4)合否の判定
合否の判定は、溶接部に作用する応力の種類に応じて、単位溶接線中の欠陥評価長さおよびエコー高さの領域で判定されます。また、単位溶接線に複数の欠陥が存在する場合は、欠陥評価長さの総和も考慮して合否の判定をします。
単位溶接線とは、溶接部の合否の判定を行う際に設けた評価単位で、単位溶接線の合否を判定することにより、当該溶接部の合否が判定されます。単位溶接線は、300mmを基準としており、溶接長さが300mm以上の場合は、欠陥が最も密となるような連続した長さ300mmを、溶接線長さが300mm未満の場合は全長を、それぞれ単位溶接線とします。
疲労を考慮しない溶接部(疲労を考慮する溶接部とは、クレーン走行ばりなどの溶接部です。)で引張り応力が作用する場合の合否の境界値は、以下の通りです。(斜角一探触子法の場合)
表-3 引っ張り応力が作用する溶接部の合否の境界線
エコー高さの領域 |
欠陥評価長さ |
欠陥評価長さの総和 |
|
L |
LL |
|
ML |
L |
|
L |
ML |
図中のM、ML、L、LLは、板厚によって異なる欠陥長さの境界値で、下表によります。
表-4 引っ張り応力が作用する溶接部の合否の境界値 単位(mm)
板厚t(mm) |
S |
M |
ML |
L |
LL |
9以上20以下 |
10 |
15 |
20 |
30 |
40 |
20を超え48以下 |
t/2 |
3・t/4 |
t |
3・t/2 |
2・t |
48を超えるもの |
24 |
36 |
48 |
72 |
96 |
表3および表4により不合格となった欠陥は、補修を行い、補修後に再検査する事になっています。
5. まとめ
溶接接合についていろいろ書いてみました。
溶接のメカニズムについても少し書いてみました。製品検査に行って「一番ごまかされてるのではないか」 と思えるのが超音波探傷試験でした。その場では、検査の人に聞くのですが目盛板にL線が最初から書いてあるのがいつも疑問ではありました。これからは、L線等が正しいかどうかも確かめてみようと思っています。
溶接接合は、ボルト接合とは違い接合部が目立たないこと等、長所も多いのですが、職人さんの手作業によるものであり、その腕によって性能が異なる接合方法です。いつまでもこの工法を採用していていいのか少し考えることがあります。(阪神大震災では、溶接部の近傍で鉄骨の破断が見られました。また職人さんの高年齢化という問題もあるかと思います。)溶接をすることにより本来の鉄の性質が変えられる可能性のあること、検査により欠陥を100%救うことが出来ないこと等を考えると21世紀に向けてもっと簡単で誰にでも出来る工法が必要となってくると思います。
PHC杭は、継手を従来の溶接からボルト締め等に変えつつあります。鉄骨造ももっと工夫をこらして無溶接へと考えていくべきではないでしょうか。
・・・参考文献・・・
◆鋼構造建築溶接部の超音波探傷検査規準・同解説(日本建築学会)
◆建築構法(建築技術)
◆建築工事施工監理指針(公共建築協会)
◆溶接のおはなし(日本規格協会)
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