入院中のこと




2000年10月11日 入院。
私の病室は イギリス大使館の緑が窓一面に
広がる気持ちのいいお部屋。
看護婦さんたちも みな親切だし お食事もおいしい。
入院前があまりにも いそがしかったので
しばらくここで ゆっくりできると思うと
ほっとする。本や雑誌、大好きな香りのものも
持ち込んだ。

今日の私のお仕事は剃毛。
胸毛はもちろん、脇の下にもはえてませんけれど・・・と
看護婦さんに言うと 一応 うぶげをきれいにしましょうね、
と言われた。

夜 ゆっくりお風呂に入り シャンプーして
秋の新番組をチェックして ぐっすり眠った。

12日、手術は午後からとのこと。
朝食、昼食はなし、水分もだめ。お茶好きの私には
ちょっと つらい。
前の方の手術が延びたということで 3時過ぎに看護婦さんが
呼びに来る。
水色の手術着をスポンと着て、バスタオルとバスキャップを持って
看護婦さんの後について 歩いて手術室に向う。
まるで お風呂にでもいくように。

初めて見る手術室。好奇心旺盛の私はキョロキョロしてしまう。
レントゲンやCTの写真がたくさんはってある。
ベッドは意外と幅が狭い。
肩に注射をして 酸素マスクのようなものをかけられ
「そろそろ麻酔をしますよ。」と 言われた次の瞬間 意識はなかった。

気がついたら 病室にいた。胸のあたりが重苦しい不快感はあるものの
痛いわけではない。でも のどがめちゃくちゃ 渇いていた。
その晩 渇きが何よりつらかった。

翌朝 やっと 水分をとってもいいとお許しがでる。
どうやら 手も何とか動くみたいだ。 お昼前には 歩いて
トイレにも行けるようになる。
その晩 洗顔や歯磨きも自分でできた。

13日 ひたすら眠い。寝返りができないので熟睡ができないのだが
とにかく 一日 眠くて 眠くて・・・・

14日 お食事もほぼ 全部頂けるし、気分も悪くない。
不思議なことに 傷口は まったく痛みがない。
脇のしたから 2本 廃液用の管がでていて 丸いタッパーのような
容器にたまるようになっている。 それが両脇にあるのだから
何となくうっとおしい。何処へ行くにも そのタッパーのようなものを
首からさげて行かなければならない。 
鎖につながれた犬の気持ちがわかったような気がした。

毎朝 看護婦さんが廃液を取っていく。
液がでなくなったら管が抜けるという。
また 管の入っている所を 先生が消毒してガーゼを張り替える。
それ以外に 私のお仕事は何もない。
何年かぶりにNHKの朝の連続ドラマを見たし、ワイドショーのお陰で
すっかり芸能ニュースにも詳しくなった。
久し振りに本もたくさん読めた。

毎日 お友達が入れ代わり立ち代り 尋ねてくれる。
皆 お忙しいのに 時間を作って来て下さって 本当に嬉しかった。
一人っ子の私は 今回の入院で お友達のありがたさを
身にしみて感じ、暖かい友情に心から感謝している。


脇の管が1本、2本と取れていき 4本めがとれて 晴れて
自由な身となった。そして Dr.が いつでも好きな時に
退院してください、と言ってくれた。

10月24日 退院。
久し振りの外の空気は すっかり秋だった。