「揺れる想い〜U」


 <こんばんわ!夜分すみません、ちょっといいすっか?>

 聞き慣れた声が、携帯から聞こえてくる。

  俺にかけてきて、名のらないんだよなコイツは・・・

 涼介は、吹き出しそうになるのをこらえた。

 「なんだ、樹?おれが、起きてんの分かっててかけてんだろ?」

 <あははは!そりゃ、そうですけどね。いやぁーちょっと>

 言葉の端を濁すような歯切れの悪い物言いだった。

 「なんだよ、言っちまえよ。気持ちわりーな?」

 <拓海のこと、なんすっけどぉ・・隣に啓介さんいないっすよね?>

 やっぱりなと思う、啓介の落ち込みの原因・・・
 家に帰って来てからの啓介は、心ここに有らずなのだ。

 「いや、自分の部屋に籠もってる・・・」

 <そうですか?・・・拓海・・今、おれんち来てるんですよ・・>

 訳は、言いたがらないけど、かなり重傷ですよとつづいた。
 樹は、この年上のテル友ならば何か良い考えを教えてくれるかなと。
 涼介は、ふと部屋の時計を見る、もう午前一時になるところだった。

 「お前、どこから電話してんだ?」

 <えっ!おれっすか?仕事帰りなんで車んなかですけど?>

 ずいぶんと遅いんだなぁと感心していた。

 <涼介さん、どうかしたんすか?急に黙り込んで?>

 急に名前を呼ばれて我に返る。啓介達のことだったな話は・・・

 「樹、どうにかして藤原を外に連れ出せないか?」

 別に難しい事ではない、誘い出す事なんて

 <連れ出すのは、簡単ですけど?>

 「明日の晩、秋名に連れ出してくれ。おれは、啓介を連れてくから」

 まっ明日になってからのお楽しみだと言ってから携帯を切った。
 どうなるかは、もちろん二人次第だけれども・・・
 狂っていた歯車は、またゆっくりだけれども動き初めている。
 おまえ達しだいなんだぜ?わかってんのか・・・


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