時間の記憶・プロジェクト
時間の記憶・プロジェクト



医療と芸術展 広島大学病院
2005年9月2日から9月30日



時間の記憶・プロジェクト 植物・広島・2005年

6月初旬、私は広島大学病院内の地面4箇所を 1cm掘り下げ、土壌を露出させました。
そして、風、雨、鳥や自然の出来事が植物の 種を運び、そしてそこに植物が自然に生長す るのを40日間、待ちました。そして、そ の種子が芽吹いた後、それら小さな植物を採 集し、この場所に生息していたのと同じ位置 になるように紙の中に漉き込みました。

その場に起こったさまざまな自然の出来事や 時間の経過を紙の中に記録することを私は考えています。

 
2005年9月 山崎由美子

作品タイトル:時間の記憶プロジェクト 植物 広島 2005年
ディメンション:インスタレーション
素材:和紙に透きこまれた植物、ドキュメンタリービデオ映像
作品サイズ:和紙にすきこまれた植物 77cm×103cm 4ピース
作品展示場所:外来棟2階 いこいのひろば



No.1
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それぞれの作品写真をクリックすると拡大します。





時間の記憶・植物・広島 ビデオドキュメンタリーから

 

時間の記憶・プロジェクト 植物・広島・2005年フィールドワーク
地面の変化の様子詳細


●作品概略
地面の表層を取り去った場所に新たに芽生える植物 の成長過程(2ヶ月間)を記録し、採集。その後、その採集した植物をその場に生育していたのと同じ位置関係になるように和紙の中に漉き込みその漉きこまれた植物およびドキュメンタリービデオを展示する。(外来棟二階いこいのひろば)

●フィールドワーク1
時期:6月から2ヶ月間
場所:広島大学病院敷地内の野外緑地帯スペース
6月初旬 野外緑地帯スペース4箇所(60cm×6 0cmの正方形)地面の表層を取り去り、約1cm掘 り下げその場の変化の過程のビデオ撮影をする。
2週間に1度、成長過程を記録する。撮影日程 予定(4回)6月5日、6月15日、6月29日、7月13日
7月中旬、成長した植物を採集する。
採集寸前の植物 の写真撮影、採集作業過程のビデオ撮影をする。
9月1日から9月30日まで(展覧会期間中)は7月中旬に行われた植物採集後の状態を提示する。
●フィールドワーク2
時期:9月1日から9月30日(展覧会会期中1ヶ月間)外来棟入り口前芝生スペース1箇所(60cm×6 0cmの正方形)地面の表層を取り去り、約1cm掘 り下げその場の変化の過程を提示する。

●医療と芸術展 “Medical Treatment and Art”
http://www.hiroshima-u.ac.jp/hosp/Medandart/index.html
期間:2005年9月2日(金)〜9月30日(金)
会場:広島大学病院 医学資料館、霞キャンパス一帯
主 催:「医療と芸術」展実行委員会
広島市南区霞1−2−3広島大学病院総務グループ・近藤 博明
Tel:082−257−5014
E-mail: hkondo@hiroshima-u.ac.jp




広島大学病院企画
「医療と芸術」の出展にむけて

これまで山崎由美子の植物プロジェクトは、自然豊な地方都市で行われその制作発表は美術館や画廊などアートを中心にした空間で開催されてきた。今回、広島大学病院の企画「医療と芸術」展において,病院敷地内で山崎のプロジェクトが実施されるということで非常に興味深く感じている。


だが,ここは芸術が主役の美術館や画廊ではない。病院という医療の現場に、はたしてアーティストの入り込む余地などあるのだろうか。 病院の建物や周辺の環境は,患者と医師,病院関係者にとって最良を考慮して整備されているであろう。そこへ,現代アートと呼ばれる異物を並べることは違和感を生まないか…

改めて病院という場所を考えてみる。

ここは、怪我や病を負った人々が、自分の力だけではどうにもならない身体を委ねるところである。そして、豊富な医療知識と治療経験を持つ医師が患者の治療にあたる,看護師が医師と患者を手助ける、さらに最新医療機器が補助をする。

怪我や病気は早く治る場合もあれば,時間がかかる場合もある。しかし、「治りたい」「生きたい」という意志が、「回復する力」を高めるともいう。患者の生きる意志と、医師の術と、サポート役の看護師のそれぞれの力が作用して、やがて病や怪我は治癒へと向かう。

山崎由美子の「植物プロジェクト」はその一連の相互作用と似ているかもしれない。

病院内の敷地の一部を更地にして、時折水を与えながら自然のままに放置する。するとやがて、地面の中に眠っていた種や,風に吹かれて飛んできた種が発芽する。患者の様子をカルテに記録するように、地面の様子をカメラに収める。薬や治療を施すように水を与える。そして優しい気持ちで生長を見守る。頃合いをみて、生長した植物を和紙にそのままの位置で移動させ漉き込む。和紙に漉き込まれた植物は、自然の美しさがそのまま投影された一枚の「作品」となる。

言ってみれば、土から植物の芽が出て育つのを待ち、状況を記録し、提示するだけのことではあるが、この「あたりまえの現象」、言い換えれば「日常のあたりまえな状態」がどれだけ私たちにとってありがたいことなのか、ということを考えるきっかけになるかもしれない。また、単純に植物そのものや,植物の生えた配置の美しさに魅了され心の癒しに繋がるかもしれない。

観る者の印象によってこのプロジェクトは、はじめてアートとなる。

「生きる力」があふれる医療の現場でこそ見えてくるものがあるかもしれない。新たな発見が会った時、ここは「病院」でも「美術館」でもなく,医療と芸術が呼応する「息づくアート空間」となるだろう。


大阪都市空間植物プロジェクト実行委員
ギャルリOU蔭山リエチ


植物プロジェクト・奈良
植物プロジェクト・士幌
大阪都市空間植物プロジェクト

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更新2005年9月5日