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  平成18年2月定例県議会を振り返って

 

 平成18年2月定例県議会は、2月22日から3月27日までの34日間の会期をもって招集されました。

 今議会には、県政運営の基本となる総額1兆5121億1200万円余の平成18年度一般会計当初予算案をはじめ、県立三大学(九州歯科大学、福岡女子大学、福岡県立大学)の独立行政法人化関連議案など78の議案が提案され、麻生知事は提案理由説明において、「平成18年度を、”新しい暮らしづくりとさらなる改革の年”にしたい。今や地方の活発な創造力が新しい国づくりの原動力となっている。福岡発の斬新な政策を創造・推進し、力強く自信に満ちた地方自治の確立と”豊かで活力あふれるアジアの拠点福岡”の実現に向け、全力を傾注していく。」との所信を述べました。

九州歯科大学
九州歯科大学 講堂(北九州市小倉北区) 九州歯科大学 学部棟

 

  本格的な論戦は、3月1日の我が自民党県議団の代表質問から始まりました。

 自民党県議団は、まず、新年度の予算編成方針と財源確保等の問題について質しました。 麻生知事は提案理由説明の中で、「平成14年度に策定した”財政構造改革プラン”については、懸命な努力の結果、歳出は目標を上回る削減ができたが、歳入面では地方交付税が大幅に削減され、県税収入も回復が遅れた。このため、プランの目標の達成は困難な状況となっている。」ということを、初めて明らかにしました。自民党県議団としては、財政当局を中心としたこれまでの努力と知事としての政治姿勢の明確化について一定の評価をしつつも、このような結果となった原因と、本県の財政構造の改革状況について県民にわかりやすく明らかにするよう求めるとともに、新しい財政改革プランについての構想を質しました。これに対し麻生知事は、「歳出は計画額を上回る1661億円の削減ができたが、歳入では、交付税がプランの見込みに比べ5ヶ年間で1800億円の減収、県税も450億円の減収となった。これが目標が達成できなくなった原因であるが、財政構造改革の結果、経常収支比率は平成9年度の97.6%から92.5%に改善し、県民一人当たりの県債残高も全国平均の62万円に比べ47万円と、低い水準を維持している。平成19年度以降については、国の中期見通しを十分に踏まえて新しい財政計画を策定する。

今後は、人件費や建設事業費の抑制などに加え、施策の改善によって社会保障費の増加の抑制を図っていくことが重要であると考えている。」との答弁を行いました。

 平成19年度から、税源移譲に伴い個人住民税が大幅に増加いたします。本県では、市町村分も含めて1000億円程度の規模となる見込みのようでありますが、負担する県民の立場から見れば、定率減税の廃止と相まって、住民税が大幅に増税される状況となります。このことについては、きめ細かく県民の理解を得る努力をしなければなりません。自民党県議団は、このような観点から、1年後の実施に向けての県当局の準備を質しました。知事は、「税源移譲は、住民税を増税し所得税を減らすということになり、県民一人当たりの負担は変わらない。この全体像を正しく理解していただくために、ポスターやパンフレットなどいろいろな広報媒体を用いて県民の皆様への周知に努めてまいる。」と答弁いたしました。

 

 次に、自民党県議団は、新しい行政改革大綱の策定について質しました。

 平成17年度から5ヶ年間の地方行革に関する集中改革プランについては、ほとんど全ての自治体において取組みが進められておりますが、本県の新大綱の策定状況は今ひとつ明らかではありません。その検討状況と策定手続きについて、知事の基本的な考えを質しました。麻生知事は、「現在、新行革大綱についての庁内議論を行っており、来年度には行政改革審議会をスタートさせ、パブリックコメント制度を活用して県民の皆様の意見を吸い上げていきたい。」と答弁いたしました。

 また、自民党県議団は、思い切った職員定数の見直しと新しい時代に即応する組織の再編成をどのように両立させていくのか、さらには新しい給与体系をどのように考えているのか、骨太な基本構想を示すよう求めました。これに対し知事は、「職員定数については、事務事業の徹底した選択やアウトソーシングの推進などにより、国の全体計画の4・6%を念頭に削減を進める。組織については、市町村合併の進展により広域調整機能が重要となるので、横断的な政策課題を的確に行うことができる組織に再編成したい。また、給与については、勤務実績を給与に反映させるための評価制度の確立が重要であり、新年度から、まず管理職を対象に新たな人事評価制度を導入する。」との考えを明らかにしました。

 

 新年度予算では、公文書館基本構想策定費が計上されております。これまでも我が自民党県議団は、幾度となく、県民の共有財産としての公文書の保護・修復の不十分さや公文書を展示・閲覧することができない問題などを指摘してまいりました。今後の公文書整備に向けて改めてどのような検討をしようとしているのか、知事の決意を質しました。麻生知事は、「公文書館については、これまで既存施設での併設を考えてきたが、市町村合併に伴う市町村の文書の散逸という問題も生じておることから、県と市町村と一体となった公文書館の整備の可能性を速やかに検討する必要がある。来年度は検討委員会を発足させ、年内には検討結果を取りまとめる。」との方針を明らかにしました。

 地域住民が安心して暮らせる「安全なまちづくり」は、極めて重要な政策課題となっております。幼い子供たちが犠牲となった痛ましい事件が全国各地で頻発するなど、かつて私たちが、世界に対してその治安の良さを誇りにしていた日本は何処に行ってしまったのでしょうか。住民と地域の自助、共助と、行政の公助による防犯基盤づくりが三位一体となってかみ合ったとき、初めて地域社会における安全・安心なまちづくりが推進されます。

自民党県議団は、県や市町村、関係団体、地域住民の役割を明確にし、連携して防犯と取り組むための環境や方針を示した条例づくりについて、知事の見解を求めました。麻生知事からは、「安全・安心なまちづくりは、総合的な県民運動として進めて行かなければならない。条例制定は、その基本理念や役割を明確に示す上で有効な方法の一つであり、県民各層の幅広い意見を踏まえて検討を行っていく。」との答弁を得ました。

   
     

  次に、北部福岡緊急導水管事業について、我が自民党県議団は、この事業に対する麻生知事の毅然とした方針、見解が得られなければ、県議会として、会派として県民の信頼と負託に応えることはできないという考えを表明した上で質疑を行いました。この事業は、災害発生時のライフライン確保を目的としておりますが、果たして大地震の際にも使用可能であるのか、また、パイプラインの維持用水はどのような用途に使われるのか、さらには、県と北九州市の経費負担や事業の実施形態が大変わかりにくくなっている理由について、知事の答弁を求めました。これに対し麻生知事は、「導水管は、地震の際にもその機能が十分維持されるよう整備する。維持用水は、水道用水として宗像、粕屋地域で活用する方向で協議を進めている。事業費総額は189億円を見込んでおり、県は貸付金36億円、補助金20億円を手当する。この事業は、北九州と福岡の2大都市圏で相互に水の融通ができる体制をつくり、県全体としての危機管理対応能力を高めていくための事業であるので、県は導水管の建設についても十分な役割を果たしていきたい。」との考えを明らかにいたしました。

 

 県政にとっての最重要課題のひとつである県立病院の民間移譲問題については、今議会に二つの条例案が提案されました。県立病院の民間移行は47都道府県で初めてであり、この大改革が高い評価を得るためには、それぞれの病院が果たしてきた地域医療の核としての役割がきちんと引き継がれ、従来にも増して地域住民に喜ばれる民間病院とならなければなりません。今日、救急医療、特に小児救急医療は手がけるところが少なく、地域医療における大きな問題となっております。遠賀病院など先行3病院の移譲の条件としていた救急医療や小児医療などの状況はどうなっているのか、残る柳川病院、嘉穂病院の移譲スケジュールはどうなっているのか、さらに、中長期的に見て県立病院の民間移譲が県財政に与える影響はどうなのか、自民党県議団は知事に質しました。知事は、「先行さん病院においては、地元開業医などとの連携の強化、小児科病床の新設、救急患者の積極的受け入れなどが進んでいる。柳川、嘉穂病院の移譲先は公募し、夏には内定したい。県立5病院の民間移譲により、これまで必要であった毎年40億円の一般会計繰出金が減少するので、県の財政構造改革には大きな寄与をするものと考えている。」と答弁いたしました。

柳川病院 福岡県立嘉穂病院
柳川病院 嘉穂病院

 BSE問題により輸入が禁止されていた米国産牛肉の輸入再開から間もない1月20日、米国から輸入された牛肉に特定危険部位である背骨が混入しているのが確認され、政府は米国産牛肉の輸入を即座に停止いたしました。このようなことを契機として、牛肉全体の安全性に対する消費者の信頼が揺らぐようなことがあれば、県内の生産者にも悪影響を及ぼしかねません。自民党県議団は、この問題についての知事の考え、そして本県の肉用牛の振興策について質しました。麻生知事は、「特定危険部位の除去を行い、かつ20ヶ月齢以下の牛であること、という条件を確実に遵守する体制が米国側で整うまでは輸入を再開すべきではない。我が県の肉用牛については、受精卵移植技術を用いて和牛を生産し、そのコストを下げていく。また”博多和牛”といったブランドを積極的に支援していく。」との考えを明らかにしました。

   

 

 BSEが「食」の安全の問題ならば、耐震偽装は「住」の安全に関わる重大な問題であります。この問題がようやく落ち着きを見せてきた矢先、新たな偽装疑惑が、しかも我が福岡県で発生し、マンション住民やその周囲の住民は強いショックを受け、不安に襲われております。早急にこの問題の全体像を明らかにし、対策を明示することにより、県民の不安を解消しなければなりません。現在、県は構造計算書の再計算を行っているとのことでありますが、自民党県議団は、一体いつまでにその結果が明らかにされるのか、耐震強度不足の物件に対してどのような対策を講じるのかなど、安全なまちづくりに向けた知事の所見を問いました。これに対し麻生知事は、「現在、木村建設とサムシングが関与したと考えられる物件の再計算を実施しており、できるだけ早い時期に件数を公表する。耐震強度が著しく不足する場合には物件名を公表する。このような建物については、安全確保の観点からの支援の必要性、範囲を検討していく。」との答弁を行いました。

 

 教育問題について、我が自民党県議団はかねてより子供たちの学力に関する問題を取り上げ、ただしてまいりました。今一番危惧すべきは、子供たちの学ぼうとする意欲や、目標に向かって取り組もうとする意思、気力がうかがえないということです。昨年の中央教育審議会答申でも、学校の教育力、すなわち「学校力」とともに「教師力」を強化し、子供たちの「人間力」を豊かに育てることが重要とされています。このためには、学校や教員がその必要性を深く認識し、学校をあげて取り組まなければなりません。自民党県議団は、このための具体的、実践的な取組方針について森山教育長の答弁を求めました。教育長からは、「教員の指導力の向上は重要であり、教員評価に基づく自主的研修や、教育センターでの研修を進めている。併せて、校内での授業研修や教員の相互評価の組織的取組を推進しており、今後ともこうした方策を充実していく。」との答弁がありました。

 また、来年度実施される学力実態調査の趣旨・内容と公表方法について質したのに対しては、「今後は各市町村や学校が学力の定着状況を個別に把握し、学力向上の取組みを行う必要がある。平成18年度は小学5年生、中学2年生の全員を対象に実施し、県において調査結果を分析の上、公表する。」との考えを示しました。

 

 大牟田市で平成14年12月から稼動しているRDF発電については、資源循環型社会の一翼を担う施設として大いに期待されていたにもかかわらず、相次ぐ事故の発生や市町村が支払う処理委託料の値上げなどにより、地元では実に冷めた目で見られております。県はこの事業を積極的に推進してきたにもかかわらず、処理委託料の値上げなどに対する関係自治体の反発について「関係者間の協議で決定されるべきもの」という他人事のような態度に終始しているのは理解に苦しむところです。自民党県議団は、この事業に対する認識、評価と種々の事故やトラブルについての認識を知事に質すとともに、関係自治体への財政支援を早急に行うよう要望いたしました。これに対し麻生知事からは、「RDF発電事業は、ダイオキシン類対策に適応できない小規模市町村のごみ処理を行うとともに、発電しエネルギーとして再利用するものであり、炭鉱閉山後の大牟田地域振興という観点からも、時代に合った大きな意義があると考えている。事故に対してはその都度必要な対策を講じており、現在は安定していると認識している。RDF発電株式会社の経営安定については、多角的な検討・協議を続けており、具体的支援策について速やかに検討を進める。」との考えが明らかにされました。

   

 

  他会派の代表質問の主なものとしては、緑友会・新風から、道州制の検討状況についての質疑がありました。麻生知事は、「九州知事会と経済界が一体となった九州戦略会議で具体的な検討を行い、10月には報告を取りまとめる。また、九州知事会では、共通の課題に対する政策連合を積極的に進め、九州としての共通の基盤、共同体意識を作り上げていきたい。」との答弁を行いました。

 また、公明党からは、タイのバンコク都、インドのデリー準州との交流の意義と今後の具体的交流などについて質疑がありました。これについて知事は、「アジアにおいては、タイやインドが大変な勢いで発展し、社会的にも大きく変貌しつつあり、アジアとの交流拠点を目指す本県としては、このような地域との交流拡大を図る必要があると判断した。具体的には、環境人材の受け入れや経済交流、子供たちの交流、文化交流を進めていきたい。」との考えを示しました。

 

 代表質問最終日の3月3日には、29億4200万円余を増額するための平成17年度一般会計補正予算案など26件の議案が追加提案されました。これら、早期議決を要する議案につきましては、各常任委員会に付託・審議の上、3月13日の本会議において可決したところであります。

 

 3月14日からは、31名の委員から構成される予算特別委員会が開かれました。同委員会では、平成18年度当初予算案を中心に県政全般にわたって活発な議論が交わされ、3月23日には少子化対策や麻生知事の環境施策に対する取組み姿勢についてなど、14件、約5時間に及ぶ知事保留質疑が行われました。麻生知事は、「子育て支援や少子化対策に係る施策を総合的に取りまとめ、推進していくため、保健福祉部に”子育て支援課”を新設する。」、「我が県の環境部は頑張っていると思っているが、自分の認識と現場の実態が違うようなことがあってはならないので、実状を正確に把握した上で、環境部にも発破をかけていきたい。」などの考えを明らかにしました。

 

 最終日の本会議においては、各常任委員長及び予算特別委員長の審議状況報告を受けた後、平成18年度一般会計予算など76件の議案について採決を行い、これを可決いたしました。また、海老井悦子氏を新たに副知事に選任する議案、森山良一教育長を教育委員会委員に再任(教育長に再任)する議案他1件の追加提案を受け、これを可決いたしました。

 私が県議会議長として、各年度の当初予算などを審議する大変重要な2月定例県議会を運営するのは2度目でありましたが、議員各位の御協力をいただき、無事閉会することができました。

 地方分権の進展に伴い、地方自治体には、その政策形成能力や財政運営能力を強化し、発揮していくことが求められております。我々県議会も、執行部とともに県政の両輪を担うものとして、しっかりとチェック機能を果たし、県民の皆様の負託に応えていかなければなりません。私、藤田陽三は、これからも県議会議長として福岡県議会の円滑な運営に努めてまいりますとともに、筑紫野市の皆様から選出いただいた県議会議員として、郷土の発展と安全で豊かな県民生活の実現に全力を尽くしてまいります。どうかこれからも、藤田陽三に温かい御支援、御鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

 

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