ケニア編−第8話 サバンナに沈む夕陽 | ||||||||||
車を進めると、今度はヌーが姿を見せた。このヌーにはおもしろい言い伝えがあって、神様が 牛の角、ヤギのヒゲ、馬のしっぽをたして作った動物だと言われているらしい。確かに、下の 写真を見てもわかるように、その表現がぴったりである。 チェゲによると、ヌーは、ケニアのマサイ・マラとタンザニアのセレンゲティの間を、雨期に茂る 草を求めて往復しているそうだ。その間には、川が流れており、ここを越えるときに流されたり、 ワニに襲われて命を落とすヌーも多いらしい。そう言えば、そんな光景をテレビで見たと思う。 そんなヌーだが、シマウマとは相性が良いらしい。と言うのも、食べ物がうまく分かれている からだ。シマウマは背の高い草を食べるが、ヌーは背の低い草を食べるので、一緒にいても 問題がない。それに加えて、肉食動物に対しては、群れで行動する方が安全なので、一緒に 群れることが多いのだろう。納得。 しかし、動物が少ない。肉食動物はまったくいないし、草食動物も、ところどころにシマウマや ヌー、トムソンガゼルなどがいるのだが、ほとんどは1匹か数匹程度で、大きな群れがいなくて 淋しい。チェゲもなんとか見つけようと双眼鏡を覗いて探してまわるのだが、どこも同じような 状況だ。ときおり無線機で呼びかけているが情報が入ってこないところを見ると、他の車も似た ようなもんなのだろう。 そう言えば、出発前に見ていたどこかのHPで、最近のアンボセリは環境が大きく変化して きていると書いてあった。中心部の低地では地下水が湧き出て水没し、周辺部では地中から 塩類が吹き出している。そのため、今までいなかったフラミンゴが生息するようになったと言う。 確かに、ぼく達もフラミンゴを見ることが出来た。 さらに、象が増加したことも手伝って森が減少し、大型の肉食動物も姿を見せなくなってきた らしい。ガイドブックでは、アンボセリでは肉食動物と出会いやすいと書いてあったが、それも 昔の話となりつつあるようだ。 そうこうしているうちに、きつかった日射しも和らぎ、風が冷たくなってきた。広大なサバンナ に、夕陽が沈んでいく。地平線まで広がる草原に沈みゆく夕陽を見ていると、心を奪われ吸い 込まれそうだ。また、車が進んで、夕陽がちょうど湖の向こう側にきたその光景は、まるで絵に 描いた世界かと思うほど美しかった。 結局、この日は日暮れまで粘って、ロッジへ戻った。 食事の時間が来たのでレストランへ行く。ここは、夜もビュッフェ(バイキング)形式だ。食べ 始めてしばらくすると、Kさん、Tさんと一緒にチェゲがやって来た。彼女たちが招待したらしい。 ぼく達のテーブルは予約席になっており、4人分しか用意されていなかったので、ウェイターに 椅子と皿などを持ってきてもらう。飲み物の注文をとりにきたので、みんなビールを頼んだの だが、チェゲは飲まない主義だそうで、彼だけコーラを頼む。 彼に色々話を聞いてみると、出身はナクル(明日サファリをするところ)で、30歳。ぼくと同い 年だ。ナイロビに出てきたのは5年前で、最初の2年間はプジョーで整備士をしていたそうだ。 ガイドになったのは3年前で、日本語を勉強し始めたのが去年。それも、学校で習ったわけ ではなく、日本語を話せる人と話しながら独学で学んだらしい。タイやネパールなどでも、そう いう人達と出会ったが、頭の下がることだ。 食事を終えて、フロント前のロビーへ行く。今日はここで、マサイ・ダンスのショーが見れると 言う。行ったときには既に始まっており、民族衣装をまとった若いマサイ達が、杖を持って、 歌を歌いながら、1人ずつジャンプしている。ダンスと言ってもそれがメインで派手さはないが、 それがかえってマサイらしいのかもしれない。
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