アロマセラピーのメカニズム



            鼻から入った芳香成分は 鼻の奥の嗅上皮とい部分で電気信号に変わり、
大脳辺縁系へと 伝わります。
次にこのメッセージは海馬や視床下部の脳下垂体へと伝達されます。
脳下垂体は自律神経や内分泌系、免疫系の3つの大きなシステムを統括する大事な所です。
ここに香りのメッセージが伝わるとそれぞれの香りに対応した生理活性物質が分泌されます。
香りはこのように ダイレクトに脳へとアクセスできるのです。
ですから とても落ち込んでいる時に ジャスミンやクラリセージの香りで
気持ちが楽になったり 頭がボッーとしている時に 
ローズマリーやレモンなどの香りでしゃっきとできたりするのです。


            

           

フランスの作家 マルセル・プルーストの「失われた時をもとめて」の中で
マドレーヌの香りから過去の忘れていた記憶が鮮やかによみがえる場面があります。
視覚でとらえたものは始めは印象強く記憶されますが2年以内には
忘れてしまうことが多いようです。
しかし 嗅覚でとらえたものは一生記憶されているのです。
嗅覚は本来 食べ物を探したり、敵味方を素早く見分けて身を守ったり、
生存していくためには必要不可欠なものでした。
ガス漏れの臭い、きな臭い感じ、肉や魚が腐った異臭など
自分を守るために一度経験した臭いは決して忘れないようになっているのでしょう。




アロマセラピーの楽しみ方の一つとしてマッサージがあります。
植物油に1〜1.5%の濃度でエッセンシャルオイルを希釈し
マッサージオイルを作ります。
このオイルを使ってマッサージをすると エッセンシャルオイルが
皮膚から浸透することによる効果、
マッサージの効果、香りによる心理的効果と
3つの方向からの効果が期待されます。

皮膚から浸透させた場合、エッセンシャルオイルの成分の85%が
体内に浸透することが分っています。
普通に口から入れた栄養素や薬理物質が消化管から
吸収される率はもっと低く、ミネラルやカルシウムにいたっては
口から入った総量の10%程度しか吸収されないそうです。
また 皮膚から吸収されるエッセンシャルオイルは
皮膚表面から 毛穴や汗腺、角質細胞、角質細胞間の隙間を
経て皮膚の深部にあたる真皮へ
驚くほど速やかに浸透していくこともわかっています。
例えば ラヴェンダーでマッサージした場合、数分以内にラヴェンダーの
成分が血液中から検出され 90分後には大部分の成分が
消えたという報告もあります。


タッチング自体にも大いに生理学的な意義があります。
それが親子であっても 夫婦や恋人同士であってもまた専門家によるもの
であっても 人間にとってスキンタッチはとても
大切なことであり 大きな癒しとなります。
セルフマッサージの場合でも 血液やリンパ液の循環をよくし
血圧を調整し免疫系の働きを活発化させるという効果が期待できます。

また マッサージをしている際 鼻から入ってくる香りによって
体の緊張がとかれ リラックスするという効果も期待できます。
東邦大学の名誉教授であり医学博士でもある
鳥居鎮夫先生によれば ジャスミンの香りでは脳の
前頭部の赤みが強くなり 交感神経がよく働いて一種の興奮状態になり、
ラヴェンダーの香りでは脳全体が鎮静化してアルファ波がよく出ているという
研究結果があります。
ラヴェンダーによって誘導されたアルファ波で心身ともに
深くリラックスした状態となり 自律神経のバランスが整って
免疫力、自然治癒力が高まることになるのです。




たかが香りと思われがちですが 病気や体調の不調を癒す力は
かなりのレベルで高まるのです。
体内に入ったエッセンシャルオイルは最終的には
腎臓を経て尿、皮膚からの汗、肺からの呼気という3つのルートで
体外に排泄されます。