平成17年2月14日に招集された臨時県議会において、私、藤田陽三は第57代福岡県議会議長に選出されました。これまで私は、議会運営委員長として微力を尽くしてまいりましたが、これからは議長として、福岡県議会を代表するとともに、議会運営全般にわたって責任を持つ立場となりました。まさに身の引き締まる思いでございます。今後とも、福岡県議会の円滑な運営と県政の発展に全力を尽くすことを、改めてお誓いいたします。
議長として初めて臨む2月定例県議会は、2月23日に招集されました。今議会には、総額1兆5、023億400万円の平成17年度一般会計当初予算案をはじめ、福岡県立アジア文化交流センター条例など74の議案が提案されました。麻生知事は、同日の提案理由説明の中で、全国知事会長に就任したことについて、「歴史的改革である地方分権の先頭に立つことを決意して会長を引き受けた。会長職は激務だが、私の一番の責務は福岡県知事であるということを常に意識し、政策運営の効率化を図り、一層の県勢浮揚に取り組んでいく。県議会のご支援・ご協力を、特にお願いしたい。」と述べました。
本格的な論戦は、3月2日の我が自民党県議団の代表質問を皮切りに始まりました。
自民党県議団は、まず、麻生知事の全国知事会長就任に関連して、県の執行部体制の強化構想を質しました。これについて知事は、「知事会長の活動は、分権社会づくりそのもの。実際の活動に当たっては、総務部に分権改革推進チームを設置し、情報収集・発信や知事会事務局との連絡・調整に当たらせたい。」との考えを明らかにしました。
また、第一期三位一体改革の柱とも言うべき、3兆円規模の税源移譲を実現するための戦略を問われたのに対して、「国と地方の協議の場を大きな手がかりとし、地方六団体の団結を図りながら、様々な分権運動を積極的に展開していく。」旨の答弁がありました。
自民党県議団は、中央教育審議会の委員就任問題についても質しましたが、この時点における麻生知事の答弁は、「3月4日の地方六団体の代表者会議で方針を決めたい。」という内容でありました。その4日には、中教審の下の義務教育特別部会に地方側委員3名を出して審議に参加し、中教審本体には引き続き3名枠を要求していくとの地方六団体の結論が出されたところであります。義務教育費国庫負担金問題は、補助金削減案の最大の柱であり、今後の推移を注視していきたいと思います。
財政問題について、自民党県議団は、本県の財政構造改革の評価を問うとともに、財政構造改革プラン終了後の平成19年度以降は、どのような財政運営を行っていくつもりであるのか、麻生知事に質しました。これに対し知事は、「率直に言って、基金の取り崩しと特例的県債に頼らない財政運営という目標の達成は大変難しい。平成19年度以降も中・長期的な計画を立てて財政運営をしていく必要がある。」との認識を示しました。
また、本県の景気見通しと県税収入見通しについては、「円高などの為替動向には注意を要するが、福岡県では自動車関連の増産が予定されており、景気の回復基調は続いていくと考えている。17年度の法人事業税は前年度当初予算比で24%増を見込んでおり、16年度の県税収入も当初予算より168億円余り上回ると思われる。」という見通しが明らかにされたところであります。
さらに自民党県議団は、新年度予算に150億円という巨額が計上されている国民健康保険調整交付金について質疑を行ったうえで、これが県財政を圧迫する要因とならないよう注意する必要があること。交付の仕組みについては、増嵩する医療給付費を抑制するようなものとすべきであることを指摘いたしました。
次に、市町村合併問題であります。県内の市町村合併の現状ははかばかしくなく、残念ながら西日本でワースト7位であります。手厚い国の財政支援を受けられる合併特例法の期限はこの3月末で切れます。麻生知事はこれまで、自主合併尊重という態度を取り続けてきましたが、そのような姿勢での合併問題への取組みをどのように総括しているのか、さらに、今後の合併推進に対する政治家としての決意を示すよう、自民党県議団が求めました。知事は、「福岡県には、財政力が強く人口も多い市町が政令都市周辺に多数存在し、小規模市町村が少ないという構造的特色があり、危機感が少ない。今後は、現在合併協議を進めている地域が3月末までに合併申請ができるよう、いろいろな形で支援していく。また、18年度以降についても、合併新法で与えられる権限や県としての影響力を総合的に使いながら、積極的に市町村合併を進めていく決意である。」との答弁を行いました。
なお、3月8日には飯塚市、筑穂町、穂波町、庄内町、頴田町の1市4町と山田市、稲築町、碓井町、嘉穂町の1市3町から合併申請書が提出され、市町の廃置分合についての議案が追加提案されたところであります。
介護保険制度については、制度5年目にあたっての改正案が今国会に提出されております。改正案には、特別養護老人ホーム等の利用者から新たに居住費用や食費を徴収することや、予防給付を創設することなどが盛り込まれております。これらの改正が介護サービスの切捨てにつながるようなことはないのか、との自民党県議団の質問に対し、麻生知事は、「低所得者の負担が過重とならないよう、所得に応じた負担制度を定める。予防給付は、軽度の方を対象に新しいサービス提供を行うものであり、利用者の自立支援を強化していくもの。これからも、利用者一人ひとりの実情に即した給付を行っていきたい。」と答弁しました。
環境問題について、自民党県議団は、2月26日に「京都議定書」が発効したことを踏まえ、地球温暖化をもたらす二酸化炭素の排出量について、本県の実情を明らかにするよう求めるとともに、本県においては削減目標が設定されていないことの理由、そして今後の新たな取組みをどのように進めていくのか、知事の答弁を求めました。麻生知事からは、「本県の排出総量は5、891万トンであり、全国の約5%を占めている。議定書が動き始めるので、国全体としての達成目標などを見ながら本県としての削減目標を設定していきたい。今後は、温暖化防止活動推進センターと連携して、県民の自主的な取組みを一層進めるとともに、水素エネルギーの実用化に向けた研究開発を進めていきたい。」旨の答弁がありました。
労働問題については、自民党県議団が、本県の看護師・介護職員の需要見通しを尋ねるとともに、構造改革特区制度を活用してアジアからの人材を受け入れてはどうかとの提案を行いました。これについて知事は、「現在は基準を満たしている状況だが、少子高齢化という懸念材料もあるので、17年度に調査を実施し、需給見通しを策定したい。特区制度の活用は適切でないとの国の見解が示されているが、今後のFTA交渉の状況も見極めつつ、外国人看護師の受け入れなどについても研究していきたい。」との考えを示しました。この問題については、予算特別委員会においても、自民党県議団の原口剣生議員(久留米市選出)が、「高齢社会と医療・介護体制の充実」という観点からの質疑を行ったところであります。
農政問題について、自民党県議団は、まず、大型店舗等の進出のための農地転用が多く見られる状況に鑑み、県農業の維持発展に必要な優良農地をどう確保していくのかについて質しました。麻生知事は、「集団的な優良農地の確保を基本として、合理的な土地利用の実現に努める。」と答えました。
本県農業が持続的に発展するためには、県産農産物が競争力を持ち、しっかりした農業経営が展開されることが不可欠であります。自民党県議団は、このための施策を問うとともに、高収益型園芸農業事業の改善点を明らかにするよう求めました。知事からは、「これからも、新しい品種開発を活発に行っていく。また、アジアマーケットを対象に、国内外での本県農産物のブランド化を進め、販売政策を行っていく。高収益型園芸農業は、認定農業者個人が一層取り組みやすい制度にするとともに、県一律で決めていた重点品目を見直す。」との答弁を得ました。
教育問題については、自民党県議団は、大阪府寝屋川市の小学校で発生した誠に痛ましい事件を教訓として、学校の安全対策の充実について質しました。森山教育長からは、「学校の安全管理マニュアルの再点検やボランティアを活用した日常的な防犯体制の整備、警察との連携の推進を指導していく。」旨の答弁がありました。かねてより、自民党県議団は道徳教育の重要性を訴えており、「心のノート」の活用推進を求めてまいりました。改めて、道徳教育の重要性を指摘するとともに、徐々に定着してきている「心のノート」を一層浸透させるよう強く求めたところであります。
また、多くの県民が危惧している子供たちの学力低下問題について、教育委員会としての学力向上の取組みを質したのに対して、森山教育長は、「学力向上施策を全県的に推進するため、学力向上推進会議を設置し、教職員の指導力を育成するとともに、学校・地域の課題に応じた取組みを行っていく。」との考えを示しました。
他会派の代表質問の主なものとしては、緑友会・新風から、廃業の危機にさらされ、後継者不足に悩む商店街の活性化についての質疑がありました。麻生知事は、「県では、商店街活性化がんばろう会事業を展開し、地域と一体となって生きていく商店街を支援している。社会の高齢化は、大規模店には真似できない地域密着型サービスができる商店街にとっては、一つのチャンスともいえる。高齢者に優しい商店街作りなどの工夫を積極的に応援したい。」との答弁を行いました。
また、県政クラブからは、第3期麻生県政前半の総括とマニフェスト159の評価・公表について質疑がありました。知事は、「日本一住みやすく、元気のある福岡県を、アジアの拠点として作り上げていくという目標に向かって、着実に前へ進んでいると考えている。任期の中間年に当たる4月にはマニフェストの進捗状況について整理・公表したい。」と述べました。
公明党からは、両政令市から要望が出ている県単独補助金の見直しについて質疑がありました。これについて知事は、「福祉や保健などの分野では政令市は県と同等であり、財政力も県に匹敵している。このようなこともあって、一般市町村とは差を設けているが、政令市から意見交換の申し入れもあるので、早急に協議の場を設置したい。」との考えを示しました。
代表質問最終日の3月4日には、197億8、900万円余を増額するための平成16年度一般会計補正予算案など23件の議案が追加提案されました。これら、早期議決を要する議案につきましては、各常任委員会に付託・審議の上、3月14日の本会議において原案どおり可決したところであります。
3月15日からは、31名の委員から構成される予算特別委員会が開かれ、平成17年度当初予算案を中心に、県政全般にわたって活発な議論が交わされました。
3月20日午前10時53分、福岡市の北西約20kmの玄界灘を震源とするマグニチュード7級の「福岡県西方沖地震」が発生いたしました。この大地震による県内の被害は、死者1名、負傷者662名、建物の全壊16棟、半壊158棟など甚大なものとなり、避難された方は9市町村で2、056名に上りました。特に、玄界島では被害が著しく、全島避難を余儀なくされました。地震発生の翌日、私は、約700名の皆様が避難されている九電記念体育館にお見舞いに伺った後、ただちに玄界島に向かい、被災状況を調査いたしました。被災された皆様に対し、心よりお見舞いを申し上げるとともに、早急に被災地を復興し、避難されている皆様が一日も早く自宅に戻ることができるよう、県議会も全力を挙げて取り組んで参ることをお約束いたします。
3月22日の予算特別委員会は、審議日程を変更し、自民党県議団の貞末政策審議会長をはじめとして、各委員から災害対策等についての質疑が行われました。この日は、震度4の余震におびやかされながらも、午後8時過ぎまで教育費、災害復旧費、各特別会計等について熱心な審議が続けられ、さらに24日には、知事に対する保留質疑を行いました。 自民党県議団は、被災者の生活支援、2次災害の防止、被災地の早急な復興、中小企業者等への支援を強く求めながら質疑を行いました。知事は、「各種の制度を組み合わせる工夫を凝らし、早期の復興を図る。今回の被害が集中している福岡市は政令市であるので、権限を委任していることも多いが、現在も福岡市長とは緊密な連携をとっており、円滑に進められると思っている。」との考えを示しましたが、各委員からは、「被災地の復興や今後の災害対策について、県が強いリーダーシップを持って推進すべきである。」との指摘があり、井本宗司予算特別委員長も、「県執行部は万全の体制で臨むよう強く要望する。」との委員長報告を行ったところであります。
3月28日、2月議会は最終日を迎えました。この日は、武田副知事の後任に武居丈二消防庁救急救助課長を、長崎出納長の後任に江口信介総務部長を選任することなどについて、県議会の同意を求める議案が知事より追加提案されるとともに、県議会議員の報酬を2%減額する条例案が提出されました。議員報酬の減額については、極めて厳しい本県の財政状況に鑑み、我が自民党県議団の蔵内会長ほか11名の議員により提案されたものであります。これらを含め、平成17年度当初予算など全ての議案を原案どおり可決して、2月定例県議会は閉会いたしました。
この議会は私にとりましては、議長として初めての議会でありましたが、議員各位及び執行部の御協力をいただき、円滑に議事を進めることができました。心より御礼を申し上げる次第であります。今後とも、全身全霊を傾けて議長の重責を全うしていくとともに、筑紫野市民の皆様に選出していただいた県議会議員として、郷土の発展に全力を尽くすことを改めてお誓い申し上げます。どうかこれからも、藤田陽三に温かい御支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
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