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G.W. フィリピン鳥見日記


 

Philippines, 29 Apr.-08 May, Page 2


フィールドノートをなくしてしまったので、以下印象に残っている鳥についてのみ触れます。

5/01 前夜疲労の為、Owlingを取りやめたので、その代わりに早起きして、一昨日の晩に行ったポイントに向け4時に出発する。今朝は月も出ておらず、地面も雨を吸って真っ黒で懐中電灯なしでは歩けない。この前と同じ場所で Palawan Scops-Owl を待つが、なかなか出て来てくれない。飛ぶ姿を2度程、数秒間目にしただけで、止っているところをじっくり観察することは出来なかった。空が白みWood Owlが大きな声で鳴き始めたので、声のする方へ急ぐが途中で鳴きやんでしまった。就寝前のラストコールだった様だ。その場で明るくなるのを待ち、Blue Paradise-Flycatcherをメイン・ターゲットに他の鳥を探鳥する。Blue Paradise-Flycatcherは日本のサンコウチョウや隣国のボルネオの真っ白なカワリサンコウチョウ程は長い尾を持たず、他のヒタキ類より少し長めという程度であるが、それでもパラワンで写真に収めたい鳥の一つであることには違いない。サンコウチョウを待つ間に、Green Imperial Pigeon, White-bellied Woodpecker, Plawan Hornbill, Blue-headed Racquet-tail等を見る。Blue Paradise-Flycatcherは何度か出てくれたが、忙しく動きまわり直に薮の中に戻ってしまうので、茶色いメスの写真を数枚撮るのがやっとだった。朝食後は昨日の夕方歩いて帰って来たビーチ沿いの道をキンバト等を観察しながら逆に進む。川の手前のマングローブ林の中に入りアカショウビン (Ruddy KF) を見る。パラワン島の固有亜種で、留鳥。お前は今年になってから最初にアカショウビンを見たバーダーだとArnelが言う。昔は民家の近くで普通に見られたそうだが、激減しているらしい。橋を渡って後、川沿いのトレイルを上流に進む。川面を飛んで行くOriental Dwarf Kingfisherを見る。ほとんどの図鑑ではRufous-backed Dwarf Kingfisherとして別種に分類されているが、"Birds of the Philippines"と"Kingfishers, Bee-eaters, & Rollers"では亜種の扱いなので、ここではこれに従う。茶色にしか見えなかった。やはり止っている所を観察しないとピンク色には見えないのか?さらにしばらく行くとガッガガガという騒々しい鳴き声が聞こえてくる。Stork-billed Kingfisher (コウハシショウビン)の声だとArnelが教えてくれた。ボルネオで何度か耳にした飛ぶ時に発する声とは全然違う。威嚇の鳴き声なのか?そういえば、ニューギニアでBeach Kingfisher がこれとそっくりの声で鳴いていた。対岸の水面に近い低い位置の薮のなかにいるのはわかるが、全く見えない。Arnelがこの鳴き声を録音して再生すると、これに反応したが出て来てはくれない。次に先ほど録音したアカショウビンの声を流すと、物凄い”勢い”で、今にもこちらに攻撃に飛んで来そうな感じでこれに反応した。その時ちょうど運悪くボートが通り過ぎ少し上流に止って、人が川のなかに飛び込んだ。それ以後、気配が消えた。ボーとからだったら2種とももっとよく観察できただろうと悔しい思いをしていると、Arnelも同じことを考えてた様で今度来た時はボートを使おうと言う。今度って何時だ!先に言って欲しかった!激しくなってきた雨のなかを宿に戻り、昼食。ナンヨウショウビンを見ながら荷物のパッキングをし、Puerto Princesaへの帰路に着く。途中何度か下車し、クマゲラより少し大きい灰色のキツツキGreat Slaty Woodpecker, Copper-throated Sunbird, Common Iora, Palawan Tit等を見て市内のホテルに到着、帰宅するArnelと別れる。

5/02 4時出発の予定だったが寝過ごし、Arnelにたたき起こされて20分遅れで出発。車で30分程のIwanhigへ向かう。下車後真っ暗闇の中を沢沿いの山道を歩き小川を何度か渡り、Palawan Scops-Owl のポイントに向かう。空が白み始めるまで待つが鳴いくれなかった。絶対言われると思ったが、案の定、お前が寝坊したせいだとArnelに叱られる。アカショウビンの声がしたが、視認できず。高木の枝に止るStork-billed Kingfisherをゆっくり双眼鏡で観察出来たが、例によって望遠レンズを向けた瞬間に飛ばれしまう。Oriental Dwarf Kingfisherが2度程、目の前を飛んで行くのを目にするが、止っている姿を観察することは出来なかった。がっかりしながら山道を下り、車の所に戻るとすぐ横の林にOriental Dwarf Kingfisher(Rufous-backed Dwarf Kingfisher)が止っていた。急いで数枚撮影するが、光量不足のため低速シャッターでぶれぶれ。車に三脚と大口径レンズを取りに行こうとするが、Arnelに部屋に置いて行けと言われて、もって来なかったことに気付く。仕方がないので飛び去るまで双眼鏡で観察する。写真で見て想像していたピンクがかった赤ではなく、むしろ真っ赤といっていい体色に驚く。車中で朝食。今日もマンゴーが美味い。停車している場所はpenal colony、直訳すると受刑者の入植地。或るバーダーの探鳥記によると結婚も許されていて、比較的自由も利くらしいが、人影はほとんど見えない。Arnelが一人だけ出て来た住人に駐車代(入場料?)を支払い出発。Colony内の田んぼの間をのろのろ走る。すぐにすぐに小さなウズラBarred Buttonquailの家族が農道に出てきて愉しませてくれた。さらにもう一家族に加え、シロハラクナ、ツルクイナも農道に出て来てくれた。田んぼには凄い数のChestnut Muniaが群れている。収穫直前の米は大丈夫なのか心配になってくる。Colonyを出て数分の所の田んぼに立ち寄る。ここはクロツラヘラサギのポイントで、百メールぐらい先で餌を捕っているペアをしばらく観察する。そのうち、すぐ近くにいたダイサギの群れの中にもクロツラが1羽混ざっているの気付いて、カメラを向けるが起きてくれない。ムラサキサギやタカサゴクロサギが数十メートル先を飛び、遠くでハート型の顔をしたGrass Owlが1分間程飛んだ。時間があったら次のシャッターチャンスを待ちたいところだが、後ろ髪を引かれる思いで帰路につく。ホテルに寄りチェックアウトし、空港でArnelとお別れする。

マニラ経由でミンダナオ島の中心都市Davaoに向かう。空港でドライバーと一緒にBisling市から迎えにきてくれたガイドのZardoと落合い、Davao市内のホテルへ。大都市なのにマニラと違って信号がなく、交差点では車がクラクションを鳴らしながら、どんどん突っ込んでくる。慣れない日本人旅行者がレンターカーにでも乗ろうものならすぐに事故りそうだ。3人で買い物と食事の後、ドライバーが車中泊で、自分とZardoがツインルームで寝る。

5/03  ダバオから快適なハイウエーを西へ50分、さらにガタガタ道を10分走り、Salaysay村に着く。ここからバイクで2時間、徒歩20分のMacabul山へPhilippine Eagleを見に出掛けるのである。Armyと書かれた建物のあたりに若者がたむろしていて、銃を肩から駆けた者もいる。フィリピンの現代史には疎いが、おそらく昔の共産軍の名残で、今でも各村々の自治組織の一部として重要な役割を果たしているのであろう。ミンダナオ島には、現在でもフィリピン政府と敵対している地域も多く、イスラム原理主義の過激派の拠点にもなっているので、おのずと探鳥地が限られくる。一人の若者が日本語で話しかけてきた。おじいさんが日本人で、日本には何回も行っているそうである。彼がリーダー格で同行してくれる様で、そのうちに自分とZardoを乗せてくれる2人のライダーがやってきた。3台のバイクはいずれもモトクロス用。これは想像していたよりずっと大変な旅になりそうである。今回はスコープはもってきておらず、かわりに大型レンズにテレコンでPhil Eagleを撮影・観察するつもりだったのだが、車に残して行くことにする。Zardoがスコープを持って行け、かなり距離があるぞと忠告してくれるが、ここで望遠レンズ2本とカメラ2台をいっぺんに壊してしまっては目も当てられない。4輪が走れそうな道は5分程で終わり、後は10センチ前後の岩がごろごろしている道や、どろどろの泥濘み、橋の無い川、急峻なアップ・ダウンなどロングジャンプが無い以外は正にモトクロス競技のコースそのものの様な道が続く。私はライダーの背中にしっかりとしがみつき、振り落とされないようにしているのに必至で、TimへのメールにPhil Eagleを見たいと書いたことを後悔していた。難所ではバイクを降りて徒歩で進み、50分程行ったところで10分休憩しYellow-vented Bulbul等を見て後半戦に突入。喉元過ぎれば・・・とはよく言ったもので、だんだん慣れてくると、たまに数十m平らな道が続いた時の雲の上を飛ぶ様な爽快感がたまらないなどと思い始めたやさき、バイクがひっくり返った。幸いスピードがでていない時だったので、軽い打撲と擦り傷ですみ、カメラも無事だった。小一時間程で峠に着き、ここがEagleのポイントだと告げられる。私はさらに急な山道を徒歩で20分登らなければいけないと誤解していたので、少しほっとした。Zardoの言った、徒歩20分とは途中でバイクを降りて歩く時間の合計だったのだと気付く。峠の上には農家の小さな畑があり、休息用?の東屋が建っている。目の前が谷になっていて、そこを飛んでゆくワシやサイチョウが観察できるということだ。斜面を少し下ったところに大木があり、Barbet(ゴシキドリsp)がいるが、暗くて灰色にしか見えない。そこから、さらに少し下ったところにある樹がPhil Eagleの巣があった樹だと言うことだ。去年巣立った若鳥と母鳥の2羽が付近に住んでいて、時たま姿を現すそうなので、今日時間内に出現することを期待する。少し明るくなってきたので、少し急斜面を下り、大木に木の実を食べにやって来るCoppersmith Barbet, Coleto, Yellow-breasted Fruit-Dove等を観察する。しばらくすると鷲鷹の特有の高い鳴き声がして、2羽の Philippine Eagleが現れ、上空をしばらく旋回し、左側の尾根の樹に止った。Zardoの言った様にスコープが必要な距離だが、今回はこの距離を予想しながら自分の判断であえて長距離用の撮影機材を車に置いてきたので、双眼鏡での観察だけで満足するしかなかった。霧雨が断続的に降っているので、時間まで東屋から観察することにする。農家の奥さんがコーヒーを出してくれた。自分だけが飼い犬に激しく吠えたてられる。Zardoが、お前をEagleだと思っているんだろうと言う。昨年、この家の飼い犬が1頭、Phil Eagleに襲われたそうで、かれらは12、3キロまでなら掴んだまま飛んでいくそうだ。Phil Eagleの別名はMonkey-Eating Eagleであるが、食べるのは小さな原猿類だろうと勝手に思っていたのだが、どうやら普通のサルも食べるようだ。11時20分、Zardoと二人で徒歩で山を下る。ライダーには12時ごろに出発してもらい、途中で落合うことにする。途中、Naked-faced Spiderhunter, Yellow-breasted Fruite-Dove, Dark-eared Brown-Dove等を見た後、バイクで村まで下山する。明日からの探鳥地でありZardoの住むBisling市へ向かうが、途中ダバオの町の渋滞を抜けるのに1時間半かかった。その後、舗装道路を1時間走り、夕食後山道を2時間揺られてホテル(Paper Country Inn)に着く。

 

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