奈良プロジェクト

時間の記憶 植物 奈良(橿原) 2003年

私は奈良県橿原市の地面上に12個の穴を作りました。 風、水、そして鳥や自然の出来事が植物の種を運び、そしてそこに植物が生長するのを待っています。 そして、その種子が芽吹いた後、それら小さな植物を採集し、この場所に生息していたのと同じ位置になるように紙の中に漉き込みます。

私は時間やその場に起こったさまざまな出来事を紙の中に記録することを考えています。

2003年1月 山崎由美子


採集寸前の地面(4月25日)


2003年、冬から春にかけての奈良(橿原)の地面の様子、そしてそこに芽生える植物の生長、変化を1週間ごとに掲載しました。3ヶ月の変化をこのページ上で記録しています。4月25日(3ヶ月目)、発芽し、成長した植物を採集しました。採集した植物は、乾燥し、その後、和紙のなかに漉き込みます。


制作現場(4月21日)

制作現場(奈良県橿原市曲川) 4月21日

時間の記憶 プロジェクト 植物 奈良(橿原) 2003 について

作品 時間の記憶・植物 は、奈良県(橿原市曲川)の地面の一角に自生している植物をすべて抜き去り地面を露出させ、植物が発生しやすい条件を作ります。そこで手を加えることなく自然のままの状態で、放置します。その結果、その場の気候、土地などの条件下で、その地面上に植物が発芽します。そして日々変化し生長した植物を記録し、約2ヶ月後、それらの植物をすべて抜き去り、紙の中に漉きこみます。

奈良県(橿原市曲川)は奈良盆地の南に位置し、周囲には、大和三山(畝傍山、耳成山、香久山)が鼎立しています。制作現場周辺は、田園風景がひろがっています。また、古墳や鎮守の森が点在し、手付かずの自然がそこには残されています。気候は比較的温暖ですが、葛城山系からの強い風が吹き降ろします。それらの条件が今回の作品にどのような影響をあたえるのか期待されます。

(このプロジェクトは、橿原市曲川の高垣家のご協力により実現しました。)


作品「時間の記憶」コンセプト

私が考えている自然とは、
風(空気)、雨(水)、太陽(光)、地面(土)、
そして時間。
これらは、地球上のありとあらゆる生物にとって最も根源的な要素です。
それらがひとつでも欠ける事があれば、
私たち人間の存在はおろか生物、全ての存在は、ありません。
違った角度から考えると、
自然の意志により私たちは、生かされていると、考える事もできます。
このような考え方が、
今の私たちに、必要であると考えています。

しかし、私たちは、自然の意志を感じる事は可能です。
が、それを形として見ることはできません。
しかし、他の媒体に置き換えることによって、
それを表現することは、可能であると、私は考えています。
自然によって創られる構成や、バランス、
そして、その美を私は、この目で見たいのです。
自然の意志を具体化(作品として、提示すること)は、
私、一人だけにとって重要なことではなく、
私たち全てにとって必要であると、 考えています。

つまり、その植物の位置関係、バランスを和紙の中に漉き込み作品として提示することによって、私の考える「自然の意志」を視覚可能なものとし置き換えることが、私の作品制作の重要な目的です。


シリーズ作品「時間の記憶・植物」プロジェクトについて

第一回目の試みは、シリーズ作品 時間の記憶・植物のために、1999年、アーティスト イン レジデンスのために使われていた美濃市の工房の庭を選びました。私は、その庭の一部の表面 を12箇所、2cm掘り下げました。その表面にある存在している植物、その根、小さな石、落ち葉などを全て取り去り、地面 を露出させることによってこれから起こりうる変化にそなえました。約、2ヶ月間、待つことにより、自然によって運ばれてきた種がその場に根付き、小さな植物が芽生えました。そして、私は自然によって創られたその植物の構成や位置関係を変えず、和紙の中に漉き込みました。その後、大阪府堺市、北海道士幌町とこのプロジェクトは続き、今回の奈良県橿原市でシリーズの5回目の試みとなります。

時間の記憶・植物は、紙のなかに漉きこまれた植物の平面作品と、ビデオ映像を組み合わせることによって成立します。紙の中に存在している植物の変化の歴史をビデオ映像上で見てとることができます。

また、それら作品を制作する上で重要な役割を持っているのがこのフィールドワークです。もちろん私の作品にはその場の特徴や、条件、が影響します。作品には、常にその場に、その期間中に起こった出来事が記録されます。