前田の算数
算 数 以 外 の 実 践 事 例 | ||
4年 体育 「陸上」 | ||
折れ線グラフで、持久走嫌いをなくす |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 順位やタイムではなく、ラップタイム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 体育の授業で、子供たちに最も人気のない種目が「持久走」である。 長い距離をひたすら走る「持久走」は、目標がないと単調で苦しいだけの運動になってしまう。 だからと言って、順位やタイムを目標に持たせると、走るのが苦手な子供たちはますますやる気をなくしてしまう。 そこで、本実践では「ラップタイム」に着目させた。 「同じラップタイムで走ること」を目標にすれば、足の速い子も遅い子も同じ土俵で競い合えると考えたからである。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 憧れが、願いへ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ まずは、子供たちに「同じラップタイムで走りたい」という願いを持たせようと考えた。 そこで、世界陸上800m走金メダリストであるイエゴ選手の走りをビデオで見せ、自分たちの走りと比べさせた。 最初のうちは、「腕のふりが…」「足の上げ方が…」などとフォームに目を向ける子供たち。 しかし、そのうちに、 「僕たちはだんだん遅くなるけど、イエゴ選手はずっと同じ速さで走ってたよ」 などと、速さの変化に目を向ける子供が出てき出した。 そこで、100mごとのラップタイムを調べて、自分たちとイエゴ選手を比べてみることにした。 実際にラップタイムを調べて比べてみると、イエゴ選手は一定の速さで走っているのに対して、自分たちはペースが大きく変化していることが分かる。 子供たちは、「イエゴ選手のように、同じラップタイムで走って、タイムを縮めたい」という願いを高めていった。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 折れ線グラフで、客観的に走りを分析 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ラップタイムを意識して、子供たちは練習を始めた。 しかし、単に「同じペースで走りなさい」と指導しても、子供たちには伝わりにくい。 そこで、ラップタイムを折れ線グラフで表して、自分の走りを振り返ることにした。 折れ線グラフが平らなのが理想の走りになるので、子供たちは自分の走りを客観的に分析しやすくなる。 「300mあたりからぐんと遅くなるから気を付けなきゃ」 「最初は25秒くらいで走って体力を温存しよう」 などと、自分の走りを見直していった。 走る際には、@走る子、Aラップタイムを計測する子、B通過タイムを測定する子、C応援やアドバイスをする子の、4人グループを作って活動した。 そして、グループ同士でお互いの課題や目標を伝え合う場を設けた。 そうすることで、 「23秒だよ。ちょっとペースを落として!」 など、具体的なアドバイスが飛び交うようになった。 正直、これまで何度か持久走の指導をしてきたが、 「頑張れ」「つらい時こそ自分との戦いだ」 など、根性論ばかりを投げかけることが多かった。 しかし、「折れ線グラフ」を用いたことで、子供たちは、客観的な分析をもとに明確な目標をもつことができた。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ゲーム感覚で、楽しく練習 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ もちろん、客観的に分析するだけでなく、体にペースを覚え込ませることも大切である。 しかし、そんなトレーニングも、ラップタイムを目標にすると、ゲーム感覚で楽しく行うことができた。 100mを走り、目標のラップタイムにどれだけ近いかを競い合う。 ぴったりならば0点。 1秒速かったり遅かったりすれば1点。 2秒なら2点と、点数の少なさを競う。 このルールなら、足の速い遅いは関係ない。 どの子もゲーム感覚で楽しそうに取り組んでいた。 「ぴったり走れた」「楽勝、楽勝」と喜ぶ子供たち。 しかし、次は200m、その次は400mと、だんだん距離を長くしていく。 すると、だんだん目標通りに走るのが難しくなっていく。 子供たちは、100mで得た達成感と、200mや400mへの挑戦意欲で、楽しく活動していった。 |
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ラップタイムが生んだドラマ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ さて、こうして持久走の授業を進めていく中で、1つのドラマが生まれた。 主人公は、走るのが苦手な美紀である。 それまでの美紀にとって、持久走は苦痛な種目であった。 ラップタイムを計り合った時にも、 「恥ずかしいから計られたくない」 と泣き出したくらいである。 しかし、「遅くてもいいから、同じラップタイムで走ることをめざそう」という目標が、美紀の心を軽くさせた。 それまで目標もなく嫌々走っていた美紀だったが、ラップタイムという明確な目標をもって走ることで、タイムがうんと縮まっていった。 そんな美紀の変化に、同じグループの子供たちの心が動き出した。 美紀が走る時には、併走して応援するようになっていったのである。 友達のあたたかい励ましに美紀も頑張りで応えようとする。 相乗効果で、美紀の記録は、ますます縮まっていった。 次第に、美紀の頑張りは、グループ内だけでなくクラス全体に伝わっていった。 美紀がゴールする時、自然とみんなが集まり拍手で迎えるようになったのである。 遅くても必死に頑張る美紀の姿に、子供たちは心をうたれたのであろう。 得意な子が活躍する授業ではなく、苦手な子が活躍できる授業。 まさに、そんな瞬間であった。 |
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付記 −算数との関連 ちなみに、この実践は、4年算数「折れ線グラフ」の学習と関連を図って行った。 算数の折れ線グラフを持久走に用いることが、体育にとってプラスとなり、 体育の持久走を折れ線グラフの教材に用いることが、算数にとってもプラスになる。 算数、体育、どちらにもプラスの効果が働くと考えたのである。 4年算数「折れ線グラフ」の実践 |
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