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  平成20年5月定例県議会を振り返って

 


 平成20年5月定例県議会は、5月26日から6月11日までの17日間の会期をもって招集されました。例年は6月定例会として招集されるのですが、今年は6月中旬にブラジル移民百周年の記念式典が開催されるため、5月中の招集となったものであります。
 開会日の本会議冒頭、5月に相次いで発生したミャンマーのサイクロン襲来と中国・四川省の大震災により被災された皆様に対し、議長より哀悼とお見舞いの言葉が述べられました。その後、後藤元秀副議長より提出されておりました辞職願いを採決によって許可した後、選挙を行い、吉村敏男議員(民主・県政クラブ)を副議長に選出いたしました。
 

     
         


今議会には、地方公共団体に対する寄附金について個人県民税の寄附金税制を拡充する、いわゆる「ふるさと納税」などの措置を盛り込んだ県税条例の改正や、来年1月4日からICチップを埋め込んだ運転免許証を交付することに伴い、運転免許交付手数料等を改定するための条例案など、8件の議案が提案されました。

 本格的な論戦は5月30日の、我が自民党県議団の代表質問から始まりました。道路特定財源をめぐる問題については、本来は年度末までに結論を出すべきである租税特別措置法や地方税法、さらには地方交付税法などの予算関連法案が、参議院において1ヶ月以上も審議すら行われないままに新年度を迎えることとなり、国・地方ともに巨額の歳入欠陥が生じる危機に直面いたしました。野党、特に民主党中央は、国民生活と地方財政に不安をもたらし、その余勢を駆って国政を解散に追いこもうとした、いわゆる政局至上主義とでもいうべき対応に終始しました。その無責任な態度は、改めて厳しく批判されるべきものであります。4月1日から1ヶ月という短い期間に、ガソリン税や軽油引取税、自動車税の税率が上下し、県民はもとより石油業界、自動車販売業界等にも大変な混乱と迷惑を及ぼす結果となってしまいました。自民党は、麻生知事が全国知事会長として暫定税率の維持に向けて真摯に取り組んだことを高く評価しつつ、今回の野党の対応についての見解を質しました。麻生知事は、「暫定税率の廃止は、地方の道路整備や地方財政に大きな影響をもたらすため、民主党を始めとする野党に対し、法案の年度内成立の必要性を訴えてきた。それにもかかわらず、参議院では関連法案の審議すら行われず、両院議長斡旋に基づく与野党協議も進展しないまま暫定税率が失効したことは誠に遺憾。安定した行政執行と国政の執行上、予算関連法案は年度内に結論を出すというルールを確立することにより、国会はその役割を果たすよう強く求める。」との見解を示しました。 
 また、自民党は、暫定税率が一ヶ月間失効したことにより、本県ではどの程度の県税や譲与税が減少になったのか、知事はこの歳入欠陥の補てん措置についてどのような見通しを持っているのかについて質しました。これに対し麻生知事は、「平成20年度予算額を基礎に過去の実績で試算すると、約14億円の減収が見込まれる。これに対しては、国の責任において適切な財源措置を講じるとの閣議決定が行われたが、地方としては、地方税に加え、地方道路整備臨時交付金への影響分も含めて、起債ではなく交付金、いわゆる「真水」で対応すべきことを、福田総理を始め政府に対して案を提示している。」との答弁を行いました。
 福田総理は、道路特定財源を平成21年度からは一般財源化する方針を表明し、閣議決定も行っています。一般財源化ということは、極めて重大な制度改革であり、軽油引取税などの課税根拠も改めて問われることとなります。自民党は、知事は課税根拠の変更についてどのような見解を持っているのか、また、地方分権の観点から現在の道路関連税制を大胆に再構築すべきではないか、麻生知事の考えを質しました。知事は、「一般財源化は、環境対策などへ使途を広げていく考え方と、使途を限定しない完全一般財源化とがある。課税根拠については、使途のあり方と併せて、これからさらに広く深い議論を行っていく必要がある。道路関連税制の見直しに当たっては、危機的な地方の財政状況や、地方では道路特定財源だけでは足りず、一般財源をつぎ込んで道路整備を行っている状況を踏まえ、これまで以上の額を「地方枠」として確保することが不可欠である。」との考えを示しました。
 

       
  工事がストップしている筑紫野古賀線   渋滞する門松交差点   工事がストップしている筑紫野古賀線  

 

       
  一般国道200号 片島交差点 工事中断写真  


 次に、自民党県議団は、我が国の保険・福祉・医療制度の中で、最も深刻な問題となっている長寿医療制度、いわゆる後期高齢者医療制度について質しました。この制度をめぐっては、未だに厳しい批判や苦情が私たちのところに寄せられているのは事実でありますが、参議院においては、6月6日に民主党など野党4党が、なんらの対案も示さないまま廃止法案を可決し、高齢者の皆様に新たな不安と心配を増幅させる結果となっています。誠に遺憾なことであります。
 自民党県議団は、この制度が75歳以上の高齢者と65歳から74歳の一定の障害のある方達を対象とした独立した制度として創設された理由について、県民にわかりやすく説明するよう知事に求めました。麻生知事は、「急速な高齢化により医療費の増大が見込まれる。この中で、国民健康保険が根幹を為す国民皆保険制度を維持するためには、疾病にかかる率の高い高齢者の医療費について、国民全体で支えあう仕組みが必要。このため、独立の医療制度を創設して、高齢者にも保険料の一部を負担してもらい、支え手である現役世代との負担の明確化・公平化を図ったもの。」との説明を行いました。また、制度についてのPRや説明が十分に行われていたのか、特に、大事な年金から保険料が引き去られるということについて、納得のいく説明をすべきではないかと自民党が質したのに対し、知事は「県では、全戸配布広報誌等により広報に努めるとともに、制度の実施主体である広域連合に対し、きめ細かな周知を行うよう助言・指導を行ってきた。しかし、保険料負担の激変緩和策の導入や給付等の内容を定める政省令の制定が遅れ、周知が不十分になった。年金からの徴収については、高齢者の皆様の納付の利便性や、市町村の保険料収納の確保、事務の効率化といった観点から行うこととなっている。」との説明を行いました。
 本県は、老人医療費が全国一高いため、これに比例してこの保険料も全国一高いものになっています。麻生知事は、「まず本県の医療費を適正化することが当面の課題だ」と述べています。自民党は、知事の真意を改めて質すとともに、保険料軽減に向けた県独自の助成の実施を求めました。これに対し麻生知事は、「長寿医療制度の施行に伴い、県では、高齢者の皆様の保険料負担を1割程度とするため約426億円、低所得者等の保険料負担軽減のために約64億円を計上しており、様々な形で保険料負担を引き下げております。保険料負担を抑制するためには、医療費の適正化が極めて重要であり、今後、積極的に取り組む。」との考えを示しました。

 次に自民党は、農政問題を取り上げました。現在、原油や穀物の価格高騰を受けて、世界的な食糧安全保障の危機が叫ばれております。2006年度の我が国の食料自給率は39%まで低下しており、第二次世界大戦後、徐々に引き上げてきた欧米諸国を大きく下回っております。まさに、日本の食糧と農業のあり方、将来の方向性を国民全体で議論すべき時を迎えています。このような中で、我が県の自給率はさらに低い19%となっていることから、自民党は知事に対し、この県内自給率に対する認識を質しました。麻生知事は、「本県は収益性の高い園芸農業を推進しているが、これらの農産物は穀物に比べカロリーが低く、自給率に反映されない。県民の生活実態や農家の経営実態を踏まえると、カロリーベースではなく生産額ベースの自給率で考えるべきだ。生産額ベースでは、本県の自給率は51%となっている。」と、新たな考えを明らかにしました。また、自給率を向上させるための方策については、「今後とも、収益性の高い園芸農業の振興に努めるとともに、米・麦・大豆等については、認定農業者等への農作業の集約化を進め、効率の良い生産体制をつくる。併せて、直売所を活用した地産地消の推進等により、本県農産物の消費拡大に努める。」との方針を示しました。

 麻生知事は、昨年の知事選挙に際し、14の基本政策を明らかにし、その中で「文化と芸術の振興」を掲げ、「新しい県立美術館の将来像や建替えについて検討する」と明言しています。県立美術館は、本県の文化芸術政策の柱を為すものであります。自民党県議団は、昨年の6月議会において、今後の取り組みを知事に質し、その結果、有識者による検討委員会が設置され、県立美術館の将来像についての検討が進められているところであります。自民党は、「雄県福岡」にふさわしい美術館をつくるには、何よりも、知事自身が意欲とコンセプトを県民に示すべきであることを指摘し、新しい県立美術館の建設について、麻生知事の決意表明を促しました。これに対し知事は、「県立美術館は、美術品を鑑賞する機会の提供や、県展等を通じて県民の文化芸術活動を支援する拠点として重要な役割を担っている。しかし、現在の県立美術館では、このような役割を十分果たすことができないため、検討委員会の報告を踏まえ、新しい県立美術館の具体的な計画を策定する。」との考えを明らかにしました。
 

       
         


 去る5月18日、戸畑警察署の56歳の巡査部長が、未成年に売春をさせていた罪で逮捕されました。取締を行うべき側の人間が、未成年者に売春させていたなどということは言語道断であります。最近、この件を始めとして警察に対する県民の期待と信頼を根底から揺るがすような不祥事が相次いでいます。しかし、一方では、福岡市早良区の連続通り魔事件の被疑者を早期検挙したり、佐賀県武雄市の入院患者射殺犯を、発砲を受けながらも素手で検挙したのも福岡県警察官であります。一連の不祥事が、純粋な現場のやる気や正義感に水を差し、士気が低下するようなことがあってはなりません。自民党県議団は、福岡県警の組織で、今、何が問題なのか、そして、今後の不祥事再発を防ぐためにどのように取り組む決意であるのか、警察本部長に質しました。田村警察本部長は、「この一年間に不祥事が相次いで発生していることは極めて遺憾。とりわけ今回の事件は、職員が深く経営に関与するなど極めて悪質な事案であると認識している。県議会を始め県民の皆様に対し、深くお詫びを申し上げる。不祥事が相次いでいることは、各種防止対策が形式的に流れ、職員の末端にまで浸透しなかったなどの問題があると反省している。緊急署長会議等を開催し、幹部の意識改革等を指示するとともに、職員の身上把握・指導のあり方等に関して真剣に討議し、組織を挙げて危機意識の共有を図ったところであり、全職員一丸となって県民の負託に応えていく決意である。」との答弁を行いました。

 6月3日から5日までは一般質問が行われ、6日には各常任委員会において付託議案等の審議が行われました。
 最終日(6月11日)の本会議においては、監査委員に野田栄市議員(公明党)を選任する人事案件など3議案が追加提案され、各常任委員長より審議結果の報告を受けた後、採決を行い、8議案全てを原案通り可決いたしました。また、長寿医療制度に関して、我が自民党県議団は、低所得者や大幅に保険料が上昇する世帯の保険料軽減や、70〜74歳の窓口負担1割の軽減特例措置の継続などを盛り込んだ意見書案を提出し、採択されました。
 今回の議会では、長寿医療制度(後期高齢者医療制度)問題や食糧自給問題、治安問題など、県民の安全・安心な暮らしに関わる問題に質疑が集中いたしました。私、藤田陽三は、県議会議員として、これらの重要な政策課題に真正面から取り組み、ふるさと筑紫野市のため、福岡県のために努力・邁進してまいる覚悟であります。どうか、今後とも藤田陽三に温かい御支援、御鞭撻を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

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