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(本稿の原文はカトリック膳棚教会会報「ともに」119号(2022年3月6日発行)のために寄稿したものですが、このHP用に加筆した小文です)
老いぼれ神父が若年層の皆さんに期待すること
本稿では、やがて次の世代を担われる、現在は若年層の皆さんに期待を述べさせていただきたいと思います。
① 私(現在80才)より5年位以前に生まれた世代の方、つまり昭和10年代前半生まれの方はお国のために命を捧げることが余儀なくされ、戦争に巻き込まれました。その戦争に敗れ、戦前・戦中の情況を生世代世代は少数になり、以後77年の間に世界各地で戦争があったのに、日本が曲がりなりにも戦争に巻き込まれることなく過ごせたことがどうして可能であったかを検証し、今後これをどのように維持するのかはまさに戦争を知らない世代が大多数を占める有権者に委ねられています。戦争体験者の身体的・心的・物理的に過酷な体験を無駄にしないようによろしくお願いします。
② 現在、若年層間の横のレベルでは、健康・経済・教育面などでの格差、いじめや虐待や孤独などによる自死、子ども食堂の需要、通学しながら親の介護をしているヤング・ケアラー、親の薬代のための労働や売春などが問題になっています。そして、世代間の縦のレベルではこれから先の地球温暖化に伴う異常気象、健康や遺伝学的に有害な放射性物質・プラスチック・化学物質などによる生態系や健康への悪影響、人工頭脳が敵を判断し攻防するIA兵器の開発、莫大な国や自治体の借金が後世にツケとなっていきます。今からでは遅きに失するにしても、これらの情況の改善に真摯に向き合い、国連が提唱しているSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標=17の目標、169のターゲット、さらにその下に232の指標)を個人・家庭・教会などのグループで積極的に実行し、これに関する行政・事業への就業や起業をしていただきたいし、すでに積極的に取り組んでおられる若年層の方がおられることを心強く思う次第です。
③世界人口増加の危惧が報じられる一方で、日本を含め多くの国が年代別人口構成比で少子高齢化が進み、少ない若年層がより多くの年配層を支える情況が急速に進んでおり、様々な社会的構造において活力低下が進んでいます。極端な事例として、胎児のうちに命を絶って次の世代の命を奪ってしまう中絶が厚労省の発表では毎年10数万人です。そして妊娠初期に服用する経口中絶薬がまもなく承認されるように伝えられていますが、これが使用されるようになったら失われる命はさらに増加することが予想されます。
日本のクリスチャン年代別人口構成、司祭年齢もその先端を走っています。フランシスコ教皇は本年1月5日の一般謁見のスピーチで「私は先日、人々が子どもを持ちたくない、あるいは、子どもは一人だけでそれ以上は持ちたくないとする人々がいる昨今の人口統計学的な冬について話しました。そして多くの夫婦が、子どもは欲しくないからつくらない、あるいは一人しかつくらない、しかし2匹の犬や2匹の猫を飼っているのです。そう、犬や猫が子どもの代わりとなっているのです」と過激な発言をされ波紋が広がっていますが、この問題を解決するために結婚と家族の位置付けと役割を今一度見つめなおす必要があると思います。少子化問題は結婚の減少と晩婚化とも関連しています。結婚は自分のみならず相手との生涯に関わることなので結婚の躊躇・非婚の選択・結婚しても将来を案じ、あえて子どもを設けない方も増えています。もちろん、子どもを望むのに授からないご夫婦には神が他の役割を与えてくださっていると思いますし、来たる神の国は娶りも嫁ぎもしないことをこの世で証しし、家族愛を越え、神への愛と人類愛に呼ばれていると確信し独身の生涯を選ばれる道を決して否定するわけではありませんが、神が人を男と女にお創りになり、その愛の結合を通して子孫を繋ぐようになさったという信仰・信念・価値観を有する相手に出会って、困難な社会情勢を夫婦・親子で乗り切って、神の国の完成に貢献できる生涯を送られるよう若年層の皆さんに心から期待し、祈る次第です。(2022年1月28日記 + 後日、このサイト用にリンク先など加筆。カトリック膳棚教会主任司祭 寺尾總一郎記)