の子としても!」


GM : 「ふむ、と、いいますと?」



アイラ : 「例えば、かみつき草にシェヴァさんの手が絡め取られて、盲目の棘のせいで目が見えなくなった所、モンスターに執拗に責められるとか!」




GM : 「演出どころか、ダイレクトな欲求だー!」



シェヴァ : 「嫌だよ、というか、どうしてアイラちゃんはいつも俺ばっかりそー、エロい方向にもってこうとするんだよ!」


アイラ : 「だって、ねぇ……」



シグ  ← 長年の相棒。アイラ目線で、男としての魅力はゼロ。


シュンスケ  ← 得体の知れない感じがして怖い。


シェヴァ  ← 見た目も中身もショタっこ。



アイラ : 「何というか、消去法?」(笑)


シェヴァ : 「どういう経緯で消去されたんだよッ!」



GM : (ふむ、サプライズ的なハプニングをプレイヤーは求めている訳か……)


リン : 「あ……そうこう言ってる間に、出ましたよ、人喰い草とかみつき草です」



アイラ : 「わーい、シェヴァさん、早速縛られてきてよ!」



シェヴァ : 「嫌だよ! クソ、絶対に封じられるもんかッ、こっちが縛ってやる、アームボンテージ!」



GM : 「効かぬわ! という訳で、こっちの攻撃は、アイラに……通常攻撃だ、棘のついた触手が鞭のようにうなる、ひゅんひゅんひゅん!



アイラ : 「えへへ、かみつき草の攻撃ならもう何度か喰らっているから、大体ダメージわかるもんね。今の私ならだいじょう……」



 ばりっ!!!



アイラ : 「あれ……?」


リン  : 「え、アイラさん、今の音……何ですか?」


アイラ : 「何か、攻撃は全然痛くないんだけど、妙に胸元がすーすーする、というか……って、きゃぁああぁぁああああああ!」



 悲鳴の原因は明白である。

 光の恩恵届かぬ密林の下に、アイラの鍛え抜かれた身体とは裏腹に柔らかそうな胸元が露わになっていた……。





GM : 「君はこの乳房を揉んでも揉まなくても良い!」



アイラ : 「揉んだらヌッ殺すんだからッ! て、もー、いやぁ、いやぁ、何で何で、何で急に敵の攻撃で服が破れたりするのッ!?」


リン : 「アイラさん、大丈夫ですか!?」



GM : 「そこですかさず、人喰い草の攻撃がさえわたる、ひゅんひゅんひゅん、ばりばりばり!」



リン : 「えっ……えぇえぇっ、いやぁぁっ!」



 さらに悲鳴が続く。

 密林の中、白衣を引き裂かれたメディックはその下から色白の足と、秘められたしましまを露わにしていた……。





GM : 「君はこのぱんつを、拝んでも拝まなくてもいい!」



シグ : 「って、何ふざけてんだこのエロモンスターっ! リンやアイラを辱める真似は俺が許さねぇぞ!」



GM : 「うはっ、しまった、シグがやる気になってしまった……もしかして、ハヤブサ駆けですか?」



シグ : 「YES! YES! YES!」



GM : 「そりゃ、耐えられないなぁ……倒れた、草モンスターを退治したぞ!」


シグ : 「ったく……」 (自分のマントを取り、すかさずリンにかける)


リン : 「あ、ありがとう、シグ……」


シュンスケ : 「…………」 (無言でマントを、アイラに貸す)



シェヴァ : 「いいなぁ、マントある人は。俺も貸したいけど、俺、貸すと裸になっちゃうからなぁ」(笑)


シグ : 「お前の裸こそ誰も望んでないな……それより、大丈夫か。リン、アイラ」



アイラ : 「全然大丈夫じゃなーい、もー、どうしていきなりこんなっ、胸とか出たりする訳ぇ!」


リン : 「今までこんな事、なかったのに……」



GM : 「いや、アイラがハプニングを希望していたから、服が破けるというハプニング演出を取り込んでみた訳だけど……ダメだったかな?」




アイラ : 「ダメに決まっているでしょ、すぐ元に戻しなさいッ!」 (般若面の如き形相で)




GM : (ビクッ!) 「え、あ……すいません、アイラさん、ごめんなさい、戻します……」



シェヴァ : 「というか、服が脱げる演出を追加した瞬間、積極的に女性キャラクターを狙いにいったGMさんに、男の本能を見たよ」(笑)



GM : 「あぁ、確かにお前やシグを狙う気にはならなかったね」(笑)


アイラ : 「いや〜ねぇ、男って。 もー、いくら脱がされているのがキャラクターだって解っていても、すっごい恥ずかしかったよ」(笑)


シグ : 「安心しろ、アイラ。胸が見えそうだったが、見えたところでお前の場合背中と区別出来なかっただろうから、万事オッケーだ」



アイラ : ギロッ!



シグ : ビクッ!



アイラ : 「……そう言うけど、アイラは胸なんて人に見られたの初めてだよっ、もー、見たでしょ、シグ! どうするの、責任とってくれるのッ!?


シグ : 「……へ?」




アイラ : 「だから、女の子の裸見たんだから、責任とりなさいよッ!」



シグ : 「なぁっ、何でそーなるっ!?」



リン : 「だ、だったらボクも……ボクだっておパンツ見られちゃいましたからっ……せ、せきにん、とってほしい……な?」



シグ : 「ちょ、待てお前らッ……なんでそうなっ……?」




アイラ : 「ねー、シグ、責任、せーきーにーん!」



リン : 「シグっ、ボクも……責任ッ!」




シグ : 「ちょっ……お前らっ、いや、そのっ……何だよ、この状況は、どうすればいいんだよッ!」




シェヴァ : 「あ、シグがラブコメしてる!」


GM : 「羨ましい限りだ……クソ、やはり女人というのは、モテる男の所に行く運命なんだなチクショー!」


シュンスケ : 「ねたむな、GM。これも定命(さだめ)だ」




> 密探検隊のセレナーデ 〜 3rd day




GM : 「ごーん、ごーん、ごーん、密林探索、三日目でござーい」



シグ : 「うーむ、三日目になると流石に飽きてきたな……」


シェヴァ : 「同じ敵ばっかりだからね……」


シグ : 「こんなに単調な作業が続く事になるんなら、俺もシェヴァみたく、会ったモンスターをカウントするくらいの事をしておくんだったぜ……っと、そういえば、シェヴァ。モンスターのカウントはどうなった。今、俺らは何のモンスターをどのくらい屠ってる?」



シェヴァ : 「あぁ、あれ……三匹目であきたから、もうやってないけど?」(笑)



シグ : 「飽きるの早ッ!」(笑)



シェヴァ : 「三より上は、あと沢山だ」


GM : 「そうだ、三より上はあと沢山だ」(笑)



シグ : 「まぁ、確かに沢山倒しているんだろうなとは思うがね……いや、考えてみれば三日目か。もう何歩くらい、この迷宮を歩いたんだろうな」


リン : 「えっと……一日が、二十四時間で……30歩で一時間だから」



シュンスケ : 「2160歩だな」



シグ : 「暗算早ッ……!」


シェヴァ : 「何だよシュンスケ、お前、算数怪獣かよ!」 (出典:デビサバの台詞)


リン : 「でも、もう2000歩も歩いているんですね、何だか気が遠くなってきます……」


アイラ : 「えっと、えっと……だとすると、依頼を完了するには、あと二日だから、24時間で、30歩で一時間で……あと何歩でおしまい?」



シュンスケ : 「1440歩だ」



アイラ : 「うわ、本当に暗算早い……」


シェヴァ : 「流石、算数怪獣!」


リン : 「ううう、でもあと1400……気が遠くなっちゃいますね」


シグ : 「まま、あと半分はきってるって事だろ、気楽に行こうぜ気楽に!」



シェヴァ : 「そうだね〜、あっ、それじゃ、シグ。 気分を変えるついでに、日付も変わっているからさ。俺、採取に行ってきていーい?」


シグ : 「採取ゥ〜? そんな事しなくても、もう荷物は花びらやら種子やらでごってりだぜ」(笑)


シェヴァ : 「そうだけどさァ、採取とかでとれるアイテムはレアなの多いし。何より、気分かえるのにいいじゃないか。俺たちもう、ずっと、ワイバーンの巣のあたりをウロウロしているばっかだもんね!」


シグ : 「ん……確かにそうだな。よし、採取ポイントに行ってみるか!」



 ……採取ポイント移動中。



アイラ : 「シェヴァさんの、お花畑にとうちゃ〜く!」


シュンスケ : 「さぁ、シェヴァ。お花を摘んでくるがいい」


シェヴァ : 「別に、花摘みに行く訳じゃありません〜。 さて、何が出るかな〜えっと……(ごそごそ) ん、姫リンゴ二つ、ゲットだぜ!」


シグ : 「何だ、また姫リンゴか……それ、お前が昨日とっただろ。もう充分だ、破棄していいぜ」


シェヴァ : 「むー、俺姫リンゴばっかり取っちゃうんだよね、何故か。ここ、姫リンゴしか出ないのかな?」


シグ : 「そんな訳ないだろ」


リン : 「あれ……姫リンゴって確か、この採取ポイントだと比較的出やすい方のアイテムですよね?」


シグ : 「そう……だな」


リン : 「ひょっとして……シュンスケさんがあんまりにアンラッキーだから目立ってないですけど、シェヴァさんもそれなりにリアルラックが低い方なんじゃ、無いですか?」


シグ : 「いや……マジで言うとさ、多分じゃなくて確実に、シェヴァの方がリアルラックは低いんだ。クズアイテムを拾う率は、実は圧倒的にアイツの方が高いから。けどよ……」


リン : 「けど……何ですか?」



シグ : 不幸だと自覚している男と、不幸だけどそれを幸運だと思っている男、どちらがより不幸だと思う?」



リン : 「あ! なるほどです……」


シグ : 「ま、とどのつまり……シェヴァは不幸になり得ないんだよ、根本的に、おめでたいからな!」



シェヴァ : 「んー、何か言った、シグ〜?」


シグ : 「いや……何でもねぇよ、何でも、な」




> 密林は密かにう 〜 4日目です野郎ども編




GM : 「ごーん、ごーん、ごーん、はぃ、4日目……あと1日でーす、が……」




シグ : 「あと1日か……そう考えると、この密林探索も名残惜しい所があるな」



アイラ : 「そう? 私、もぅジャングルは飽きたんだけど……」


シグ : 「だが、やり残しがあっては困るだろ、という訳で、リーダーとしてお前たちにやり残しがないか聞いておこうと思う! 各々、この密林探索でのやり残しがあったら我に訴えたまえ!」





シェヴァ : 「はいっ、隊長! 伝説の怪獣・モケーレ・ムベンベを未だ発見出来ていません、隊長!」





シグ : 「架空の生物は各自脳内で捕獲するように! 次!」



シェヴァ : 「はいっ、隊長! シュンスケが未だ濃紫の尾針ひろってません! どうしたらいいでしょうか!」




シグ : 「あと1日で回収は無理だ! 次!」



シュンスケ : 「…………」




シェヴァ : 「はいっ、隊長! シュンスケがやっぱり濃紫の尾針ひろってません! どうしたらいいでしょうか!」




シュンスケ : 「二回も言うな! 俺が傷つくだろうが!」




シグ : 「無理だ諦めろ!」




シュンスケ : 「しかもお前も追い打ちをかけるな! 何だこれは、チェイスか! 俺の精神をチェイス攻撃か!



アイラ : 「チェイス精神」(笑)


リン : 「……シュンスケさん、意外と弱点突かれると弱いタイプですよね」(笑)



シグ : 「んぁ、でも何だ、さっきからシェヴァしか発言がないじゃないか、他の面子はやり残しはないのか?」


アイラ : 「別に、闘って鍛えるのが目的だもん。来るのが終わりそうな今、やり残しなんてないよ!」


リン : 「そうですね……ボクも、特にないかな。皆さんが無事である事を祈るだけです!」


シグ : 「そっかー、うーん、寂しいねー」


シュンスケ : 「……そういう、シグは何かないのか?」


シグ : 「俺か。俺も、鍛えるのが目的だった訳だからマッシブになれればいいんだが、一つだけあるとするなら……」


シェヴァ : 「……あるとするなら?」




シグ : 「強くなった俺の実力を……フフ、試してみたいと思っている事、かなぁ……あぁ、試したい……ワイバーンに、ためしたいぞぉおーっ!」




シグ以外全員 : 「き、危険だー!!!」



シグ : 「というか……いってみるっ、強くなった俺、いってみるっ!? 今ならワイバーンくらい……ふふ、イケそうな気がするんだよなぁ!」


アイラ : 「きゃぁ、シグがふらふらとワイバーンの住処に!」(笑)


リン : 「た、大変、早くとめないと……」(わたわた)




シェヴァ : 「…………レッグボンテージ!」



シグ: 「ぷげら! っ……何するんだ、シェヴァ、お前っ……」



シェヴァ : 「それはこっちの台詞だろ……リーダー、全くいけない人だなァ……これでもし全滅したらっ……また、この5日間の試練、やり直しじゃないか、もォ……」



シグ : 「……え、あれ……シェヴァ君?」


GM : どSスイッチが入ったな)



シェヴァ : 「どーやら、リーダーは元気がありあまってるからそんな馬鹿な事言うんだね……ふふ、仕方ないなぁ……俺がお仕置きしてっ、そんな元気なくしてやるよっ!」



シグ : 「え、あれ……ちょまっ、まっ、助け……おーい、シュンスケぇ〜、お前のインテリジェンスソードが暴れてるぞー!」


シュンスケ : 「……管轄外だ、諦めてくれ」




シグ : 「ちょっ、いやもぅ……マジで、何か最近、こいつの攻撃力日に日に凄くなってくんだが……ほんぎゃぁあぁぁああ!!」


GM : 「こうして、今日も平和に終わるのだった、と」


シグ : 「ぜ、全然平和じゃないぜ、つつつ……」




> 密林に明日はない! 〜 日目です完結編




GM : 「ごーん、ごーん、ごーん、はい5日……終了です! 皆、お疲れさまですたー。」


シェヴァ : 「ふぃ……おつかれさまー」


シグ : 「……とはいえ、皆油断するなよ、クエストは家に帰るまでがクエストだからな!」(笑)


アイラ : 「はーい、シグ校長!」(笑)


シュンスケ : 「……やれやれ、思ったより長丁場だったな」


アイラ : 「だよねー、あーあ、私早く宿屋にいって、暖かいお風呂にはいりたーい!」




シグ : 「風呂? アイラなんて裸を見ても大ナマケモノと区別が出来ない肉体美をお持ちな訳だから、遠慮せず、その辺りの泉で水浴びしてよかったんだぞ。はは、大丈夫、誰もお前の筋肉を見て、女だとは思わないからな!」




アイラ :  「スタンスマッシュ!」




シグ : 「ポゲラァ!」



アイラ : 「ふー……さ、馬鹿はほっといて、いきましょ、リンちゃん!」


リン : 「はっ……はい、でも、シグ……大丈夫かな?」


アイラ : 「いーの、いーの! アイツが倒れても、他のメンバーが生きていれば依頼達成だし、困ったら蘇生もあるしね!」


シグ : 「そ、蘇生が必要になる前に助けろ……ガク」



シェヴァ : 「あー、でも俺もやっと地上に戻れるの嬉しいよ、お腹もへってきたし……」


シュンスケ : 「そうだな……」


シェヴァ : 「戻ったらご飯にしたいなぁ……ね、シュンスケ? 今日は……何食べたい?」


シュンスケ : 「ん?」


シェヴァ : 「だぁから……今日は、何食べたい? ねー、な・に・た・べ・た・い?



シュンスケ : 「そうだ……な」 (と、そこでぐっ、とシェヴァの顎を引き寄せる)



シェヴァ : 「!! ちょっ、何するのっ、しゅんす……」



シュンスケ : 「……お前」



シェヴァ : 「なっ、何言ってんだよ、シュンスケっ!?」



シュンスケ : 「だから、今日食べたいんだ……今、すぐにでも……ダメか?」



シェヴァ : 「え、あ、ちょっ……シュンスケ、俺、その、えっと……」



シュンスケ : 「………………」



シェヴァ : 「ここで? え、すぐに……? 俺、その、別に……ならっ。だけど、そのッ……」


シュンスケ : 「……なんて、な。冗談だ」



シェヴァ : 「へっ!?」



シュンスケ : 「さっき、濃紫の尾針が出ないと、二度も俺を辱めた罰だ。どうだ……俺の受けた精神チェイス、その十分の一でも痛みを感じたか?」(笑)


シェヴァ : 「……冗談」


シュンスケ : 「これに懲りたら、無闇に俺をからかうんじゃないぞ……」


シェヴァ : 「……そっか、冗談か。冗談……冗談」(ぷち)


シュンスケ : 「……どうした、シェヴァ?」




シェヴァ : 「ヘッドボンテージ!」




シュンスケ : 「っ! っ……なぁっ、何するんだオマエはっ、頭は……アルケミストに頭封じはッ……」


シェヴァ : 「……こーしてやれば、オマエなんか従えるの簡単なんだからな! 調子のるんじゃねーぞ、ばか!」





> 旅のわりに




GM : 「……かくして、君たちは樹海5日間の旅・ポロリ付きを制覇した!」


アイラ : 「ポロリは忘れたいよ〜」(泣)


GM : 「はい、これ、クエスト達成アイテムのロリータハカマね」(笑)


シュンスケ : 「GM、だからロリカハマタだ」(笑)


GM : 「すまん、あまりにお前らがモノの名前をちゃんと覚えないのでつい……とにかく、受け取れ!」 (ぽいっ、がしゃん)


アイラ : 「きゃー、投げた!? GMさんが、鎧を投げた!」


シェヴァ : 「勘弁してよ、GM。アイテムを渡すのは金鹿の酒場、女主人なんだから! 彼女が鎧を投げるような人には見えないだろっ、俺の彼女に対する清純なイメージを壊さないでくれってば!」(笑)


GM : 「すまんすまん、ついNPCを演じるのをサボった。(笑) (金鹿の酒場女主人) 『さばみその皆が試練を成し遂げた事、エトリアでももう評判になっているわよ。皆、お疲れさま……はい、これがアイテムよ。うけとってね』



シェヴァ : 「そうそう、それで……」



GM : ぽいっ、がしゃん!



シェヴァ : 「だーかーら、投げるなよマァースタァアアァ!」(泣)



GM : 「いいだろ、彼女だって清純に見えて実はパワフルな側面があるかもしれない」


シェヴァ : 「そんな訳ッ……ま、それはそれで可愛いと思うけどさ……」


アイラ : 「ありなんだ」(笑)


GM : 「んじゃま、ロリカハマタをお渡ししまーす、おめでたぅ〜」


リン : 「わー、ありがとーございます……でも、これ、どうしますか?」


シュンスケ : 「俺も、リン君もすでに装備しているからな……」


GM : 「一応、こっちのは新品だよ」(笑)



シグ : 「じゃぁ、せっかくだから、リンがつけておけよ……ほら」


リン : 「えっ、いいんですか?」


シグ : 「武器は使い慣れたモノがいいだろうが、防具は新しいほうがいいだろ……ほら」


リン : 「はい……シグ、ありがとう!」(にこっ)


アイラ : 「リンちゃん、良かったねぇ!」


リン : 「はい、嬉しいですッ……わー、シグがくれたロリカハマタだー、わぁ〜」 (がっしょん、がっしょん)


アイラ : (ほのぼの)


リン : 「わぁ〜♪ わぁ〜♪」 (がっしょん、がっしょん)


シグ : (ほのぼの)


リン : 「わぁ〜♪ …………痛ッ!」 (ずべっ!)




一同 : 「こけたー!?」



リンラ : 「はうはうはうはう……ご、ごめんなさい、シグ、せっかくもらった新品、早くも汚れてしまいました……はうはうはう」


シグ : 「いやいや、鎧はどうでもいい! それより、リン、大丈夫か!」


アイラ : 「そうよ、怪我とかしてない!?」


リン : 「ボクは大丈夫ですー、鎧のおかげです!」



GM : 「……と、そんな感じで無事にミッションが終了した訳だが、これでやり残しはないな」


シェヴァ : 「やり残しと言えば、まだ濃紫の尾針が見つかってないけど」


シュンスケ : 「言うな……俺がすこぶる傷つくぞ」


シグ : 「ま、レベルアップも予定通りした訳だし、これで安心して第三階層に挑めるんじゃないのか?」


リン : 「そうですね、皆さんが怪我しないよう、ボクも頑張りますよ!」



シグ : 「それじゃ、次からははりきって、第三階層の探索に行くぜ、いいな……!」



一同 : 「おー!!!」




 かくして無事にミッションをやり遂げたさばみそギルドご一行。

 はたして第三階層に何がまっているのか……。


 ワクワクドキドキする要素があったり、なかったりしつつ、次回へ続くのである!





> 幕劇 〜 ニーズホッグ・システムと、プログラム・フレスベルグ





 幕間劇をはじめよう。

 現実と架空の世界、それを結ぶ一つの架け橋。

 彼の、彼らの作り出した一つの罪のはなしを。


 キミは、その罪に触れても、触れなくても良い。


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 ――セッション終了直後、都内某所。(いつものばしょ)



西園寺馨 (GM 以下便宜上 西園寺) : 「はーい、セッション終了ー、皆おつかれさま。ゴーグル外していーよ、システムをダウンするねー!」


桐生若葉 (アイラ のプレイヤー、以下便宜上 若葉) : 「おつかれさま……あー、つかれたぁ」


芹沢梨花 (リン のプレイヤー、以下便宜上 芹沢) : 「お疲れさまでした、皆さん、今紅茶入れますね!」


七瀬澪 (シェヴァ のプレイヤー、以下便宜上 七瀬) : 「あ、俺手伝うよ〜今、お湯沸かすから〜」



西園寺 : 「はい、椎名くん、システムをダウンしたから、プログラムを終了してくれたまえ」


椎名淳平 (シュンスケ のプレイヤー、以下便宜上 椎名) : 「了解しました、西園寺教授。プログラム・フレスベルグをダウンします。システム――オールグリーン、異常、みられません。システムは終了しました」



西園寺 : 「イヤだなぁ、椎名くん? 教授はやめてくれって言ってるだろ、俺はもう教授じゃないんだ・か・ら」


椎名 : 「ですが――」


西園寺 : 「でも、どうしても教授と呼びたいなら、ここは国際的プロフェッサーと呼びたまえ! プロフェッサー西園寺、うん、いい響きだ!」


椎名 : 「それでは、西園寺さんと呼ばせてもらいましょう」(笑)



西園寺 : はうん! 全く、シーナ君ってば相変わらずだねぇ、もぅ、つれないヒ・ト」(笑)


桐生和彦 (シグ のプレイヤー 以下便宜上 和彦) : 「――つか、前から気になってたんだけど、いいか?」


西園寺 : 「ん、何だね爽やかマッチョ君、言ってみたまえ」


和彦 : (笑) 「いや、西園寺さんと、椎名って以前からの知り合い、って聞いてるけど――一体どういう知り合いなんだ?」


椎名 : 「……そうだな、それは」


和彦 : 「大学時代の先輩後輩、って聞いてるけど――ぶっちゃけ、西園寺さんと椎名だと歳が離れすぎてるだろ。西園寺さん、どうみても40代――」



西園寺 : 「何をいう、俺は 井上喜久子と同い年 だぞ」(笑)


若葉 : 「え、17才ってこと?」(笑)



椎名 : 「――教授だ」


和彦 : 「えっ?」


椎名 : 「だから……教授だったんだよ、俺の大学の」


西園寺 : 「あーあ、秘密にしておけって言ったのに……ま、いいか。正確には准教授だけどねー」



和彦 : 「マジでか! この人がッ!? そんなに頭良さそうにはみえな……」



西園寺 : 「んー、どういう意味かな、それ、おにーさんに教えてくれないかなぁ?」(笑)



和彦 : 「あ!? いやいや、良く見ると端正な横顔が知的だ、うん!」(笑)



芹沢 : 「お茶が入りましたよ〜」


七瀬 : 「お茶菓子はクッキーです。俺が作ったのと、梨花ちゃんが作ったのがあるよ〜」



和彦 : 「おぉっと、マジでか……頂くぜ! どっちが梨花のだ!?」



七瀬 : 「くまの形をしているほうが梨花ちゃんのだよ!」


西園寺 : 「誤魔化したな、コイツ……」(笑)


若葉 : 「あははー。でも、西園寺さんが教授ってのは私はちょっとわかる気がするなぁ」


西園寺 : 「おぉ、さすが若葉くん、見る目があるねぇ!」



若葉 : 「だって教授って変人が多いっていうでしょ、西園寺さんなら……納得だもん!」



西園寺 : 「がびーん、しくしくしく……シーナ君、若葉くんが虐めるよ。繊細な俺の気持ちを悪戯に傷つけたよ」


椎名 : 「……慰めませんよ、俺の意見もおおかた、若葉君と同意ですから」


西園寺 : 「がびーん、教え子が! 俺の教え子が悪戯に俺の心を傷つけるよ!」(笑)




和彦 : (時計を見ながら) 「……さて、俺は、そろそろ行くかな」


芹沢 : 「あれ、和彦さん、もうですか?」


和彦 : (力無く笑いながら) 「先約が入ってんだ、悪いけど……先に帰るわ」


芹沢 : 「あ、じゃぁ……ぼく、クッキーラッピングしますから……はい、和彦さん、どうぞ!」


和彦 : 「あ……ありがと、梨花。それじゃ、またな」



 桐生和彦が、退室する……。



若葉 : 「ヘンなのー、兄さん、何か元気ないなぁ……」


七瀬 : 「カズ君、わかりやすいからね……多分、今日あたり彼女に会いに行くんだろ?」




芹沢 : 「!!」




西園寺 : 「何ぃ、彼女だとッ……俺だって今まで居た事がないのに、けしからん! 実にけしからん!!」


七瀬 : 「カズ君、モテるからね……彼女いなかった時期のほうが少ないよ」




西園寺 : 「何だと、何という大理不尽! そんな事をするが居るから、俺にまわってくる女人が居ないのだ!」



椎名 : 「そんな事する雄が居ようがいまいが、貴方の元に来る女性の数はさして変わらない気がするがな」(笑)



芹沢 : 「あ……あ。和彦さん……彼女さん、居る……ん、です……ね」 (ふらふら)


七瀬 : 「ん……うん、まぁ……ね。えっと、もう付き合って……4年目、かな?」



芹沢 : 「そう……だったんだ。 あは、私……ばかみたい……」 (ぼそ)



若葉 : 「でも私、兄さんの今の彼女、苦手なんだよなぁ……何か、すっごい高飛車で、お嬢様ぶってるんだもん!」


七瀬 : 「……んー、確かにあの人、キツいというか……カズ君の事、振り回してた印象だしね……俺も苦手だったなぁ、最初、女の子だと思われていた時は、カズ君の浮気相手扱いされてたし」(笑)


若葉 : 「七瀬さん、名前も見た目も女の子だし、顔だって兄さんの彼女より可愛いもん、嫉妬されたても仕方ないよー」(笑)



七瀬 : 「それ、慰めになってないんですけど!」



芹沢 : 「……」 (しょんぼり)


七瀬 : 「えっと……梨花ちゃん、大丈夫?」


芹沢 : 「えっ!? あ、あの……大丈夫です、大丈夫……えへ、大丈夫ですよ!」


七瀬 : 「……えっと、その……別に、黙っているつもりはなかったんだ、ただ……」


芹沢 : 「……な、何の事ですか。七瀬さん。別にぼく……大丈夫です、大丈夫です か ら ……」


七瀬 : 「でも……」



芹沢 : 「あ! ごめんなさい、急用思い出しちゃった、ボク…………帰りますね、それじゃぁ!」



 芹沢梨花が退室する……。



若葉 : 「えっ、梨花ちゃん、もーぅ、一緒に帰ろうよ……あ、もう、行っちゃった。ちぇ、せっかく、美味しいチャイの飲める店、一緒に行こうと思ったのになー」


七瀬 : 「……」


椎名 : 「しかし……桐生のあの表情、今夜あたりするんだな、あの話を」


七瀬 : 「ん……うん、そうだと思うよ」


若葉 : 「えー、何なに? 私、兄さんの彼女、好きくないから、基本的に話聞かないんだよねー!」


七瀬 : 「え、じゃぁ俺言っていいのかな?(笑) いっか、若葉ちゃんも知る事になるんだろうし……いや、実はさ。カズ君、ここ1年はあんまり彼女とうまくいってなくてさ……」


椎名 : 「桐生は結婚も見据えていたんだが……共同でしていた貯金が、使い込まれていたらしくてな」


若葉 : 「えっ、何それっ……ほんと?」


七瀬 : 「それに、カズ君の行動が彼女に筒抜けだったらしいんだ、やれ、女の子に会っていた、だとか。 やれ、付き合いでどこそこの飲み屋にいった、だのさ。殆ど、携帯メールの内容が筒抜けで……妙だと思って調べてみたら……カズ君のメール、全部、彼女の元に転送されるよう設定されていたんだ」


若葉 : 「うぇっ、何それっ……いいの、そういう事して?」


椎名 : 「……一般的には、好ましくないのだろうな」


七瀬 : 「メールの内容みたいなら行ってくれればいいのにって。カズ君、4年も付き合ってたのに、自分の事信用してもらえなかった事とか、そっちのがショックだったみたいでさぁ……」


若葉 : 「それで……今日、別れ話?」


七瀬 : 「…………うん、多分」


若葉 : 「そっか……兄さん、大丈夫かなぁ……」


七瀬 : 「一応、知り合いが立ち会ってくれるから大丈夫だと思うけど……」


若葉 : 「だったらいいけど……よし、今日はビールでもかっていって、兄さん励ましてあげよっと!」



西園寺 : 「……俺としては、別れた彼女でもいいから、自分の所にまわってこないかなぁ、という淡い思いがあるんだが」





椎名 : 「安心しろ、西園寺さん。万に一つも、それはない!」



西園寺 : 「ががーん……人間コンピューターの異名をとるシーナ君にそこまで言われると、流石に凹むぜ!」


若葉 : 「ほんと、西園寺さんって、言動見てると凄い人には見えないよねぇ」(笑)


椎名 : 「……俺が学生だった頃は、凄い人だったんだがなぁ」(笑)


若葉 : 「そうなんだ……あ、そういえば……この、ゴーグルとか作ったのも西園寺さんなんだっけ!」 (と、言いながら、さっきまでつけていたゴーグルをとる)



西園寺 : 「うむ! ただのゴーグルではなく、N・システムだ! ……ふふふ、聞きたいかね、聞きたいかね、俺のN・システム、その概要を!」


若葉 : 「別に、興味はないです」(笑)



西園寺 : 「ガッテーム!」



七瀬 : 「あ……でも、俺は少し知りたいな……だって、このシステム凄いだろ! このゴーグルをつけて、るとさ…… (と、そこでゴーグルをつける) この、コンクリート打ちつけただけの殺風景な部屋に、世界樹の迷宮の世界がそのまま再現されちゃうんだぜ!」


若葉 : 「そうだよね〜、しかもさ、出てくるモンスターを倒した手応えもあるし! 花畑に行けば、花の匂いを感じるし、料理の味もちゃんとするし……凄いよね、これ、画期的だよ!」


西園寺 : 「ふふふ、そうだ、凄いだろ俺がつくったN・システムは! これをつける事で、ゲームの世界をよりヴァーチャルに感じる事が出来るんだ! 素晴らしいだろ! これさえあれば、レッツ二次元らーいふ!」



椎名 : 「教授、ニーズホッグ・システム……N・システムは別に二次元ライフを楽しむためのモノじゃないですよ。本来の用途は、立体展開のプレゼンテーションなどに使用する為のものです」(笑)


西園寺 : 「うるさいなァ、そんなの、作った当人である俺が一番わかってるっつーの。(笑) でも、実用段階にこぎ着ける事が出来なかった以上、二次元ライフを満喫するしかあるまい」(笑)


椎名 : 「そうですが……その切り替えの早さはいつも感心します」(笑)


西園寺 : 「それに……Y・プロジェクトが失敗した以上、こういう使い方が一番平和的で楽しいもんな!」



若葉 : 「え、何? Y・プロジェクトって?」


西園寺 : 「いや、Y・プロジェクトってのはな……」



椎名 : 「先生!」



西園寺 : 「何だよ、シーナ君?」



椎名 : 「…………極秘事項ですよ、その件は」



西園寺 : 「何だよ……相変わらず堅いねぇ、シーナ君は。別にいいじゃない、話しても減るもんじゃなーし!」


椎名 : 「ダメです! ……全く、貴方という人は……自分の置かれている状況を考えて欲しいですね」


西園寺 : 「という訳で、ごめんなー若葉くん。シーナ君がダメっていう事を喋る訳にはいかないんだ、この子怖いから」(笑)


若葉 : 「えー、ちょっと残念」


西園寺 : 「……残念か、そうか、俺と付き合ってくれたら内緒で教えるけど?」



若葉 :  「わー、遠慮しておきます!」



西園寺 : 「全力で拒否か、カオル、超ショック〜、みたいな。でもカオル、挫けない! だって強い子だから!」


若葉 : 「ねぇ、椎名さん、この人の講義、本当に大丈夫だった?」


椎名 : 「講義の時は、こんな人だとは思わなかったんだがな」(笑)


七瀬 : 「でも、西園寺教授が凄い人なのはこのシステムでわかるよね、本当に闘っているみたいだしさ、このゴーグルをかけるだけで、皆には俺が褐色ダクハンに見えるようになるんだろ、すごいよ!」


西園寺 : 「教授じゃない、プロフェッサーと呼べ! ハカセでもいいぞ!」(笑)


七瀬 : 「すごいよ、西園寺ハカセ!(笑) 仕組みは不思議がいっぱいだけどさ」


西園寺 : 「あーは。 ちみっと解説すると、そのゴーグルからは微弱な電流が流れているんだ。その電流で、脳を錯覚させている……敵と戦っているような手応えやら、花の匂いをかいでいるように、錯覚させているのさね。 ある人物の体感、その記憶をベースにしたプログラム……プログラム・フレスベルグを持ち用いてね」


七瀬 : 「ほぇ〜?」


西園寺 : 「ゴーグルに広がる世界は、基本的にCGなんだけどさ。ニーズホッグシステムをつけている状態なら、プログラム・フレスベルグのおかげで、CGの世界のモノに触れても、実際触れたような感覚がある訳だ、わかるかい?」




七瀬 : 「よくわかんないけど、わかった!」(笑)



西園寺 : 「うむ、七瀬くんのそのいい返事、先生大好きです!」(笑)



若葉 : 「……じゃ、今まで破れなかった服が、今日いきなり服が破けたのは?」(笑)


西園寺 : 「今までオフにしていた、衣類、装備品が朽ちる機能をONにしたんだ……是非またやりたいけど、やっていい?」



若葉 : 「だめ!」



西園寺 : 「しょんぼりだよ!」(笑)


若葉 : 「もー、西園寺さんのエロス!」


西園寺 : 「男は皆エロス、エロスさ……」


若葉 : 「もー……さ、て、と、お茶ものんだし、私もそろそろ帰ろうかな〜、しょげた兄さんを励ますビールを買いに行きたいしね!」


七瀬 : 「そうだね……俺も、そろそろ夕ご飯の準備したいし、ぼちぼちいこうかな? 若葉ちゃん、おくっていくよ!」


若葉 : 「……ありがと、七瀬さん。 じゃぁね、プロフェッサー西園寺、またあいましょう!」



西園寺 : 「うぃ、まってるよ! 女人はいつも歓迎だ、よ! よ!」(笑)



 七瀬澪・桐生若葉が退室する……。



椎名 : 「……七瀬が帰るなら、俺もそろそろ帰るとするよ、西園寺さん」


西園寺 : 「了解、おつかれさん……いや、大丈夫か、シーナ君、その……身体の調子、とかは……」


椎名 : 「……珍しいですね、西園寺さんが俺の身体を気遣うなんて」


西園寺 : 「ありゃ、ほんと、つれないねェシーナ君は……一応、君の身体を滅茶苦茶にしちゃった罪悪感は、俺にもあるんだよ」


椎名 : 「俺は……俺も、あの時は必要だった事です。気にしないでください」


西園寺 : 「……君はそれでも笑っていられるから、すごいな。俺にはとても……」


椎名 : 「笑っている? とんでもないです。 笑わせてくれているんですよ、俺の傍にいるあいつが、皆が……友達が、ね」


西園寺 : 「あぁ……そうか、そうだった……な」


椎名 : 「……俺、もう行きますよ。先生。外に……待っている奴がいますから」


西園寺 : 「……ん、あぁ。了解、おつかれさま。」


椎名 : 「お疲れさまです、西園寺先生」



 …………椎名淳平が、退室する。



西園寺 : 「椎名淳平……か。やっぱり俺は……あぁいう風に……生きられないな。あぁいう風には……」



 一人呟く西園寺は、空になったティーポットを眺めながら、ただ、静かに時を過ごしていた。

 コンクリートにつつまれた壁のなか。

 ただ、一人で……静かに……。




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