プレゼント

第2章

剣心はいそいそと支度をし、薫の後を尾行した。
薫に何時気づかれるかヒヤヒヤしたが、何やら考え事しているらしく、
気づく気配はない。
薫はあっちこち何度も小石などに躓きながら、
前川道場に向かっている。
危なっかし事この上ない。
剣心は手を差し伸べたい気持ちを
ギュッと拳を握り締めて堪えた。

・・・今、声をかけたら何言われるか解らない・・・

ある程度の間隔を保ちながら後を追う。

「剣心!何やってんだ?むっぐ・・・むむ・・・」

大きな声で弥彦に声かけられて慌てて口を塞ぐ。

「ぷふぁ・・・なっなにするんだよ!剣心!!俺を殺すきか?!」

「すまなかったでござる・・・では・・・」

剣心は立ち上がり再び後を追おうとしたが、弥彦に袖を捕まれてしまう。

「ちょっと待てよ!では。じゃないだろ!
前方に薫がいたみたいだけど、
わざわざ追い剥ぎみたいに後追ってないで、
声ぐらいかければいいじゃん。
はは〜ん。薫に男でも出来たのか?物好きがいるもんだ。」

鼻の下を指でこすりながら、年の割にはませた事を言った。

「違うでござるよっっっ。」

「その様子だと図星か。折角、俺が出てやったのに何の進展ないのかよ。
だらしねえな。」

「弥彦こそ何してるでござる?」

剣心は、話題をすり替えようと逆に問うた。

「何って。出稽古に決まってるじゃないかよ。俺も前川道場に行くんだぜ!
そんなに薫の事心配なら一緒にくるか?」

弥彦は何言ってるんだかって、呆れ顔で言った。

「やめとくでござる。そのかわりお前を男と見込んで、頼みがある。」

「うん。いいぜっ。薫誰かに狙われてるのか?護衛なら俺に任せてくれ!」

弥彦は少々面倒臭いけど、憧れている剣心に男と見込まれたら
断る理由なんてない。
目を輝かせながら二つ返事で言う。
勿論、剣心は弥彦の性格を見抜いて、頼んだのであるが・・・

「薫殿から片時も離れず、見守って欲しい。出来るか?弥彦。」

薫が誰かに狙われていると思っている以上、
まさか薫が具合悪そうだから見ててくれなんて、
口が裂けても言えない。

「俺に任せてくれ!!じゃー行って来る。」

ポンと胸を叩いて駆けだして行った。

‐ 第2章 完 ‐

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