> 界樹の迷宮を、TRPGリプレイ風のプレイレポートしてみた。





前回までのあらすじ >


 B1の地図を作り、いよいよエトリア公認のギルドとなった若き冒険者たちは、迷宮の奥深くへ足を踏み入れていくのであった……。





> めてのクエスト



 ――前回のミッションから一週間後、都内某所。



GM : 「ではでは、世界樹の迷宮を始めたいと思うけど……シグのプレイヤーはまだ来てないのかな。居ないみたいだけど」


アイラ : 「えっ!? えー、えっと、急に仕事が入って遅れてくるから、先に進めてくれってさ」


GM : 「あ、そうなんだ? ――どうする、待っててもいいけど?」


アイラ : 「大丈夫、時間がかかりそうだから、先に進めてくれって」


GM : 「……そっか、じゃ、先に進めてようか。皆、準備はいいかい?」



一同 : 「は〜い」



GM : 「返事がよろしい。えと、前回無事にエトリアの世界樹迷宮探索ギルドとして任命された君たちは、クエストを受けられるようになった訳だ……」



アイラ : 「クエストって……この前、執政院から受けた地図づくりはクエストとは違うの?」


GM : 「あれは、ミッション


アイラ : 「? ミッションと、クエストは別物?」


シュンスケ : 「……ミッションは、執政院からの依頼で、ストーリー進行上に絶対に必要なイベントだ」


アイラ : 「へぇーっ、そうなんだ……じゃ、クエストは?」



シェヴァ : 「俺の昔の恋人の名前だ」



シュンスケ : 「意味不明のボケはやめろ、制御に困る……クエストは、直接ストーリー進行に関係ないサブイベントだな。途中で破棄も出来るし、ペナルティ無しに再度受ける事も出来る」


アイラ : 「へぇー、そうなんだ。シュンスケさん、物知りだねー」


シュンスケ : 「……まぁ、シグが来るまでクエストを解いて時間を潰しているのはいい手だろうな。GM、今あるクエストは何だ?」



GM : 「今来ているクエストは、『皮職人から:柔らかい皮を7枚集めて欲しい』 ってのと。 『老人から:水くんでこい!』 ってのと、あとは……シリカ商店から、『武器の材料を集めて欲しい』って奴だね」


シェヴァ : 「柔らかい皮って、どのモンスターが落としたっけ?」


シェヴァ : 「シンリンチョウとか、カブトハサミとかか?」


シュンスケ : 「蝶々も甲虫も柔らかい皮なんて落とすか、人の話を聞け本当にお前はッ! ……それに、カブトハサミじゃなく、ハサミカブトだ!」



シェヴァ : 「まーまー、怒らない怒らない。怒ってばかりだと、血圧上がるぜ」


シュンスケ : 「誰が怒らせているんだ、誰が……」


アイラ : 「でも、ネズミもモグラも倒せない相手じゃないよね。この依頼なら受けてもいいんじゃないかな?」


シュンスケ : 「水をくんでくるという依頼も、問題なくこなせそうだな……多分水というのは、以前見かけたあのわき水の事だろう」


リン : 「あ……地図の東側にある、袋小路の事ですね」


シュンスケ : 「あぁ……どちらも、1階だけで事足りる依頼のようだ」


シェヴァ : 「先にB2に進んだら、シグの性格だ。『どーして俺を置いて進んだんだ!』と憤る事間違いなしだもんなー」


アイラ : 「ねー、じゃ、シリカ商店の依頼はどうする?」


シュンスケ : 「……バトルアクスを作る為の材料、か。材料表を見る限り、これもB1だけで集められないモノではなさそうだが」



アイラ: 「アクスの材料! はいはいはいはーい! それ、是非受けたいです! 受けましょ、シュンスケさん!」 (←生粋の斧使い)



シュンスケ  : 「だが、材料を見るかぎり……戦う相手は、ハサミカブトだぞ?」



アイラ : 「!? うぇぇ〜、嫌だあいつー! だって、斧の攻撃全然効果ない上に、アイツの攻撃凄く痛んだもん!」



シェヴァ : 「だっかっら〜、アイツが出たらシュンスケが術式使うまで、ガードしていればいいんだってば」


アイラ : 「ガードなんて好きくないよー、私、攻撃したいからソードマンになったんだもん」(笑)


シュンスケ : 「……君は、実はシグ以上に攻撃的だな」



アイラ : 「私はただ、斧を振るいたいだけなの!」(笑)



GM : 「ははは〜。で、どうする。クエスト、受けるのかい?」


シュンスケ : 「そうだな……見る限り、現状で出来ない依頼はなさそうだ。全て受けるとしよう」


アイラ : 「全部受けてもいいの?」


シェヴァ : 「確か、クエストは5つまで平行して受けられたはずだよ」


アイラ : 「そうなんだ、便利な世の中になったねぇ」(笑)


シュンスケ : 「元々、こういう世の中だ」



GM : 「じゃ、三つともクエストは受ける訳だね……それで、シグのプレイヤーは不在だけど、シグはどうする? ギルドに置いていくかい?」


シェヴァ : 「連れて行くに決まってるっしょ、シグが居ないと、壁が一枚減る」(笑)


シュンスケ : 「確かに、装甲が脆いお前が攻撃を受ける可能性が高くなる、というのは危険だな」


シェヴァ : 「薄着なもんで、すいません」(笑)


GM : 「了解。 それじゃ、シグのキャラクターは誰か代わりの人が使ってくれ」


シェヴァ : 「誰でもいいかな?」


アイラ : 「シグからは、特に何もいわれてないから、誰でもいいと思うよ」


シェヴァ : 「それじゃ……はい!」 (と、リンにキャラクターデータを手渡す。)



リン : 「はい……って、あ、あの、あのっ。わ、わ、私ですか!?」



シェヴァ : 「だって、メディックって戦闘は回復ばっかでする事なくて暇っしょ?」


リン : 「は、はい……で、でもっ、私がシグさんをっ……その、あのっ……いいんですか?」


アイラ : 「うん、リンちゃんさえ良ければだけど……いいかな?」



リン : 「わ、わ、私がシグさんを…は、はははは、はい、がんばります! 全身全霊かけてっ、シグさんを演じきりますからッ!



GM : 「そ、そこまで気負う必要ないと思うけど……」



リン(シグ?) : 「そ、それじゃ、いくぜやろうどもー! 軽くばけものどもを、ぶちのめしてやろーじゃねぇーかー!」



アイラ : 「り、リンちゃん、無理しないで、普通でいいよ普通で」(笑)


シュンスケ : 「……それが、リン君の中のシグ像なんだな」(笑)


リン : 「あ、あれ……ち、違いました?」


シュンスケ : 「微妙に違っている気がするが」


シェヴァ : 「でも、面白いからそれで」(笑)




 ……かくして、クエストを始める新米ギルドご一行様。



シェヴァ : 「身体の半分が削れました、モグラに」


シュンスケ : 「まだモグラで苦戦しているのかッ、全く……!」


アイラ : 「でも、これで柔らかい皮7枚目〜げっとだぜ!」



 ……幾つかの苦難を乗り越え。



リン(シグ?) : 「また現れたってぇのかぁ、不埒なばけもんどもめぃ、刀の錆にぃ、してくれるわぁ!」


アイラ : 「やっぱり、リンちゃん微妙にシグの事間違えている気がする」(笑)


シュンスケ : 「……何処か、時代劇調だよな」


アイラ : 「あー、でもこれでやっとわき水の所についたよー。わきみず、ゲットだぜ♪」



 ……時にピンチになりながら。



アイラ : 「今日こそ、憎きはさみカブトを斧の露にしてっ……痛い痛い痛い、コイツ本当に痛い!」


シュンスケ : 「……雷の術式!」


アイラ : 「あー……た、助かったァ。ありがと、シュンスケさん!」


シュンスケ : 「いや、別にいいんだが……君は本当に、甲虫を叩き斬りたいんだな」



アイラ : 「うん、いつか鍋にしてやるんだから!」



リン : 「……お腹壊しそうですね」


シェヴァ : 「いや、以外と珍味かもだよ。カニの味しそう」(笑)



 ……確実に任務をこなしていった。



シェヴァ : 「シュンスケー、何か見つかったかァ?」


シュンスケ : (もぞもぞ) 「苦ヨモギ……また苦ヨモギか……」 (←伐採中)


アイラ : 「出ないねー、丈夫な木片。ココにあると思ったんだけどなー」


リン : 「でも、苦ヨモギも珍しいモノですよ?」


シェヴァ : 「シュンスケ、くじ運無いもんなァ。正月ともなれば俺の倍くらい年賀状届くのに、切手シートすら当たったことないし。実はこーいうの、探すの滅茶苦茶下手なんじゃね?」


シュンスケ : 「余計なお世話だッ!」 (ぽいっ)


シェヴァ : 「痛ッ! 投げるなよッ、伐採したアイテム投げるなんてッ……」


アイラ : 「って、シュンスケさん、今投げたの、探していた丈夫な木片だよッ!」


シュンスケ : 「何ッ!? しまった、皆、探せッ!」



アイラ : 「……シュンスケさん、実はちょっとうっかりさん?」


シェヴァ : 「あー……そういえば、歯磨き粉と洗顔フォーム間違えて歯磨きした事、あるよ、アイツ」




 そして。

 クエストは、完了したのである。





アイラ : 「ハンドアックス、げっとだぜ〜♪」


シュンスケ : 「良かったな、アイラ君」


アイラ : 「うんッ。 これでシグの剣に劣らない攻撃が出来るよー、嬉しいなー、今日抱いて寝よう!


シェヴァ : 「斧を抱いて寝る女性かぁ……」


シュンスケ : 「アイラ君らしいといえば、アイラ君らしいが」



 と、そこでシグのプレイヤーが到着する。



シグ : 「いやぁ……悪い悪い、遅くなったみたいで……もう、結構進んでるか?」


GM : 「あ、シグ……いらっしゃ〜い」


シェヴァ : 「待ってたよシグ〜……って、あれ、シグ。顔、どうしたんだよ。何か、青あざが出来ているよーな気がするけど……?」


シグ : 「いやいやいやいや、べ、べ、別に何でもねーよマジで! マジで何も、投げつけられてねーから!」


シェヴァ : 「なんだ、また喧嘩したのかよ〜、最近多いなァ、お前ら」


リン : 「?」


シグ : 「ぐぅっ……ほっとけっての! それより、今は何やってんだ。来たばっかりの俺でも解るように説明してくれよ」



GM : 「えっと……」



シグ : 「出来れば三文字以内で」



GM : 「難しい事を言う!」


シュンスケ : 「……クエストを受けていた。だいたい完了した所だ」


シェヴァ : 「そして、シグの事はリンちゃんが代役して育ててくれたでござるよ〜」


シグ : 「ござる?」


リン : 「わ、わ、私ござるとか言ってませんッ!」


シグ : 「あぁ……リンちゃんが俺のキャラをプレイしててくれたんだ。悪いね、ありがと……おぉ、経験値凄い増えてるね! 助かったよ」



リン : 「い、い、い、いえっ、その。シグさんの為です、当然ですッ!」



シグ : 「? とにかく、ありがとうな。それじゃ、これから俺も参戦するから……って、クエストって何があったんだ?」


アイラ : 「えーと、皮職人の依頼と、おじいさんの依頼と、あとは……」


GM : 「シリカ商店の依頼」



シグ : 「シリカ商店の依頼! って、アレか、シリカ商店ってあの、武器屋の」


シェヴァ : 「そうそう、あの武器屋の……」



シグ・シェヴァ : 「下乳」




アイラ : 「下乳だけシンクロさせて言わないでよッ、もー、恥ずかしい!」




シュンスケ : 「……まぁ、確かにアレは個性的ではあるが」


アイラ : 「ちょっ……シュンスケさんまで、何言ってるんですか!」


シュンスケ : 「ム……すまない」


シグ : 「あー、でもシリカ可愛いもんなぁ、シリカ!」


シェヴァ: 「……俺はもう少し育ってからの方が好みだけど。確かに彼女、シグの直球ど真ん中だよね」(笑)


シグ : 「ポニーテールで僕っ娘だぞ! RPGじゃなくて、ギャルゲーに出るべきだよなぁ、本当は! 俺、褐色と黒髪属性はないんだけど、それでも充分の破壊力だもん、なー!」


アイラ : 「全くッ、あのバカ……シグ、リンちゃんも居るんだよ、萌えトークなら家でしなさい!」 (ぎゅむ)


シグ : 「ふぁ……来て早々、いきなり顔をつねるのはやめろよ、アイラ……な?」


アイラ : 「そう思うなら、リンちゃんにも謝りなさい!」


シグ : 「えー……えっと、も、萌えトークしてすいませんでした?」(笑)


リン : 「あ……べ、べ、別にいいです!」


シグ : 「はは……いや、でもゴメン調子のってた。シェヴァが居るから、つい本心が出ちまったようだ」(笑)


シェヴァ : 「何だよー、俺のせいにするなよな!」


リン : 「………………」


シュンスケ : 「……どうした、リン君?」


リン : 「えっ……あ、あの。えっと……やっぱり、シグさんは、その……自分の事を、僕と言う女性がお好きなのでしょうか?」


シュンスケ : 「……そう、聞き及んではいる」


リン : 「……そして、元気で活発な女性が、お好きなのでしょうか?」


シュンスケ : 「全てがそうだとは言わないが、その傾向があるな」


リン : 「そ、そ、それじゃぁ……やっぱり、その……お、お、お胸が大きな女性が、お好きなのでしょうか?」


シュンスケ : 「……いや、胸に対する執着は、シェヴァと比べれば遙かに薄いな。むしろ、アイツは貧乳萌えだ」


リン : 「だ、だったら……私でも……」


シグ : 「んー、どうした、リンちゃん?」



リン : 「え!? な、なんでも無いです……よ、よーし。ぼく、頑張ってみんなを治しちゃうからね!」



一同 : 「えぇええぇえええ!?」



シュンスケ : 「ど、ど、どうしたんだリン君、その急な路線変更


シェヴァ : 「打ち切りマンガのてこ入れの為のキャラ路線変更か?」(笑)



リン : 「やっぱり、変かな……」



シグ : 「いや、変なんかじゃない!」



リン : 「シグさん?」



シグ : 「変なんかじゃないぞ、リンちゃん……そうだ、茶髪ショートカットで僕っ娘だって浪漫、そうだろみんな!」



シェヴァ : 「いや、それは……」


アイラ : 「シグが好きってだけで……」


シュンスケ : 「別に浪漫は……」



シグ : 「浪漫だよな!」(武器をちらつかせつつ)



一同 : 「脅しだー!」(笑)



シグ : 「浪漫……だよな?」



シェヴァ : 「そういえば、浪漫だという気がした、うん!」


アイラ : 「何か腑に落ちないけど、浪漫ね!」


シュンスケ : 「保身のため、浪漫という事にしておこう」


シグ : 「よしよし……という訳で、リンちゃんはそのまま、僕っこ続行で!」


リン : 「はい! あのっ、シグさん……ぼくのこと、よろしくお願いしますね!



シグ : 「……あぁ、より一層、力強く守ってやる!」



GM : 「何という単純性能」


アイラ : 「まぁ、本人がやる気になったんなら、いいんじゃない」(笑)


シェヴァ : 「何か諦めみたいなのが見えるねぇ」


アイラ : 「ずっとあの姿を見ているんだもの、それは諦めも出ますって」(笑)




> f.o.e る!




シュンスケ : 「それでは、シグも来た事だし地下2階に行くか」


GM : 「了解、そうして君たちは地下二階に足を踏み入れた」



シェヴァ : 「……これが最後の戦いになるとも知らずに」



シュンスケ : 「物騒なナレーションをいれるな!」



リン : 「……地下2階も、雰囲気は、地下1階とあまり変わらないですね」


GM : 「そうだね、まぁ、少し降りただけだしね」


シグ : 「そろそろ凶悪な敵が出るかもな……ふふ、腕が鳴るぜ!」


リン : 「う〜、ボクは嫌だなぁ、強い敵が出ると皆さんの怪我が増えちゃいますから」


シュンスケ : 「まぁ、慎重に進むに越した事はないだろうな」


GM : 「……と、進む君たちの前に敵が!」


シグ : 「来たかッ、腕が鳴るぜ……さぁ、今度の敵はどんな奴だ! 出来れば強くて格好いい奴と戦いたいぜ!」(笑)


シェヴァ : 「確かに、前の階だとカニとかモグラとばっかり戦っていた気がするもんなー」(笑)



GM : 「そんなシグの期待に応え、現れたのは……ウサギが二匹



シグ : 「うさぎィ?」


GM : 「うむ。ぼてっとして、まるっとした、緑のデブウサギだ」


シュンスケ : 「マスター、デブウサギではなく、森ウサギなのだが。」


GM : 「別にいいだろ、わかりやすさが肝心だ」


シグ : 「なぁーんだよ、この階も動物王国かよー。」


GM : 「どうぶつ王国ですよ、何せ野生の宝庫、樹海ですから。何を期待してたんですか、樹海に」(笑)


シグ : 「迷宮なんだからさー、竜牙兵(スケルトンウォーリアー)とか、石巨人(ストーンゴーレム)とか……そういう、血が滾るよーなバトルに憧れてたんだよ、俺は」(笑)




GM : 「そんなのと戦いたきゃ、ソードワールドでもやってろ! ……ほら、文句言うなら先制攻撃にしちゃうぞ、とっとと戦えこのすかぽんたん!」



シグ : 「すかぽんたんと言われた……まぁいいさ、とりあえずウサギぶんなぐる。今日はウサギご飯だ!」


アイラ : 「私もウサギを殴る! やったー、貴重なタンパク質!」


シュンスケ : 「発想が野生児だぞ、二人とも」(笑)


シグ : 「わんぱくでもいい、たくましく育って欲しい。 をモットーにしているからな」(笑)


シュンスケ : 「一応、貴族の設定だろお前は」(笑)



GM : 「えーと――シグ、アイラはうさぎ1を攻撃でいいかな? シェヴァは?」


シェヴァ : 「俺もウサギ1を攻撃で」


リン : 「ボクも!」


GM : 「了解、シュンスケは?」


シュンスケ : 「そうだな……ウサギ2に、氷の術式をいれておくか」


シグ : 「たかがウサギに、本気モードかシュンスケ?」


シュンスケ : 「たかがウサギでも油断は出来まい……何せ、この階層から初見の敵だ、上の階層に居る敵より強いという事は充分考えられる」


シグ : 「はぁ、相変わらず慎重だねぇお前は……よし、それじゃ、張り切ってウサギ狩りと行くぜ!」



GM : 「……うさぎの攻撃! ずばきゃっ! シグは19のダメージを受けた!」



シグ : 「ぬぁにぃいいい! た、た、たかがウサギの分際で、いきなり俺の体力をまで減らしただと!」



アイラ : 「そんなぁ、見た目は可愛いのに、こいつ強い!」


リン : 「シグさん、すぐに回復しますよ!」


シェヴァ : 「その前に叩いちまえばいいんだよッ、ほら、俺の鞭を浴びろッ!」


GM : 「ビシッ、あぁあ、ごしゅじんさま〜。 と。 でもウサギはまだ元気っぽい。もふもふしている」


シェヴァ : 「もふもふ?」(笑)


GM : 「そして、もう一匹のうさぎも攻撃、何するのさー、とシェヴァに、どすーん!」


シェヴァ : 「うぁ……痛ぇなぁ。装甲脆いんだっつーの、俺!」


GM : 「そんな事知るかい! ダメージ減らしておいてな」


シュンスケ : 「……シェヴァ、大丈夫か?」


シェヴァ : 「大丈夫、まだ元気な方、俺にしては」(笑)


GM : 「これで、ウサギの攻撃は終わりか、ちぇ、油断している所一人くらい屠るつもりだったのに……」(笑)


シグ : 「そうは行くか! うさぎに攻撃!」


アイラ : 「追撃も、いっくよー!」


シュンスケ : 「術式も、完了している……」


GM : 「待った待った、流石にその流れでは勝てないの解るって。はい、全員倒れました、君たちの勝利〜」


シグ : 「……ふぅ、危なかった」


アイラ : 「シグ、頭から血が吹き出てるわよ」(笑)


シグ : 「何言ってるんだ、そんな訳……なんじゃこりゃ〜!!!」(笑)


シュンスケ : 「……全く、これに懲りて、相手の見た目で油断するんじゃない」


リン : 「そうですよ、シグさん、無茶しないでくださいっ。ほら、傷見せてください、ボクが治してあげますから……」


シグ : 「あぁ、悪ぃ……ってか、良く考えたら世界樹って敵は皆、可愛い系だったよな!」


GM : 「そうそう、ドラクエのモンスターが、一見すると強そうに見えないみたいに、こいつらも可愛いから油断するんだよね」


シグ : 「見た目に騙さねぇで、気ぃ抜かず進まないとなぁ……じゃ、奥地目指すか」



GM : 「……なんて会話をして歩いている君たちの耳に、突如獣の咆吼のようなモノが聞こえてきた。」



リン : 「きゃぁ、な、な、何ですか!?」


シグ : 「……アイラ、いくら腹が減ってるからって、腹の虫の鳴き声にしてはでかすぎるぜ?」(笑)


アイラ : 「し、し、失礼ね、いくら私でもそんな、獣の咆吼みたいな音がする訳ないでしょ!」 



GM : 「勿論、それはアイラの腹の音ではない。(笑) どうやら、近くに危険な獣が居るらしい……」


アイラ : 「危険な獣?」


シュンスケ : 「危険な獣……まさか、F.o.eか!?」




シェヴァ : 「知っているのか、雷電!?」




シュンスケ : 「いや、俺は雷電なんて名前じゃないが……」


シグ : 「それで、雷電。それは、民明書房の何という書籍の何ページに書いてあるんだ?」(笑)


シュンスケ : 「別に、民明書房の書籍にも書いてないが……。(笑) F.o.eというのは、マップを動き回っている姿を確認出来る強敵の事だな。」



シグ : 「強敵だと! それは楽しみだな!」



シュンスケ : 「それが、今し方ウサギにボッコボコにされた男の台詞か……?」


リン : 「それで、シュンスケさん。その、f.o.eは、普通の敵と何か違うんですか?」


シュンスケ : 「そうだな……f.o.eは、同一フロアに出る敵としては、かなり強固な部類に入る場合が多い」


アイラ : 「えっ、今の森ウサギだって結構苦戦したのに?」


シュンスケ : 「あぁ……二階に下りたばかりのギルドでは辛い相手だろうな、だががそれ以上に一番の特徴は……やはりMAP上で動きを確認出来るという点だな」


アイラ : 「MAP上に……動きが見える。見える敵、って事ね?」


シュンスケ : 「……そうだ。そしてf.o.eは、俺たちが一歩動けば同様に一歩動く。それぞれが、特定の行動パターンをもって移動しているんだ」


シェヴァ : 「だったら、その行動パターンを読んで、そいつらに当たらないよう、進んで行けば戦わずに済むって事だろ!」


シュンスケ : 「……そうだな、今の俺たちの実力では、相手の行動パターンを読み、当たらぬように進んだ方が賢明だろう」


GM : 「そんな、遠慮しないで積極的に当たっていってもいいんだよ」(笑)


シェヴァ : 「それは、積極的に戦って全滅しろ、の同義語じゃないっすか?」(笑)


シグ : 「俺も、強敵に当たるのは嫌いじゃないが無駄死にはしたくないぞ。よし、とりあえずそのf.o.eとやらは、避けて進むとするか」


GM : 「ちぇ〜、せっかくお前たちの初全滅が見えると思ったのになぁ〜」


アイラ : 「何でそんなに私たちを全滅に追い込みたいんですか、GMさんは」(笑)



GM : 「だってお前ら、最初の全滅ポイントであるB1の毒吹きアゲハも何だかそつなく対処しちゃって、つまんねぇんだもん。そろそろ全滅しろ!


シグ : 「何という無茶振り」(笑)


シュンスケ : 「とても俺たちの冒険を見守る、ギルドマスターの言葉とは思えんな」(笑)



リン : 「ところで、GMさん……その、f.o.eさんは、今どこに居るんですか?」


GM : 「え、えーっと……君たちが曲がろうとしている通路をウロウロしているね……そこからでも見えるはずだ」


アイラ : 「あ、ホントだ! ……どんなモンスターか解らないけど、太陽みたいに輝いている!」(笑)


シグ : 「あれに当たらないよう進まないといけない訳だな……」


シュンスケ : 「シェヴァ、敵の動き……お前は、どう見る?」


シェヴァ : 「んー、そうだなー……見た所、この通路をただ往復しているだけみたいだから、敵が振り返った時に後をつけるみたいに進んでいけば問題ないと思うよ」


シグ : 「おぉ、スニークアクションだな! こぅ、後ろを振り返っている時に……背後から斬りかかって、天誅!ってやるんだろ?」



アイラ : 「だからアイツとは戦わないって言ってるでしょ! 天誅みたいに、バックアタックすれば無条件で勝ちって訳じゃあないんだから!」


リン : 「でも、大丈夫ですかね……敵さんのすぐ後ろをついて歩いたら、急に振り返った時にぶつかっちゃうんじゃ……?」


シェヴァ : 「その可能性は否定できないなァ……念のため、敵から2,3マス開けて進んでみるかい? 判断は、リーダーに任せるけど。ね、どうする、リーダー?」


シグ : 「そうだなぁ……って、シェヴァ、何で俺の事リーダーって呼ぶんだよ? 俺、別にリーダーやるって言ってねぇぞ」(笑)


シェヴァ : 「何となく、見た目がリーダーっぽいから」(笑)


シグ : 「何だそりゃ……俺は、シュンスケがリーダーのつもりだったんだが」(笑)


シュンスケ : 「……俺は、リーダーの器ではないな」


シェヴァ : 「そうだよ、シュンスケは、リーダーっていうより参謀ってイメージだ。裏で糸引いて悪いこと考えるタイプ」(笑)


アイラ : 「いいじゃない、リーダーで。シグ、そういうの好きでしょ?」


シグ : 「別にリーダーが好きって訳じゃねぇよ、好きこのんで委員長やりたがる奴なんて居ねぇだろ?」


アイラ : 「でも……私と、リンちゃんは、可憐な女の子でェ……荒くれ者たちが集う迷宮の冒険者らのリーダーなんて、怖くて出来ないしィ」




シグ : 「可憐!? リンちゃんはともかく……お前が!?」




アイラ : 「……ビキ!」



シグ : ビクッ!




シェヴァ : 「シュンスケは、初対面の相手に不信感を与える事に関しては他の追随を許さない雰囲気を持っているし」


シュンスケ : 「シェヴァに至っては、リーダーというより舎弟という印象だ。消去法で言っても、確かにお前が適任だろう」


シグ : 「はいはい、わかったわかった……ま、とりあえずココは様子見も兼ねて、敵から2,3マス離れた所で追いかけて進んでみるか」



シェヴァ : 「了解ッ……それじゃ、少し間を開けて……今だ、尾行開始!」


GM : 「と……君たちが一歩進んで……コイツも一歩進んで……君たちが一歩進んで……っと、ここでf.o.eがくるりと振り返る


リン : 「きゃー、近いです、近いです!」


シグ : 「大丈夫だ、目の前に曲がり角があるから、あの曲がり角まで逃げるんだ!」


シェヴァ : 「開けていた間隔が結構あるから、俺らが曲がり角に行き着く方が先だもんね」


GM : 「じゃ、君たちは、振り返ったf.o.eも意に介せず進んでいく訳だね……」


アイラ : 「だ、大丈夫かな?」


シュンスケ : 「シェヴァの分析が間違いなければ……アイツの言う通り、俺らが曲がる方が先だ。そして、カドさえ曲がればもう追いかけては来ない。大丈夫のハズだ」


GM : 「だが……何と、君らはカドを曲がる前に敵とエンカウントしてしまった!」



一同 : 「なにぃ〜!」



GM : 「敵は、毒吹きアゲハ×2森ウサギね。君らはどっちももぅ、戦っていると思うけど……」


シグ : 「……森ウサギを俺とアイラで叩く……毒吹きアゲハをシュンスケに処理してもらう……チッ、どう考えても今の俺らの実力じゃ2ターン以上はかかる相手だな。だが、今の俺らの体力を差し引いても、下手うたなければ負ける相手じゃねぇ、皆、落ち着いて陣形を……」


GM : 「ふふふ、戦うんだね。」 (邪笑)



シュンスケ : 「2ターン以上……? ダメだ、シグ。 ここは退け!」


シグ : 「……何でだよ、シュンスケ。 確かにこの相手は、下手うてば負ける可能性もある相手だがそれでも強敵じゃねぇぜ、落ち着いて対処すれば俺たちなら……」



シュンスケ : 「いいから退け!」



シグ : 「……わかった、お前がそこまで言うなら、今は退こう。全員、撤退準備だ! とにかく、後ろ向きに全力疾走ッ!



GM : 「チッ、シュンスケめ……やっぱり、アレを知ってたか」



シェヴァ : 「逃げろと言われればッ、逃走成功〜」


アイラ : 「……はぁ、はぁ。久しぶりに全力で走ったよ。でも、どうしたのシュンスケさん? さっきの相手、シグの言う通り。勝てない相手ではなかったと思うけど?」



シュンスケ : 「ぜー、はー、ぜー、はー」



アイラ : 「シュンスケさん?」



シュンスケ : 「ぜーはー、ぜーはー、ぜーはー」



シェヴァ : 「……シュンスケ、持久力無いから全力で走ると回復するのに時間かかるんだよ」(笑)



アイラ : 「シュンスケさん、体力なさすぎるよ!」(笑)



リン : 「1マス分しか走ってないですよね」(笑)



シュンスケ : 「ぜー、はー……はー……はぁ、水ッ……」


シェヴァ : 「俺の飲みかけのボルヴィックでいい?」


シュンスケ : 「悪い、もらうぞ……。 (ぐび、ぐび、ぐび) ふぅッ、生き返った……」


アイラ : 「それで、シュンスケさん。どうして逃げろなんて言ったの? 何か、すごい剣幕だったけど……」


シュンスケ : 「それなんだがな……実は、f.o.eというのは……戦闘で1ターン経過する事に、一歩動くという性質を持っている事が多んだ」


アイラ : 「えっ、そうなんだ……!」


シュンスケ : 「しかも、長引いている戦闘に乱入してくる事もある。もし、今の戦闘が2ターン、かかっていたとしたら……」



リン : 「戦闘中に、乱入してくる可能性があったんですね?」


シュンスケ : 「……そうだよな、マスター?」



GM : 「全く、シュンスケ様は博識であらせられる事……そういうメタプレイ、GMどうかと思いますよー?」


シュンスケ : 「む……スマン」


GM : 「ま、シュンスケが知ってたからバラしちゃうけど、確かにそうだよ。恐らく、2ターン目にはこのf.o.eは君らの戦闘に乱入してただろうね」



シグ : 「まじでか! いや、危ねぇ所だったなァ」


アイラ : 「まだ、普通の敵の相手も重荷なのに、f.o.eまで相手に出来ないよねー」


シェヴァ : 「だったら、エネミーアピアランス(敵が出る確立を色で判別するシステム。 青だと敵に遭遇する率が低く、赤だと極めて高い)を確認して、赤い時はf.o.eに近づかない方がいいなァ……」


シュンスケ : 「そういう事だな」


シグ : 「そういう大切な事は言えよ、シュンスケ!」


シュンスケ : 「……スマン、今思い出したんだ、俺も」


アイラ : 「他に忘れてる事はないですか、シュンスケさん。何かこぅ、f.o.eに関係する事で……」


シュンスケ : 「そうだな……後は、色が赤くなっている時のf.o.eは俺達を追いかけてくる事、それと、黒いf.o.eからは逃げられない、という事くらいか」


リン : 「……結構厄介ですね、f.o.e」


シグ : 「そうだな……だが、特徴さえわかれば問題無ぇさ、今はとにかく、あいつらに見つからないようにして……いつかはf.o.eも問題なく倒せるよう、実力を磨こうぜ!」



一同 : 「おー!」




> 迷の、出会い。



 こうして、f.o.eの特性を見抜き、着実に成長していく新米ギルドの面々。



アイラ : 「きゃぁ、シェヴァさんがまたシカの角に貫かれてる!」


シェヴァ : 「うぁ〜、何か綺麗な川の向こうにお花畑が見えるよ〜」


シュンスケ : 「その川は渡るな!(笑) 全く、俺が術式を決めるまで、防御力の低いお前はガードしておけっ!」



 ……時にピンチになり。



シグ : 「なー、ショートソードって幾らだったっけ?」


リン : 「えっと……確か、350エンだったと思いますよ?」


シグ : 「迷宮で会った兵士、ショートソードを幾らで売ってたっけ?」



アイラ : 「500エンよ」



シグ : 「あの野郎、定価の倍近くの値段で武器を売ろうとするなんてッ! 新米だと思って騙そうとするなんて、今度あったら、ただじゃおかねぇからな!」



シェヴァ : 「でも、定価1000エンのソーマを100エンで売ってくれたよ」


アイラ : 「何か、思い入れのある武器だったのかもしれないわよ。このショートソードは、自分を守ってくれた愛用の剣だったけど、武器もない新米のために譲ってやろうと思った、けど、思い入れがあるからつい高値にしてしまった……とか」



シグ : 「む、そうか……それなら仕方ないな、うん、武器を大事にする戦士に悪人はいない!



シュンスケ : 「……俺はただ、その兵士がソーマの価値を知らなかっただけだと思うが」


シェヴァ : 「ダメだろ、シュンスケ。シグが納得してるのに、そんな事言うなって!」



 ……時にNPCに騙されそうになりながら。



シェヴァ : 「草むらに何か、光ったモン見えた!」


シグ : 「? ガラスか何かだろ?」


シェヴァ : 「重要なアイテムかもしれないだろー。シグ、手ぇ突っ込んで探してみてくれよ!」


シグ : 「何で俺なんだよッ……絶っ対嫌だ! お前がつっこめよ!」


シェヴァ : 「嫌だよ、何かあの草むら、ガサガサ動いてるし」



シグ : 「動いてるんだったらアイテムじゃねーだろ、常識的に考えて!



シュンスケ : 「確かに、草むらが動いている、となると蛇か何かである可能性が高いな。だが……」


シェヴァ : 「動くアイテムかもしれないだろ、ダンシングフラワーとか……」


シュンスケ : 「その可能性も否定はできん。シグ、手を突っ込んでみてくれ」



シグ : 「それが冒険に必要である可能性を感じないんだが! それに、どうして俺なんだよ!」



シュンスケ : 「俺とリン君は体力が低すぎる、シェヴァはただでも装甲が薄く体力は前衛職の癖に低い、アイラ君に頼んだらお前にやらせろと言った。結果、お前が適任だ」


シェヴァ : 「だ、そーだよ。ほら、リーダーがんばれ、リーダー!」



シグ : 「そうだよな……リーダーって、雑用をやる運命なんだよな……ちっ、くそ、頑張ってくるぜ! 頑張って、明らかに蛇が居る茂みに手をつっこんでHPを10程減らしてくるぜ!」



 時に仲間との絆を確かめ合いながら、確実に進んでいった。

 そして……。




GM : 「……君たちの目の前に、下に向かう階段が現れた」


アイラ : 「いよいよ地下3階突入ー!」


シェヴァ : 「何とかf.o.eと当たらずにここまで来れたよ……案外、来れるモンなんだなー」


シュンスケ : 「……そうだな、そろそろ一度くらい、B2のf.o.eと戦ってもいいかもしれん。リン君も医術防御を覚えてくれたしな」


リン : 「はいっ、皆さんをお守りする為の心得、ボクがお伝えします!」


シグ : 「その前に、少しこの迷宮を歩いてみよーぜ、少し地図も作りたいしな!」


GM : 「あ、この階にもf.o.e居るからね」


シェヴァ : 「ホントだ、降りてすぐ居る……えっと、コイツは……俺たちを追尾して来るみたいだけど、四歩動くと一歩止まるみたいだから……止まっている間に抜けていけばいいよ、問題ない」


シグ : 「よし、皆足下に注意して緊急避難!」


GM : 「くっ、ちょこまかと逃げおって……」


シェヴァ : 「おぉっと、抜けた先にもまたf.o.eが居るよ……えっと、コイツの動きは……」


GM : 「……と、進んでいくうちに、君たちはこの、扉のあたりで二人の冒険者の姿を確認する」


シグ : 「ボウケンシャ? 俺たち以外に……先客か」


GM : 「あぁ……といっても、君たちみたいにぺかぺかの鎧を着た連中ではなく、もっと熟練の……手練れの印象がある冒険者二人組だ」


アイラ : 「手練れって、私たちより先輩の冒険者って事よね。どんな屈強でマッシブな殿方が居る訳?」


GM : 「いや、男じゃないよ……二人とも女性。一人は、黒いローブに身を包んだ少女。もう一人は、黒髪で長髪、刀を持ったキツそうな顔立ちの女性だ」


アイラ : 「女性。ちょっと意外かも」


シェヴァ : 「ローブと刀って……アルケミストとソードマンのコンビかな、何か回復効率が悪そうだけど」(笑)


シュンスケ : 「いや、あの雰囲気だと……少女はカースメーカー、女性の方はブシドーだろう。回復効率が悪そうなのは変わりないが」


シグ : 「へぇ……でもそんな熟練の冒険者がこんな所で何してるってんだ?」


GM : 「彼女たちは、君らを見かけると警戒した様子で話しかけてくる……。 『何者だ、貴様ら。こんな所に……』 と、明らかに君らを怪しい人だと思っているね」


シェヴァ : 「怖っ、シグ、この人怖いよ!」



シグ : 「仕方ねぇな、警戒を解く事から始めるか……突然の来訪で警戒をしたのであれば、謝ろう。だが少し、話を聞いてはくれないか」


GM : 「『何だ……貴様達は何者だ』と、女性は相変わらず警戒したままだね」


シグ : 「……俺たちは、エトリアの街から来た冒険者だ。世界樹の迷宮、その調査に協力をしている者であり、怪しい者ではない。最も、俺のこの話を信じないのであれば、武器を収める必要はないがね」


GM : 「『エトリアの冒険者か……』 と、女性は君からその話を聞くと、多少警戒がとけるね。 『だが、エトリアの冒険者ならすでに報せを受けているはずだ。お前たち、執政院から何も聞いていないのか?』


シグ : 「執政院? お前ら、何か聞いてたか?」



一同 : (無言で首を振る)



シグ : 「……いや、俺たちはまだ何も聞いてない。何か、あったのか?」


GM : 「『そうか……何も聞いていないのか』 と、やや呆れ気味に言う。 『詳しい話は、執政院に戻って聞くといい。私たちは、この場所に不用意に人が入らぬよう見張りをしているだけだ』


シグ : 「そうか……解った、一度執政院に戻ってみるとしよう。ところで、君たちの名前は? いや、名前は我々が先に名乗るのが礼儀だったな。……俺はシグっていうんだ。このギルドのリーダーを勤めている」


アイラ : 「アイラです、斧担当です!」


シェヴァ : 「シェヴァです、鞭担当です!」


リン : 「リンです、メディックをしてますです!」


シュンスケ : 「……シュンスケ・ルディックだ。職業は、見ての通りだ」 (と、言いながらアルケミストの象徴でもある籠手を見せる)


GM : 「わざわざ名乗ってくれるなんて、丁寧なギルドだなぁ。斧担当とか鞭担当という紹介はどうかと思うが。(笑) 『そうか、私はブシドーレン。そして、後ろに居る彼女がカースメーカーツスクルだ』


アイラ : 「ツクルス?」


シェヴァ : 「ツルツル?」



GM : 「つ・す・く・る! もー、お前らそんな事言うと、レンさんの刀が唸るぞ」(笑)



シグ : 「……っと、どうやら一度執政院に戻らないといけないみたいだな」


アイラ : 「そうだね、あの扉の向こうで何かあったみたいだし」


GM : 「『そうするといい』と、レンツルクスもその場を動こうとはしない。どうやら見張りみたいだ」


シュンスケ : 「マスター、ツルクスではなく、ツスクルだろう」(笑)


GM : 「おおっと、やっちまったぜ!」(笑)


シグ : 「マスターまで間違えてどうするんだ」(笑)


GM : 「仕方ないだろ、言いにくいんだよツスクル……」


アイラ : 「何にしても、二人がどかないなら仕方ないよねー。とにかく、いったん外に出よう」


シグ : 「おぉ、アリアドネの糸で一気に戻っちまうか……」



シェヴァ : 「…………」



GM(ツスクル) : 「…………」



シグ : 「おい、シェヴァ! 何してンだ、置いてくぞ!」



シェヴァ : 「!? ちょ、ちょっと待ってくれよ、今行くから!」



シュンスケ : 「……どうした、シェヴァ。何か、あったか?」


シェヴァ : 「いや、そのっ、別に……たいした事じゃ、無いんだけどさ……」


シュンスケ : 「……言ってみろ。お前の大したことじゃない話は、大概は大事な話だからな」


シェヴァ : 「いや、ホント大した事じゃないんだけど、さ……あの、ツスクルって人の目……何だか非道く、不安そうだったから……だから……」


シグ : 「そうか? カースメーカーの顔は大概、あんなだろ」


シェヴァ : 「ん……そう、だよな。うん、気にする事、無いよな……はは、ゴメンごめん。じゃ、執政院に戻ろうか」


シュンスケ : 「……あぁ、そうしよう。今はとにかく、先に進む事を考えないとな」




 かくして、迷宮の途中で進む事の出来なくなったさばみそギルド面子。

 はたして二人の熟練冒険者がまつその先に、一体何が待ち構えているのか……。

 ワクワクしたりドキドキしたり、悶々としたりがありながら、次回に続くのである!





> 幕劇 : 桐生和彦の事情






 セッション終了後。

 都内某所。(いつもの場所)




GM(西園寺馨) : 「はい、皆さんおつかれさまー、とりあえずここで一端、休憩取ろうか! あんまり長くやってると大変だからねぇ」


シュンスケ(椎名淳平) : 「……了解です。システムを、スリープモードに移行します」


アイラ(桐生若葉) : 「お疲れさまでーす、えっと……まだ時間があるよね、もう少しやってくでしょ」


西園寺 : 「そうだねぇ……もう少しやれば、第1階層は攻略できそうだから、もう少しやっていこうか。君たちのレベルも順調にあがっているし!」


若葉 : 「だったら、私もう少しオヤツかってこようっと! ね、梨花ちゃん! オヤツ買いに行こう!」


リン(芹沢梨花) : 「あ……はい!」


西園寺 : 「あ、買いだし行くの? コンビニなら、裏口つかえば五分でいけるよ……裏口はあっちだから。そこ通らないと、コンビニ遠いからね」


芹沢 : 「はい、わかりました!」


若葉 : 「それじゃ、いってきまーす!」



 桐生若葉、芹沢梨花が一時退席する……。



西園寺 : 「女性が居なくなって、急に花がなくなった。ぎぎぎ、さみしいのぅ。さみしぃのぅ」


シグ(桐生和彦) : 「いいじゃないっすか、代わりに女の子と見まごうななみが、ここに残っていますから!」



シェヴァ(七瀬澪:あだ名はななみ) : 「お、女の子じゃねぇって、俺は!」



西園寺 : 「確かにそいつは女の子のようだが、女の子でなければ意味がないのだ……という訳で、七瀬君。実はついてないというオチを隠してたりはしないかね。かね?」


七瀬 : 「無いですよ! というか、そのオチは俺の意志でつけられないじゃないっすか! 簡単に取り外せるようになってないんスから」


西園寺 : 「……確かにそうだったなぁ」


七瀬 : 「もー、あんま言わないでくださいよ。女の子っぽいの、マジで気にしてんですから……それより、カズ君! 今日は随分遅刻してきたようだけどっ、遅刻の原因はなにかな〜?」


桐生(カズ君) : 「なっ……別に何でもっ……」



七瀬 : 「ほぅほぅ、カノジョに隠していた姫騎士アンジェリカが見つかった、と?」



桐生 : 「別に、俺は常に触手ゲーを発見されて喧嘩している訳じゃないッ!」



七瀬 : 「んじゃ、何で彼女さんと喧嘩してきたのかなぁ? な、その傷……彼女と喧嘩して出来た奴だろ?」


桐生 : 「ぐっ……」


七瀬 : 「カズ君の彼女、怒るとヒステリーっぽくなってすぐモノ投げつけるもんね! その傷、彼女がモノ投げて出来た奴だろ?」


桐生 : 「……はぁッ。(嘆息) ななみには敵わないな。ビンゴだ……この前 『他の女と会って、遊んでたでしょう!』 って、喧嘩になってな……諫めていたらガツーン、だ。ったく、カレンの奴、最近妙にカリカリしていて仕方ねぇよ」


七瀬 : 「カズ君の彼女がカルシウム足りてない系なのは前からだって……でも、他のオンナって……何、カズ君浮気してたの?」


西園寺 : 「何と! けしからん。浮気はけしからんぞ! そんな事をするオスがいるから、俺のようにあぶれるオスが出るのだ!」


椎名 : 「そんな男がいようがいまいが、西園寺さんがあぶれるのは仕方ない事に思えますが……」



桐生 : 「はぁッ!? する訳無ぇだろっ……俺は不貞の類は大嫌ぇなんだよ! 恋人同士ってのは信頼関係だろ。恋人でいる以上、俺はカレンを信頼してるし、浮気なんてする訳無ぇんだ……って、言ってンだけどなぁ……」 (はぁ)


七瀬 : 「信頼されてないんだねぇ、カズ君」


桐生 : 「ん……でも、妙なんだよなカレンの奴さ。この前、ここでセッションあっただろ? それで、芹沢からケータイのメルアドを貰ったんだ」


七瀬 : 「梨花ちゃんから? 何で?」


桐生 : 「ん? これから、ゲームで顔をあわせるなら、連絡用に必要だろ、なぁ椎名」


椎名 : 「あぁ……俺も交換したぞ?」


七瀬 : 「えー、ずるい! 俺、交換してない! ずるいずるい!」


椎名 : 「…………お前は携帯電話をもってないだろ」


七瀬 : 「あ、そうだった!」


西園寺 : 「何で持たせてないんだ? 今時携帯もってないなんて、珍しいなぁ」


椎名 : 「こいつ、携帯持たせると、1時間に50通くらいメール送ってくるんで……」



西園寺 : 「プロ自宅警備員にありがちな、時間の無限活用法に全俺が驚愕!」



桐生 : 「ま、ともかく、それで芹沢と連絡取るようになった訳さ。そしたら……知らないオンナと会ってるんじゃないか、って詰め寄られてな」


七瀬 : 「ナンデ? え、何で梨花ちゃんとメールとか、そういうの知ってる訳?」


桐生 : 「……言わないで出かけた俺も悪かったんだけどよ。どういう訳か、この世界樹セッションを嗅ぎつけて、オンナがいるのは聞いてないのどうのこうの言い出したんだよ」


七瀬 : 「へぇ……でも、どうやって嗅ぎつけたんだろ。俺らの中で、カズ君の彼女と直接知り合いの人とかいないだろ」


桐生 : 「面識があるのは若葉だけだが……若葉はカレンと話そうともしねぇからな」


七瀬 : 「だったら、誰から聞いたんだろ……変なの……」


椎名 : 「メール転送されているかもしれんな」


桐生 : 「……何だよ椎名、メール転送って」


椎名 : 「お前の携帯メール、全て女に筒抜けかもしれんぞ」



桐生 : 「は!?」



椎名 : 「……そういう機能があるんだ、お前の携帯には……お前の着信・送信メールすべて、別の携帯に転送する機能がな」


桐生 : 「……嘘だろ?」


椎名 : 「本当だ。お前の行動が筒抜けだというのなら……確認する価値はあるが……」


桐生 : 「何でアイツがそんな真似……俺のメールなら、見たいって言えば何時だって見せてるんだぜ?」


椎名 : 「……さてな。一応、確かめる方法を俺は知っているが……どうする、桐生。確かめてやろうか」


桐生 : 「まさか……アイツがそんな事する訳が……」



若葉 : 「たっだいまー!」



芹沢 : 「お菓子かってきましたよ!」



西園寺 : 「お、おかえり皆。それじゃ、セッションを続けるけど……いいかな?」



七瀬 : 「うん! ……カズ君、淳兄ぃ。皆かえってきたから、とりあえずセッション続けようぜ、な?」


桐生 : 「あ、あぁ……椎名」


椎名 : 「何だ?」


桐生 : 「あいつの事、疑う訳じゃねぇけどよ……一応、俺の履歴を確認してくれないか? 後でで、いいからさ」


椎名 : 「……わかった」



 ……疑念を抱きながら、セッションが続く。

 彼女を信じる。

 桐生和彦の気持ちは紛れもない真実であったが、その真実の前に晒される事実は……。


 残酷な現実である事。

 桐生はセッション終了後に、知る事になるのである。


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