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  平成21年9月定例県議会を振り返って

 


 去る7月末に発生した中国・九州北部豪雨では、県内各地に災害が発生し、10名の方の尊い命が失われました。また、県下全域において、家屋や事業所、農地、林地、道路、河川などが甚大な被害を被りました。冒頭まず、今回の豪雨でお亡くなりになられた方々に対し、心から哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。

 平成21年9月定例県議会は、9月18日から10月13日までの26日間の会期をもって招集されました。
開会日には、麻生知事から、7月豪雨に伴う災害復旧対策に要する経費や麻生内閣において編成した国の補正予算を活用し、雇用の創出と地域経済の活性化を進めるための経費など、過去最大規模となる総額717億6千万円余の平成20年度一般会計補正予算が提案されました。また、今議会には、暴力団に利益提供した事業者へ懲役などの刑事罰を課すなど、全国でも初めてとなる内容を盛り込んだ「福岡県暴力団排除条例」が提案されるなど、合計19件の議案が提案されました。

 本格的な論戦は9月29日の、我が自民党県議団の代表質問から始まりました。 
 8月30日に実施された総選挙の結果、我が自由民主党は有権者の皆様からの政権与党としての信任を得られず、下野することとなりました。ご支持いただいた多くの県民の皆様に対し、お詫びを申し上げます。
 これからは福岡県政はもとより地方の政治・行政のあり方も、新政権の下で再検討を余儀なくされるものと予想されます。その際には、新政権の政治手法を冷静に見極め、これまで培ってきた幅広い行政分野の基盤や実績が決して後退することのないよう、新政権に対して毅然とした態度を貫くことが肝要であります。このような考えの下、自民党県議団は全国知事会長としての立場にもある麻生知事に対し、今回の政権交代をどのように評価しているのか、連立政権の政治理念をどう受け止め、今後新政権に対してどのような政治姿勢で臨むのか、政治家としての率直な見解を質しました。これに対し麻生知事は、「東京一極集中や高齢化、人口減少が同時に進み、多くの地方が疲弊し苦しんでいる。また、将来の社会保障に対する不安、長期にわたる経済の停滞から、閉塞感が拡大していた。今回の選挙は、このような状況を打開し、新しい、将来に希望の持てる社会を作ってもらいたいという国民の気持ちが投票行動に現れたと理解している。民主党は、国民生活を第一とし、国民主権の貫徹という言葉で表現し、地域主権という非常に強い言葉で分権政策を実行しようとしている。さらに、官僚主導型の政治・行政を打開し、政治主導で政策を実行していこうとしている。これらは理念としては立派であるが、どういうふうに実行できるかが問題。新政権に特に期待しているのは、地域主権という考え方の下で本当の地方分権を実現することである。」との考えを明らかにしました。

 8月末に公表された7月の完全失業率は5.7%と、過去最悪の水準でした。麻生政権時代に連続して実施された経済対策の効果によって、我が国の景気は底入れしたと見られていますが、決して楽観できる状況ではありません。しかし、新政権は明確な経済成長戦略を明らかにしないままであります。不備を指摘されてマニフェストに追加した経済政策も、子供手当等のバラマキに過ぎません。自民党県議団は、このような新政権の当面の経済政策をどのように評価しているのか、麻生知事に質しました。知事は、「雇用状況はまだ悪化を続けており、持ち直しも中小企業までは波及していない。景気・雇用対策は、一刻も猶予できない。新政権においては、当面の景気が二番底に落ちるようことにならないように、細心の景気対策を実行するよう強く期待している。」との考えを表明しました。

 昨年、当時野党であった民主党の政局至上主義とも言うべき無責任な対応と駆け引きの中で、4月1日からの1ヶ月間、揮発油税や軽油引取税などの税率が上下し、国民生活や石油業界、自動車販売業界は言うに及ばず、地方財政にも大変な混乱と迷惑を及ぼしたことは記憶に新しいところであります。にもかかわらず、鳩山政権は、数を頼みにあの暴挙を繰り返そうとしています。当時、麻生知事は、全国知事会長として暫定税率の維持に努められたところです。自民党県議団は、今回、暫定税率が廃止された場合、本県でどれだけの減収となるのか、また、道路整備などの県事業全体にどのような影響があるのか、知事に具体的な答弁を求めました。麻生知事は、「新政権は、暫定税率を廃止すると言っているが、暫定税率にも国税部分と地方税部分がある。国が一方的に決めてもらっては困る。もし、廃止された場合は148億円の減収となる。これは、本県の財政に深刻な影響を招き、道路事業を含む様々な財政需要に的確に対応できなくなることが想定される。暫定税率維持の立場から、必要な意見を言っていきたい。」との答弁を行いました。

 新政権は、高速道路無料化を進めるとしていますが、これは、料金収入で賄ってきた借入金返済を税金で支払うということであり、高速道路をあまり利用しない者にとっては公平負担の原則からも認めがたいものであります。さらに、乗客を奪われるJR、バス、フェリーなどの公共交通機関への経営支援も必要となります。自民党県議団は、高速道路無料化に対する評価と県民生活等への懸念について麻生知事の見解を質しました。知事は、「高速道路無料化は、受益者負担原則から税金負担への転換であり、十分な点検と深い分析が必要と考える。現在は、具体的な無料化の形が明らかではないが、無料化の効果としては、利用者の負担軽減と地域経済の活性化が考えられる。しかし、これと平行して、高速道路の建設、維持管理のための財源をどうするのかという問題や、交通体系全般のバランスが変わることによる物流への影響、環境への影響などを総合的に踏まえて検討していくべきと考える。」との答弁を行いました。
 

   
  東九州道(苅田町新津トンネル) 東九州道(上毛町安雲工事)  


 次に、自民党県議団は、新政権による補正予算の凍結問題について取り上げました。今議会には、過去最大規模となる補正予算が提案されており、災害復旧対策と並ぶ大きな柱は景気・雇用対策であります。しかも9月補正予算の半分以上にあたる366億円は、国の交付金を財源とする基金積立金であります。
新政権は、自分たちの公約として掲げた「子供手当」などに必要な財源を生み出すために、国会の判断として可決された補正予算を凍結しようとしています。もし、地方に関係する予算が凍結の対象とされた場合には、地方が計画している防災対策、福祉・子育て支援、各種の公共事業などに甚大な悪影響が発生いたします。自民党県議団は、麻生知事に対し、この問題に対する明確な態度表明を求めました。知事は、「6月議会で議決を受けた補正予算はもちろん、今議会に提案している補正予算についても、議決の上は着実に実行・執行してまいる。県の補正予算がきちんと実行できるためには、凍結の対象外とされる必要があり、これについては、県としても、また知事会としても、国に対し強く求めていく。」との方針を明らかにいたしました。

 7月末の中国・九州北部豪雨では、土砂災害による人的被害が甚大であり、本県の10名の犠牲者のうち6名が土砂災害によってお亡くなりになられたのであります。ところが、新聞報道によれば、福岡県内における土砂災害の危険箇所13,150に対し、土砂災害警戒区域の指定は、わずか344箇所にとどまり、指定率は2.6%とのことでありました。このような状態では、市町村によるハザードマップの作成・活用が進まないのも当然であります。自民党県議団は、一体、なぜ本県では土砂災害警戒区域の指定が進まないのか、河川の浸水想定区域図の公表状況と併せて麻生知事に質しました。知事からは、「土砂災害警戒区域の指定のためには、全箇所について現地調査を要するなど作業量は膨大なものになる。また、土地のイメージや地価への影響の懸念から、関係市町村や住民の理解を得にくいケースもあって、指定に時間を要している。今後は、基礎調査方法の改善による所要時間の短縮を図るとともに、関係市町村との連携強化により指定の促進に努めて参る。浸水想定区域図の公表の対象河川は39であり、すでに32河川を公表している。残り7河川も今年度中に公表を行う。」との答弁がありました。
 

   
  糟屋郡篠栗町 一の滝川 土石流被災状況 田川郡福智町 弁城川 土石流被災状況  
   
  筑紫郡那珂川町 2級河川 那珂川 糟屋郡篠栗町 2級河川 多々良川  


 次に、自民党県議団は、医療・福祉問題を取り上げました。
 長寿医療制度(後期高齢者医療制度)は、高齢者が国民健康保険などに加入したまま医療サービスを受ける従来の制度では、運用に破綻を見せ始めたことから、約10年に及ぶ検討・議論を経て、昨年4月から導入されているものであります。制度発足から1年半が経ち、この制度への理解が深まり、大変落ち着いた状況となっております。日本医療政策機構が行った世論調査でも、この制度を維持すべきとする人が高齢者の6割にのぼっております。ところが、民主党の長妻厚生労働大臣は、就任早々の記者会見で、いとも簡単にこの長寿医療制度の廃止を明言しました。この制度を単に廃止するだけでは、75%の家庭で保険料が上昇し、地域間格差も2倍以内から5倍に逆戻りし、市町村の国民健康保険制度は破綻いたします。長寿医療制度の廃止について、全国で反発の声が挙がり、日本医師会も「廃止すれば、現場が混乱するだけ」との立場であります。自民党県議団は、麻生知事に対し、長寿医療制度に対する評価と制度廃止に対する率直な見解を示すよう求めました。知事は、「高齢化が非常に速い速度で進行し、高齢者の医療費が膨らんでいる。これを公平に分担し、国民健康保険制度を将来にわたって維持していくために長寿医療制度が創られた。制度発足時には多くの不備があったが、その後、高齢者の保険料負担の軽減、激変緩和措置等をとり、徐々に定着・安定しつつあると認識している。この制度を廃止し、新しい制度を作る場合には、高齢者と現役世代の負担の明確化、高齢者間の負担の公平性、地域保険とする場合には、その経営単位・主体をどうするのかといった課題を整合的、合理的に考えていく必要がある。」との答弁を行いました。
 障害者自立支援法が制定されて3年半が経過しようとしておりますが、長妻厚生労働大臣は、これについても廃止を明言しており、混乱を招こうとしております。この制度は、障害の種別にかかわらず、障害者の皆さんが必要とするサービスを身近な市町村が責任を持って一元的に提供することとなるなど、従来の制度を大きく変えるものでありました。確かに、施設等における報酬が減少するなどの問題もありましたが、本年4月からは報酬の改定を行うなどの改善が図られているところです。自民党県議団は、麻生知事の障害者自立支援法に対する評価と制度の廃止に対する所見を質しました。これに対し知事は、「障害者自立支援法の考え方は、福岡県が目指している、相互に助け合いながら、それぞれの地域で安心して暮らしていこうという、共生社会という目標と一致する。ただ一方で、利用者負担のあり方や障害の認定に当たっての障害特性の反映などの課題もあり、自立支援法の問題はこのような点も考え合わせる必要がある。」との考えを示しました。

 次に、農林水産問題であります。
 先の総選挙において、民主党は、農家への戸別所得補償制度を公約に掲げ、農政分野でもバラマキ政策を展開しました。あらゆる面で、その効果や実現性に疑問を感じざるを得ません。現在、水田経営所得安定対策は、認定農業者や法人化した集落営農組織など、将来の担い手育成を考えた誘導政策として実施しています。然るに、民主党の戸別所得補償制度は、現在の農業構造をそのまま温存するだけのものであり、将来の農業を支える足腰の強い水田農業の確立は実現できません。さらに、農産物に加え、畜産・酪農業、漁業まで直接補償の範囲を拡大するなどとしており、各地のJAや自治体の作業量が膨大なものになることを考えると、到底実現可能なものとは思えません。日々、農作業に携わっている農家の方々からは、政策が変われば現場が混乱し農業が破綻してしまうとの不安の声が寄せられています。農家の皆さんに、これ以上の迷惑をかけることは、絶対に避けるべきであります。福岡県は、ゆるぎない、ぶれのない県農業行政方針を一日も早く示し、これまでの方針に、いささかの変更もないことを明らかにすべきであります。自民党県議団は、新政権が提唱している戸別所得補償制度に対する知事の見解を質しました。麻生知事は、「高齢化の進行に伴い、今後、農作業を実際に行う農業者が急速に減少する。永続性のある農作業の担い手の育成が必要であり、集落営農組織の法人化や農作業の受託制の普及に取り組んでいる。戸別所得補償制度の詳細は不明であるが、仮に販売農家すべてが対象となってしまうと、集落営農組織の育成に逆の効果が働き、大きな支障となる懸念がある。永続性のある担い手に農作業の集約化が促進されるような仕組みになることが必要と考えている。」との見解を明らかにいたしました。

 教育問題について、自民党県議団は、選挙公約に基づく新政権の教育方針と本県教育行政について森山教育長に質しました。民主党の教育施策では、現在の学習指導要領の法的拘束力を外すとともに、「学校理事会」なるものを設置して、学習内容や学校運営を現場の判断でできるようにするとしています。万が一、このようなことが行われると、校長・教頭をないがしろにし、教職員組合の主張を教育現場に持ち込み、国民感情と大きな隔たりのある教育が子供たちに押し付けられる恐れがあります。また、やっと軌道に乗り始めた全国学力調査が学校の序列化につながるとして、大幅に縮小されようとしています。さらには、教員として必要な資質を保持するための教員免許更新制度の見直しも取り沙汰されています。これらに惑わされることなく、先人たちが築いてきた福岡県の教育正常化路線を、信念を持って推進していかなければなりません。森山教育長は、今後の本県の教育行政を進めていく上で、民主党の変更教育方針をどのように評価しているのか、明確な答弁を求めました。これに対し教育長は、「教育制度の変革は、国家百年の計に立ち、教育の中立性を堅持しながら、次世代の国民に責任の持てるものであるべきと考える。今回のマニフェストに掲げられた教育施策については、いずれも教育現場に大きな影響を与える可能性があり、今後の動向を踏まえ、必要に応じ国に対し働きかけを行っていく。」との答弁を行いました。

 暴力団対策について、我が自民党県議団は2月議会において、暴力団排除のための条例制定を提唱いたしました。その指摘を受けて半年足らずの今議会に、暴力団排除に関する条例案が提出されたのは早い対応であり、一定の評価をいたすものであります。この条例案の特色として、資金提供者や受け取った暴力団への罰則、学校や児童福祉施設等から一定内の区域における暴力団事務所の新設禁止など、全国初の試みが盛り込まれております。しかし、憲法や法律の規制により、地方が独自に条例で取り締まることに限界があるためか、反社会的集団である暴力団組織を直接的に取り締まる罰則が見受けられないようにも感じます。自民党県議団は、この条例が施行された場合、県として具体的にどのような対応を取るのか、麻生知事に質しました。知事は、「本県には指定暴力団がたくさんあり、発砲事件も絶えない。なんとしても、このような状況を変えなければならないと考え、全国に類例を見ない条例を今議会に提出した。この条例の施行を機に、警察による一層強力な摘発・取締りを進める。また、公共事業をはじめ県事業からの暴力団排除の徹底、警察との連携強化の下に、行政・事業者・住民が一体となって暴力団排除の取り組みを拡大し、暴力団のない福岡県を目指していく。」との決意を示しました。

 代表質問最終日の9月30日には、平成21年度予算及び同年度第1次補正予算によって地方自治体の進めてきた事業について、財源問題で執行に支障が生ずることの無いよう強く求める「地方自治の継続性を守るための予算執行を求める意見書」が、我が自民党県議団をはじめ多数の賛成をもって決議され、県議会議長名で衆参両院議長、内閣総理大臣、総務・財務両大臣に提出したところであります。
 10月1日から3日間の一般質問に続き、10月6日には各常任委員会において議案の審査等が行われました。
 10月13日には最終日を迎え、19件の議案すべてを可決いたしました。また、この日、知事より追加提出された平成20年度決算関係議案20件を追加上程し、これを審査するための決算特別委員会を設置して、9月定例議会は閉会いたしました。

 我が自由民主党は、昭和35年の保守合同以来、ほとんど一貫して政権の重責を担い、国家の安寧保持と日本国民の福祉の向上に貢献してまいりました。誠に残念ながら、総選挙の結果、下野することとなりましたが、私、藤田陽三は、自由民主党福岡県連幹事長として、粉骨砕身、自由民主党の再生に努め、この困難な事態に全力で立ち向かっていく覚悟でございます。そして、必ず、国民の皆様の明るく、豊かで、安定した生活を実現してまいります。どうか、これからも自由民主党と藤田陽三に温かいご支援、ご鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

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