トップ >平成21年12月定例県議会

  平成21年12月定例県議会を振り返って

 


 平成21年12月定例県議会は、12月1日から18日までの18日間の会期をもって招集されました。

 今議会には、雇用の創出と地域経済の活性化を推進するための事業費の追加のほか、県職員の給料および期末勤勉手当の引き下げに伴う給与費の減額など、総額で52億8千6百万円の減額となる一般会計補正予算をはじめ、産業廃棄物税を平成22年度以降も継続するための「福岡県産業廃棄物税条例」や、福岡県暴力団排除条例の制定を契機として、土砂の埋め立てや屋外広告物についての許可基準を定める条例など、合計24件の議案が提案されました。
 開会日の本会議においては、9月定例会で決算特別委員会に付託しておりました平成20年度決算に関する議案について採決し、認定することといたしました。
 また、早期議決を要する給与改定関連の5議案について、所管の常任委員会において審議を行い、12月7日には本会議で可決いたしました。

 本格的な論戦は12月7日の、我が自民党県議団の代表質問から始まりました。 
 11月27日に新政権による政治ショーじみた事業仕分けが終わりました。ノーベル賞学者の益川教授は、「仕分け人はまるで文化革命時代の中国の紅衛兵を思わせた」と評し、同じくノーベル賞学者の野依理化学研究所長は、「仕分け人は歴史の法廷に立つ覚悟があるのか」と言い切っています。この、演出を凝らした事業仕分けが最終決定でないとはいえ、来年度の国の予算案は、これまでにない大幅な見直し、変容が避けられそうにありません。大多数の県民は、このようなことが福岡県政の進展に大きな障害にならないか、大変心配しております。自民党は、現時点での国の動向および本県の予算編成への影響について知事に質しました。麻生知事は、「我々にとって非常に重大なことが多々ある。地方交付税の確保、自動車関係諸税の暫定税率の存廃あるいは廃止された場合の措置、直轄事業の維持管理負担金の廃止、子ども手当、高校授業料無償化、これらが地方にとって過大な負担となることを避けるよう、適宜国に対し申し入れている。県の予算編成は、年を越せば本格化するが、国の予算の内容、制度の見直し状況を見極め、その内容を適切に反映、編成していく。」との考えを示しました。
 
 昨年秋以来の世界的な経済危機の影響を受け、本年度の国税は30兆円台に落ち込むことは必至と見込まれます。必然的に平成22年度当初の税収見積もりの発射台を押し下げることとなり、危機的な状況となっています。本県においても、来年度の県税収入が予算編成の極めて大きな制約になることは明らかであります。12月補正予算では、県税の補正は含まれておりませんが、引き続く厳しい本県経済・景気情勢を踏まえ、現時点で本年度の税収の動向をどう見込んでいるのか、減収の補填はどうするのか、自民党は麻生知事に答弁を求めました。これに対し知事は、「昨年秋以来の急激な景気悪化に伴い、ほとんどの税目で減収となっている。県税全体の10月末の調定実績では、前年比90.1%で推移している。今後とも厳しい状況が続くと考えざるを得ず、県税収入は当初予算を300億円程度下回ると見込んでいる。今後、地方交付税の確保、減収補填債の拡充などを国に求めるとともに、一層の経費節減も平行して行わなければならない。」との答弁を行いました。

 次に自民党は、民主党が政権公約で掲げ、最近では麻生知事もよく使っている「地域主権」という不可解な言葉について知事の見識を質しました。我が国のような単一の国民国家では、主権はネーションとしての国家・国民にのみ淵源し、単一不可分であるというのが通説であります。連邦国家へ転換しない限り、単一の国民国家において、地域に主権を譲り渡すことなどできないのではないでしょうか。仮に、地域主権が実現されれば、地域間の格差や対立が引き起こされ、基地問題や原子力施設の立地問題など国家存続に関わる重大問題が解決困難になります。民主党政権は、子ども手当てや高校無償化、農家の戸別補償制度など、まさに「大きな政府」を志向しております。そんな政権運営では、「地域主権」も眉唾めいて聞こえます。自民党は、これらの点について指摘し、麻生知事に見解を明らかにするよう求めました。知事は、「地域主権は、地方分権を非常に広く深く進めていくという意図を明確にした言葉であると理解しており、地域主権という旗の下で地方分権が進むことを強く期待して、この言葉を使っている。国と地方との間では、当然大きな役割分担があり、安全保障や外交、経済の基礎的枠組みづくり、国民の基本的な生活の保障、教育のあり方など、何でもかんでも全部地方に完全に任せるということではない。地方・地域の問題については、極めて大きな自主決定権を地方に持っていくということを言っていると理解している。我々は、新政権と積極的に色々な政策協議をしたい。新政権も、国と地方の協議を重視しており、協議の場の法制化を進めるための共同作業をすることで合意した。」との答弁を行いました。

 民主党は「官僚依存政治からの脱却」を一枚看板のごとく標榜して政権を奪取しました。しかし、新政権となって3ヶ月の間に、官邸、行政刷新会議、国家戦略室に配属された役人は、財務官僚の数が格段に増加しております。先般の「事業仕分け」における一方的裁断も、財務省が裏で実質的に取り仕切っていたことは明白であり、結局のところ新政権は「財務省依存の脱官僚」を目指しているわけです。人民裁判、公開処刑などと非難された事業仕分けでは、「地域科学技術振興・産学官連携事業」が計画年度中途で「廃止」の仕分けを受け、我が県の半導体やがんワクチンの開発研究事業に重大な支障が生じる恐れが生じております。将来への洞察を欠いた、理不尽な廃止・予算削減には断固として対応すべきであります。自民党は、これらの問題に対する知事の見解を質しました。麻生知事は、「事業仕分けの結果で我々に関連するものは、地方交付税問題、農道整備事業、下水道事業、医師確保や周産期対策、地域科学技術振興・産学官連携事業などであり、今後の政府の予算編成に向けて、意見表明や必要性の訴えなど必要な行動をとる。事業仕分けの基本的な目標は、予算の無駄の排除、事業主体の見直しなどであり、このようなやり方は今までなかった。分野によっては一定の効果は挙げていると考えているが、何と言っても検証時間が短い。また、科学技術政策など日本の将来にしっかり洞察を持った人が仕分け人となるべきだが、そのようなことが欠けていた。さらに、地方の実情・制度についての理解不足もあった。このような点は、予算編成において是正されるべきである。」との見解を明らかにしました。

 次に、自民党は、子育て支援の一環として、保育所における看護師配置の拡充について取り上げました。保育所で子どもが熱を出した場合など、勤務中にもかかわらず保護者が呼び戻されるケースが多く、保育所に子どもを預けて働いている保護者の皆さんの悩みの種となっています。平成10年の旧厚生省通知によって、乳児6人以上を預かる保育所が看護師を配置した場合は一人に限り保育士定数にカウントし、国の負担金の対象とすることとなりました。しかし、その単価は保育士の単価が用いられ、差額は保育所側の負担となります。また、乳児5人以下の保育所は、たとえ看護師を配置しても負担金の対象とはなりません。自民党は、看護師を配置した保育所は乳児の数に関わらずすべて負担金の対象とすること、また、その単価は看護師単価とすることを、直ちに国に対して要望するよう知事に求めました。これに対し、麻生知事は、「保育所の問題は、非常に厳しい国の基準に縛られている。これを地方主導型に切り替えることが大事。現在、国による義務付け・枠付けを思い切って縮小することを求めており、看護師の配置についても、権限委譲、財源委譲を実現する中で検討していきたい。」との見解を示しました。

 新政権は、自民党政権下における経済対策を盛り込んだ平成21年度補正予算の執行を強行に停止するなど、景気回復の取り組みに水を差すような動きをしております。急激な円の高騰は、過日よりの財務大臣の不用意な発言が原因とも見られ、景気のデフレ基調はまさに「民主デフレ」であります。子ども手当てや高校無償化などの家計への直接給付は貯蓄に回る可能性が極めて高く、新政権の経済政策は、経済全体を上向かせていく明確な成長戦略にはまったく成り得ておりません。建設部門の中小企業の倒産件数は増加しており、公共工事削減の悪影響を感じさせます。今、中小企業が直面している最大の経営課題は「仕事の確保」であるのにもかかわらず、仕事を減らし、企業活動を停滞させているのが民主党の経済政策であります。このような中で、中小企業の仕事の確保に向けて、県としてどのように支援していくのか、また、資金需要の高まる季節を迎え、中小企業の資金面での支援についてどのように取り組む考えであるのか、自民党は麻生知事に質しました。知事は、「県の公共事業の前倒し発注、補正予算による下半期の事業量確保、中小企業に配慮した分離・分割発注、テレビ・パソコンなどの地域中小企業への優先発注に取り組んでいる。さらに、地域の商品券発行支援、デザイン刷新による売れる商品づくり、インターネット通販による国内外への販路拡大など、中小企業の売り上げ向上のための総合的対策を推進していく。金融支援としては、今年度は制度融資全体で過去最大の4,700億円の枠を確保した。年末の資金需要に対しては、売り上げ減少の中小企業を支援する緊急経済対策資金を当初の2倍の2,000億円に拡大する。さらに、返済期限の延長を認め、資金の確保と返済負担の軽減、両面で万全の対策を講じる。」との方針を示しました。

 次に、自民党は、農業問題を取り上げました。新政権は、来年度から麦、大豆、畜産などに先駆けて、米だけを前倒しして戸別所得補償制度のモデル事業を実施する予定のようです。これは、民主党が総選挙で公約していたものの一つであり、自民党としては最も厳しく批判してきた政策です。この政策は、「零細な農業構造の温存」であり、典型的なバラマキ政策です。現在、本県の農業就業人口の半分以上は65歳以上となっており、このままさらに高齢化が進めば、誰が将来の水田農業を担っていくのでしょうか。民主党の言う所得補償政策は、農業崩壊を一層進めることになっても、課題の解決にはつながりません。
麻生知事は、9月議会の自民党代表質問に答え、「販売農家すべてが対象となる戸別所得補償制度は、集落営農組織育成に大きな支障が出る」との見解を示しています。自民党は、麻生知事に対し、この政策に対する認識を再度確認するとともに、水田農業の振興に欠かせぬ、担い手の育成についての取り組みを質しました。知事は、「制度の対象者が水稲共済加入者に変わってきているが、水田農業の将来を考えた場合、集落営農組織の育成がうまく進むのかといった点に懸念がある。本県では、各組織の課題と発展方向を示した指針に基づき、人材育成と経営改善を進め、法人組織の育成にも取り組んでいく。」との考えを示しました。
 本県では、平成4年から4期にわたり「高収益型園芸産地育成事業」を実施し、施設・機械の整備を通じて産地育成を進めてきました。この事業は、農家の皆様から高い評価を受け、園芸農業の振興に大きく貢献してまいりました。しかし、イチゴやナスなどの主要産地においては生産者の高齢化が進みつつあり、本県園芸農業の生産力を維持・強化し、競争力を確保するためには、平成22年度からの第5期高収益事業の中で、将来に目を向けた積極的な展開が重要であります。自民党は、知事に対し、高収益事業の新たな展開についての抱負を示すよう求めました。麻生知事は、「これまでも収益が高い園芸農業への転換を進めてきており、規模拡大に向けても、認定農業者個人を対象とした支援も行ってきた。今後も、高齢化の進行や価格の低迷に適切に対応できるよう、支援の内容も見直しながら、しっかりとした園芸農業の展開を図っていく。」との考えを明らかにしました。
 

     
  フェンロー型ハウス(トマト)   H鋼ハウス(小松菜)  
     
  鉄骨補強ハウス(青梗菜)   パイプハウス(ねぎ)  


 次に、教育問題であります。新政権が、学力テストの趣旨や導入の経緯、成果を十分検証することなく、抽出調査に切り替えたのは、誠に遺憾であります。先の決算特別委員会においても、我が自民党県議団はこの件について集中的に質問を行ったところであり、改めて森山教育長に対し、悉皆調査の必要性と実施に向けた決意を質しました。教育長は、「全国学力テストの意義は、各学校が教育成果を検証し、授業改善に取り組む努力を促すことにある。このため、悉皆での定点観測が不可欠であり、今後とも、各市町村に働きかけながら、悉皆による学力調査が継続できるよう取り組む。」との答弁を行いました。
 新政権は、平成22年度から教員免許制度の抜本的見直しに着手するとして、教員免許を取るためには教職大学院での2年間の修了を要件とし、教員養成課程を6年に延長すること、導入されたばかりの免許更新制度を廃止し、採用後10年程度の教員は1年間の教職大学院で研修を受けることにしようとしております。しかし、これは極めて問題が大きいと言わざるを得ません。教職大学院は整備されておらず、養成課程が伸びれば伸びるほど、金銭的な負担の増加も伴い、教員を目指す意欲が削がれてしまいます。教員免許更新制度の廃止にしても、教職員組合等の要求を受け入れ、学校現場で中心的な活躍が期待される中堅教員の時期に1年間も学校現場を離れさせることの効果には疑問を抱かざるを得ません。自民党は、これらの問題に対してどのような評価をしているのか、教員養成はどうあるべきなのか、森山教育長の見解を質しました。教育長は、「子供に対する教育的愛情、教育公務員としての良識と使命感といった基本的資質があれば、高度な学歴がなくても立派な教員となり得る。教員養成課程の高学歴化は、教職大学院の整備、志望者の経済的負担、教育実習の受け入れ体制などの問題がある。また、免許更新制が廃止されることは遺憾。今後は、指導力不足教員の認定の厳格化や立ち直り支援の充実強化に努める必要がある。」との見解を示しました。

 12月9日〜11日の一般質問に続き、14日からは各常任委員会での議案審査が行われました。12月18日の本会議では、知事より人事委員会委員および公害審査委員会委員の人事案件が追加提案された後、各常任委員長からの審議状況報告が行われ、採決の結果、全ての議案全について可決して、12月定例県議会は閉会いたしました。

 「鳩山内閣は三つのK(混迷)を抱えている」などとマスコミから揶揄されるように、普天間基地移転問題では日本の安全保障を置き去りにして迷走を続け、鳩山首相の偽装献金問題は極めて不透明、我が国経済はデフレが進行して深刻な状況となっております。
 さらに、対米関係に細心の注意を払うべきこの時期に、民主党の小沢幹事長は600名の大訪問団を引き連れて訪中。そのうえ、鳩山首相は、政治的中立性と公正性を保持し、あらゆる人や国に対して誠心誠意対応してこられた天皇陛下の会見ルールを無視して、中国国家副主席との会見を行うよう求めました。これは、天皇陛下を政治的に利用する行為にほかなりません。さらに、小沢幹事長は、懸念を表明した宮内庁長官に辞任を求めるが如き発言を行いました。もし、このようなことがまかり通れば、正しいと信じる意見を直言する公務員など一人もいなくなってしまうでしょう。
 このような混迷を続ける中で、師走半ばを過ぎたというのに、新年度の税制、地方財政対策、国家予算の姿がまったく見えません。政府は予算と税の主導権を小沢幹事長ら民主党側に握られており、懸案の先送りを続けております。
 新政権は「地域主権は1丁目1番地」と言いますが、この段階になっても地方交付税の扱いも見えず、暫定税率がどうなるのかも判らず、地方団体はどうやって新年度の予算を編成すればよいのでしょうか。
 我が自民党は、総選挙に敗れ下野いたしましたが、国の将来を憂い、国民の皆様の生活を思う心に変わるところはございません。今後とも、日本の未来のために、新政権に対し堂々と論戦を挑む考えであります。
 私、藤田陽三も、筑紫野市民の皆様に選出された県議会議員として、微力ながら粉骨砕身頑張って参ります。どうか、これからも藤田陽三に温かいご支援、ご鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

 トップ    プロフィール    ニュース    七つの政策    トピックス    活動報告    後援会    リンク